この物語の前半は、「現在」と「二年前」が交互に展開されていて、淡々とした文章だった。しかし、後半に近くなるにつれて、怒涛の勢いで伏線回収されていく様は見事だった。殺人を犯した犯人が、のうのうとシャバに戻って実家の家業を継いでいる。その一方で、何も悪いことをしていなくても、どれだけ必死に生きても、報われない人が沢山いる。河崎が言うように、この世の中は不公平で滅茶苦茶なのかもしれない。そして、私もドルジのように、世の中の動物や人間が幸せになればいい、そんな風に思えるようになりたいと思った。

難破船からただ一人助かり、無人島に流れ着いたロビンソン・クルーソー。この男は、たいそうしたたかな人物で、人の恐怖心を利用した人心掌握に非常に長けている。そのいわゆるジャイアン的な発想は、長年の無人島でのサバイバル生活と、一人ぼっちで孤独に耐えてきたことによるメンタルの強化にあるだろう。クルーソーは、無人島での３５年間に及ぶ生活の中で、鋼のメンタルを獲得し、独学で様々な技術も身に付けた。やはり人間は、人生の中で何回かは逆境に晒され、現状打破の為に知恵を絞らないと、強くなれないような気がした。

素直であること。謙虚であること。そして真剣であること。この3つの事柄がこの本では特に強調されていた。私は最近、あることで人生の岐路に立たされている。そのため、松下さんの一言一言がとても心に響いたし、身につまされる思いがした。この本には、人間にとって当たり前だと思われていること、そして普遍的なことが平易な文章で書かれている。ただ、ここに書かれている事を全てこなせるほど人間は完璧な生き物ではないし、私などはこの半分も出来ていないだろう。だからこそ、自らへの反省のためにも、この本は繰り返し読みたいと思った。

私も比企谷くんと同様、長い間ぼっちだったので、昔を思い出しつつも、共感しながら読むことができた。しかし、中学生くらいまでの私は、比企谷くんみたいに強くなかったので、ぼっちという現状を割り切って考えることが出来なかった。むしろ、ヒエラルキー上位のいじめっ子にパシリにされていたくらいだ。孤高の比企谷くんと、嫌々ながらも長いものに巻かれてしまうタイプの由比ヶ浜さん。どちらの心境も理解できるからこそ、感慨深い読書体験となった。

この物語の前半は、「現在」と「二年前」が交互に展開されていて、淡々とした文章だった。しかし、後半に近くなるにつれて、怒涛の勢いで伏線回収されていく様は見事だった。殺人を犯した犯人が、のうのうとシャバに戻って実家の家業を継いでいる。その一方で、何も悪いことをしていなくても、どれだけ必死に生きても、報われない人が沢山いる。河崎が言うように、この世の中は不公平で滅茶苦茶なのかもしれない。そして、私もドルジのように、世の中の動物や人間が幸せになればいい、そんな風に思えるようになりたいと思った。