老化やガンに関わる話、ヒトの出現に至る歴史など、興味深く大きな話もあるのですが、何よりもゲノムや古代(原初の)生命が生物になっていく過程についての話が強く印象に残ります。そのような化石に残っていない過程が、現在の生物を研究して得られるというのは、まさに私たちも含めて生物が40億年の歴史を経てきたからこそ。
時間SFの傑作として名高い『マイナス・ゼロ』にも戦争が描かれるが、本作のように銃後や戦場が描かれるわけではない。本当に戦争の時代に、本作の彰とほぼ同世代だった広瀬正には、時代を知り過ぎていたために、こういう作品はかえって書けなかったのではと思われる。このような作品を読むと、たとえ時代が変わっても、二度と戦争が起こらないことを訴えかける方法は、つねにあるのだと思う。泣ける作品だがよく考えられていると感じる。
1936年に24歳で亡くなった女性詩人。知らなかったことが恥ずかしいと書いたが、かつて読んだ「名詩集」の類には、名前すら出てこなかった。当時の詩人たちも、彼女の作品をよく知っていたらしいのに。機会があればぜひ全集を読んでみたい。
ちなみにパパの社長は、「おた助くん」の社長(無名)と同じキャラデザ。同時期に2作品に登場させたわけだ。本作では名前のある人物に描かれているが、子どもに甘いのは同じで、社長らしくない子どもっぽい面も描かれている。しかし別人とみるしかない。ここでは一郎ちゃんのパパではないのだし、お助けくん一家もいないのだから。
下の子2人は学校に上がる前なので、言動から5歳と4歳と考えられる。4歳のトコがままごとでママを思い出して涙ぐむシーンがあるので、ママが亡くなったのは、トコに物心がついてからの、つい最近のことなのだろう。家庭内が荒れてきたので、見るに見かねてキビママに来てもらったというのが、物語の始まる前の流れだろう。パパの社長はこの作品でも、妻に先立たれた男の役割をしていることになる。
基本的に全方位読書なので、いろんな分野を読みます。とくにミステリや時間SFが好きです。速読ができたらいいだろうな、と思いながら、黙々と活字を追っています。そのうち速くなるかも(笑)。主に電車やバスの中で読む日々です。どうぞよろしく。
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