くさすようなことを書いてしまったが、ぼくはこの作品を嫌いにはなれない。平出隆『猫の客』や『ベルリンの瞬間』などを想起しつつ読み進めたのだけれど、そうした作品群に含まれていてこの作品に欠けているものがなんなのか、実はいまだわからないでいる。ただ言えるのは、ぼくは「就職氷河期」を経験した世代だがその自分から見てこの登場人物の造形にリアリティをさほど感じなかった。もっと彼・彼女たちが見ている世界を細部まで作り込むとか、あるいは問答・会話の中に人となりをにじませるとか、そうした次元の工夫が必要ではとも思ってしまう
なんだかケチをつけたような感想になったが、そもそも「読書」(あるいは「教養」)が称揚される際、それが「誰にとって」「なににとって」都合がいいものでありうるのかを暴いた本だとぼくは個人的に受け取った。それはぼく自身、頼まれもしないのに子どもの頃からいままで本を(時にはゲロを吐きそうな気分で)読み進めてきて感じてきた違和感の正体を言い当てられたようで、だからラクになれたとも思う。いま、この時代にあってもなお生きる「教養」とは。それがもっと「ネット社会」や「データベース化」とからまないか、と思いつつ反芻している
踊ります!
#「あ~ん」を好きな文学作品で埋める
あ 『アウステルリッツ』W・G・ゼーバルト
い 『異邦人』アルベール・カミュ
う 『ウインドアイ』ブライアン・エヴンソン
え 『M/Tと森のフシギの物語』大江健三郎
お 『終わりと始まり』ヴィスワヴァ・シンボルスカ
か 『火山の下』マルカム・ラウリー
き 『奇偶』山口雅也
く 『苦海浄土』石牟礼道子
け 『化粧』中上健次
こ 『孤独の発明』ポール・オースター
さ 『さようなら、ギャングたち』高橋源一郎
し 『シンセミア』阿部和重
す 『好き好き大好き超愛してる。』舞城王太郎
せ 『Self-Reference ENGINE』円城塔
そ 『訴訟』カフカ
た 『第三次世界大戦秘史』J・G・バラード
ち 『血の熱』イレーヌ・ネミロフスキー
つ 『罪と罰』ドストエフスキー
て 『天国が降ってくる』島田雅彦
と 『道化師の恋』金井美恵子
な 『夏と冬の奏鳴曲』麻耶雄嵩
に 『246』沢木耕太郎
ぬ 『ぬかるんでから』佐藤哲也
ね 『眠れる美女』川端康成
の 『ノヴァーリスの引用』奥泉光
は 『箱男』安部公房
ひ 『日々の暮し方』別役実
ふ 『ブエノスアイレス午前零時』藤沢周
へ 『ペニス』津原泰水
ほ 『ホテル・アウシュヴィッツ』山口泉
ま 『マルテの手記』ライナー・マリア・リルケ
み 『三つの小さな王国』スティーヴン・ミルハウザー
む 『村上龍映画小説集』村上龍
め 『冥途・旅順入城式』内田百閒
も 『もうひとつの夏へ』飛火野耀
や 『夜間飛行』サン=テグジュペリ
ゆ 『夢十夜』夏目漱石
よ 『夜の子どもたち』芝田勝茂
ら 『楽天記』古井由吉
り 『リトル、ビッグ』ジョン・クロウリー
る 『ルビコン・ビーチ』スティーヴ・エリクソン
れ 『恋愛のディスクール・断章』ロラン・バルト
ろ 『ロリータ』ウラジーミル・ナボコフ
わ 『若き日の哀しみ』ダニロ・キシュ
(2024年9月29日時点)
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なんだかケチをつけたような感想になったが、そもそも「読書」(あるいは「教養」)が称揚される際、それが「誰にとって」「なににとって」都合がいいものでありうるのかを暴いた本だとぼくは個人的に受け取った。それはぼく自身、頼まれもしないのに子どもの頃からいままで本を(時にはゲロを吐きそうな気分で)読み進めてきて感じてきた違和感の正体を言い当てられたようで、だからラクになれたとも思う。いま、この時代にあってもなお生きる「教養」とは。それがもっと「ネット社会」や「データベース化」とからまないか、と思いつつ反芻している