読書メーター KADOKAWA Group

2024年3月の読書メーターまとめ

ハルト
読んだ本
22
読んだページ
6091ページ
感想・レビュー
22
ナイス
471ナイス

2024年3月に読んだ本
22

2024年3月にナイスが最も多かった感想・レビュー

ハルト
ネタバレ読了:◎ ゴシック風味ありな理瀬シリーズ短編集。この夜明け前に一層濃くなる、薄暗い影の中に立つような雰囲気が好き。薄氷の上にいるような、命を賭けているスリリングさも、ページを進ませる一因かも。弱さゆえ、愛憎深きゆえの別れもある。捕食者と被捕食者のような残酷さを覆い隠す、闇深い夜の中に輝く三日月のような光芒。泥の中に咲く睡蓮のような美しさとは云い得て妙。破滅と紙一重のところにいるからこそな世界観がよかった。
が「ナイス!」と言っています。

2024年3月の感想・レビュー一覧
22

ハルト
読了:◯ 会社員の十時さくらと、天才(マッド)サイエンティストな多田羅未貴がお送りする配信チャンネル〈ときときチャンネル〉。その配信では、配信のたびに奇怪な現象が起こる。▼SF+チャンネル配信という、砕けた形でのSF小説で、でもやっぱり難しさは残りつつ、どんな現象が起こるのか、毎回楽しみに読んだ。でこぼこコンビな二人のやりとりも軽妙で読みやすい。一応百合ものなのかな?あまりそういう色はなくて、匂わせるていどだったのがよかったように思えた。
が「ナイス!」と言っています。
ハルト
ネタバレ読了:◎ 怪獣が現れ、タイムトラベラーは時間を劫奪し、吸血鬼は吸血鬼になりたい人間に迫られ、ゾンビが襲いくる。パニック小説の趣を持つために作品は、人間が追いつめられた時にどんな行動を犯すのかが描かれている。中でも表題作の追いつめられっぷりは、ハラハラとさせるもので、怪獣という未知の生物によって犯罪の証拠隠滅を図ろうとする姉妹の行く末がどうなるのかが気になった。どの作品もおもしろく、他に吸血鬼小説の「夜の安らぎ」の、人間社会からの疎外感から吸血鬼になろうとする少女の孤独さゆえの吸血鬼への圧の強さが凄い。
が「ナイス!」と言っています。
ハルト
ネタバレ読了:◎ 栗杖亭鬼卵と松平定信の短い出会いに、ぎゅっと込められたもの。そこには漂う煙草の煙のような自由の風があった。鬼卵の自由奔放な快活さと、定信の凝り固まった生真面目さが対象的で、またその人生の過ごし方も違うものだった。出てくる人物みな魅力的で、生き生きとしていて、物語に命を吹き込むというのはこういうことかと思った。飄々とした鬼卵の生き方に通底する別離の悲しみがあるからこそ、彼は人を繋ぐということの大切さを知っている。気持ちの良い物語だった。
が「ナイス!」と言っています。
ハルト
ネタバレ読了:◎ ゴシック風味ありな理瀬シリーズ短編集。この夜明け前に一層濃くなる、薄暗い影の中に立つような雰囲気が好き。薄氷の上にいるような、命を賭けているスリリングさも、ページを進ませる一因かも。弱さゆえ、愛憎深きゆえの別れもある。捕食者と被捕食者のような残酷さを覆い隠す、闇深い夜の中に輝く三日月のような光芒。泥の中に咲く睡蓮のような美しさとは云い得て妙。破滅と紙一重のところにいるからこそな世界観がよかった。
が「ナイス!」と言っています。
ハルト
ネタバレ読了:◎ 今回の主人公はエリンボルク。日々、事件について、子供達について悩んでいる。そんな彼女が担当した事件はレイプドラックを使用したと思われる人間が殺されたというもの。犯人は襲われた女性のリベンジかと思われたが、薬のせいで記憶がなく、事件は混迷を深める。エーレンデュルが行方不明(!)な中、彼女が担当するに相応しい事件だと思った。性犯罪者が殺害被害者なので同情も湧かず、厳しい冬の寒さが重くのしかかるような読後感だった。次作はシグデュル=オーリが主役のスピンオフ。エーレンデュルの行方が気になりつつも楽しみ。
が「ナイス!」と言っています。
ハルト
ネタバレ読了:◯ 小さい頃から男の子としては変わった子だった。そんな海が高校生の時に好きになったのは、男子で同級生の忍。二人は恋人同士となり、高校で疎外されるようになる。同じようにいじめられっ子で疎外されていた璃子とニ人は、高校卒業後、上京する。▼海、忍、美佐子さん、璃子、緑亮/主人公、恋人、育ての親、友人、父親と、視点を変えて海を取り巻く人々の心情を語っていく。マイノリティなゲイであることの苦悩やしんどさ。人を想うことの青空のように澄んだ透明な心。その人がいるだけで心は光を持てる幸せがつらくも愛おしい。
が「ナイス!」と言っています。
ハルト
ネタバレ読了:◎ やはりこの二人がしっくりくる。元々小市民なのと、小市民を目指そうとしている人の差かな?小鳩くんは仲丸さんに振られ、小佐内さんは瓜野くんを振る。互いに恋人となった人へ興味のなさからくるやさしさを与えていた二人からそうやって恋人が離れていくのは、至極当然と云うべきか。▼放火事件の犯人は早々に予想がつくけれど、そこに至るまでの経過に、二人が関わっての事件解決が見事だった。それにしても瓜野くんは自業自得とはいえ不憫さを感じる。また元鞘に戻った二人の残り六ヶ月がどうなるのか。楽しみ。
が「ナイス!」と言っています。
ハルト
ネタバレ読了:◎ 小佐内さんが怖い。二人の関係が壊れた後、二人にはそれぞれ恋人ができる。小市民的な幸せ……なはずが、小鳩くんも小佐内さんもどこか不穏。そして今回のメイン、新聞部の一年生瓜野くんが追う連続放火事件が発生する。日常の謎からさらに刑事罰な事件へと発展を見せるのと同時に、小佐内さんが何を考えているのか判らないのが不気味。小鳩くんと小佐内さんの関係がどうなるのかも含めて事件の行く末も知りたく、下巻が早く読みたい。あと堂島くんいい部長ぶりだったなあ。
が「ナイス!」と言っています。
ハルト
ネタバレ読了:◎ まさに逆転劇。最後の数十ページですべてが逆転する。1963年に刊行されただけあって、雰囲気や時代設定や言葉遣いなどは古風なのだけれど、それを翻すだけの力を持った作品だった。大金持ちの長男に見初められ結婚したダンサーの主人公。彼女は夫の家で肩身の狭い思いをして暮らしながら、いつの日か舅に自分のことを認められるのを待っていた。妊娠、そして起こる殺人。舅は殺され、犯人は動機のある夫なのか……?となるが、その演出が上手く組み込まれて真犯人をめくらます。まさかの人間が弁護側の証人となり、事件は真相を見る。
が「ナイス!」と言っています。
ハルト
ネタバレ読了:◎ フィギュアスケートを題材にしたサスペンス風BL小説。ライバル同士のフィギュアスケーターだった塩澤と志藤。塩澤は自身の才能に見切りをつけデザイナーへと転職し、志藤もまた怪我をきっかけにアイスダンスへと転向する。そんな二人は、どちらもがどちらもを意識していた。一方は友情を。もう一方は恋情を。叶わない想いを抱えたまま他の男女と夜を過ごす塩澤の恋愛に対する繊細さが、痛々しく切ない。この恋のために死を覚悟した塩澤の熱情が叶ってよかったと思う。受攻あえて曖昧にしてあるけど塩澤が受かな?ミラーが哀れ
が「ナイス!」と言っています。
ハルト
ネタバレ読了:◎ 表紙には、沈んだ村の教会の尖塔が湖の中、静謐さを背負って佇む。喪われた村を見守るように。北イタリアのチロル地方のクロン村にある人工湖。ファシズムの政策やナチスの台頭に、村人たちは翻弄されながら、村の最期を見届ける。主人公のトリーナは、幼い頃に自分の意志でトリーナの元から去った娘へと向けて、村の行く末を綴り続ける。自分たちの村の歴史を。それは主人公の人生そのもので、ノンフィクションを元にしたフィクションだとわかっていても、その過酷さに悲しみと無力さが交じる。物語の持つ力が生かされている小説だった。
が「ナイス!」と言っています。
ハルト
ネタバレ読了:◎ 類人猿のボノボと人間との共通項。どちらもが逃げたい現実から逃走している。幼い頃に出会ったことのある一人と一匹。そこに生まれた交流は、未来において通じ合い、魂の交歓をもたらす。なぜ猿と人間なのか。人よりも純真無垢で素の感情を持っている猿と、傷ついた人間の無心なる交流の重みは、どちらもを行動に掻き立てる。必死に。生きるということはどういうことなのか。挑戦するということはどういうことなのか。一人と一匹の再生の物語のようにも思えた。
が「ナイス!」と言っています。
ハルト
ネタバレ読了:◎ 「アキちゃん」が印象深かった。上手く騙された。そして、なんて嫌な奴なんだアキちゃんは!けれどそれがどんどんと哀れみを持って感じられるのは、アキちゃんの虚勢のせいかもしれない。他者に高圧的な態度を取ることでしか、自分を庇えない。そんなアキちゃんは決して友達にはなりたくないけど、悲しいなと思う。表題作は、仕事、恋人、友達と、母親と様々な事柄で切羽詰まっていながらも平静を保とうとし、でもやはりそれらの人に腹立ちを抱いてしまい、苛ついてしまうという悪循環に陥っているのが、読んでてちょっとしんどかった
が「ナイス!」と言っています。
ハルト
ネタバレ読了:◎ もし実際にこんなタワーがあったら、どう思うだろうか。犯罪者を同情すべき人として収監する同情塔。塔の中に入りたいと思う人間にとっては、皮肉なユートピア小説とも読める。罪を犯して同情を受けるというのは、人生勝ち組、性善説が過ぎるようにも思われる。そこで生まれてくるのが罪とは何かという疑問。犯罪の被害者側からすれば、同情されるべきはこちらだろうと感じるに違いない。そんな不平等感にぞわぞわしながら読み終える。様々な問題が詰めこまれた一冊で、さすが芥川賞だった。
が「ナイス!」と言っています。
ハルト
読了:◯ 主人公のひとりエヴァンジェリンが、ティーンエイジャーで赤ん坊への愛ゆえだとしても、傲慢で人に当たるきつい性格なのが、ちょっとつらかった。宗教というのは、神を通して自分自身を見つめ直させるものだという認識があるのだけれど、息子を失ったアイザックの精神は疲れ切っており、それがもしかしたら孫かもしれない赤ん坊を宿した少女との共同生活で、徐々に精神を復調させていくさまに救いという光を見た。ミステリというよりも疑似家族ものといった体で700頁弱はちょっとつらかったかも。犬の愛がもっとも輝いていた。
が「ナイス!」と言っています。
ハルト
ネタバレ読了:◯ 参考文献の量には驚かされた。まず情報量が多い。1936年に仏領ハノイへと渡った主人公の鞠。けれど本当の主人公は中盤から出てくる憲兵の前島だったように思えた。鞠に恋情を抱く前島の心音がまっすぐなもので、だからこそこの混沌とした時代に潔い風を与えてくれる。ただ鞠については、あまり魅力を感じずに終わってしまった。舞台であるインドシナの空気は、その当時のきな臭さも含めて存分に味わえたと思う。けれど満足感はあくまで歴史小説としてのもので、ミステリのものではなかった。スパイ小説としても弱い気がした。
が「ナイス!」と言っています。
ハルト
ネタバレ読了:◯ まさかのジョーの結婚。そして冒頭で彼女は帰って来る。シャーリーのところへと。そしてジョーはなぜ自分が結婚したのかがわかっていない。そんな謎から始まる女体化版シャーロック・ホームズは、SF風味も加味しての愛についての醜聞が展開される。なぜ今回、こんなにシャーリーが自分の結婚に、愛に拘るのか謎だったし、それがこれまてのジョーとの関係を壊すのではないかとハラハラした。月の女王のようなエイレネの孤独感溢れつつも、なぜシャーリーに執着しているように見えるのかも不思議だった。結果的には愛と友情の物語だった。
が「ナイス!」と言っています。
ハルト
読了:◯ とりとめもなく淡々と続く日々。物書きの淡白な日常は、どこか立ち上る幻のようでもある。日常的でありながら、日常とは乖離もしている。生々しい生の在り方も、濾したように薄く、砂絵のようにさらさらと手から溢れていってしまう。人との交わりは主人公にとって非日常で、ゆるやかに時は流れ、非日常は影を薄めながら、残像のように小説に残る。一歩歩くごとに孤独に触れ慣れ、主人公の世界は幻へと近づいてゆく。情景の描き方が好きだなと思った。
が「ナイス!」と言っています。
ハルト
ネタバレ読了:◎ 誰が主人公を殺したのかが衝撃的だった。すべては愛ゆえ。1990年という、まだ性的少数者が激しく迫害されていた時期でのこと。クローゼットゲイだった主人公は、ゆえに殺される。内戦下の部族主義による戦いという状況もあって、生は軽かった。写真も、結局はあまり内戦に影響を及ぼさず、また主人公が愛した二人についても、意外にすぐ別に好きな人を作ったりもしていて、なんとなく拍子抜け感はあった。それでも主人公の信念とも呼べるものは写真に、愛する人たちに宿り、これからも生きていくのだろう。悲哀と希望を感じた。
が「ナイス!」と言っています。
ハルト
ネタバレ読了:◎ 1990年のスリランカの内戦下における物語。ゲイで戦争カメラマンの主人公が、死後の世界で殺害時の記憶を頼りに、自分がどのように殺されたのかを探していく。そして生者の世界でも、主人公を大切に思う人々が彼の行方を探していると、そこで彼の撮った写真を見つける。その写真を巡り生者も死者もが騒つきながら、下巻へと続く。▼エグみが口中に広がるようなやりきれのなさがある。生者も死者もごちゃまぜでの同国人同士の争いというテーマだからだろうか。知らなかったスリランカの歴史について興味が動いた。いざ次巻へ。
が「ナイス!」と言っています。
ハルト
読了:◎ 凄まじい血腥さと閉塞感。汚泥に足を取られたような、逃げ場のない現実。悲惨と一言で表せないその環境の劣悪さは、人間を押し潰してしまう。その結果、魔女が殺された。そこに至るまでの道筋を、五人それぞれの視点で容赦のない、しかし押し流すような筆致で暴いていく。こんな環境にいたら誰だって狂気をおぶってしまうだろう。暴力とセックスが支配する町で逃げ出したくても逃げ出せないゆえの苦痛や苦悩。地獄絵図のようで、読んでいるこちらにまで、死と汚泥の悪臭が伝わってくる。五感に訴えかけてくる文章だと思った。
が「ナイス!」と言っています。
ハルト
ネタバレ読了:◎ 訳文は角川文庫版のほうがゴシックらしさが出ているようで好みだった。解説もあちらのほうが充実している。「黒猫」「赤き死の仮面」「アッシャー家の崩壊」は、何度読んでもやはりいい。初読の「落とし穴と振り子」は息飲む迫力に読まされた。情景が目に浮かぶようだった。「ウィリアム・ウィルソン」のドッペルゲンガー譚は、その絡めとられたおぞましさにゾッとした。「美女再生譚」の流れにあるライジーアは、死してなおのその執着が恐ろしかった。ポーの描く死者の肌のような青白い恐怖譚はやはり大好きだ。
が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2008/08/17(5726日経過)
記録初日
2008/06/08(5796日経過)
読んだ本
6723冊(1日平均1.16冊)
読んだページ
1803873ページ(1日平均311ページ)
感想・レビュー
6008件(投稿率89.4%)
本棚
79棚
性別
読書メーターの
読書管理アプリ
日々の読書量を簡単に記録・管理できるアプリ版読書メーターです。
新たな本との出会いや読書仲間とのつながりが、読書をもっと楽しくします。
App StoreからダウンロードGogle Playで手に入れよう