それぞれ魚たちをモチーフにした連作短編集。表題作の「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」の中学生の啓太と晴子の話がダントツによかった。著者は「孵化」という表現を使っているが、晴子が豹変し、いじめっ子を殴りつけるシーンにスッキリ。啓太の優秀さには驚く。「波間に浮かぶイエロー」も心が温まり、印象に残った。

沖縄とはまた異なる小笠原の歴史をはじめて知った。江戸時代、漂流した漁師の話から、現代のパートがどうつながるかと期待して読んだが、その期待を裏切らない面白さ。ただ小笠原の少女の扱い方が残念だった。

江戸時代の幕府と藩の関係をイメージしながら読みました。冷害や蝗害による飢饉などによるモノカルチャー経済の危うさを痛感。後半一気読みだったが、きれいにまとまったなという印象。

他作品の登場人物のスピンオフということですが、その人物をまったく忘れていて、その分、楽しめなかったのが残念。それでも個々の作品は痛かったり、切なかったりもするが、それぞれのラストに光＝希望があふれていて良かった。お気に入りは中学校の合唱コンクールを描いた「樹氷の街」。日本人だったら皆、中学生時代のこんな思い出があるのでしょう。大地讃頌のピアノの旋律は今でも脳裏に刻まれている。

特別な嗅覚を持つヒロイン・アイシャの物語。上巻のラストでは、武術の達人になったのにはびっくり。ちょっと間をはしょりすぎの感も。そのほかの登場人物も皆、魅力的。もつれた糸はどうほぐれていくのか、下巻が楽しみ。

逃避行を続ける母息子の成長物語。別府温泉での章がいちばん良かった。母は強し。善人ばかりが登場するのだが、もう少しスリリングな展開だった方が、面白かったと思う。ラストもあっさりとし過ぎの感があった。

「高速怪談」はアンソロジーで既読だった。お気に入りは「こうとげい」。日本の辺境の古い因習の怖さ。こういう物語が好き。「笛を吹く家」のどんでん返しもよい。

それぞれ魚たちをモチーフにした連作短編集。表題作の「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」の中学生の啓太と晴子の話がダントツによかった。著者は「孵化」という表現を使っているが、晴子が豹変し、いじめっ子を殴りつけるシーンにスッキリ。啓太の優秀さには驚く。「波間に浮かぶイエロー」も心が温まり、印象に残った。

途中、何か胡散臭いなと思いながら、それを上回るラストの急展開。これにはびっくり。ただ自因自果、因果応報ということにしてしまえば何でもありになってしまうのはどうだろう。

郊外の新興住宅街とそこに立つ3階建ての家の二十数年の歴史。時代をさかのぼって短編がつながる。登場するダメ男にはうんざりするが、心優しい人々にはほっこり。ラストの笑い声にスッキリ。

晩年の著者が一番のお気に入りと語っている短編集。どんでん返しのミステリ、ホラー、ブラックコメディなど次々に楽しめる。表題作の「鬼」はよくあるテーマだが、郷愁ただよう良作。「メイ先生の薔薇」も前半の清々しさと後半のギャップに驚く。

国立新美術館の李禹煥展に備えて、日本の現代美術の流れをつかもうと思って読み始める。いろいろな作品をググりながら読み進めたのでかなり時間がかかってしまった。欧米編と日本編は概論だが分かりやすかった。ブリティッシュ・ブラック・アートは未知の分野だったので興味深かった。

プールの水を流してしまった先生の話。はるか昔、こんな経験があった。あの時は実際に漏水も起きていて問題にならなかったな。その後、実際の報道があり、こんな騒ぎになるのだと驚いた。これをテーマにした著者にただただ拍手。小心者の先生とブラックな先生との対比が面白かった。

読書中、なるほど、こんな関係だったのかと思いながら読んでいたのだが、最後の最後、結局はどうだったのかというところが、はっきりしないまどろっこしさが残った。