PMSの女性とパニック障害の男性。二人の夜明けのすべて。明けない夜はない。その言葉が嫌いだった。多感な時期に病気にかかったから、かつての自分はそんな晴れた朝のような言葉に騙されるわけにはいかなかった。自分だけが辛く、他人が幸せに見えた。でも違うのだ。自分も辛いけれど、同じように辛い人もいる。そんな当たり前のことに気づけたら一歩前進だ。気づいて、誰かの力になりたい。そんな優しいことに気づけたらさらに一歩前進だ。その先に夜明けはあるはずだ。二人がそうであったように。だから、信じよう。明けない夜はないのだと。

つ、疲れた…。結末的に「私」は…だと思うのだけれど、本当に？と疑う自分もいる。いや、ちょっとマッテ。いつから？いつから、ドグラ・マグラから現実になったのダッケ？はたまた、これは胎児の夢の中の出来事で「私」が体験したただの出来事？そして、そして、これは何回目のブーン？考えれば考えるほど分からないし、「私」の記憶を心理遺伝したら千年後の「私」かもしれないじゃないか。まさに奇書でした。

初読みの作家さん。三大奇書が一角、ドグラ・マグラ。この本を読んだ者は精神に異常を来すというからドキドキして読みはじめました。男が目を覚ますとそこは知らない部屋。男は自分の名前も分からず、隣の部屋からはお兄様と叫び声。お兄様に殺害された許嫁ですと言う。なんじゃ、これと、ポカンとしながら読み続けるとさらにポカン。チャカポコ、チャカポコでポカン、ポカン。人の皮の内側に潜むもの、凄い洞察だよ。ポカン、ポカン。チャカポコチャカポコ。あぁ、凄い洞察だよ、さすが一角。脳髄で考えちゃいけないよぉ。チャカポコ、チャカポコ。

SFミステリー短編集。とても良かったです。全編、一筋縄ではない驚きがありました。緩んだところに再び訪れる稲妻のような衝撃が絶妙でした。中でもお気に入りなのは「目に見えない愛情」エンハンスメントがテーマの感動作。優しくて温かい物語でした。人が想像したものはいずれ実現するというけれど、科学は一体どこまで行くのだろう。希望溢れるものであればいい。奇跡があたり前になるような優しい世界になればいい。どうしようもない凶暴性が人間に潜んでいたとしてもそんな世界を無責任に祈っていたい。

初読みの作家さん。メフィスト賞受賞作。○○してはいけない。そう言われて思いつくものナンバーワン。それは、スイッチ。箱川小雪はあるアルバイトを紹介された。スイッチを押す、押さないは自由。どちらでも100万円以上のお金が手に入る。しかし、押せばある家族が破滅する。メフィスト全開の設定。アイデアがおもしろかったので別の作品も読んでみようと思います。

心の中のものが一つ一つ消滅していく島。例えば、香水。匂いも思い出も心の底なしの沼へと沈んでしまう。というような。だが、その中で消滅に影響を受けない人々がいた。その人々は秘密警察の記憶狩りによって、連行されていく。静かで囁くような物語でした。生あるものは等しく消滅していく。その中で自分が最後まで残しておきたいものは何だろうと考えた。それらを結晶にしていつまでも大切に抱えていけたらいい。誰にも見せることもなく、奪われることもなく。ひっそりと密やかに。自分が消滅する最後の最後のその瞬間まで。

PMSの女性とパニック障害の男性。二人の夜明けのすべて。明けない夜はない。その言葉が嫌いだった。多感な時期に病気にかかったから、かつての自分はそんな晴れた朝のような言葉に騙されるわけにはいかなかった。自分だけが辛く、他人が幸せに見えた。でも違うのだ。自分も辛いけれど、同じように辛い人もいる。そんな当たり前のことに気づけたら一歩前進だ。気づいて、誰かの力になりたい。そんな優しいことに気づけたらさらに一歩前進だ。その先に夜明けはあるはずだ。二人がそうであったように。だから、信じよう。明けない夜はないのだと。

初読みの作家さん。とてもおもしろかったです。仕事をバーンアウトした私が経験した5つの仕事。人に代わりはいなくとも社会の歯車はいくらでも代わりがきいてしまうのが現実だ。どれだけ真摯に誠実に取り組もうとも。楽で儲かって、楽しい仕事があればいいけれど、この世にたやすい仕事はないのだと大人は知っている。ほどほどの距離感をもって仕事に望むのが○かなと思っている。それでも、感謝をしてもらえれば、嬉しいし、良かったなぁ、また頑張ろうと思える。それこそが仕事の罠かもしれないなと思う日曜の夕方である。