形式:新書
出版社:筑摩書房
形式:Kindle版
先日の『桓武天皇』との関係で言えば、このような双系的親族結合社会を根底からひっくり返したのが桓武天皇と言えるんだろうなあ。
本書で著者は太宗から善徳女王への「女主忌避」言説が『冊府元亀』の潤色であることを看破しているが、これまで誰も指摘しなかったのだろうか。このような思い込みは掘れば他にもわんさか出てきそうだ。
日本でも有名な(ちくま新書の古代史講義シリーズにも紹介されている)玄宗皇帝の女王忌避言説(玄宗皇帝が善徳女王にケチを付け内政干渉しようとした)は同時代史料では一切確認できず、実は後世の創作だったという話には顎が外れるほどおどろきました。
にゃーご松崎さん ある意味、日本の社会や政治の今後の在り方に関わる大事な案件。下手すると憲法改質に匹敵する重みを持つ。大切なのは一部の専門家や政治家に委ねるのじゃなく、広範な意見を問うこと。
男系を維持するには、早晩、妻以外に妾も必要になる。江戸時代、武家はお家の存続に何人もの妾が必要だった。
その他通説ではありますが、蘇我蝦夷が田村皇子(のちの舒明天皇)を支持したとする説を採用していますが、舒明天皇即位前紀を先入観なしに読めば、山背大兄王を支持していたとする味方も可能です。すくなくとも舒明天皇と蝦夷の関係がギクシャクしたものであったことから考えても、通説には誤解があると思います。
最新の研究成果が縦横に用いられており飽きさせることがありません。/そして、推古、皇極・斉明、持統と言った名だたる女帝たちの事績が振り返られ再評価されるのも、本書の読み所でしょう。その際、彼女たちが従来言われてきた「中継ぎ」の存在とする「偏見」は完全に拭い去られ、それぞれが時代の要請に応じて自分の狙いを持って群臣たちと相携え、時に競争者としてライヴァルに非情の決断をする主体性ある存在だったことが明らかになります。/一方でしかし、この幼い男帝を擁し皇族の長老として実力を振るう女帝システムは、(2/3)
中国から入って来た父系理念による血統承継との折衷であったことが明らかになります。臣下には男性中心による官制を強いそれによる官僚制が完成して来るに従い、双系に基づく君主制を維持するのは矛盾だったでしょう。特に、元明、元正、光明、孝謙・称徳と時代を過ぎるごとに、皇位承継についての合理化が強引かつ独善的になり、また皇統を先細りさせる方向でしか作用しなかった点、群臣の支持を得られず持続性のあるものになり得なかったと思います。しかしながら、王権と臣下の関係の変遷を考えさせる等、広く目配りされた本です。(3/3)
太上天皇と天皇の共治は男系嫡子原理が定着した後も摂関政治や院政へと繋がっていく訳だけど、その制度の成立には女帝が関わっているのが面白い。
(追記)やっぱり文武天皇に皇后がいないのが気になるなぁ。文武、聖武は皇女のキサキが見当たらないんだよなぁ。
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