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2024年2月の読書メーターまとめ

練りようかん
読んだ本
59
読んだページ
19160ページ
感想・レビュー
57
ナイス
1018ナイス

2024年2月に読んだ本
59

2024年2月のお気に入られ登録
4

  • おっしー
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2024年2月にナイスが最も多かった感想・レビュー

練りようかん
1番目の夫ウィリアムに悩みを打ち明けられたルーシー。2番目の夫が病死した時助けてもらったのだ。今度は彼女の番だと心の中でエールを送った。彼の両親をはじめ家族と個人の来し方があっちこっちの記憶に乗ってわかってきて、家庭を維持する難しさや、家族間に流れてる愛をしみじみと感じるのだが、ルーシーの語りの切り上げ方がサクッとしてて、軽重のバリエーションと配置が非常に良いのだ。巧いなぁ、澱まない。そして保育園のくだりで彼を抱き締めたくなり、これが最高潮かと思ったがラストはさらに超えたすごい境地。とっても面白かった。
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2024年2月にナイスが最も多かったつぶやき

練りようかん

2024年1月の読書メーター 読んだ本の数:63冊 読んだページ数:21503ページ ナイス数:1066ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/843304/summary/monthly/2024/1

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2024年2月の感想・レビュー一覧
57

練りようかん
シリーズ1作目。人探しの依頼を受けた女性主人公。アパートに行くと死体発見、こっちの身元はわかるのに依頼人が身元不明に。面白い展開だなと心を掴まれた。3~40頁毎に疑問と解答が繰り返され、主人公の調査名が変わっていくのもユニーク。「調査方法の指図は受けない」というのがココに掛かってるんだろうなと落着の図が見えてニヤニヤした。疑惑は明確、抑えつけようとする人間に終始毅然とした態度をとるのがかっこいい。しかし悪玉の部下と親密になるのは駆け引きかサガか心配、いい感じのハードボイルド・ミステリで楽しかった。次へ。
山川欣伸(やまかわよしのぶ)
2024/05/06 15:51

ミステリー小説の醍醐味を味わえる作品だと思います。主人公の行動力と毅然とした姿勢が印象的で、疑惑の解明に向けて着実に調査を進めていく様子に引き込まれます。😊

練りようかん
2024/05/07 14:08

山川欣伸さん、コメントありがとうございます。主人公の毅然とした姿勢は確かに印象的ですね。これからシリーズを読むのが楽しみです。

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練りようかん
15年目に届けられた手紙。差出人は団体ツアー中行方不明になったのか。冒頭からちょっと変だなと首を捻ってしまう内容なのだが、主人公の夫があの時のあれだよって思い出すと視界はまた何度か傾く。ぞわぞわと奇妙をまとわせるムード、記憶の欠落した人からうっすら記憶のある人へ、いやいや私の記憶だからと乗っ取られまいとする人へ、短編のバトンがさらに奇異・妙とレベルアップするのが楽しい。1989年という年の設定も上手い、あの年ならあるやむしれぬと思わせる時代の力がある。日常に立ち現れる不在の存在感がホラーで面白かった。
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練りようかん
医療刑務所が舞台の続編。連続した二つの死の鑑定結果は病死。主人公の疑念から一人目は練習台だった可能性を思ったのだが、告発者の振る舞いから殺人説が濃厚になる。刑務所で働く人や解剖に関わった人の立場や心情、予算などの現実的な側面を思うと立証とその余波は心苦しく、救いとはかけ離れた出口しか想像できなかった。突き止めた真相から細脈がどくどく流れるよう、収容されてからの近親者の日々と感情が重なった。印象に残ったのは面会者の負担。隔離施設からでも縛り付けることは出来る怖さ。毒がまわる。彼女が可哀想でならなかった。
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練りようかん
仲の良い姉弟。家族という枠組みの中の子供という意味では同じ存在、だが根底の違いは認識している主人公の姉。しかし自分という枠組みになると違いを持つ何人もの自分がまだ掴みきれず、驚いたり疑問に思う姿がセンチで思春期っぽくて良いなと思っていた。だがよ、あかりだよ。塩中さんもダルかったけど彼女は実利や覇権を感じさせるツヨダルさ。弟を守ろうとする主人公の立ち回りにドキドキしっぱなしだった。タイトル回収と父・母・浮気相手の鏡像関係、ぐだぐだから圧倒に移り変わる能弁、ラストの一段昇った感じが愉快。舞城ワールド好きだな。
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練りようかん
経済ヤクザの殺人事件。抗争なら及川の担当だが麻生は怨恨を直感。複数いる愛人の中に10年前取調べに関わった青年がいる事に気付き、冤罪によって間違えられた人の人生を辿る上巻は麻生の中の刑事と愛が大きく揺すぶられる展開と、ヤクザの人物像の興味深さに引き込まれ、下巻に入り犯人の新たな線が浮かぶと焦燥感で没入。犯行状況をヤクザの心理分析からトレースするのが面白い、頼む梶原さん!小物か大物か田村憎めぬ奴!と脇役も立ってて、男社会の男同士の三角関係の描き方に見入った。三浦しをんさんの解説も刺さる。とっても良かった。
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練りようかん
バツイチの親友三人で集まる例会の名前が年増園というのだから笑ってしまう。其々仕事は成功していて名門息子もちょっと参加したりしてて、人生一周しちゃった人達の輝き方だなと思った。ゲイバーのバーテンに本気になる主人公の行動に、さっすがーとかそれはダメだよーとか心の中で喋りかけながらどんどこ進む。勢いよく読ませる筆致、チラリズムのような美文、拳から物体がはみ出る様を思わせる人物造形が良い。バイタリティに溢れ、自分の砂漠を感じてもいる。それを両立させてるのがすごい。そしてケジメのつけ方も。本当の大人。面白かった。
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練りようかん
同じ女性をストーキングしてる男に共存を持ちかける主人公。意図は分かり易くサクッと達成、ゴミを出すリスクから逃れられる人なんていないんじゃないかと著者の職業体験の余計な想像を挟みつつ、見る見られるの立場逆転を見守った。「作者より」以後ホラーの回転速度がギュンと上がり、彼女は何者?とページを捲るほどにわからなくなるのが楽しい。降伏編は自国とは全く異なるルールで動いている国が舞台で、はじめの共存という言葉と三人の構図が効いてくる。最初から狙っていたのか、恐るべしな構成力で読後じわっと怖かった。
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練りようかん
親の手によってネットにアップされ続ける子供という題材に興味を抱いた。キッズインフルエンサーが行方不明に。捜査を進めるとやめたがってた子供と自己実現の道具にする親の姿が。稼いだ金は誰のもの?芸能活動で規制出来ることがYouTubeでは出来ず、子供を守ろうとする活動や諸外国の法案可決の動きなど勉強になることが沢山。職業的搾取、家庭内暴力とはっきり書かれていたのが印象的。犯人の告白に『MOTHER』を思ったり、宗教二世とも重なり母親と女性捜査員の生育環境も見逃せない要素だった。物語が描く2031年がはがゆい。
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練りようかん
ネタバレ大学卒業旅行でトレーラーハウスに到着。いたずらと不穏なメッセージであっという間のクローズドサークル。誰かの悪意に気づき、不在のメンバーを怪しみ、起因となる過去が知らされる、このペース配分がきちっきちっと整っているのが気持ちいい、9人もの会話をどうやって組んでるのだろうか、さり気ない職人技を感じた。中盤すぎて犯人の目星がつくとホームズ役が台頭し物語はさらに面白くなり、そして危機一髪のくだりも映像的で良かった。究明する方法はこれしかなかったのか、仲を壊したかったわけじゃない。複雑な心が救った結果が味わい深い。
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練りようかん
カラダは自分のものだが、他者の勝手な紐づけに振り回されがち。各回エッセイタイトルがユニークで、王谷さんの怒りが随所で炸裂、どんな器官でも性的に妙な意味づけをされてしまうのは本当に謎で、豊富なエピソードに何度も膝打ちした。特に興味深かったのは声で、女子の声が低いと生意気や失礼と言われ、しかし高ければいいわけでもなく性役割分担の概念と濃い繋がりを感じる。一方イケボなんて男子も揶揄や幸運色々思うことありそうだ。社会人としてTPOの適切な声の出しどころが年々狭くなってるのも“やわらか洗脳”だなと気付かされた。
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練りようかん
螺旋プロジェクト第六弾。昭和後期の表題作は主人公の小市民ぶりと、妻が抱く疑惑がわかりやすい面白さでグイグイ読んだ。近未来の「スピンモンスター」は理由があれば争うべきなのかなど興味深い問いが幾つもあり、二つの中編は感情で楽しむのと理性で楽しむのとで読感が異なり、通読するとそれが人間の構造を思わせて上手いなと感じた。自動運転が解消する交通事故問題は気になる課題で、描き方も印象に残った。記憶媒体設置は良い方策だと認識していたが、物語内の技術進化が結局ふりだしにして争いの種を残すためかと思うと怖かった。
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練りようかん
福田さんが書く高層ビルジャックなのだから面白いに違いないと勇んで表紙を捲った。一万人近くが閉じ込められ、警察は部分爆破を計画。建造物の特徴が膠着状態を長引かせて上手い、実在のビルが簡単に思い浮かぶのだから現実化やその対策に考えは及び、小説内にとどまらぬ危機意識がビタッと背中に張り付いてる読み心地だった。制御システムなど最も関心のあった技術面の描写と、こんなところでと思う人間関係のサプライズが楽しませてくれた。何よりフィクションを強調するカッコ書きが良い。象の例えは今や一定層に当て嵌まると思い印象に残った。
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練りようかん
チェスで才能発揮する人々を章ごとに視点人物を変えて描く。第一章でエヴァーグリーンは色褪せないと紹介した子の名前が“輝”で示唆的、物語の世界観もすごく伝わってきた。競技人口が少ないと書かれている分、教えて知っての人から人へのバトンが引き立つ構成で、一つのジャンルが盛り上がる時の人間交差点は胸熱、各々の逆境を本人視点で理解してるからこそ、挑戦挑発、献身牽引に感情が乗りこうやってもっと広まっていけばいいのになと思った。思春期の葛藤と夢中になれるものを見つけた人間の強さが爽やかで温かく、読後感が良かった。
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練りようかん
ネタバレ『よその島』の料理描写が素敵で、もっと食がメインになる作品を読みたくて手に取った。目黒の路地にあるリストランテが舞台。俵万智さんが解説に書かれていたように、本の扉が店の扉に思える臨場感。カウンターの端でメニューを見上げながら、常連客とのやりとりに耳をそばだててる感覚。店の姉弟と客の視点で11編。初子ちゃんが心配で師匠とどうなるかが気になり没入。知らぬ名前の食材や料理も好奇心を擽られ、食べ物の描写は期待通り。だが素ラーメンをイッタラのボウルに盛る女!!“心得てる”の返しも凄い。怖さと笑いと幸福と。良かった。
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練りようかん
ネタバレ刑務所を出たり入ったりしてる男に恋人殺害の容疑がかかるがどうも罠の匂い。主人公警部の抱く違和感と女性だから得られた証言をもとに、捜査の見立てとは異なる真犯人を導き出す展開。特に引き込まれたのはアリバイを知ってる女性の懊悩。冤罪で終身刑にするか、本当の罪で数年の収監にするか。出所したら新たな女性が被害に合うのは目に見えている。暴力を予見しながら社会も警察も防げない現状は通読して最も心に残ったテーマだった。あとがきの情報はとても勉強になり、ストックホルムが舞台のミステリーでインセル運動を扱うのが必然に思えた。
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練りようかん
ネタバレ4コマ漫画。なりたい自分探し中のすーちゃんと、変わってしまった自分を嘆く親友のまいちゃん。淡く思うことと命題が日常描写に上手く織り交ぜられ、わかるわかるとすいすい読むのだが、哲学的思考にも感じてきてじっくり読むべきなのではと一瞬思う、しかしページを捲る手が止まらない面白さがあった。常連になるのが生きがいの人に恥をかかせないよう気遣う、休日返上お宅訪問決定の上司の言い回しがツボ。汲み取り力と付け込まれやすさの比例が善悪云々ではないレベルで話が進むのが良い。傷ついてる自分をそっとしておこう、が一番響いた。
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練りようかん
岡っ引きの夫を持つ主人公。昔いた妓楼で殺人事件が起こり、現場に残された美容に良い菓子から下手人を割り出せるのか?主人公の得意分野とツテが解決に導くのだろうと期待。花魁といえば決まった場所でお客を待つものと思っていたのだが、出張形式もあったのかとか主人公の処遇など業界を知る勉強と、整腸作用や美肌という視点からこの時代の菓子原材料を推測するのも楽しかった。集まったヒントが段階を経て解答になる様は蛹から蝶へ、羽化の高揚感に似て若干はしゃいだ。花魁のイメージに引っ張られたのかもしれない。
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練りようかん
離婚した妻を思い出し、可愛いと思ってた職場の後輩を思い出し、記憶の断片と今ここを緊密に描く連作短篇集。お茶汲み当番の改変が会社経営悪化の呼び水になったのか「お茶の時間」はドストライクなお仕事小説。売上帳も記憶を補うツール、言われてみればと過去が蘇った「高田馬場の馬鹿」は最後の三文字に余韻パンチをくらった。表題作は水餃子の場面が最高でリピート読み。忘れるとはどういうことなのか。曖昧な顔と鮮明な感情、逆パターンとの違いが興味深く、大鳥居を見る時の距離に全て収束される気もして思索に耽った。再読決定、面白かった。
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練りようかん
日常の謎を解く連作短編集。事件を解決する毎に二人が互いの拠り所なんだなと実感を深めていくのが良かった。大人視点の推理と心は子供な発言のギャップが楽しい、巻き込まれ体質のようで巻き込んでいく著者と同名の主人公という設定もまた面白くて、僅かな疑問も余すところなく解を差し出す誠実さも世界観とマッチしていた。特に「秋の足音」は魅力的なハテナと氷解を何回転しただろうと思うほど読み応えがあった。食べ物の描写もそそられる、濃いめのミルクティーと乾いた八つ橋は想像だけでもう美味しい。次はどんなメニューが登場するのか期待。
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練りようかん
初読作家。闇と膿のループにとんでもない閃きが面白かった。会社に復讐を企てる経緯は苛立ちの連続だが、自分勝手さでは主人公も負けてないと思った。変わらぬ就活市場、合否は個人の評価軸やスケジュール意識によるもので、将来性のある分野なのに将来を託せない組織人間たちなど“変わらぬもの”の中で、主人公の練磨が“変えた”成り行きに目が離せずページを捲る手が喜んでいた。興味深かったのは顔と退職率のセットと、縁という言葉で誤魔化される罪深さ。着眼点も深掘りも、皆感じてるけど敢えて言語化する逞しさも好きだ。他作品も読みたい。
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練りようかん
ネタバレ富裕層限定で詐欺を働くニーナと、標的にされたヴェネッサの視点で展開。はじめは騙す側と騙される側だけれど、途中から両方騙される側に思えてそれが決定的になる下巻の序盤。思考停止、疑い、打ち消し他に意識を持っていこうとする心の動きは二人とも同じ。金があろうと無かろうと親が捕食者なら、自尊心や自己肯定感が似た形になるのが痛々しく、代理戦争をさせられてると気付く場面は象徴的だ。舞台の屋敷は英米文学作品を色々想起してサスペンスと呪縛感を高めた。ここで描かれるSNSの功罪は映像向きかもしれない、アマゾンドラマ化に納得。
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練りようかん
利休やお市の方と三人の娘たちのように、大坂城からすぐ連想する人もいれば、よく知らない人もいて幅の広さに興味を引かれた。秀吉の中華思想で中国移住を考えさせられたのが面白い、ガラシャといつも短い幸せにため息をつき、大坂の陣を予見した政宗の書状が茶人に託されるのが当時の人間的距離感を思わせ、初めて深く知る人物もいて勉強になった。特に印象的なのは真田幸村。実際目にしたものもあるが掲載資料を見ると改めて石碑が多いと思った。それだけ偉人で人気があったということなのだろう。今建設中の施設、豊臣期の野面積みが楽しみ。
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練りようかん
ネタバレ推理小説や幻想小説など異なるジャンルが頭につく全五章。第一章の推しが第二章の主人公達で全部繋がってる系かなとワクワクした。人やアイテムの絡まり方を予想して当たってると楽しさが増す、各章テイストの違いが文体のリズムに表れていてすごいなと感じた。特に没入したのはM-1に挑戦する高校生の「イチウケ」。ドライブ感が素晴らしい、押し倒した理由がわかった時あー青春!って思った。そして人には言えない事情を抱える「恋と病」も気を揉んで集中、エピローグは二人の環だけでも十分アツい。本タイトルがググッときて良かった。
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練りようかん
1番目の夫ウィリアムに悩みを打ち明けられたルーシー。2番目の夫が病死した時助けてもらったのだ。今度は彼女の番だと心の中でエールを送った。彼の両親をはじめ家族と個人の来し方があっちこっちの記憶に乗ってわかってきて、家庭を維持する難しさや、家族間に流れてる愛をしみじみと感じるのだが、ルーシーの語りの切り上げ方がサクッとしてて、軽重のバリエーションと配置が非常に良いのだ。巧いなぁ、澱まない。そして保育園のくだりで彼を抱き締めたくなり、これが最高潮かと思ったがラストはさらに超えたすごい境地。とっても面白かった。
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練りようかん
乱歩賞きっかけ。主人公は外事二課所属。中国のスパイが将来総理候補の国会議員かもしれず捜査に打ち込む、めればよいのだけどチームの空気はすこぶる悪く、解決が目的ましてや目標には見えない個々の動き。先読み能力が試される機関だとひしひしと思った。主人公の相棒が予想外にキーマンで、反対に疑惑の議員は表に出て来ず存在感が薄いままなのが良かった。中盤の憤りと虚しさを感じた茶番は、終盤になると呆れのニュアンスが加わる、悪くしかなってない暗澹の余韻。香山氏が解説で書かれていたが、警察小説よりスパイ小説の方がしっくりきた。
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練りようかん
設定きっかけ。曖昧な記憶に言及する一文があり、それはこういうことかと当てはめ整っていく感じが楽しかった。『こころ』の初版本が勝手に改変される不思議危機、犯人の意図とバグを全て取り除けるのかに注目。夏目先生の登場はわかりやすくする良い手で、色んな人物が入ってくると詰め込み過ぎ!と思ったが共通項で腑に落ちて、推測する犯人も面白かった。心温まる解決策を通して『こころ』は壊れた話なのだと再認識。人間関係が壊れ、人の心も壊れ。バグの修正が修復になるならそれが一番だ。物語に最も思い入れのある人物は小路氏だと感じた。
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練りようかん
ホテルに欠かせない人が殺人容疑で逮捕、主人公は助けるために真犯人を探す。ポイントは被害者の部屋までのルートで、内部に詳しい者の犯行を思わせる。宿泊客集団を怪しむけれど墓石愛好家というインパクトの強さで内情に意識が追いつかず、人物表を何度も見返した。実際リノベ旧屋敷あるあるなのだろうかと考えるのも楽しかった。またルーツを知らない主人公にとって知られざる過去はテーマであり、事件とダブらせてるのが良かった。真相判明からが本番だったと言いたい展開で驚きと残念が半々。気になるところで終わったが次巻が出るのか不安。
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練りようかん
自然が作り出す色彩のグラデーション、ハッとするほど濃かったり名のわからぬ色や形が面白い。タイトルに惹かれページを捲ると“すごい”のスケール感に圧倒され、食い入るように見続けた。約40点の写真に現象の解説文がつき、空の上部ほど青っぽく見える理由が特に納得。また、スモッグがあるから見えたり都会の方が光芒が見えるなど意外な情報もあり勉強になった。蔵王の青空、お台場のムンクの叫びを思わせる台風一過、魚沼の厚い雲の下に波打つ「かなとこ雲」は特に魅力的。日本は空観察に向いてる地というのも得した気分。楽しかった。
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練りようかん
恨み辛みに正当性を感じるとそっちに引っ張られてしまうことがある、と思いながら読み進めた五短編。突然離婚を切り出される「僕はエスパーじゃない」は少し異なる印象を抱いたが、先が読めぬところが楽しかった。負のスパイラルは外から中心に向かっていくイメージだが、本タイトルを意識する瞬間、こっち側からあっち側へ移動する図が浮かび、1と2の違いが岩井ワールドの特長かもしれないと思う。だからこその切迫感、優位関係がひっくり返る恐怖が人物の感情観察を面白くする。特に没入したのは「極楽」、心配が現実になるのがたまらなかった。
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練りようかん
ネタバレ2020年3月から約2年間を3人の視点で描く長編。コロナ禍の影響で日常も人生も変わり、その中でポツポツと浮かんでくるのは2つの震災。記憶は薄れ思い出さなくても奥底に潜んでいて、社会の大事も私的な事もあれとあれはつながっていてどれも“続き”なんだと気づかされるのが興味深かった。特に30代男性のパートは、深く考えない方がいいと直感するシーンなど小さいところで共感すること多く、何を抱えてるのかが気になる上両親の発言に言葉を失い特に引き込まれる展開だった。それだけにポーランド人の詩がじわっと広がる。良かった。
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練りようかん
ネタバレシリーズ第六弾。漏電火災で発覚した死体遺棄事件。死体の身元断定は思ったより時間がかかり、後続事件も起こってしまう。今までは手がかりを探して奔走するイメージだったが、今回は沢山あるのに全然進まない印象。何者かの一人語りは好感を持てないが被害の可能性を思うと複雑で、誰が加害者でどんなアクシデントが紛れたのか全くわからず、物語の形が見えてこなくてもやもやしていたが、終盤捜査の効率化と迅速化の提言でこれかあと合点がいった。恋人の男性優位思考が引っかかっていたので、教唆の関係は社会に見立てた復讐にも思えた。次巻へ。
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練りようかん
三つ星シェフが自殺。残された者達が店を維持していこうとする現在と、料理人人生を運命づけられ上りつめるシェフ視点の過去を交互に展開。実力に最後に気付くのはフードライター、数少ない女性陣は性欲の捌け口にされ、メンタルがやられる競争の苛烈さなど業界の内幕が時に皮肉に時に率直に描かれていて、獲得した星が失われる危機に自死を選択した前例を鑑みても、色んな意味で狭さを感じさせる世界。シェフは家族と関わる時間がないと嘆くが、本人だけでなくまわりもつのる孤独と戦っていたのが印象的。作り手を幸せにしない食って何だろう。
Kai Ef
2024/02/16 05:41

いつも思うのですが、『練りようかん』さんのこのレビューだって、まったく『ネタバレ』ではないと思います。 嫌な人がいるからなんですかね? ちょっと書くと「それはネタバレだ!」とお馬鹿なことしか言わない人とか? もっと、本のことを書かないと伝わらないと、常々思っています。 このレビューは『ネタバレ』でも全然ないと思いますよ(私もこの本を読んでいます)。どうか、もっと、レビューを読んでくださる方に伝わるレビューを書いてください。楽しみにしています。

練りようかん
2024/02/16 09:56

Kai Ef さん、アドバイスありがとうございます。

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練りようかん
ネタバレ杉山真依子さんの装画は鳥がいる?と目を引き、マスカット色を基調としたカバーデザインが素敵でひと盛り上がりした。一緒にいるだけでまわりの気分を良くするスバル氏、その文章から森先生の温かな眼差しを想像させられて、いいなぁと和んだ。この一編が象徴するように今作は穏やかな読み心地、だが脳内は忙しなくイメージと実態のギャップや人間の価値については特に思考を刺激された。また、12.猛スピードの猛をつける条件は謎が奥深く、40.インボイス制度の正当性は勉強になった。93.は人類の財産から自分の財産が見えて有意義だった。
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練りようかん
ネタバレ異形コレクションの短編に書き下ろしを加えた作品集。特殊な世界をあらわす文章は耽美の匂いがして、人が痛めつけられる描写は特に香り高い。展開は複雑でないのに最後まで先が気になるのは装飾の筆力ゆえ、世界構築が素晴らしかった。表題作は残酷な世界だなと思っていたのがどんどん楽しくなり、『白雪姫』のIFに発想の面白さを、推理バトルに変身するのが驚きで熱中。同音異義語が秀逸、痛快な読後感だった。反対に次の編「死して屍知る者無し」は楽から残酷に急転する味わいが好み、配置の妙もあって印象に残った。「痛妃婚姻譚」も良かった。
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練りようかん
ネタバレ追悼文を書いた作家の数が凄い、偉大さが可視化出来る目次だ。見出して引き上げて再発掘して、氏が作家にかけた言葉は謎と解がメビウスの輪のよう、魅力的な人だなと改めて思った。看過できない出版予定作に校正だった歌野氏が“愚痴文章”をつけたエピソード、同じ文三でティーンズハートも担当されてた鈴木さんのメフィストの由来、仕事人の顔から個人の顔が見えてくる京極氏が特に印象に残った。また批評家座談会も面白かった。ご存命なら気に入っただろう作家たちの名に笑いながら頷く。沢山のトラウマ本をありがとうございました。合掌。
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練りようかん
ネタバレマルチ商法で数々の修羅場に居合わせる主人公。借金の感覚も家族や仲間、恋もおかしくさせるのだが、なぜかマルチで取り戻そうとする思考の沼が怖かった。新事業に手を付け皆副業持ち、サステナブルや仮想通貨など時代を先取りする側面もある“マルチのお引越し”は構造として興味深く、他人事だから野次馬根性でどんどん読めるサスペンス展開だった。終盤になると加害者側こそコンプレックスを突かれる心の隙間産業だと感じた。欲望階段を降りるタイミングはない、そして天性の才能は誰にでもある。そこを知っとくのは大きいと思う。勉強になった。
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練りようかん
ネタバレ表紙きっかけ。妹を支配下におく10ヶ月差の姉。言いなりの妹が視点人物で、行き過ぎの感を抱く姉妹の関係性。心理描写に共依存を思ったり、別人格の可能性まで浮かぶ不安定な語りに心がざわざわしっぱなし。転機は父が母胎に宿った家への引っ越しだ。家をひとつの体と言うのが興味深い。原点、容れ物、閉鎖空間、どれも妹の精神と展開にダブるのが面白い。異常さに気づきながら救うに救えない母が頼りないのだが、母には母の抱えてるものがあり不在の存在を含めた連鎖や伝播を思う、人による人でない威力を感じるしっとりホラーが良かった。
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練りようかん
ネタバレ『償い』の日高を主人公にした作品がまた読めて嬉しい。今作は二つの死に疑念を抱き、一方は巻き込まれもう一方は積極的に真相介入する展開。派手さはないけれど誰もが悪く悪くもないとも言えるやりきれなさがじわじわと胸に充満する読み心地で、しかしその重さとは反比例して先が気になりページを捲る手は速くなっていった。母という存在に運命を狂わされる息子。サブテーマに思えたことが色々な感情を湧かせた。そして赦す赦さないの対象が行為と人物では別なのは非常にわかるところ、関係のもつれと本人の拗らせが鶏と卵に思えて面白かった。
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練りようかん
ネタバレ四編収録。飼い猫の花ちゃんを中心に作家の“私”が思考したことが書かれていて、エッセイかなと思ったが違う小説の形。あとがきには小説と明記されている。引き出される記憶、死ぬこと生きること、言葉を持たないことについて、ゆるやかに計算済みのコースを走らされている印象だった。特に面白かったのは「こことよそ」。作品の気配が独特の濃さを放っていてワシっと心を掴まれた。具体的な事柄よりも纏う抽象が広がっていく体感を味わう読み方に。すると“かいても固定する言葉がない”、の一文に符合の感極まった。読むこと自体が歓びなのだな。
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練りようかん
ネタバレ同級生が高校生のままでいることに気付いた主人公。年齢を患うという言葉が新鮮で、設定の興味深さと言い回しのセンスに惹かれ物語世界に引き込まれた。回想パートと理由を探る現在パートで展開する中、年齢が止まる理由から卒業したくない理由、そして主人公が違和感を捨て置けない理由へと関心を向ける謎がスライドしていくのが面白い、最後の伏線回収に急いで文章を見直し脳内は物語の整理で忙しかった。成年年齢が引き下げられ、18歳という年齢が感じることはより複雑になった。今描いたら追加要素は何だろうと考えるのも楽しかった。
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練りようかん
ネタバレ40年近く前の単行本を再編集した一冊で、モーレツ社員など時代を感じさせるワードが出てくるけれど悩みは時代レス。厳しいことをハッキリ言い、相談者の狡さを指摘する回答が痛快。不完全な自分を認識しろ、恥をかけ。視野狭窄を見直させる論理の持っていき方と、どんな内容でも焦点を見失わず卓越した分析に何度ハハーとなったことか。解決とは解釈なんだと気付かされた。特に印象に残ったのは親の仕事の跡継ぎ問題と離婚宣言が重なった大学生。“親が跡継ぎを欲しがるのは過去の自分を肯定してくれる存在だから”が超絶ヒットだった。
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練りようかん
ネタバレ有望なアメフト選手である主人公を劣悪な環境から引き上げたいと苦心するコーチ。しかし主人公と信頼関係を築けてるとは言えず、職場も家庭も四面楚歌ぶりが気の毒すぎて物語に没入。完全にコーチ読み。ポジションによって人種が決まってるのか、競技を通して男の在り方を教えてやるって何、出身地まで差別の対象?と生理的嫌悪が止まらず、意見の相違が不穏なコーチ妻の存在がスリルを高めた。終盤刻々と状況が変わる展開で胸が詰まり、読ませる作品だった。貧困、差別、暴力傾向、そして出口を奪う社会構造。今後も南部ノワールに注目したい。
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練りようかん
ネタバレ2018年のお正月をベルリンで迎え、春の芽や夏のかき氷、新盆のブーケなど四季の彩りを豊かに感じる暮らしエッセイ。ドイツ人は日本人と気質が似ていると思っていたけれど、キレイ好きというより掃除道具好きで、言語の厳密さに日本の「行間を読む」や「なんか〜」は理解しがたいだろうとあり、違いを知るのも楽しい学びだった。また、お料理も相変わらず美味しそうで、新年会のわさびを添えたかんぴょうが食べたい!白アスパラガスのハムはうすさが要か?と想像逞しくさせ堪能した。印象に残ったのはペットショップ問題。日本の遅れが気になる。
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練りようかん
ネタバレ少年死刑囚が脱獄し潜伏先を転々とする中で出会う人々との交流を描く。法廷で少年が放った一言は事件動機か逃亡理由か又は両方か、真相を知りたい欲を掻き立てられる物語の導入で魅力を感じた。正体に気付いても通報はイコール殺すことだと、躊躇う思考にそう考えるのかと興味深かった。自分が命の消滅に関わるのは怖い。その思いが冤罪を作り回避もできると感じた展開で、少年が度々積極的に救助するシーンによって一般市民と警察や検察との区分けと非常時の判断がサブテーマに思え、少年の美点に乗っかる悲劇をイメージさせてとても苦しかった。
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ネタバレ生まれつきの色好みだったんだなと感じさせる7歳から始まり60歳までの54年が描かれる。生涯戯れた人数がハンパないのだけど、捨てた数でもあるなと思った色遍歴。10歳で似合う髪型は人物像を掴む助けになり、27歳で巫女に迫った罰が笑えるのと当時の防犯意識を思い合理性を感じて面白い、髪型から得る情報は大きかった。莫大な財産を譲り受けた後は『源氏物語』の「若菜下」を想起。“金を使い切れない”は“遊びきれない”につながり、こんなぶっ飛んだ人でもやり切れないんだよとすぎた欲の教訓譚にも思える。名作は深い、表紙も良い。
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ネタバレ探偵団を結成した小学生たちの連作短編。日常モノから本格殺人まで扱い、物語の時間も3年が経過。そこに持たせた幅がじわりじわりと効いてくる構成だった。論理を重視し人を信じない双子の兄と、気弱で人を信じたい真逆の弟。視点人物は弟でホームズの役割かと思ったが意外にも活躍。犯人当ては同じ答えでもそれまでの道筋が違ったり、真実を公表すべきか否かの性格の差が面白く、それが伏線だとうっすら気づきはじめるゾワゾワ感が楽しかった。推理対決をけしかける兄、成長しすぎる弟、ラストは谷底に突き落とされたような余韻が良かった。
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ネタバレ自分が売った本に旅先で出会い続ける一編目。再読する度に物語の印象が変わるのは愉しみどころで、本好きとしてはしたり顔で頷きたいところだが、買って借りて読んで読めなくて探して探してあげてとなると、もうそれは希少な体験を伺わせる大事な一冊になる。そんな読書界のマスからミクロへもってく短編の配置が流石だ。そして最後の一編、“おれ”に言われた言葉にこの短編集の円環を感じて、うきうきと本を閉じた。読了は終わりではない、もう一回読む前のひと歩きだと思えたのが良かった。特に引き込まれたのは「不幸の種」と「ミツザワ書店」。
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ネタバレ空しさと激情がトルネード状態で、とても面白かった十の短篇集。ままならなさの背景には中国の歴史と社会意識があり、幸福の追求が解釈によっては人を人でなしにする、だが小説という形で視点がこちら側だから肯定できる部分もあり、読めば読むほどシンプルに複雑なことが描かれていると感じた。現代の医学なら情況は変わるだろう、生物学の方が適しているかなと考えていたが著者が生物学を学んでいたと知り納得。その分野の進歩と認識普及の大切さを実感した。特に興味深く心に残ったのは宦官の「不滅」と一人っ子政策の「柿たち」、そして表題作。
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ネタバレ第三弾。順調に口コミ依頼。事件関係者のその後がわかるのも嬉しく、ネイバーズ構成員の人物造形がみちっとしてくる充実感が良かった。eスポーツや転売ヤーなど今を切り取る実態が描かれていて、特に後者の「推しの代行者」が面白かった。足を使って人と対面して事態を解きほぐすロン。転売ヤーの実感のなさに、やっぱり人の温度感を知るにはスキルが必要で、それはツールではないなと強く思った。表題作は感傷的なムードが濃く、件の曲も雰囲気から想像して楽しんだ。前を進むヒナ、過去から未来に向いた凪、其々の今後が待ち遠しい。
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ネタバレ螺旋プロジェクト第五弾。昭和初期を担当。集団疎開で出会った女子小学生。リツの耳は尖っていて清子の瞳は黒くない。本能で感じる嫌悪の描写が鮮烈だ。小さな身体がパンと弾かれるような衝動。そして同じ男子に想いを寄せ、反目要素が増え二人の心をガチガチにする様がなんとも苦しく、プロジェクトベースはあるけれど、普遍的な覚えのある感情が喚起され物語にとても引き込まれた。爆弾が落とされてる時、あの子も怖いのかと考えるシーン。憎む敵の忌むが恋うと相似形に見えた。対立の一つの解、対処の仕方は戦争回避とダブり意味深く感じた。
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ネタバレ二中編収録。登山と動物、氏のお得意分野だから安心してその説得力に頷く。福家どこまで精通してるんだにつながり、犯人を追い詰めるだけでなく彼女と袖振り合った人々の福になるのがとても良い。そして須藤登場も嬉しく、二岡も安定していいキャラだった。特に面白いと思ったのはカーナビや犬の鳴き声など、“ない”から引っ張ってくる逆アプローチ。言われてみればその通りですね級なのだが、細く尾を引くインパクトがありそれのチリツモで物語は進む。苛立ちを隠せない犯人の様子にほくそ笑み、読み手の嗜虐性を引き出す作品だとつくづく思った。
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ネタバレ気ままに自分の判断で途中で投げ出してもいいくらいの気持ちで本を読む。乱読をすすめるだけでなく、読書量が増えて読書メタボにならないよう対処法まで書かれていて、ケアが行き届いているなと思った。特に面白かった点は三つ。もの知りでも知的個性は小さくなることがある、教科書の文学作品はアルファー読みからベーター読みの橋がかり、乱読ができる人はベーター読みが出来る人で乱読できない人は違う。自分の読書傾向と照らし合わせるのが楽しく、気楽に本を選ぼう、そして新陳代謝を意識しようと思い至りなんかとっても頭がスッキリした。
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ネタバレ第二弾。学生時代のヴァイオリンの先生が毒殺され、被疑者の弁護人となった主人公。コンサート中の暗闇で行われた殺人なのか、トリックを想像したり恩師の不可解な言動が引っかかるのも楽しく、優雅に推理調査するふんわり感がいいなと思いながら読み進めた。高額楽器の科学判定は興味深く、時代の変化を感じて勉強になった。真相はあらかた予測つくのだが、一番の肝は弟子たちが恩師を想うという矢印が反転して切なさが増すところ。主人公との関係設定が腑に落ちる点で、面白味をぐっと感じた。まだまだ読みたいけれど続刊がなくて淋しい。
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ネタバレ一般家庭が庭もないのに鶏を飼うという。驚きすぎて早速引き込まれた。小六の長男は大人たちの協力を取り付け知識も豊富、独立心は目を見張るものがあり年齢が追い付いてなくて苦しいのかなと思う場面もあった。養鶏はお小遣いのない彼にとって経済活動だったのだ。実録の書き手はお母様、親子関係の変化におけるデリケートな部分をそのままに、言語化する筆力に感情を何度も動かされた。長男と末娘の半年以上続く「絞める」「殺さないで」という会話、“食べ物と生き物はひと続きであるという感覚”、おいしく食べる責任が印象的。とても良かった。
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ネタバレ社会問題化した詐欺会社の末端社員だった主人公。元同僚と新たな詐欺に手を染めるのだが、はじめは二人きりだったのに元会社の人間が続々入社。トカゲの尻尾たちのその後に焦点を当てたことが面白い、頭から離れても詐欺道からは離れぬ生き方に実在の事件関係者もそうなのかなと重ね、欺す側の心理解剖は読み進める間常に興味の対象だった。またオウムや福田和子など時代の流れで挙げる“象徴”も主人公とリンクの深読みが出来て、パートナーの異変がさらに没入する要因になった。巨体ヤクザのキャラが良い、脳内では竹内力氏で映像化して楽しんだ。
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ネタバレタイトルの歌は衝撃度高く、響きの心地良さのある開から閉の切迫感に変わっていく変容に胸を打たれた。続く歌も、長音や句読点に反復の技巧、想像する楽しさと深み、命のないものまで心情を汲み取ろうとする優しさが感じられて、喉元で清涼と苦味を伴って粒子がほどけていくイメージ。粉の龍角散を飲んだみたいだと思った。惹かれた歌が沢山あって、近年読んだ歌集で格別の印象を受けた作品集だった。特に好きなのは「食パンの耳をまんべんなくかじる 祈りとはそういうものだろう」「暮れなずむホームをふたりぽろぽろと音符のように歩きましたね」
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練りようかん
ネタバレその日が近づくと記憶がリセットされる主人公。何か思い出す必要があるのではと感じた。主人公の前に謎の人物が現れ、失われた間の二人の接点が気になる展開。デートと称して浜松の飲食店やスポットをめぐるのだが、詳細な描写はまるでガイドブックのよう。メフィスト賞受賞作だが静岡書店大賞も受賞していて納得、むしろこちらの方が印象としてはしっくりきた。特に面白かったのは生きることと職業のつながり。過去に戻り続ける人間が、過去の積み重ねから未来の積み重ねを考えられるようになる。素敵なプレゼント交換を思わせる物語だった。
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ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2018/02/26(2304日経過)
記録初日
2018/03/01(2301日経過)
読んだ本
4579冊(1日平均1.99冊)
読んだページ
1492683ページ(1日平均648ページ)
感想・レビュー
3824件(投稿率83.5%)
本棚
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