読書メーター KADOKAWA Group

kero385
さんの感想・レビュー

kero385
新着
国立西洋美術館で今話題の「モネ 睡蓮のとき」に行った。実は、都合三回訪れたのだが。二度目のとき、キーヴィジュアルにもなっている絵を見ながら、とある小説を思い出した。それは、シュトルムの「みずうみ」で、物語の後半で語られるこの小説の核となるシーン。久々に郁文堂版の対訳本を引っ張り出して読んだ。そのシーンでは、睡蓮があるものの象徴として描かれるのだが、、、、勿論モネの描く睡蓮とシュトルムの語る睡蓮とはなんの関連もないのだけれど。モネの言葉フランス語で、睡蓮はnénupharと言うそうだが、
kero385

モネは睡蓮の一品種の名で睡蓮全般をnymphéas(水の精ニンフの意味を込めている)と呼んだそう。水の上に咲く姿を見て、その一瞬の印象を水の精が出現したように思ったのだそう。そんなエピソードとモネの絵から、シュトルムを思い出した次第。かつてはドイツ語の初級読本の教材になったくらい、簡潔で読みやすい原文ではあるけれど、それが狂おしいくらいの追憶、決してつかみ得ない憧れを静かな筆致で描くという効果を産んでいる。

01/02 19:09
  • だんぼ
  • そうだね
  • 風に吹かれて
  • おわか
  • Masako33
  • ケイトKATE
kero385

この「みずうみ」の睡蓮のエピソードは、追憶や憧れと言う美しい言葉の後ろにある人間の生の残酷さも同時に描いていて、初めて文学に心奪われた頃から常に私の心の中から離れない情景となっている。この対訳本は、「湖畔」と訳されているが、原題はImmenseeで、インメン湖と言う意味。立原道造の詩「はじめてのものに」で「エリーザベトの物語」として詩に織り込まれ、トーマス・マンの「トニオ・クレーゲル」では物語の中盤に故郷の図書館で手に取る本はこの小説。一流の文学者達にとっても感慨深い作品となっているよう。

01/02 19:09
  • だんぼ
  • そうだね
  • ヴェネツィア
  • 水蛇
  • まどの一哉
  • 風に吹かれて
  • おわか
  • Masako33
  • ケイトKATE
  • マー兄
kero385

なお、この郁文堂の対訳本は、Immensee の全文であり、訳文は極力直訳に近く、原文と参照しやすいように作られている。2025年最初の読書がモネによって思い出されたシュトルムのImmenseeになるとは、感慨深い。

01/02 19:15
  • だんぼ
  • ヴェネツィア
  • 風に吹かれて
  • おわか
  • Masako33
  • ケイトKATE
  • マー兄
0255文字
全3件中 1-3 件を表示

kero385
さんの最近の感想・レビュー

ボブ・ディラン全詩302篇―LYRICS 1962‐1985

ボブ・ディラン全詩302篇―LYRICS 1962‐1985

ボブ ディラン
今月2月28日から、ティモシー・シャラメ主演「名もなき者」が封切られる。ボブ・…続きを読む
フォークナー全集 25 短篇集 2

フォークナー全集 25 短篇集 2

フォークナー
フォークナー全集第25巻 短篇集(2)は、既刊の短篇集に収められなかった作品を…続きを読む
Die Sterntaler - Ein Märchen der Brüder Grimm

Die Sterntaler - Ein Märchen der Brüder Grimm

Jacob Grimm, Wilhelm Grimm
私のように定年退職後、再雇用で同じ会社で働いている方なら、誰もが感じることかと…続きを読む
寓話 下 (岩波文庫 赤 323-2)

寓話 下 (岩波文庫 赤 323-2)

ウィリアム フォークナー
「寓話」は、第二次世界大戦を契機に執筆されたが、フォークナーにとって今まで重要…続きを読む
寓話 上 (岩波文庫 赤 323-1)

寓話 上 (岩波文庫 赤 323-1)

ウィリアム フォークナー
「寓話」は難解と言われるフォークナーの中でも飛び切り難解なんじゃないかと思う。…続きを読む
フォークナー全集 24 短篇集 1

フォークナー全集 24 短篇集 1

フォークナー
「フォークナー全集第24巻 短篇集(1)」は、1950年に出版された「フォーク…続きを読む

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2024/10/21(127日経過)
記録初日
2023/02/04(752日経過)
読んだ本
105冊(1日平均0.14冊)
読んだページ
34690ページ(1日平均46ページ)
感想・レビュー
68件(投稿率64.8%)
本棚
0棚
自己紹介

2024年10月に参加したばかりですが、よろしくお願い申し上げます。

ここしばらくは、学生時代好きだったフォークナーを読み直しています。

読書メーターの
読書管理アプリ
日々の読書量を簡単に記録・管理できるアプリ版読書メーターです。
新たな本との出会いや読書仲間とのつながりが、読書をもっと楽しくします。
App StoreからダウンロードGogle Playで手に入れよう