読書メーター KADOKAWA Group

2024年8月の読書メーターまとめ

みつ
読んだ本
22
読んだページ
8269ページ
感想・レビュー
22
ナイス
1111ナイス

2024年8月に読んだ本
22

2024年8月のお気に入られ登録
3

  • いぐさみき
  • かみのさかな
  • ジョージ

2024年8月にナイスが最も多かった感想・レビュー

みつ
「ラブカ」は深海魚の名。表題は、架空のスパイ映画『戦慄(わなな)きのラブカ』の劇伴音楽を主人公が発表会で弾くという設定に由来する。少年時代の事件から今も心療内科に通う主人公は著作権を管理する会社に勤め、著作権料を支払わずに教える音楽教室の証拠を掴むため、過去に学んだチェロの経験を生かし教室に潜入するというもの。全体は音楽教室の和気藹々とした雰囲気に満ちつつも、彼の秘密が破局を孕んだ緊張感を与える。意外な展開を経て、主人公は終わり近くで、バッハの『無伴奏チェロ組曲』全六曲を弾けるようになりたい、と告げる。
が「ナイス!」と言っています。

2024年8月にナイスが最も多かったつぶやき

みつ

読書メーター登録1002冊目。この番号を持つ音楽作品は、バッハの『無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第1番ロ短調 BWV1002』。舞曲に起源を持つ「アルマンド」「クーラント」「サラバンド」「ブーレ」の各楽章の後に装飾的な変奏を施した「ドゥーブル」が続く8つの部分から成ります。ヴァイオリンのみで充実した響きをもたらすため重音が多用されるのがこの曲集の特徴ですが、ドゥーブルでは単音主体となりより軽快さをもたらします。もともと速いクーラントは一層目まぐるしく動き回り、重厚なサラバンドでは両者の対比が鮮やか。

kaho
2024/08/09 18:29

mituさん 大分昔 観ました、ソロはクレーメルだっけ?と思って今リンクを見に行ったら、ジョシュア・ベルでしたね。

mitu
2024/08/09 19:10

そうなのです。日比谷あたりて観たと思います。ジョシュア・ベルだとの説が多いです。昔、ジョシュア・ベルをオランダ運河のコンサートで初めて見てから、後追いしました。この映画は、印象的でずっと記憶に残っています。

が「ナイス!」と言っています。

2024年8月の感想・レビュー一覧
22

みつ
直前に読んだ中短編集『過ぎにし夏 マーズ・ヒルで』所収の「イリリア」における、この劇上演のエピソードが忘れ難かったので手に取る(多分初読)。海難事故で生き別れとなった双子の兄妹。互いに相手は死んだものと思っており、妹ヴァイオラの方は男装して想いを寄せる(この辺りの経緯は不明)公爵の小間使いとなり、公爵はオリヴィア姫を恋し、姫は公爵が使いに遣ったヴァイオラに一目惚れする・・・というロマンチック・コメディ。クリスマスから十二日目の夜に上演されたという喜劇は、目出たい結びの一方で、祭りの後の寂しさも感じさせる。
mitu
2024/08/29 17:16

みつさん、こんにちは。別本でよみましたが、この作品大好きです。

が「ナイス!」と言っています。
みつ
こういう題名の本はどうしても季節を選んでしまう。ということで今日(8月28日)読了。「珠玉の抒情SF選集」と裏表紙にはあるが、収録された4編いずれもSF要素は希薄。中では双子兄弟の父をそれぞれ持つ、同じ日に生まれたいとこの淡い恋とその後を、シェイクスピアの『十二夜』の上演と舞台のミニチュアを中心に据えて描く「イリリア」が素晴らしい。ライト兄弟に先立つ飛行機を映した幻の動画を特撮で再現する話も自分好み。表題作と、同じくマーズ・ヒルが舞台の「エコー」は、ブラッドベリを漫画化した萩尾望都に取り上げてほしい世界。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
溝口健二監督の1950年代のモノクロ映画で観て以来の本作。映画は集中の2作品を自由に翻案して脚本化されたもの。今回九作全てを知ることで映画に用いられた「浅茅が宿」と「蛇性の淫」がやはり傑作であると知る。このシリーズの『四谷怪談』に続いて読むと、怪奇ものというより不思議な話の印象が強い。端正な挿絵(蓬田やすひろ画。表紙イラストとは異なる。)もその感を強める。中国や日本の歴史にも取材し、孔孟の思想の違い(後者は革命を肯定)や崇徳院の呪いなど幅広い知識に関して短い註釈はありがたい。子供向けの本と侮ることなかれ。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
図書館で偶々見かけた本。前作は未読。本作ではゴッホもレンブラントもピカソもダリも登場せず、それだけ著者の興味が前面に出ているようにも見える。ラファエロ前派に分類されるウォーターハウス、世紀末の気分を纏ったクノップフ、印象派周辺ではモリゾとカイユボット、明るさと寒さが極端なセガンティーニ、フェルメールの室内空間をさらに静謐にしたハンマースホイ、音楽を感じさせるカンディンスキーとクレーなど好みの画家が取り上げられているのも嬉しい。明治期日本の洋画や贋作に多くを割いてくれているのも、絵画鑑賞ガイドとして得難い。
mitu
2024/08/26 17:18

みつさん、こんにちは。ユーチューブもけっこう有ります。

が「ナイス!」と言っています。
みつ
お岩さんの話、という予備知識しかなかった、もともとは歌舞伎台本の幽霊ばなし。『少年少女古典文学館』の一冊ということですらすら読み進めることができる。高師直と塩谷判官が背景にいて『仮名手本忠臣蔵』の並行世界であることも知らなかった。なんと言っても伊右衛門の悪役ぶりが際立つが、怪談の引き金となる事件が意外なところから齎され、彼らも復讐の対象となる。かなりご都合主義的な展開も目立つが、多くの人物の欲と変愛が絡み、ひとり語りの怪談にはない演劇的な興趣が強い。この映像的な怖さを文字だけで表現する至難に挑戦している。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
最終巻は、屋島の戦いを前にした義経と梶原景時の戦を巡る諍いから。ここでの景時の恨みが、先の義経の運命につながる。壇ノ浦の合戦では四国の武士が宣託もあってか源氏側に付き、平家の多くは入水し、さもなくば捕えられる。後白河法皇はこの間も院宣を乱発し義経の身にも危機が迫るが、その先は語られない。語られるのは専ら平家の人々のその後。法然も登場する中語り手も次々と変わり撥の音が高まる。最後の「灌頂の巻」では撥は止み、時間も少し巻き戻す形で出家後の建礼門院を法皇が訪れ、六道を語りあう。天人五衰の喩えが、終わりに響く。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
この巻の前半では木曽義仲が中心に描かれる。表紙も巴御前とおぼしき人物が描かれるが、実際の彼女の場面はごくわずか。この後の熊谷直実と敦盛のくだりなども含め、後年の『平家物語』の語り手が様々を加えたことでその印象はより強まったのであろうか。義経がいよいよ戦いの前面に登場するが、視点は平家側が中心。それだけに後半は、「最期」「身投」「入水」などの語がはいった章が頻出する。重衡は捕えられたのち鎌倉に送られ頼朝と対面。重衡の誇り、両者の文化的素養の違いも描かれる。劣勢ながらも海ではなお強力な平家軍。決着は最終巻へ。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
巻の四から七までを収録。いよいよ合戦が描かれる。最初は以仁王の乱でこれは平定されるが、巻の五では富士川の戦い(というよりは平家の不戦敗?)、七では倶利伽羅峠の戦いが描かれ、次第に平家は追い詰められる。その前の福原遷都、高倉上皇の死と上皇に関するエピソードなど名場面も多い。それにしても、後白河法皇の子孫の天皇がここまでで三人先立ち、清盛も早くも退場するなど、残された法皇がこの物語に決着をつける存在であることが次第に浮かび上がってくる。後半では平家一族の都落ちが描かれ➡️
みつ
2024/08/21 15:49

➡️全体の半分まで来た時点で、早くも平家一族の凋落ぶりは明らかに。武士でありつつも公家文化との関係も深い平家らしさは、薩摩守忠度の歌が「読み人知らず」として千載集に採られた有名な場面に象徴される。●以下細かいことながら。史記にも登場する荊軻と田光君のやりとりが引用される「騏驎も老いては駑馬に劣る」で、名馬ではなく想像上の動物を意味する「麒麟」となっているのは何故? 初出の『日本文学全集』でも同じ表記だったので、文庫化する際にも見過ごされたものか? 岩波書店と小学館の『平家物語』では「騏驎」となっている。

が「ナイス!」と言っています。
みつ
三種めの『平家物語』を読み始める。訳者によれば、「一文も訳し落とさなかった」、いわば忠実な訳ということで、これまでに読んだ吉川英治の『新・平家物語』と橋本治の『双調 平家物語』が多くを加えていた別の作品になっているのとは大きく異なる(特に橋本「作」は、最初の数行で紹介された事柄だけで数百ページに及ぶというもの)。元の本では保元・平治の乱も終わって平氏が政権を掌握する絶頂期で始まっている(ということは既に衰退の兆しを見せ始めている)というのが大きな違い。古川「訳」は、原文が飛躍する箇所を少し補い、琵琶➡️
みつ
2024/08/16 18:10

➡️法師の語り口を取り入れて進む。合戦の描写も、源氏すら未だ登場せず、専ら清盛を始めとする平家の専横が中心。清盛を諌めることの多い嫡子重盛の早すぎる死去が平家の運命を早めることになりそう。今回はせっかくだから、図書館で岩波書店の『日本古典文学大系』を脇に置いて、時折り参照しながら読むこととする。

が「ナイス!」と言っています。
みつ
「ラブカ」は深海魚の名。表題は、架空のスパイ映画『戦慄(わなな)きのラブカ』の劇伴音楽を主人公が発表会で弾くという設定に由来する。少年時代の事件から今も心療内科に通う主人公は著作権を管理する会社に勤め、著作権料を支払わずに教える音楽教室の証拠を掴むため、過去に学んだチェロの経験を生かし教室に潜入するというもの。全体は音楽教室の和気藹々とした雰囲気に満ちつつも、彼の秘密が破局を孕んだ緊張感を与える。意外な展開を経て、主人公は終わり近くで、バッハの『無伴奏チェロ組曲』全六曲を弾けるようになりたい、と告げる。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
この巻ではいよいよ曹操と劉備の争いが本格化し、長坂坡の戦いで頂点に達する・・のであるが、ところどころに脱力感溢れる描写が差し込まれ、物語は一挙に相対化する。『三國志』の著者陳寿も注釈者裴松之にも容赦なく批判を加えていく様は、『三国志演義』も含め解説書のような体裁にもなっていく。極端にデフォルメされたとしか思えない豪傑が蠢く中、妻黄氏が作成した恐竜戦車まで操る軍師孔明は一番得体のしれない描かれ方。劉備は彼の献策に「忍びぬう〜」と躊躇し、人民の人気絶大なれど英雄らしさは皆無。題の「泣き虫弱虫」はむしろ彼かも。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
裏表紙には「戦場という非日常における「日常の謎」を描き」とあり、また創元推理文庫の一冊ということで、読む前はどんな作品かは見当がつかなかった。アメリカ南部生まれの主人公が第二次世界大戦の兵士に志願し、コックとしてノルマンディー戦線に送られた際の体験を綴る形の物語で、謎解きの要素は薄い。コックでありつつも戦争の中では相手を撃ってもいるので、事前に予想していたほのぼのとした要素は少なく、終わりに向けてより陰惨な世界が露わに。日本人の描いたヨーロッパ戦線ということでは、『同志少女よ 敵を撃て』がさらに上回る。
みつ
2024/08/11 16:31

なお、いつもの創元推理文庫のとおり登場人物表があり、3ページにわたる人数の多さに驚くが、これは軍隊組織における各人の役割が分化していることの表れか。それ以上に物語の進展とともに戦死により多くの人物がいなくなっていくことを示している点で、この物語の性格を明らかにしているように思う。

泉 勇一郎
2024/08/27 19:14

「バンドオブブラザーズ」の露骨なパクリ小説だからね…

が「ナイス!」と言っています。
みつ
夏は大嫌いな季節なのに題名に「夏」がはいっているとつい手に取ってしまう。原題の『DISCLAIMER」(免責事項)なら多分読まなかっただろう。物語は、20年の時を挟みながら、ドキュメンタリー作家のキャサリンと元教師の老人スティーヴン(こちらは一人称の語り手)がほぼ交互に登場し、前者に届いた著者の性別も不明な本の存在から、20年前の夏に起こった出来事が徐々に読者に知らされる、という形式。一対の母と息子の関係が次第に息苦しいものに展開していく。真相はふたりには既知の内容だけに、読者だけが振り回される感もある。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
1983年の映画『エル・スール』は、自分の中では観た映画中の最高傑作。本の表紙には、少女エストレーリャが水源のありかを占う父と共に荒野に立っている場面が選ばれている。本作は映画の原作とされているようだが、実際は冒頭に示される父の死、水源探しの場面、そして南(エル・スール)に行く決意を固めたことが共通のエピソードにあるくらいで、父と娘の関係性が変化する挿話はなく、代わってセヴィーリャでの体験が描かれる。父に対して「あなた」と呼びかける、どこか曖昧な小説の世界から陰翳に富んだ映画が生まれたのはひとつの奇跡。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
読書メーター登録が千冊に達した記念に「千」絡みのこの本を再読。「千年紀のベスト100作品」は、選者(丸谷才一、三浦雅士、鹿島茂)が持ち寄った200程の候補から自ら採点し点数の高い順に選ぶというもので、一般のアンケート形式とは異なり、3人の考えが前面に出る。自分なりに数えてみると文字で記されたものは57作で、残りは絵画・彫刻が14、バレエ含む音楽が15、映画が9、建築5と範囲は広い。一番興味深いのは、「異論あり」の箇所。2人の寄稿しかないが、各作品の解説者が持っているはずの異論も読んでみたい気がする。➡️
みつ
2024/08/08 12:57

➡️1位『源氏物語』、2位『失われた時を求めて』、3位『ユリシーズ』、4位『平家物語』、5位『新古今和歌集』というのは、他の選者なら違った結果になるはず。モーツァルトとシェイクスピアのみ2作が入り他の作者は1作というのもやむを得ないが、文芸作品では「短編集」がポーだけというのも、日本近代が谷崎、漱石の各一作というのも寂しい。全体に海外の二十世紀作家が多く、その分ディケンズ、オースティン、エミリ・ブロンテが落ちているのも残念。・・とこの手の本は、読み手が各人のベストを持ち寄り、談論風発の材料と読むべきか。

が「ナイス!」と言っています。
みつ
『三国志演義』も吉川英治作品もきちんと読むことなしにこの本を手を取る。英雄豪傑が戦いに明け暮れ平然と大勢が殺戮される物語はどうにも好きになれないが、この本が諸葛孔明ひとりに視点を当てたのであれば、違ったものが得られるかと思ったのが読み始めた動機。『三国志』の全体を再構成したものではなく、中盤の孔明登場のあたりから始まり、この物語の記述に作者が註釈(というよりツッコミ)を入れていく形で進んでいく。やや間延びする場面もあるが、外から眺める作者の手にかかれば誰もがどうしようもない小人物になっているのが面白い。
兵士O
2024/08/07 19:17

横レス失礼します。酒見さんにかかると誰もが小物ですが、中心に居る孔明も小物。ボクはそれでいささか飽きて、陳舜臣さんの「諸葛孔明」を読んでいる所です。コレは極めて真面目な孔明です(他の人物も)

みつ
2024/08/08 13:09

兵士Oさん、コメントありがとうございます。結構真面目に解説したかと思うと脱力感すら漂うつぶやきがはいり、その落差に何度吹き出しそうになったことか。全くもって正統派とはほど遠い「三国志」ではありますが、自分はこんなのが好みです(『紅楼夢』は読み通しましたが、いわゆる「中国四大奇書」にはあまり食指が動きません。)。ただ、5巻まで追い切れるかは、今のところ不明です。

が「ナイス!」と言っています。
みつ
子規の死の直前、三月足らずの期間に描いた三十枚余りの絵をまとめた『菓子帖』『草花帖』『玩具帖』に、子規が絵画について触れた随筆、及び彼をよく知る三人が彼の画について綴った文を加える。水彩で描かれた果物、草花は、ちょうど今の時期(八月)辺りのもので、淡い色調が清涼な気分を伝え、モルヒネで痛みを抑えながらの写生が(別の随想に記録される様々な食とともに)僅かな喜びであったことがわかる。随筆では、『病牀六尺』所収の「渡辺のお嬢さん」が泊まりに来たエピソードが楽しい。漱石の哀惜の情を湛えた文も何度読んでもいい。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
ネタバレ上巻で登場したペテン師のふたり(「公爵」と「王様」)のくだりが続く。出鱈目な演劇で聴衆を憤慨させ、死んだ男の弟になりすまし財産の横取りを狙う。この辺りは完全に悪漢小説であり、物語の色調はどんどん暗くなっていく。この巻の中ほどでは逃亡した奴隷のジムが捕えられ、ハックのもとにトム・ソーヤーが再登場。ジムの救出に二人がかりで取り組む。・・と進むが、我が体調のせいもあり、ワクワク感を覚えるには至らない。この本を通じて一番印象的だったのは、長い日々にわたる筏下りを成立させる、ミシシッピ川の長大で緩やかな流れ。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
『トム・ソーヤーの冒険』に続いて。こちらは、半世紀前の高校生時代、旺文社文庫(というものがあった)で読んで以来。『トム・ソーヤー・』の最後で、放浪児の生活から脱したかに見えたハック。しばし学校にも通い字の書き方も覚えるが、酒飲みで乱暴をふるう父が戻ってきて、そこから逃れるため、筏での自由な生活に入る。そこに逃亡奴隷のジムが合流し、奇妙な二人の旅が始まる。こちらは一貫してハックの一人称で物語は進み、様々な人の出会いと(短い期間ながら)死が次々と描かれる。いかにも怪しげなペテン師ふたりの滑稽な事件から次巻へ。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
きちんと読み通したのは多分今回が初めて。いたずら者というトム。ソーヤーの先入観が強かったが、結構真面目に学校に通っているし特に前半では学校生活のエピソードが多かったのが意外。女生徒と仲良くしているところを嫉妬されて教科書にいたずらを仕掛けられたり彼女の失態を被り先生に罰せられるなど、普通の少年らしい挿話もいくつか。学校にも通っていない浮浪児のハックルベリー・フィンと墓場へ行った際い出会った事件、女生徒ベッキーとの洞窟探検からの危機を経て、最後は思わぬ幸運が訪れる。機知に富み、爽快な物語は期待を裏切らない。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
このシリーズの最終巻。末尾のクリスチアナ・ブランドの「ジェミニー・クリケット事件」は編者が「二十世紀最高の短編ミステリ」(p563。ということは、「帰還」以降のホームズも含めた最高作)と位置付けるもので、米英版の両者を掲載し、その異同も含め詳細に論じている。全篇の締め括りとして解説の力の入れようをひしひしと感じる。この捉え方はこの6冊にわたるアンソロジー、及び詳細かつ浩瀚な解説に一貫するものだろう。ミステリの範囲は広がり、我が貧弱な読解力を顧みず言えば、ある種思わせぶりな記述に苦労させられる作も多かった。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
学生時代以来だから40数年ぶりの再読。今回読んだのは図書館にあった白水社の『ニーチェ全集 第1巻』(浅井真男訳、1979年発行)から。検索できなかったのでこちらに登録。「アポロン的」「ディオニュソス的」という対比的な用語以外、ギリシア悲劇の成立を述べた本であることすらきれいさっぱり忘れていた。ニーチェによればふたつの概念は前者が「夢」で個別的な世界、叙事詩、造形芸術に代表され、後者が「陶酔」で普遍的世界、抒情詩、音楽芸術に代表されるとしたうえで、ギリシア悲劇ではまず合唱団(コロス)のみがあったと説く。➡️
みつ
2024/08/02 15:20

➡️論旨を辿ることは容易ではないが、彼独特の華麗なレトリックと有無を言わせない断定は、最初の出版作である本作においても類のない魅力を放つ。しかし、ギリシアにおいて数学と関連づけられた音楽こそ、むしろアポロン的芸術ではないかという以前からの考えは変わらない。そこにヴァーグナーや「ドイツ音楽」が加わるが、ヴァーグナーの楽劇の「混沌」とギリシア悲劇がどう結びつくのかも判然としない。後年書かれた「自己批判の試み」では、ドイツ音楽を「ロマンティック」、すなわち「もっとも非ギリシア的」と規定しており、こちらには納得。

みつ
2024/08/02 15:41

➡️➡️ヴァグナーが「ディオニュソス的」であるというのは、音楽内部での対比としてはまだしもわかりやすいが、バッハまで「ドイツ音楽」で一括りされてそう言われると困惑するばかり。なお、この作でオペラについて、レスタティーヴォの存在故をもって芸術家の所産ではないとする論旨(「全集」の該当ページはp133〜135)が想定する「オペラ」は、17世紀前半のモンテヴェルディ及びその前の生成期の作品を指しているのか。或いはヴァーグナーは、独立したレスタティーヴォがなくなっているので、この範疇には入らないというのか。

が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2016/01/02(3254日経過)
記録初日
2014/12/29(3623日経過)
読んだ本
1072冊(1日平均0.30冊)
読んだページ
363398ページ(1日平均100ページ)
感想・レビュー
835件(投稿率77.9%)
本棚
13棚
性別
年齢
65歳
現住所
三重県
自己紹介

こんにちは。「読書メーター」で皆さんと交流できることを楽しみにしています。
 半世紀余り、手当たり次第に本を読んできました。愛読してきたのは、

・「モームの世界の10大小説」とその周辺
・いわゆる黄金時代の本格推理小説
・トーマス・マン
・ヘッセ
・プルースト
・チェーホフ
・O・ヘンリ
・ジャック・フィニイ
・マッカラーズ
・ジェイン・オースティン
・紫式部(数種の現代語訳「源氏物語」)
・夏目漱石
・寺田寅彦
・内田百閒
・中里介山(「大菩薩峠」)
・永井荷風
・谷崎潤一郎
・江戸川乱歩
・石川淳
・尾崎翠
・福永武彦
・北村薫始め「日常の謎」を扱ったミステリ
・恩田陸
・丸谷才一(いわゆる雑文を中心に)
・吉田秀和
・大島弓子(漫画家)
・新幹線網が張り巡らされる前の時刻表(宮脇俊三氏が健筆を振るった頃)
・和漢朗詠集
・新古今和歌集
・「折々のうた」他の詞華集
・歳時記


 感想文は遠い昔の学生時代から大の苦手で、これまで記録も投稿も断続的かつ一部に留まっていましたが、皆さんに触発され、以前読んだ作品も含め少しずつでも投稿していければと思っています。(追記。2020年10月頃、遅まきながら読書メーターに参加できる歓びを本格的に知ることとなり、読書のペースが上がるとともにほぼ全ての本に投稿するようになりました。)

 読書の他には、クラシック音楽(地味めのものを中心に)鑑賞と、筆記具(インク含む)集めが主な趣味です。

 これからに向けて「積読本」「読みたい本(再読したい本・・これがまた多い・・を含む。)」を徐々に整理していたら、まだまだ増えていくことに気付きました。残りの人生でどこまで読むことができるのか、時々不安になります。
 これからもお付き合いの程、よろしくお願いいたします。

  (2020年11月28日に一部追加修正しました。)
  (2021年1月18日から19日にかけ、書き漏らしていた愛読する作者、近況を追加をしました。)
  (2021年3月7日に、愛読本としてマッカラーズを追加しました。)
  (2023年8月27日に、愛読本としてオースティンを追加しました。)

読書メーターの
読書管理アプリ
日々の読書量を簡単に記録・管理できるアプリ版読書メーターです。
新たな本との出会いや読書仲間とのつながりが、読書をもっと楽しくします。
App StoreからダウンロードGogle Playで手に入れよう