差別の問題、憎しみによる暴力の連鎖とその否定などが10代から20代にかけてのベイヤードの清々しい目で捉えられていて、フォークナーの主題が余すことなく展開されている。フォークナー入門には最適な長編かと思う。 同じ年同じ月に生まれ同じ乳を飲んで育った、サートリス家の跡取りベイヤードと黒人奴隷のリンゴー。物語の初めは、対等の幼馴染として共に協力し合い活躍する姿が描かれ痛快である。けれど二人が成長し最後の「美女桜の香り」では、ベイヤードがリンゴーの主として振る舞いリンゴーも立場をわきまえて行動する姿が描かれる。
これがその当時の南部の事実であり、露骨な差別を描くよりも、むしろもっと哀しく胸が痛くなる。「美女桜の香り」は、それだけ読んでも十分鑑賞に耐える短編だが、長編「征服されざる人々」の最終章として読むと、青年となったベイヤードが今までの経験を通してなぜあのような選択したかがより深く感じられる。こんな素晴らしい作品が入手しがたい状態で、尚且つ1975年のこの翻訳以降新訳が出ていないのが残念だ。
2024年10月に参加したばかりですが、よろしくお願い申し上げます。ここしばらくは、学生時代好きだったフォークナーを読み直しています。
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差別の問題、憎しみによる暴力の連鎖とその否定などが10代から20代にかけてのベイヤードの清々しい目で捉えられていて、フォークナーの主題が余すことなく展開されている。フォークナー入門には最適な長編かと思う。 同じ年同じ月に生まれ同じ乳を飲んで育った、サートリス家の跡取りベイヤードと黒人奴隷のリンゴー。物語の初めは、対等の幼馴染として共に協力し合い活躍する姿が描かれ痛快である。けれど二人が成長し最後の「美女桜の香り」では、ベイヤードがリンゴーの主として振る舞いリンゴーも立場をわきまえて行動する姿が描かれる。
これがその当時の南部の事実であり、露骨な差別を描くよりも、むしろもっと哀しく胸が痛くなる。「美女桜の香り」は、それだけ読んでも十分鑑賞に耐える短編だが、長編「征服されざる人々」の最終章として読むと、青年となったベイヤードが今までの経験を通してなぜあのような選択したかがより深く感じられる。こんな素晴らしい作品が入手しがたい状態で、尚且つ1975年のこの翻訳以降新訳が出ていないのが残念だ。