読書メーター KADOKAWA Group

kero385
さんの感想・レビュー

kero385
新着
「土にまみれた旗」で老人として登場した主要人物オールド・ベイヤード・サートリスの12歳から24歳までを描いた教養小説的な作品。個別に発表された短編を改作し、物語の最終話としてフォークナーの短編の中でも傑作の誉高い「美女桜の香り」(「バーベナの香り」「クマツヅラの匂い」等の訳もあり)を新たに書き加えて、長編小説に整えた、限りなく愛おしさを感じさせる作品。殊更フォークナーは読みにくい難解と言われるが、この小説にはそのような評価は当たらないだろう。しかし、フォークナーが繰り返し主題にした深南部の伝統や因習、
kero385

差別の問題、憎しみによる暴力の連鎖とその否定などが10代から20代にかけてのベイヤードの清々しい目で捉えられていて、フォークナーの主題が余すことなく展開されている。フォークナー入門には最適な長編かと思う。 同じ年同じ月に生まれ同じ乳を飲んで育った、サートリス家の跡取りベイヤードと黒人奴隷のリンゴー。物語の初めは、対等の幼馴染として共に協力し合い活躍する姿が描かれ痛快である。けれど二人が成長し最後の「美女桜の香り」では、ベイヤードがリンゴーの主として振る舞いリンゴーも立場をわきまえて行動する姿が描かれる。

12/04 04:27
  • こばやしこばやし
  • だんぼ
  • ヴェネツィア
  • おわか
  • 風に吹かれて
kero385

これがその当時の南部の事実であり、露骨な差別を描くよりも、むしろもっと哀しく胸が痛くなる。「美女桜の香り」は、それだけ読んでも十分鑑賞に耐える短編だが、長編「征服されざる人々」の最終章として読むと、青年となったベイヤードが今までの経験を通してなぜあのような選択したかがより深く感じられる。こんな素晴らしい作品が入手しがたい状態で、尚且つ1975年のこの翻訳以降新訳が出ていないのが残念だ。

12/04 04:28
  • こばやしこばやし
  • だんぼ
  • ヴェネツィア
  • おわか
  • 風に吹かれて
0255文字
全2件中 1-2 件を表示

kero385
さんの最近の感想・レビュー

フォークナー全集 25 短篇集 2

フォークナー全集 25 短篇集 2

フォークナー
フォークナー全集第25巻 短篇集(2)は、既刊の短篇集に収められなかった作品を…続きを読む
Die Sterntaler - Ein Märchen der Brüder Grimm

Die Sterntaler - Ein Märchen der Brüder Grimm

Jacob Grimm, Wilhelm Grimm
私のように定年退職後、再雇用で同じ会社で働いている方なら、誰もが感じることかと…続きを読む
寓話 下 (岩波文庫 赤 323-2)

寓話 下 (岩波文庫 赤 323-2)

ウィリアム フォークナー
「寓話」は、第二次世界大戦を契機に執筆されたが、フォークナーにとって今まで重要…続きを読む
寓話 上 (岩波文庫 赤 323-1)

寓話 上 (岩波文庫 赤 323-1)

ウィリアム フォークナー
「寓話」は難解と言われるフォークナーの中でも飛び切り難解なんじゃないかと思う。…続きを読む
フォークナー全集 24 短篇集 1

フォークナー全集 24 短篇集 1

フォークナー
「フォークナー全集第24巻 短篇集(1)」は、1950年に出版された「フォーク…続きを読む
響きと怒り

響きと怒り

ウィリアム・フォークナー
昨年の9月30日に出版された「響きと怒り」最新の邦訳。まだ40代の若い研究者桐…続きを読む

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2024/10/21(118日経過)
記録初日
2023/02/04(743日経過)
読んだ本
104冊(1日平均0.14冊)
読んだページ
34145ページ(1日平均45ページ)
感想・レビュー
67件(投稿率64.4%)
本棚
0棚
自己紹介

2024年10月に参加したばかりですが、よろしくお願い申し上げます。

ここしばらくは、学生時代好きだったフォークナーを読み直しています。

読書メーターの
読書管理アプリ
日々の読書量を簡単に記録・管理できるアプリ版読書メーターです。
新たな本との出会いや読書仲間とのつながりが、読書をもっと楽しくします。
App StoreからダウンロードGogle Playで手に入れよう