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2024年10月の読書メーターまとめ

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2024年10月に読んだ本
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2024年10月のお気に入られ登録
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  • うたかた
  • 逆丸カツハ
  • Yo

2024年10月にナイスが最も多かった感想・レビュー

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ネタバレ2019年から2年近くかけて新聞連載したこの長編は、「宗教二世」の問題をあくまで子どもの視点からえぐりだす重厚な作品でした。モデルはヤマギシ会か、オウム真理教か、さまざまな新興宗教を合わせているんでしょう。当時は安倍晋三氏の射殺などで統一教会問題が再燃していた時期でもあり、まさに新聞小説にふさわしい内容だったんでしよう。子どもの視点でみれば、大人の世界は欺瞞だらけだし、子どもの世界も純真ではなく、平和でもない。そんな幼い頃の神経質的なアンビバレントな感情を辻村さんは本当に描くのが巧みです。一気読みでした。
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2024年10月にナイスが最も多かったつぶやき

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9月はそこそこ読めた方かなあ→2024年9月の読書メーター 読んだ本の数:20冊 読んだページ数:5914ページ ナイス数:824ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/242735/summary/monthly/2024/9

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2024年10月の感想・レビュー一覧
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ネタバレ今どきの啓蒙書ってここまで軽くなってるんだ。著者はロスジェネ世代の元出版社員。いまは独立してこの手の啓蒙本を多数出しているそうな(今回初めて知ったけど)。環境を変えれば、行動も人格も生きる姿勢も変わってくる、との主張はごもっとも。私の尊敬する出口治明さんも「本、人、旅が大事」と言ってます。とはいえ、すぐに会社を辞めろ、海外に出ろとの助言はちょっと無理かなあ(笑)。本を読む際に検索して大部分を掴んで上で読むべし(読みきれないのが1番無駄だから)、そしてメモで興味の幅を広げていくいう提案は実践してもよいかな。
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ネタバレ高田屋嘉兵衛の生涯を描いた、司馬遼太郎の名作を読み始める。淡路島の貧村から兵庫に出て、苦難を経て船乗りになるまでが1巻。「嘉兵衛さん、あんたのいいところは薄ぼんやりしていることだ。だから、皆の気が休まる」。こんな描写に司馬さんの主人公への共感を感じる。農村の閉鎖性や武家社会への反発は、徳川幕府の商業軽視や自己中心性に対する司馬さんの批判の映し絵。蘊蓄話が挿入されるので勘違いしがちだが、司馬小説は文学であり、決して歴史をそのままトレースするものではない。一種の娯楽小説くらいの気持ちで読んだ方が良いと思う。
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ネタバレ全国紙で紹介されていた、環境社会学者の新書。新幹線の騒音公害の研究で知られる長谷川氏は長らく東北大で教鞭をとり、3.11後は原発問題にも積極的に関わる。半生を振り返りつつ、日本社会における学問の潮流を紹介しており、素人にはとっつきやすい「入門書」。新幹線は今年で開業60年だが、メディアの記事は提灯記事ばかりで、かつてこうした公害問題があったこともよく知らなかったので勉強になった。いまはリニア新幹線の建設が賛否両論になっているが、受益と受苦という二極化と公共性をどう考えるか、は永遠の命題だなと感じた次第。
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ネタバレ新聞の書評欄で取り上げられていた1冊。潰瘍性大腸炎という難病を抱える「絶望名人」の頭木さんと、発達障害の当事者でカルト宗教2世の横道さんの往復インタビュー。横道さんはこの本で初めて知ったが、頭木さんに負けず劣らずねじれて、ゆがんでます(笑)。でも2人とも、それを客観視して言語化できるからこそ、多くの共感者がいるのだと思う。当事者同士の本音トークはこちらが怯むほどあけっぴろげな分、とても勉強になる。韓国ドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」は見事に再現しているが、当事者には案外不評というのも理解できました。
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ネタバレ「罪の声」で名を挙げた塩田さんによる「労働組合小説」。神戸新聞記者出身だから、もちろん舞台は地方新聞社。組合用語が頻出するので、知らない人には少しとっつきにくいかも。ただ、関西流の笑いたっぷりの会話で展開していくので、気軽に読めます。終盤で、ウルッとするエピソードを入れ込んでくるのも関西流ですな。「20年後、うちの会社残ってると思うか?」。労組の寺内委員長は何度も主人公にこう問いかける。この作品が書かれたのは2012年。さらに新聞社の経営は厳しくなっているが、なくなってはいない。その価値と未来を信じたい。
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ネタバレ来月は米大統領選。トランプか、ハリスか。どちらが勝つかは微妙だが、また一悶着あるだろう。本題にあるように、リベラリズムに対する不満が米社会に蔓延しているからだ。著者の結論は10章で述べられる。曰く、ネオリベを乗り越えて政府の必要性を認めよ。権力を連邦から最も低いレベルの統一機構へと委譲せよ。言論の限界を理解した上で自由を守れ。文化的集団の権利より個人の権利を優先せよ。そして、中庸を志向せよ。うーむ、その理想は良いけれど、これができないから混乱してるわけで、なかなか実現は難しい処方箋のように感じてしまう。
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ネタバレ韓国を代表する日本文学の翻訳家のエッセイ。シングルマザーながら持ち前のパイタリティーで30年間で300冊以上の作品を訳した猛者。エッセイからはそのあたたかく、謙虚な人柄が滲み出て、翻訳が大好きなんだなあと感じられる。タイトルの大変化や訳註のあり方、小川糸さんとの邂逅など興味深い。銭湯の娘だった自分とラブホテルの娘だった桜木紫乃とのシンクロ、「舟を編む」の馬締さんのモデルとなった岩波書店、広辞苑編集部の内幕話も面白く読んだ。海外での作品の甲乙は翻訳次第といわれる。日本文学のさらなる浸透の為頑張って欲しい。
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ネタバレあと4日で衆院選の投開票のタイミングでネット世論に関する新書を読了。慶應の山口真一さんのネット炎上研究で、ごく少数の極端な人達でネット世論が形成されていることは判明済み。選挙結果とネット世論はえてして、一致しない傾向にある。XをはじめSNSで、人々は怒りの感情をベースにつながりやすく、エコーチェンバー効果で孤立の恐怖を感じにくいため、容易に意見表明しがちとの分析には納得する。アテンションエコノミーがますます広がる中、細かい政策よりもイメージが大事という風潮が政治で強まっている。結果はどうなることやら‥‥。
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ネタバレ今年のノーベル経済学賞コンビの2023年の書。人々の繁栄をもたらした技術革新がデジタル化やAI化で格差拡大や雇用の崩壊を起こしている現実を示す良書。自動化が進んでも労働者に新たな仕事を創出していた頃と違い、今はバランスが悪くなった。1980年以降の経済学もフリードマンが唱える新自由主義・自由放任主義が主流になり、MBAでそうした経営学を学んだ経営者がもてはやされるようになった。著者は労働者組織や市民社会の再興、税制改革、政府のリーダーシップなどの処方箋を示し、かつての進歩主義のような方向転換を訴えている。
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ネタバレ2016年の放送ですが、やはり構造主義は難しい。中沢新一の説明も難解で解説になってない笑。最近の100分de名著の放送は、よりわかりやすくなっていることがわかりました。さて、本題。「未開社会」の呪術的思考と科学的思考は思われているほど違わない、との考え方には至極共感する。ただ、自分の先祖が自然界の存在(トーテム)とつながりを持つという考え方の「トーテミズム」まで解体してしまうのはいかがなものかと。
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ネタバレ今年のノーベル平和賞を受賞した「被団協」の1965年の成り立ちや活動を紹介するブックレット。改めてこの団体が地道に核兵器の廃絶を国内外に訴えてきたことの偉大さを、思い知った。日本政府がそっぽを向くなか、国家補償を求め続けてきた。「原爆被害を受忍せよ」との立場の日本政府との間でいまなお交渉は平行線だ。(1994年の自社さ政権の援護法は、核兵器廃絶も被害者への国家補償も認めていない)。加害性に目をつむり、被害ばかりを強調することへの批判はあるが、「核兵器と人間は共存できない」という叫びを否定できる者はいまい。
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ネタバレドキュメンタリー映画やドラマは好きでよく観る。題名の指摘はうっすらとは感じていたが、改めてこういった形で実例や証言を交えて分析・説明されると、腑に落ちた。ドキュメンタリーとは、作り手の意図や主観にまみれており、正義や結論を示すものではない。「視点」を提示するもの、との定義が本質をついている。NHKの「映像の世紀」もよく観るが、あれも「ストーリー優先で枝葉を取り払っている」だなあ。フィクションであるという自覚がないと「ポスト・トゥルース」になる危険性を帯びる。これからは心して観なければいけませんね(笑)。
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ネタバレ叱る行為は権力の非対称性という前提条件がある。言葉でネガティブな感情体験を与えることで相手を思うようにコントロールしようとする。なぜ人は叱るのか?自己効力感を得るとともに、処罰感情を充足させるためだ。充足感は長続きしないのにさらに叱る、悪循環との分析には同感。虐待やDV、ハラスメント、ネット上の炎上などの背景にもこの叱る依存が存在するようだ。被支配者側も加害者に依存してしまう「トラウマティックボンディング」なる現象もあり厄介だが、こうした脳内の構造を知るだけでも「叱る」の抑制効果はありそう。良書です。
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ネタバレノーベル文学賞を受賞したハン・ガン氏の翻訳作品で唯一、文庫化されている本著をさっそく購入、読了。詩的な文体と評されているが、なるほどまるで短編の詩集のような構成。途中に写真も挿入されて写真集のような趣もあり。生まれて2時間しか生きられなかった姉という存在(不存在)が重く心にのしかかる。そして著者は、ヒトラーによって壊滅的に破壊されて(真っ白になり)再び復活したワルシャワという都市でそのことを回想する。白という色は韓国人にとってはどんな意味合いを持つ色なのだろうか‥‥、なんて考えさせられました。
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ネタバレ民主主義的な制度が経済成長にいい影響を与えたとする研究でアセモグルMIT教授らがノーベル経済学賞をとった日に読了。著者はこの傾向が21世紀からは変化したと主張する。ネットの浸透で民主主義が「劣化」したからだ。認めたくないが、いまの政治家をみていると頷いてしまう。ただ、より民意の解像度を上げていくためのアルゴリズムの活用という案には同意できない。そこまで科学技術を盲信してしまうのも危険だと思うので。劣化を乗り越えて、少数者の意見をいかに政治に反映させるか民主主義の改良努力を続けていくことは必要だと思う。
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ネタバレTV番組で中学受験の国語の問題で最も取り上げられている作家さんと紹介されていた本。他愛もない学校生活だが、ひとつひとつの言葉や振る舞い、諍い、喧騒が子供には大きな意味を持つ。ときに傷つき、笑い、怒っていた日々を思い出します。繊細で傷つきやすかった感情は成長するにつれて、ふてぶてしく、逞しくなるのですが、心のどこかにかつての片鱗は残っているもの。「どうしたらいいかなんて答えはないよ。そんなのはおまえの自由で勝手だよ。ほら、好きに生きろよ」こんな軽やかな言葉に、もっと若いときに出会っておきたかったなあ‥‥
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ネタバレ治安維持法が戦後、悪法とされたのはインテリの憤りや恨みから。社会主義側から見れば天皇制と資本主義を守った元凶だった。共産主義と資本主義の対立が激しかった時は多くの国に同種の法律は存在した。「日本が自衛のためにとった手段の一つ」だったとの指摘は一理ある。世界恐慌前後は世界をマルクス主義が席巻、学説と現実が一つのように見えたそうだ。明治天皇が即位時14歳だったことは薩長に好都合で、実質的に支配が可能だった。つまり「最高の権力と権威を備えた天皇」像は彼らが作りだしたフィクションだったとする説は至極納得する。
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ネタバレ米系企業に在籍して物流を担当していた著者の経験が生かされている小説。Amazonと思しき巨大ネット通販会社がターゲットのテロ事件(こんな映画最近あったな)。犯人は搾取されていた非正規労働者。捜査の過程で日本社会の格差やピラミッド型分業の歪さが浮き彫りに。ブラック企業の実態を告発したバルス(ラピュタの最後の決め台詞)は最後は逮捕されるが、世論が政治を動かして労働法は改正へと向かう。これから衆院選が始まることもあり、臨場感を持って読了。早大の入山ゼミでこの本が学生に1番人気だったという話を聞いたが納得した。
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ネタバレ思春期のときは学校のクラスの人間関係がすべてだった。大人になるにつれて、故郷を離れて、そんな閉鎖的な関係から脱することができるものだけれど、地元に残る者もいる。この作品の登場人物はどこにいても、みな卒業から10年経ってもなお若き日の古傷に囚われている。かさぶたを剥がす役割がクラス会や同窓会だ。多くの読者にとって「あるある」な設定を見事に心理小説に仕立てあげる著者の骨太な筆力。ねじれにねじれる若き感情をうまく表現するのはさすがです。同じ読みの名前の人が多くて少し混乱するのが唯一の難点です。2008年の作品。
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ネタバレ2011年の山田風太郎賞候補作品。閉鎖的な山村のムラ社会で起きる怨念まみれの出来事は、まさに横溝正史が得意とする世界観。普段の辻村深月さんの作風とは些か異なるが、彼女は山梨出身だからか、日本の閉鎖性をうまく描いていると思う。無投票当選が繰り返される村長選の買収、男女間の恋愛のこじれ、噂話やスキャンダルなど、まぁネガティブな環境のオンパレード(笑)で救いがない。物語自体よりも、行間から滲むドロドロ感を楽しむ作品ですね。個人的にちょっと苦手でした。
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ネタバレNetflixのドラマ「地面師たち」の原作の第二弾。北海道の釧路を舞台に繰り広げられるコンゲームですが、残念ながら「二番煎じ」の域を脱していません。OSO18を彷彿させるヒグマや北極海航路構想など、現実にあった出来事や経済構想などを盛り込んではいるのですが‥‥。やはり第一弾は、大企業の積水ハウスが騙されたという「事実は小説よりも奇なり」を地でいく詐欺事件がベースにあったから、読み手はリアリティーを感じられたのだ、とわかりました。
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ネタバレ今年読んだ本のベスト3に入る良書。ネット、SNS中心になったいまの世界は関心と時間を奪い合う「アテンション・エコノミー」。常に救急車のサイレンを浴びせられているとの比喩には同意する。英国の「プロミネンス政策」や欧州の情報空間に対する適切関与モデルなど、日本への示唆も多数。経産省が「アジャイルガバナンス」なる統治モデルの移行を推進しているとは目から鱗だった。同意はできないものの、神中心から人間中心となった世界はいまアルゴリズム・AI中心に移りつつあるとの指摘を聞くと、荒唐無稽とは言えないのかもしれない。
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ネタバレ辻村深月さんのエッセイ集。生真面目な人柄と、ドラえもん(藤子・F・不二雄先生)愛が行間から滲み出てます。本好きは知ってましたが、映画もお好きなんですね。1日3本ハシゴというのはなかなかの猛者。そして、本好きも映画好きもお父さんの影響だったとか。やっぱり親の子にもたらす影響というのは計り知れないなあ‥‥。ただ、2010年の本なので、出てくる「ネオカル」がすでにネオではなかったりして、時代の流れが年々早まっているのも実感します。
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ネタバレ阪神大震災があった1995年はボランティア元年であるとともに、NPO元年でもあった。1998年にNPO法ができる原動力になったからだ。本著は日本のNPOの歴史やその実態、法整備など広範囲に関連事項をまとめている。知っているようで意外と知らないものだなと実感。漠然と官と民の中間とイメージしてきたが、そうではなく社会と人を結びつける中間集団という位置付けの方が正しいようだ。事業か?活動か?という命題の正解はないが、諸外国に比べて社会に対する信頼が高くない日本人の意識を変えるためにも重要性は増していると思う。
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ネタバレ女性同志の複雑な友情を描くことの多い、辻村さんの「黒深月」全開の長編。解説で山本文緒さんが「普段とは違う」と指摘してますが、同感。やや昼のメロドラマ的な要素も感じます。恋愛と友情のねじれと絡み。よく考えると、こうした三角関係は夏目漱石の時代から男性作家が得意としてきたパターン。それを女性の視点から描いているんだなあ‥‥。
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ネタバレ辻村さんのエッセイ本は初めて。日経新聞連載の週刊エッセイが1番良いですね。地元の山梨県笛吹市の話や、お祖父さんの果樹園の話、お子さんの保育園の話など、辻村さんの人となりが感じられます。
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ネタバレ13の怪奇短編集。辻村さんにしては異色ですね。各編も分量もバラバラで、トーンとしてはタモリの「世にも奇妙な物語」。終わってもなんだかよくわからないという余韻が残る。あまり怪談話は好きではないので、斜め読みです。
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ネタバレここまで「真っ黒」な辻村深月作品は初めて。大学時代の万年恋人未満の男友達、小学校教師とアイドルになった教え子、毒母と娘、小学校時代のいじめっ子といじめられっ子。みなそれぞれ過去を抱えるが、時を経るにつれて改竄、捏造されていく。いや、事実は同じであってもそれをどう捉えるかは人それぞれということ。その記憶や思い出を後から両者で擦り合わせようとすると、とんでもなく「噛み合わない」。誰しもいえない過去はあるが、その苦さはあくまで主観的なもの。うーん、こんな作品を描ける辻村さんに改めて脱帽です。
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ネタバレ2018年の作品。母と息子の逃避行。高知、兵庫、大分、そして仙台。ストーリーは驚きはなく、辻村さんにしてはありきたりかな。少し残念。母と子の関係性では「八日目の蝉」や「坂の途中の家」で強烈な母性を描いた角田光代さんに軍配があがる。ただ、この作品の後で、辻村さんも「朝が来る」では特別養子縁組を通して、母性をしっかり描いていたことは評価してます。
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ネタバレ前作、「ハケンアニメ」を読んだのは9年も前。すっかり内容忘れてたので、Netflixの映画(吉岡里帆と中村倫也主演)を観ておさらいした。 そうそう、熱血お仕事小説だったなぁ。アニメ制作の世界の裏事情がよく描かれていたっけ。 本作品はそのスピンアウトの短編集。それぞれの脇役達のアナザーストーリー。読むと、映画に出てきたエピソードの一部は、この短編集のものを応用していることを発見。 千代田公輝と赤羽環のコンビとV.T.R.がさりげなく出ている回もあり、辻村さんお得意の他作品とつながる世界観を楽しめます。
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ネタバレ「永遠の中二病」。揶揄でよく使われる言葉だが、その「病気」を真正面から描く力作。14歳という思春期ど真ん中の頃は、過剰な自意識だけでなく、殺人や自殺を含む森羅万象に対する偏執的な関心、猫の目の様な感情の起伏、心とは何の関係もなく日々成長していく身体‥‥。常に不安定だけど、心身の表面張力がぱんぱんになっていたことをうまいこと描いています。思春期に読めば、「あるある」だけど、大人になって読むと、どこか気恥ずかしい。つい笑ってしまう場面もあり、ある意味、太宰治の「人間失格」のノリに近いような気もします。
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ネタバレ2019年から2年近くかけて新聞連載したこの長編は、「宗教二世」の問題をあくまで子どもの視点からえぐりだす重厚な作品でした。モデルはヤマギシ会か、オウム真理教か、さまざまな新興宗教を合わせているんでしょう。当時は安倍晋三氏の射殺などで統一教会問題が再燃していた時期でもあり、まさに新聞小説にふさわしい内容だったんでしよう。子どもの視点でみれば、大人の世界は欺瞞だらけだし、子どもの世界も純真ではなく、平和でもない。そんな幼い頃の神経質的なアンビバレントな感情を辻村さんは本当に描くのが巧みです。一気読みでした。
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ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2012/07/16(4513日経過)
記録初日
2012/07/06(4523日経過)
読んだ本
4011冊(1日平均0.89冊)
読んだページ
1202330ページ(1日平均265ページ)
感想・レビュー
3802件(投稿率94.8%)
本棚
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自己紹介

読書のジャンルは純文学からミステリー、社会科学や近現代史、ノンフィクションまで「何でもOK!」。心の赴くままに読んでいます。
参考にするのは、毎週週末に新聞各紙に出る書評欄。複数の新聞で採り上げられている本については目を通すようにしています。出版各社の毎月のPR本(波や1冊の本とか)も参考になります。
芥川賞と直木賞については「時の日本社会を映し出す鏡」だと思っており、歴代受賞作はなるべく読むようにしています。あとチェックしているのは本屋大賞、大宅壮一賞、山本周五郎賞、小林秀雄賞など。
最近は視力が落ち、寝床で読むのが難儀ですが、1日1冊が目標です。

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