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2024年10月の読書メーターまとめ

踊る猫
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感想・レビュー
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2024年10月に読んだ本
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2024年10月にナイスが最も多かった感想・レビュー

踊る猫
ないものねだりと言われればそれまでだが、あれこれ「いや、これについても論じたほうがいいのでは」とサジェスチョンが浮かび落ち着かなかった(80年代のニュー・アカデミズムや週刊本、ケータイ小説や昨今のなろう系の書籍化といったトピックが該当するし、もっとありうるだろう)。だがイヤミや皮肉ではなくまっとうな・ポジティブな意味で「癒し」と「励まし」を与えてくれる本として、この時代にあってもなお「読書」がもたらしうる「教養」の意味を考えさせてくれる本として興味深い。文学や社会学のさまざまな議論と接合する誘惑に駆られる
踊る猫
2024/10/04 17:39

なんだかケチをつけたような感想になったが、そもそも「読書」(あるいは「教養」)が称揚される際、それが「誰にとって」「なににとって」都合がいいものでありうるのかを暴いた本だとぼくは個人的に受け取った。それはぼく自身、頼まれもしないのに子どもの頃からいままで本を(時にはゲロを吐きそうな気分で)読み進めてきて感じてきた違和感の正体を言い当てられたようで、だからラクになれたとも思う。いま、この時代にあってもなお生きる「教養」とは。それがもっと「ネット社会」や「データベース化」とからまないか、と思いつつ反芻している

が「ナイス!」と言っています。

2024年10月にナイスが最も多かったつぶやき

踊る猫

芸術の秋。絵を描きました。タイトルは『莫妄想(まくもうぞう)』といいます

芸術の秋。絵を描きました。タイトルは『莫妄想(まくもうぞう)』といいます
が「ナイス!」と言っています。

2024年10月の感想・レビュー一覧
14

踊る猫
いまの言葉で言えば「陰謀論」的な、自分とは遠く離れた次元に存在しているはずのとある特定の個人(あるいは団体)こそが自分たちの暮らしそのものを牛耳っているという展開が物語として語られる。そして、その完全に「弄ばれる」状況下において主人公は自分のためだけに出されたテストに答えるかのように、あるいはRPG的につぎつぎと繰り出されるミッションに答えていくことで謎解きに迫っていく。その「世界が小出しにするテストを解くことで核心に近づく」という構図はもちろん、後の春樹作品が十八番とする展開でありここにその萌芽が見える
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踊る猫
対話によってスリリングにストーリーを運ばせるのではなく、言葉になるかならないかといった実に思念の微細な動きの端緒をすくい取ってそれを言葉にして行くいとなみが為されていると映る。語り手が「白」と認識するものたちによって記憶におけるさまざまな思い出の断片は再統合され、そして甘美な響きを帯び始める。ぼくはスットコドッコイなのでこの典雅な記憶と政治性(そう、著者の目線はモノローグ的な語りにおいても「外」「他者」を見ている)においてリルケやあるいはゼーバルト的ですらあるなと思わされた。語りに溺れていない誠実な一作だ
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踊る猫
過去、ここに収められたような短編集をはじめて読んだ10代のころぼくはそのシュールさ・自由度の高さに度肝を抜かれたのだった(まだポストモダン文学を知らなかった)。書きたい・表現に値する深刻なテーマなどない、というアナーキーな姿勢がそのまま結実したようにさえ思えて……でも、いまの目で読むと村上春樹は確実に「世界をどう捉えるか(とりわけ、まったくもって謎である『性』と『死』それぞれの謎)」「それらを言葉によってどう表象・伝達していくか」を問うている印象を受ける。ポップな意匠の裏側に眠る、他者を希求する姿勢をさえ
が「ナイス!」と言っています。
踊る猫
この本に内包されているテーマは実に奥深い。たんに村上春樹個人の文体の問題と緻密・細密に取り組むにとどまらずその春樹や藤本和子のような翻訳家がどのようにして日本の文壇で受容されたかを切り込んで論じていく。そしてそれと並行してブローティガンやヴォネガットの文学が産み落とされた時代背景と、それにともなった同時代の日本のポップカルチャー畑の文学(SFなど)にも目配りを効かせた、惜しみない才気が発揮された傑作と思う。当たり前の話をするが、春樹は突然変異体ではありえず時代あっての存在(問題児?)であることを再発見する
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踊る猫
たしかに初期作品ならではの若書きな・粗野な語り口が魅力的だ。ここには、後の作品群のようなピュアな(「うぶな」とも言えるか?)「物語」への志向がまだ見られない。主人公を取り巻く他愛もない日常(とその延長線上にぶっきらぼうに配置されるセックスへの言及)、および彼が経験せざるを得なかった喪失感に満ちた過去がぎこちなく語られる。そこにピンボールをめぐるマニアックな蘊蓄が盛り込まれて物語としてドライブする契機を得たりもするが、ひと口で言えばまだまだ粗い。だが、その粗さの中にたしかに世界と組み合おうとする意思を感じる
が「ナイス!」と言っています。
踊る猫
片岡義男という著者が実に卓越した日本語の使い手であること(いまの言い方で言えば「言語性IQが高い」)人であることは疑いえない。その高知能ももちろんさることながら、彼自身の皮膚感覚・肉体感覚を最大限に駆使してここに収められた実に手堅い・ねばり強い分析が施される。こうして見ると「渾身の」長編評論であることに唸ってしまう。ぼく自身がついつい陥りがちな「日本語はあいまい」という観念に異を唱え、片岡が小説執筆・取材・読書から得たロジックと感覚で異論を唱えるその手腕に(異論はあれど)あらためて脱帽せざるをえないと思う
が「ナイス!」と言っています。
踊る猫
黒川創という書き手の誠実さに触れた思いがした。死者の思い出を胸に、それでも回り続ける世界の中で毅然として生き続ける生者たちの実像を実に理知的・分析的に書き記していると唸る。だが、作品に込められたメッセージ性や就職氷河期の人物の価値観のあり方などが逆説的に、小説的な旨味を出す足を引っ張っているようでどこか落ち着かない。もっと大胆に「嘘」をついて読者をかき回してもいいのではと思う反面、私小説的な素描として読むとまた違った分析が可能とも思われてもどかしい(が、その読みを試みるにはこの作品はまだなにかが足りない)
踊る猫
2024/10/16 20:54

くさすようなことを書いてしまったが、ぼくはこの作品を嫌いにはなれない。平出隆『猫の客』や『ベルリンの瞬間』などを想起しつつ読み進めたのだけれど、そうした作品群に含まれていてこの作品に欠けているものがなんなのか、実はいまだわからないでいる。ただ言えるのは、ぼくは「就職氷河期」を経験した世代だがその自分から見てこの登場人物の造形にリアリティをさほど感じなかった。もっと彼・彼女たちが見ている世界を細部まで作り込むとか、あるいは問答・会話の中に人となりをにじませるとか、そうした次元の工夫が必要ではとも思ってしまう

が「ナイス!」と言っています。
踊る猫
いつの頃からか鶴見俊輔を徒手空拳で読む暮らしをはじめてしまったのだけれど、読めば読むほど鶴見がその不良時代や戦争体験やベ平連などで見せた「スジの通し方」(鶴見的に言えば「仁義」)に惚れてしまう。もちろん鶴見の行い・論理をまるごと肯定する気はない(誰だって「マチガイ」はしでかすことを鶴見は口を酸っぱくして問いてきたはずだ)。だが、その矛盾や弱さや時には狂気さえも周囲に見せつつ八面六臂の活躍を為してきた鶴見の姿・言葉からぼくはたしかな「教師性」とでも呼ぶべきものを感じ、反面教師としての可能性まで含めて敬愛する
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踊る猫
鶴見俊輔という存在をいたずらに神格化し「無辜のカリスマ」と褒め殺すのではなく、かといって後出しジャンケンの理屈で雑駁にこき下ろすのでもなく、フェアネスを貫き彼が残した仕事を読み込み為した功績を評価していく営み。そのおそるべくねばり強さが必要とされる試み(容易にわかるように「是々非々」が要求されるわけだから)を、高草木は実に手堅い筆致とアプローチで為している。ここから見えてくるのは時に矛盾や破綻を見せつつ、その内面に迷いなども抱えつつも同じようにねばり強さを以て「反戦平和」を追究し続け、奮闘した知識人の姿だ
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踊る猫
鶴見俊輔を読んでいると、はなはだしく矛盾をはらんだ表現になるが「純朴などす黒さ」とでも呼ぶべき鶴見の思考の生理の性格に思わず惹かれていくのを感じる。本書でも、特に上野千鶴子の鋭い問いや疑念にきわめて明晰かつ誠実に答える鶴見の言葉、そして仁義を重んじる態度が持つある種の「人間臭さ」に惚れ直す(だが、それはもちろん「思考停止」「なあなあ」に堕す危険もはらんでいよう。ぼくも彼らを見習わないといけない)。事実を確認するというよりは、そうした洗い出しを通して本書はそうした鶴見の思考術・哲学を問い直す1冊とぼくは読む
まさにい
2024/10/12 08:40

踊る猫さんが読んでいる本は、僕の参考になります。この本、読んでみたいと思っています。やはり、当時の雰囲気を知ることが大切なのだと思う今日この頃です。

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踊る猫
そもそも、公開・公表を前提にした日記(私的な繰り言・記録)という発表形式自体が実にいびつさをはらんでいる。沢木耕太郎によるこの日記もそうした「いびつさ」を内包しつつ(たとえば、この日記の影では何人か沢木を支えていながらついに表舞台に現れない人たちがいることに留意したい)、しかしその「いびつさ」を矛盾や破綻としてつまづかせるのではなく一流のノンフィクションとして読ませる。今回の再読で、沢木があらためて「書くこと」に対して実にストイックで敬虔な人だという印象を受けた。ゆえにこの日記もまたさわやかな産物だと唸る
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踊る猫
実に豊満・芳醇な伝記だ。決して短くはなく、またひと口でまとめられるほど順風満帆・単純明快でもなかった鶴見の人生をその枝葉末節も含めてここまで盛り込み、人間らしい鶴見の実像に迫ることができたことに唸らされる。それはもちろん黒川創の能力・知性もさることながら彼が鶴見俊輔の近傍にいて彼を観察(というとイヤな響きが増すが)できたことも大きかったのではないか。対象と適切にバウンダリーを引き、そこから愛情を以て相手を見つめ記録・描写に励む。黒川創は自身の小説も記しているが作家気質がここにきて美点として現れていると思う
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踊る猫
落ちこぼれとしての立場から世界を眺め、そのままの気骨を保ち大人になる。鶴見俊輔は生涯を賭してそんな困難(いまで言うところの「生きづらさ」)と愚直に対峙し、そしてなにはともあれ生き抜いた人なのだと思う。想像を絶する苦しさをくぐり抜けてきた人の語る言葉は、しかし(さすがに晩年の言葉だからか)どす黒いルサンチマンにまみれたものではなくこちらを確実に「掴む」力を持つ。だから「もっと聞かせてほしい」と思わせる力に満ちている。読みながら思うのは実にその言葉が平易に書かれており、レトリックにおいて単純で力強い事実である
が「ナイス!」と言っています。
踊る猫
ないものねだりと言われればそれまでだが、あれこれ「いや、これについても論じたほうがいいのでは」とサジェスチョンが浮かび落ち着かなかった(80年代のニュー・アカデミズムや週刊本、ケータイ小説や昨今のなろう系の書籍化といったトピックが該当するし、もっとありうるだろう)。だがイヤミや皮肉ではなくまっとうな・ポジティブな意味で「癒し」と「励まし」を与えてくれる本として、この時代にあってもなお「読書」がもたらしうる「教養」の意味を考えさせてくれる本として興味深い。文学や社会学のさまざまな議論と接合する誘惑に駆られる
踊る猫
2024/10/04 17:39

なんだかケチをつけたような感想になったが、そもそも「読書」(あるいは「教養」)が称揚される際、それが「誰にとって」「なににとって」都合がいいものでありうるのかを暴いた本だとぼくは個人的に受け取った。それはぼく自身、頼まれもしないのに子どもの頃からいままで本を(時にはゲロを吐きそうな気分で)読み進めてきて感じてきた違和感の正体を言い当てられたようで、だからラクになれたとも思う。いま、この時代にあってもなお生きる「教養」とは。それがもっと「ネット社会」や「データベース化」とからまないか、と思いつつ反芻している

が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2015/07/15(3419日経過)
記録初日
2015/07/15(3419日経過)
読んだ本
1637冊(1日平均0.48冊)
読んだページ
540085ページ(1日平均157ページ)
感想・レビュー
1576件(投稿率96.3%)
本棚
5棚
外部サイト
URL/ブログ
https://backtolife.hatenablog.com/
自己紹介

踊ります!

#「あ~ん」を好きな文学作品で埋める

あ 『アウステルリッツ』W・G・ゼーバルト
い 『異邦人』アルベール・カミュ
う 『ウインドアイ』ブライアン・エヴンソン
え 『M/Tと森のフシギの物語』大江健三郎
お 『終わりと始まり』ヴィスワヴァ・シンボルスカ
か 『火山の下』マルカム・ラウリー
き 『奇偶』山口雅也
く 『苦海浄土』石牟礼道子
け 『化粧』中上健次
こ 『孤独の発明』ポール・オースター
さ 『さようなら、ギャングたち』高橋源一郎
し 『シンセミア』阿部和重
す 『好き好き大好き超愛してる。』舞城王太郎
せ 『Self-Reference ENGINE』円城塔
そ 『訴訟』カフカ
た 『第三次世界大戦秘史』J・G・バラード
ち 『血の熱』イレーヌ・ネミロフスキー
つ 『罪と罰』ドストエフスキー
て 『天国が降ってくる』島田雅彦
と 『道化師の恋』金井美恵子
な 『夏と冬の奏鳴曲』麻耶雄嵩
に 『246』沢木耕太郎
ぬ 『ぬかるんでから』佐藤哲也
ね 『眠れる美女』川端康成
の 『ノヴァーリスの引用』奥泉光
は 『箱男』安部公房
ひ 『日々の暮し方』別役実
ふ 『ブエノスアイレス午前零時』藤沢周
へ 『ペニス』津原泰水
ほ 『ホテル・アウシュヴィッツ』山口泉
ま 『マルテの手記』ライナー・マリア・リルケ
み 『三つの小さな王国』スティーヴン・ミルハウザー
む 『村上龍映画小説集』村上龍
め 『冥途・旅順入城式』内田百閒
も 『もうひとつの夏へ』飛火野耀
や 『夜間飛行』サン=テグジュペリ
ゆ 『夢十夜』夏目漱石
よ 『夜の子どもたち』芝田勝茂
ら 『楽天記』古井由吉
り 『リトル、ビッグ』ジョン・クロウリー
る 『ルビコン・ビーチ』スティーヴ・エリクソン
れ 『恋愛のディスクール・断章』ロラン・バルト
ろ 『ロリータ』ウラジーミル・ナボコフ
わ 『若き日の哀しみ』ダニロ・キシュ

(2024年9月29日時点)

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