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アウステルリッツ(新装版)

感想・レビュー
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Washu Takumi
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〝過去が戻り来るときの法則が私たちにわかっているとは思いません、とアウステルリッツは続けた。けれども、私は、だんだんこう思うようになったのです、時間などというものはない、あるのはたださまざまなより高い立体幾何学にもとづいてたがいに入れ子になった空間だけだ、そして生者と死者とは、そのときどきの思いのありようにしたがって、そこを出たり入ったりできるのだ、と〟
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のこのこ a.k.a. TOKKY
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アントワープ駅で始まって、アウステルリッツを通しナチスを知り、その瞳にウィトゲンシュタインを見出し、ドイツの目を背けたくなる歴史や国そのものに足を踏み入れるこの物語は自分がこれまで学んできたものや旅行の足跡を辿るような読書体験でもあった。なぜこれまでこの作家に触れてこなかったのか不思議なほど。 挿入される写真も相まって、フィクション特有の読み心地なのに、細部は全て現実に裏付けされている。不思議な作品だし、忘れられない作品になると思う。
0255文字
●●
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ネタバレ2020年の本。結構写真がある。アントワープ、ロンドン、プラハ、テレージエンシュタット、マリエンバート、ニュルンベルク、パリ。カフカ、スタンダール、ナボコフ。
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choku70
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ネタバレ旅先で会ったウェールズの建築家アウステルリッツから聞くヨーロッパの記憶。建築物談義に終始すると思いきや、話は段々と彼の出生、来歴に及び。長いこと避けていた父母がどんな人かを巡る旅で、二人ともナチスのホロコーストの犠牲となったことが暗示され。母の親友と会った際、記憶にさえなかったはずのチェコ語を十全に理解してしまうシーンに胸が痛くなる。知らぬ間に出自を奪われ、母語を奪われ、それを知らずに生きてきたのに、ある時裂け目から顔を出すように、それがあらわになるというのは、人生においてどれだけの衝撃だったか。
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辻井凌|つじー
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語り手とアウステルリッツ、2人の一人称「私」を登場させ入れ子の構成にすることで、あえて読むスピードを落とそうとしている。スピードが遅くなることで、情景や語られる歴史の断片に引っかかりが生まれる。チェコというドイツではない国からナチスを見ることで残酷さが余計に際立つ。 https://note.com/nega9clecle/n/nfe566283016d
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sataka
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亡霊のことを土地や物に宿っている記憶と解釈する論があるが、正にそんな物語だった。幼年期を喪失した男、アウステルリッツが多くの旅を経て、過去を呼び覚ましていく。写真と、おそらく作者自身の旅行記が組み合わされた文章は、リアリティを持ちながら文学的でもあり、印象に残る。頻出する「とアウステルリッツは語った」という文言は、物語への没入をあえて妨げる効果を持つとともに、ホロコースト犠牲者であるアウステルリッツと、ドイツ人の作者との断絶を巧みに描き出しているように感じた。
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みおりえんぬ
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時々はっとするほど端正な文章 場所と時間とそれらの亡霊に留意しながら2周目へ 語り手とこの語りの意図も気になる
0255文字
いなろ
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『土星の環』の方が好きだった。
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まふ
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旅行中に「私」が知り合ったアウステルリッツは幼い頃プラハから亡命させられ、身分を隠したまま少年時代をウェールズで過ごす。彼は両親がナチスによって選別・虐殺されたことを知り自らのアイデンティティを求めて故郷を訪ね歩く。「私」はひたすら聞き役にまわり、彼の深い心の静かな叫びを聞く…。伝聞記であるためリアルな空気感は味わえないが、代わりに彼の写した写真がその想像力を埋め合わせてくれる。何とも不思議な読み心地である。このような「つくり」も小説には許される。是非は別として小説の可能性を認識した。G1000。
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あい
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時折挟まれる写真が何とも生々しく、フィクションである事を何度も忘れ、本当にアウステルリッツという人物が生きている(た)のだと錯覚しました。 建築史自体も興味深いですが、アウステルリッツが徐々に閉ざしていた自身のルーツを追い求めていく過程は、喜びもありつつ、その間にそこはかとない孤独と寄る辺なさが感じられ、残されたものとしてのアウステルリッツの立場がより強調されているように感じました。
0255文字
wagatsuma_songs
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ユダヤ人迫害の物語を描くとき、憎悪や怒り、悲しみを抜きにして書くことは可能なのか? 俺は絶対に無理だと思っていた。圧倒的な出来事には、圧倒的な熱量、感情が必要だと思うから。この小説の凄いところは、徹底的な客観性があるところだ。   『流刑地にて』を書いたフランツ・カフカは拷問器具を執拗に描写することで暴力以上の恐怖を描いた。『アウステルリッツ』も同様、失われたものを執拗に描くことで、極上の哀しみ、虚しさ、喪失感を描いた。 『アウステルリッツ』は、世界で最も透明な戦争文学だと思うんだ。と我妻は語った。
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Rieko Ito
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一方にはウェールズの友人宅で過ごした日々のような極めて個人的な記憶があり、一方には20世紀ヨーロッパの歴史的な悲劇があり、両者が同じ重みで過去のなかで溶けあい、深い哀しみを醸し出しているところに、この作品の独特の味わいがある。物語に浸り込みかけると、「~アウステルリッツは語った」という言葉で客観的なフィクションへと戻され、と思うと写真で現実世界との境界が取り払われる。文体はひたすら詩的に美しく、哀しい物語だが小説を読む喜びを堪能させてくれた。
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Э0!P!
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偶然旅行中に出くわした、やたらと写真を撮る姿が印象的な陰気な青年アウステルリッツ。彼は幼い時分、ナチスの迫害が迫るプラハから亡命させられ、身分が隠された少年時代をウェールズで過ごした。自身のアイデンティティを明らかにする旅の中で、両親がナチスによって選別・虐殺されたことを知る。その旅の準終着点は奇しくも自身の名前と同じオーステルリッツ駅に新築された図書館であった。父に関する情報を元にまだ旅を続けるという。私は、アウステルリッツとの思い出の地であるブレーンドンクで、収容所と化したカウナスの要塞に思いを馳せる
Э0!P!

亡者みるイヴァン、小さくなる、グェンドリンの死に際とエクトプラズム、真の名前、椎間板ヘルニアのナポレオンマニア、舎弟ジェラルドと三羽の伝書鳩、アンドロメダ荘の鸚鵡と標本、腰折れイヴリン、アルフォンソと蛾の夢、ハリファックスのギロチン、時間の外、アイヴァー・グローヴ邸、月面図とビリヤード、ローザンヌの葬列、アデラ、飛行、言葉、孤独、死者、婦人待合室とかつての自分、プラハへ、叔母の手袋、エステート劇場、車線、二枚の写真、テレジン、古道具屋、栗鼠、マリー・ド・ヴィルヌイユ、湯治、シューマン、鳩舎、ビンゲンの穴

09/11 21:32
Э0!P!

タワー・ハムレッツ墓地、転倒気絶、偽りの楽園、スローのビデオ、過去の場所、紙漉き、獣医学博物館、サーカスと鵞鳥と音楽、図書館移転、構造的不安定、シャベール大佐の死の穴、オーステルリッツ・ギャラリー、駅舎、墓と御伽噺、ブレーンドンクとキンバリー鉱

09/12 02:13
3件のコメントを全て見る
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をとめ
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電子
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風に吹かれて
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2001年刊。  2022年5月、国際高等難民弁務官事務所(UNHCR)はウクライナ避難民の増加により世界の難民が1億人を突破したと発表した。数年後か数十年後か、自分の両親はどうなっていたのかを知ろうとザック一つを背負ってアウステルリッツのように旅を続ける人が出てくるに違いない。アウステルリッツは建築史の専門家で戦争に関わる建築遺跡も詳細に研究してきた。1939年、両親は子供の命だけでも守ろうとアウステルリッツをプラハから出国させたのであったが……。 →
風に吹かれて

現代の巨大な建築物を見ながら「私」に過去を消すためにこれらは建てられるのだとアウステルリッツが語る場面があるが、歴史も瓦礫を撤去したかのように痕跡さえとどめぬことになるのかもしれない。歴史は忘れ去られ虚空に投げ出されて寄る辺ない地平に佇むような孤独に襲われながらもアウステルリッツは母を求めて旅を続けるのだけれど…。 →

07/13 08:21
風に吹かれて

 アウステルリッツが語りの相手に選んだ「私」は誰なのだろう。「私」を主人公にした、もうひとつのアウステルリッツが予定されていたのだろうか。ゼーバルトは2001年に逝去しているので、彼の新たな散文を読むことはできないのだけれど…。あれこれ考えているうちに、こう理解することにした。「私」とは読者一人ひとりのことなのだと…。

07/13 08:21
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ぼむ☆
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歴史は虚構である。記憶は忘却され続け記録は意味をなさないものになる。歴史において語られなかった膨大な記録を辿ることにより記憶は再構築される。それには時間という概念はなく空間があるのみで過去も現在もそこに共存している。そもそも過去なんてものはなく記憶の再構築で過去が作られるのだ。その過去もまた忘却される運命にある。本の語り手であるアウステルリッツもホロコーストにより記憶を喪失し、その過去を探し求めて彷徨い歩く。そして再構築される記憶からは安らぎは与えられず、歴史が見落としてきた膨大な記録が彼に立ちはだかる。
市太郎

読んで下さったのですね。そしてまた素晴らしい感想をありがとうございます。僕もいずれまた読み返したいと思っています。世界が終わるまでには😃これはきっと素晴らしい書物ですからね❗

03/18 12:14
ぼむ☆

褒めていただいてありがとうございます。でも要約みたいな感想になってしまいました(笑) 市太郎さんのおかげでこんないい作品と出会えて嬉しいです。静かでもあり、幾分神経質でもあり、強靭な意思と弱さが共存しているようなアウステルリッツさん。愛すべき人ですね。私も世界が終わる前に再読します♪

03/18 13:33
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星落秋風五丈原
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【ガーディアン必読1000冊】本当にこれ一見旅先エッセイみたいですね。地の文で“わたし”が続いたかと思えば突然「と、アウステルリッツは言った」となるので主語違ったんだ!と混乱。アウステルリッツという三大会戦の地と同じ名を持つ彼のルーツはやはりアウシュヴィッツなどナチスドイツのホロコーストにたどり着いた。
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コットン
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イベント『2021年、今年読んだ本はこれだ!』のkeiさんのお勧め本。私が写真と図と散文からなる流れるような人生のアウステルリッツという人の話を聞く物語。画と文の重層的想起を感じ、読み始める前は似たものとしてブルトンの『ナジャ』を連想したが、それよりも偶然性がないが、建築的ガジェットに溢れていると思う。クラシックには詳しくないので誤っているかもしれないがパヴェル・ハースの『弦楽オーケストラのための練習曲』に言及されていたので曲を聞くと正統派とは異なる寂しげな民族音楽風で見て聞く総合的芸術を目指していたかも
kei

コットンさん明けましておめでとうございます。私にはなかなか難しい内容だったんですがそれでも圧倒的な文章を感じられる心を動かされた作品でしたので読んでいただけて嬉しいです✨今年もよろしくお願いします🙇

01/03 19:17
コットン

keiさん、明けましておめでとうございます。この本をご紹介頂いてありがとうございます。今年もよろしく~♪

01/03 20:13
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fritzng4
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ここに書かれていることが現実なのか虚構なのか判然としない。パラグラフの切れ目なく縦横無尽に語られるアウステルリッツの物語から20世紀の歴史の断片があちこちに美しく立ち上がり、決してリーダブルな文章ではないのにそのリズムと遠慮がちな語りに魅了される。〈私〉がアウステルリッツに初めて出会うアントワープの駅の待合室や、ウェールズでの伯父夫婦たちとの暮らし、実の母を探す過程でプラハにて偶然母の親友と出会う場面など、印象的な箇所はあまりにも多い。フレッド・アステアの本名(苗字)はアウステルリッツだと初めて知った。
0255文字
ルーシー
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後半につれて壮絶な内容となっていくが、アウステルリッツの一歩距離を置いた淡々とした語りが印象的だった。読後は、アウステルリッツとはもう二度と会えないんじゃないかとか、でもまたフラッと出会って前置きもなく語ってくれそうだなあ、となんだか寂しいような不思議な感覚になった。全体的に陰鬱で静謐で「ずっと曇り」な雰囲気がとても好みなのでゼーバルトの他の作品も読んでみようと思った。
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kei
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ネタバレ私(語り手)はアントワープの中央駅待合室で建築家のアウステルリッツにふと声をかける。彼は駅の歴史から始まってつらつらと様々な建築の歴史を、果ては自分の生い立ち、イギリスでの学校での出来事、蘇った記憶、ユダヤ人としての出自、両親との別離と捜索、人との出会いと別れを、私(語り手)に会うたびにとめどなく語っていく。アウステルリッツの語りはあちらこちらへと移り、思考は分岐する河のように流れ、イラストではなく写真が載せられていることもあり、実在人物から話を聞いているように読みました。
キムチ

装丁に写っている少年が着用している衣装の気持ち悪さに惹かれて読みました(笑)

06/11 11:37
kei

まさかの衣装ですか(笑)この表紙の不可思議感、本書の印象をすごく表現できてると思います( *´艸`)

06/11 12:37
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こーた
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ひとの住んできた歴史や感情はその土地その土地に宿っている、などと書くと怪しげなスピリチュアルか何かと勘違いされそうだが、土地を訪れることで生活の歴史をかんじる、ということはよくある。それらは木や石といった自然物ばかりでなく、建築にも宿る。ひとの情動の痕跡(ある種の怨念のいえなくもない)を、アウステルリッツの語りをとおして、なぞる。時間と空間を飛び越え、虚構との境目はあいまいで、聞き手の「私」の存在は消え、読み手のぼくらまでが消失し、本のなかに入っていくのか、描写が外へ飛び出してきたのか、わからなくなる。⇒
こーた

⇒切れ目も改行もなく紡がれる語りは、たびたび寸断されながらも心地よいリズムがあり、不思議な没入感に浸る。てきとうに書いているようで見事な調和があり、写真も現れてそれがぴたりとはまる。一体これはどうやって書いているのか、小説にはまだこんな可能性が残されていたのか、てか小説?なのかこれは。訳も素晴らしかった。読書というよりは旅、それも途方もない旅だった。【G1000】

04/25 11:14
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カミツレ
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並行してホロコーストのドキュメンタリーを見ながら読んでいたのでリアルな感覚がありました。 閉じ込められた動物、ゲットー、収容所、というイメージにつながっていきます。
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加藤
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ウオオ
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🍕
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ウィトゲンシュタインのリュックサック欲しい
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lico
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「自分はこれまで想起するという訓練をいかに怠ってきたことか、いやむしろあべこべに、できるなら一切を思い出さぬよう、私の不明の素性と微かにでも関わるものはどんな類にせよ避けようとつとめてきたことか。(135P)」アウステルリッツの生い立ちから始まる物語は次第にナチスドイツの暗い歴史の物語へと潜り込む。語り口は他人事のようだが歴史が迫真性をもって迫り、読者と見つめあいながら対峙することになる。「理解のかなわぬ溝に、へだてられたままに(252P)」。
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Washu Takumi
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“(…)谷をなだれ落ちていく雪煙が見えたような気がし、そうやって数分がすぎてはっとわれに返ると、ヴェラが、忘却の底から浮かび上がってきたこういう写真には、独特ななんとも知れぬ謎めいたものがあるわ、と話している声がとどいてきたのでした。写真の中でなにかが動いているような気がするの、ひそかな絶望のため息が、聞こえてくるような気がするの。まるで写真そのものに記憶があって、わたしたちのことを思い出しているかのように、わたしたち生き残りと、もうこの世のひとでない彼らの、ありし日の姿を思い出しているかのように。”
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JO
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呪文のように語られる戦争、破壊、暴力の歴史。忘却に抗い、過去を取り戻す旅。息継ぎすら否定されているような作品だった。だが、場所は飛び、記憶も飛び、話は忙しく進む。蛾の話。歴史を伝える建築物。逆に、過去から目を背けているような現代の図書館。日本人としても思うべきところはあるはず。全体を通して難しいのだが、不思議とじんわりと浸みる。
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isfahan
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これは素晴らしい。衒学的なのにどこまでもついていきたくなるような語り口。そして、ユルスナールの『ハドリアヌス帝の回想』のように、読んでいるうちに不思議と自分の中で何かが整えられていくような気がする。つまり著者の頭の良さがドーピングできるような感覚もある。
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ハル
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情景の描写がとても美しく独特の世界観を築いていました。
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Green
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ドイツに生まれ、イギリスで過ごした近代史研究者が、ドイツ語で書いたホロコーストの物語/歴史/伝記。主人公アウステルリッツはユダヤ系チェコ人、5歳で両親に生き別れ、ホロコーストを避けるためにひとりイギリスに送られ、おぼろげな幼少時の記憶しか持たない。記憶を取り戻すために、彼は故郷を訪ね、幼い頃の自分を知る人に会い、両親の記録を探り当てる。いくらそうしても断片しか取り戻せないのだけれど。その過程で、同じように命を絶たれたたくさんの人々が想起され、彼らは亡霊のように彼の前に立ち現れる。
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TOMYTOMY
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とうとう読んだ。 写真とともに、ひたすら永遠と続く文。 まるで寄り添ってるようかのような視覚的な情報。 これ以降、堀江敏幸が解説に入ってるがよく分かるというか相関関係にいる。
0255文字
やくも
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語り手の「私」は、アントワープの駅舎で、イギリスに住む建築史家のアウステルリッツと出逢う。何年も後、再会した二人。アウステルリッツは自分の出自について話し始める…。数えるほどしか段落がない300頁近い文章に、いつのまにか引き込まれている。
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十文字
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アウステルリッツが長々と語る昔ばなしの中に見え隠れする歴史の真実。
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おおた
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語り手が偶然出くわしたアウステルリッツの語りを聞き書きした形式。アウステルリッツの謎めいた生い立ち、さらにはナチスドイツに翻弄された家族の歴史が次第に解き明かされていく。重層的な語りに時折読みが追いつかなくなるが、挿入される写真が語りに重みをつけ、実際に行われた非道の歴史と地続きであることが現前する。メランコリーは無力ではなく、行動へつながると紹介される作者の言葉が染みる。改訳版の方が書籍の作りが良いので、既に所有してるなら買う必要はない。
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Nightmarewalke2
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 歴史に対する視点について考えさせられる。私たちは靄を通してしか過去を捉えることができず、記憶は忘却の作用によって埋没していってしまう。  忘れられた自分の姿を過去を辿ることで明らかにしていくアウステルリッツの姿は、確固とした過去に基づくことでアイデンティティが定まっていくことを示している。  しかし、それと同様に確実に過去をつかむこと自体の不安定さを表す描写は非常に多い。蛾の光跡は、もはや実体はないが我々の目には写っている。写真も同様に、それ自体には実体がないが、視覚的にわたしたちに伝えるメディアだ。
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ケイトKATE
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以前から読みたかったゼーバルトの代表作。本書は、小説のようでノンフィクションのような作品である。本について細かくジャンル分けされている現代において、『アウステルリッツ』はそんなジャンル分けを曖昧化させているが、読み手を『アウステルリッツ』の世界へ引き込ませる力を持っている。また、主人公アウステルリッツによる語りから、闇に葬られた歴史が掘り起こされ光が当てられている。これこそ、ゼーバルトの作家としての凄みではないだろうか。
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バナナフィッシュ。
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過去からの通奏低音。朧げな記憶に誘われ故郷に辿り着いた彼の幼年時代の空白。昔は良かったなと言うような懐古主義ではなく、大国によって引き裂かれた重々しくも優しい記憶の断片が残る。今になって僅かな知識を元に親類を探してもいい結果には結ばない。脳裏に残るのは感覚だけが知っている儚い母親の像だけ。全ては歳とともに劣化し、自分もまた歳おいて今は動くことすらままならない。語るべきことはあるが、それはごく個人的なこと。それを語る意味が果たしてあるだろうか。
0255文字
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