2001年の初版から2023年には80版！今頃になって読んでいる私はいったい何？というぐらいの傑作学園ミステリーというのが感想である。語り手にして主人公の折木が廃部目前の古典部に入部するところからして、謎めいた姉貴の海外からよこした手紙の勧奨によるもの。「事件」のすべての糸を引いているのが不在の姉による企み？私より二十年下の米澤さんの峨々たる氷山がこの作品に始まると思うと期待にゾクゾクしました（今頃何を言っているｗ）。

古典部シリーズ3作目。トランプのマークを古典部員4人に割り振って、4人の語りが交代する構成。ここでも折木奉太郎の姉が関与します。デウス・エクス・マキーナ（機械仕掛けの神）さながらに。舞台はいよいよ神高文化祭！「氷菓」二百部を売り切ることはできるのでしょうか？下級生にとって上級生は謎の多い存在ですね。50年昔も今も。

『氷菓』の続編。文化祭前の夏休み、古典部の面々は文集「氷菓」の作成にいそしんでいるが、そこに持ち込まれたクラス自主製作ビデオの「謎」。前作同様面白く読ませてもらいました。前作の感想を繰り返すなら、これも「不在の姉による企み？」主人公のいじられキャラが楽しいですね。タロットカードの「力」の絵柄「優しい女性に制御されるライオン」そのまんまｗ

2001年の初版から2023年には80版！今頃になって読んでいる私はいったい何？というぐらいの傑作学園ミステリーというのが感想である。語り手にして主人公の折木が廃部目前の古典部に入部するところからして、謎めいた姉貴の海外からよこした手紙の勧奨によるもの。「事件」のすべての糸を引いているのが不在の姉による企み？私より二十年下の米澤さんの峨々たる氷山がこの作品に始まると思うと期待にゾクゾクしました（今頃何を言っているｗ）。

ある種の音を聞くとゾワッと感じることをASMER（エイズマー）と名付けて、若い人を中心にSNSでバズっているという話。さて科学的に見てどんな現象なのかを探る本。音楽に親しんでいる人には特に珍しいこともない現象かと。恋人の声を聞いて心地良く感じるのも同類か。高齢者にはあまり響かない内容でした。

絲山秋子の作品に出没する神（初出は『海の仙人』だったか）は、そこらへんのありふれた凡人なので、ほとんど気にとめられない存在（たまに神の存在に気づく鋭い人もいる）。登場人物の主観で語られる短編のリレーは『御社のチャラ男』と同じような構成。短編末尾に、いちいち「これは架空」と注で断りを入れるのは新手法？パワースポットの異世界空間を「なんだこりゃ」と思う神は全知全能というより「半知半能」。リリーフランキーを連想した。楽しませてもらいました。

与えられた境遇を受け入れながら「自分」の存在を消すことによって奇跡のような世界を現出するパラドックス。『博士の愛した数式』以来、小川洋子の小説には一貫したテーマがあるような気がする。ぱっとしない外見、目を背けたくなる醜さ。そのような負の記号を刻まれたキャラクターから愛おしい心温まるメッセージが発信される。チェスの棋譜から人格を読み取るのはできないまでも、盤上に描かれる将棋の駒のやりとりに心を打たれたことはある。謎かけのような題名の意味が分かる頃には、この物語に夢中になることは間違いない。