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2025年1月の読書メーターまとめ

てれまこし
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2025年1月に読んだ本
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2025年1月のお気に入られ登録
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  • 火野佑介の文化人チャンネル
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  • かわうそ

2025年1月にナイスが最も多かった感想・レビュー

てれまこし
ポピュリズムとは汚れなき人民と腐敗したエリートが対立する政治において人民の一般意志が実現すべきだとする考え。ミュラーやラクラウ同様、ある種の理念(アイデアだ)と定義してる。違うのは「中心が薄弱なイデオロギー」と解するところで、他のイデオロギーとくっつかないとイデオロギーとして機能しない。加えて、ミュラーやラクラウのような実践的帰結への切迫性がない、良くも悪くも実証科学研究の発見的道具としての理論。ポピュリズムは民主主義への脅威(ミュラー)か民主主義そのものか(ラクラウ)という問いで理論に負荷をかけない。
てれまこし
2025/01/19 19:01

常識的でわかりやすいんだけど、研究者や学生でないかぎりは、これを読んでもすぐ忘れてしまいそうな理論。実践的関心が稀薄だから、政治に関する理論だけど、政治的な理論じゃない。より正確には、ポピュリズムを支持するか否かという問いを回避して研究を進めたい学者の実践的関心が反映してる理論。ポピュリズムは本質的に民主的だけど、リベラル・デモクラシーとは相性が悪いというのは、自分の理解に近いんだけど、あんまり深掘りされてない。

が「ナイス!」と言っています。

2025年1月にナイスが最も多かったつぶやき

てれまこし

ぼくらの頭のなかには「知ってるけどわからない」みたいな領域がある。下手すると「わかってる」よりぜんぜんでかい。だが「知る」から「わかる」に移行するにはいったい何が起こらなければならないのか。自分の体験を反省してみた。 知ったかぶりぼくら/てれまこし https://note.com/telemachus/n/n9af52a808e8e

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2025年1月の感想・レビュー一覧
8

てれまこし
大患後の漱石は毎年のように胃病で寝込むようになる。朝日に年頭のために何か書けと言われて、『硝子戸』は大正四に連載された。『こゝろ』から『道草』の間にあたる。家で寝てるだけだから自然に心が自分に内に向かっていく。最終回に、今までもも自分のことを書いてはきたが、もっとも悪いところまでは書かなかったとの反省が見られる(三十九)。ここから自伝的な『道草』が生まれてきたらしい。漱石の不安は、他人を信用しすぎて欺かれ、蔭で馬鹿にされているんじゃないかということらしい(三十三)。これが自分を正直に見せることを妨げてる。
てれまこし
2025/01/31 11:43

誰でもやることだから大した罪に思えないんだが、真面目な漱石はそういう自分が赦せなかったらしい。なんとなれば、自分は他人のそういう不誠実さを赦さない。漱石は、他人の事を書くときは気を遣う、だから自分の事を書く方が楽だと書いてる(三十九)。だが、他人に気を遣うことがことが、自分に対しても気を遣うことを赦すことにつながる。他人の事をとやかく言うには(そして、たぶん漱石はこれをやりたい)、まず自分への遠慮を取っ払わないとならない。

てれまこし
2025/01/31 11:43

そして、死を意識した漱石は、自分の愚かさをまるで他人のように笑いながら見られるような境地に達したらしい。これがたぶん「則天去私」だ。

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てれまこし
「メキシコの政治はピストルの政治、先んずること、それがすべてです。」かつては革命をともに戦った盟友たちが、大統領選をめぐって血で血を洗う抗争を繰り広げる。民主主義のファサードの裏にあるマキァヴェリアンな仁義なき政治が頭をもたげる。義を重んじボスに忠誠を誓うアギーレ将軍もこれを避けえない。自分にその気がなくても周囲が許さない。何もしなくてもライバルが放っておかない。友情や忠誠心は犠牲にし、与えられた役割を演じるしかない。「台詞を覚えよ、稽古せよ、演じよと闇から迫ってくるその力に、逆らうすべなどなかったのだ」
てれまこし
2025/01/31 10:49

著者はディアス体制を守るために殉職した職業軍人の子だが、革命軍側に身を投じてサパタやビジャの片腕になってるから、理想主義的な若者であったらしい。革命後に自ら政治家になって、二度の亡命を余儀なくされてる。農民や労働者のために闘った闘士たちが、権力の座について私財を蓄え、野心のために互いに争う。そうした現実に革命の理想が裏切られるのを目の当たりにしながら、なんとか理想を維持しようという文人政治家アスカナーに、おそらく著者の姿が投影されてる。

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てれまこし
早い時代に大司祭であり世襲カリスマである皇帝を頂く統一帝国を打ち建て封建制を脱した中国では、読書人である文人官吏が文化エリートとなった。儒教はこの読書人の宗教。だがそのために既存の政治秩序の外側にカリスマの存在を許さず、個人の救済という庶民の願望は呪術的信仰によって満たされた。儒教には救済のために生活を徹底して合理化するという発想がなかった。これが中国における合理化(資本主義経済の発展)を阻む一因となった。中国の話だから日本には当てはまらないんだが、なぜか読んでいると自分たちが批判されてるような気になる。
てれまこし
2025/01/21 10:51

日本も平安期に中国型国家を建設しようとしたが失敗した。で、鎌倉以降の封建制になって、武士階級が文化エリートになった。日本の近代化が成功したのも、この武士的合理主義があったがため。そこが中国とちがう。日本は西洋により近い。そう考えられてきたんだけど、話はそう単純じゃなさそうだ。ウェーバーにとっての「中国」とは、罪の意識に苛まれなくなった知識人と彼らに支配される社会がどうなってしまうかという範例でもある。自分を苦しめ苛んできたプロテスタント的デーモンの他者。

てれまこし
2025/01/21 10:55

西洋の合理的社会は彼のようなデーモンに憑かれた人間によって作られた。そういう人間がいなければ、中国みたいになった。そう言い聞かせることで、自分の苦しみを正当化してる。近代学問もまた合理化の一種であるし、自分たちが罪深い生き物であることを説く説教師の末裔でもあるから、ぼくらにとっての「中国」もまた、ぼくらみたいな人間がいないとこうなりかねないという警告でもある。

が「ナイス!」と言っています。
てれまこし
ポピュリズムとは汚れなき人民と腐敗したエリートが対立する政治において人民の一般意志が実現すべきだとする考え。ミュラーやラクラウ同様、ある種の理念(アイデアだ)と定義してる。違うのは「中心が薄弱なイデオロギー」と解するところで、他のイデオロギーとくっつかないとイデオロギーとして機能しない。加えて、ミュラーやラクラウのような実践的帰結への切迫性がない、良くも悪くも実証科学研究の発見的道具としての理論。ポピュリズムは民主主義への脅威(ミュラー)か民主主義そのものか(ラクラウ)という問いで理論に負荷をかけない。
てれまこし
2025/01/19 19:01

常識的でわかりやすいんだけど、研究者や学生でないかぎりは、これを読んでもすぐ忘れてしまいそうな理論。実践的関心が稀薄だから、政治に関する理論だけど、政治的な理論じゃない。より正確には、ポピュリズムを支持するか否かという問いを回避して研究を進めたい学者の実践的関心が反映してる理論。ポピュリズムは本質的に民主的だけど、リベラル・デモクラシーとは相性が悪いというのは、自分の理解に近いんだけど、あんまり深掘りされてない。

が「ナイス!」と言っています。
てれまこし
いろいろな雑誌に掲載された主要な漱石批評を集めたもの。自分の漱石像の輪郭が定まってきたので、答え合わせのつもりで読んだ。芥川のものとちがって同時代の批評は含まれてないが、自然主義者からの批判と直弟子たちによる先生称揚を乗り越えた漱石像をという編集方針らしい。とくに人格者ではない漱石の暗い側面。自分といちばん重なるのは『行人』と『道草』の評論あたり。自分が漱石における夫婦関係の重大さに気づいたのがこの二つだからだ。あと『それから』が一つの転機。恋愛や女性観を重視する点に関してはやはり女性の評者と視点が近い。
てれまこし
2025/01/17 11:49

漱石にとって恋愛が重要であることは直弟子の小宮豊隆なんかも指摘しているみたいだけど、恋愛自体はむしろ我執の表れとして最終的には乗り越えられる対象とされてる。漱石作品の両性のあいだにおける確執は、現実の夫婦関係が反映されてるということは広く認められてるみたいだけど、その意義についてはあまり突っ込まれてない。プライバシーの問題というのもあるだろうが、基本的には女は厄介なもので適当に「梶をさす」べきものという鷗外的な態度を男性評者たちも共有してるからとも見える。漱石はまさにそういう態度を問題化した。

てれまこし
2025/01/17 11:56

宮本百合子はそれに近いところまで行ってるんだけど、女を邪にするのは男じゃなくて反封建的な社会のあり方であるという講座派的近代論に寄りかかってしまったがために、漱石が『行人』のあとの作品でなした努力を見れなかった。妻を邪にする夫という自分を自覚した漱石にとって、悪は「社会」とか「文明」のように外から個人を制約するものから、自らの内から他人を制約するものになった。「我執」は社会的なものになった。漱石にとって夫婦関係の緊張こそが、この社会的なものの一次資料となる切実な体験だったと思う。

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てれまこし
ミュラー『ポピュリズムとは何か』に言及されてた。理想主義者には二種類あって、理想とは醜い現実から目を背けることだと思ってる人と、理想を実現するために醜い現実を受け容れる人。ウィリー・スタークは後者で、人民のために「正しい」ことをするため政治権力を求めるが、その権力によって堕落し、人民のために自らを傷つける。不完全な世界では、醜く見える現実はそういう美しい理想から生まれてくる。だがその理想を信じることによってしか、ひとは醜い現実を耐えることができない。もう一人の主人公ジャックはそう悟ることで過去と和解した。
てれまこし
2025/01/09 09:41

事実とは過去に起きたこと。だから乗り越えることができないこと。どんな理想も何の力も及ぼせないこと。ジャックの理想主義はこの「事実」にぶつかった。それで、彼は歴史学者になる。そうやって過去の事実だけを掘り起こす。事実は事実で、そしてたいがい事実は醜い。だが、自分の愛する人たちに関する事実もまた掘り起こすべきなのか? それが自分の心の奥底に秘められた理想を打ち砕くとしてもか? ジャックは、過去の歴史を介して、醜い現実とは人間の理想がその弱さによって挫かれたものであることを知る。

が「ナイス!」と言っています。
てれまこし
自由放任の自由主義から福祉国家の自由主義への転換の思想家はグリーン。自分はそう習って、大学院の必読文献リストにも名が挙がってる。だが、どういうわけか先生方も含めて誰もこれを読んでる様子がない。不思議だったんだが、自分も読まずに済ましてなんの支障もなかった。本書などを読むと、どうやら六十年代に見直しが進んで、ヘーゲル的集団主義よりはブライト的急進自由主義者という側面が評価されるようになったが、それゆえに理論的には過渡的、中途半端なものとされたらしい。日本では邦訳もほとんどなくて、河合栄治郎説が支配的らしい。
てれまこし
2025/01/08 10:32

ヘーゲル哲学に影響を受けたオックスフォードのベリオール・カレッジに拠ったグリーンは、多くの人に感化を与えて弟子たちの中からのちの社会政策の立役者たちを輩出した。それでグリーンが新リベラリズムの思想的源泉と解された。だが、実際は少数の知識人サークルの中心で、オックスフォードでさえ少数派だったらしい。自分も知らなかったけど、むしろJ・S・ミルと同時代人で、だけど彼ほどの影響力は有さなかった。興味深く思ったのは彼は国教徒広教会派で福音主義が彼の思想の一源泉。ヘーゲル哲学は神学に代わるものとして受容されたらしい。

が「ナイス!」と言っています。
てれまこし
ミュラーの本で批判されていたラディカル・デモクラシー論の理論家。ポピュリズムとは社会に認められない諸要求を束ねる空虚なシニフィアンである「人民」を用いて政治的主体が構築される政治的論理であり、民主主義はポピュリズムなしでは存在しえない。いな、ポピュリズムこそが政治の論理。冷戦後の(新)自由主義一強に抵抗するための政治理論だが、そのために「労働者階級」を特権化したマルクス主義もまた乗り越えれないとならない。多様な声なき弱者たちを「人民」の名の下に糾合して「人民の敵」を叩く政治、行政とは区別される根源的政治。
てれまこし
2025/01/06 12:13

「人民」は政治に先行しない。政治によって作られる。「ない」ことにされてるのに「ある」もの、ゆえに言い表せないものを指し示す名が空虚なシニフィアン。だが、そうやって閉じられていた社会の門戸が満たされない諸要求に門戸を開かされる。いかなる閉じられた体系も要求をすべて充足しえない。だから政治は「閉じる」ことと「こじ開ける」ことの繰り返し。その力を得るためには個別的な諸要求を束ねるものが必要で、その代理となるものに人々は感情投資を行う。だから概念や論理ではなくて、情念とかレトリックがないと民主的主体が構成されない

てれまこし
2025/01/06 12:20

マルクス主義の限界を突破するために、ラクラウは言語論、精神分析、グラムシなんかを節合して、見事な理論を構築してる。「行政とは異なる」政治とは何かとか、政治における情念とレトリックの役割とか、秩序と変化の関係など、政治における知識人の役割など、自分が関心を抱いていたようなものが、一つの理論に収まっててびっくりした。しかし、理論は理論。これを現実に適用するとどうなるかちょっと不安。ラクラウの場合はアルゼンチンのキルチネル政権への協力という形をとったけど、どんなポピュリズムだったら支持する価値があるのか。

が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2017/09/03(2710日経過)
記録初日
2015/10/02(3412日経過)
読んだ本
1207冊(1日平均0.35冊)
読んだページ
439169ページ(1日平均128ページ)
感想・レビュー
963件(投稿率79.8%)
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自己紹介

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