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2024年3月の読書メーターまとめ

あきあかね
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5
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感想・レビュー
5
ナイス
178ナイス

2024年3月に読んだ本
5

2024年3月のお気に入られ登録
1

  • くまさん

2024年3月にナイスが最も多かった感想・レビュー

あきあかね
 「母語は自分に近い「本当」の言葉で、外国語は後から学んだ「借り物」の言葉のように思えるが、実はその「借り物」の言葉こそが、まさにそのよそよそしさゆえに、心のもっとも奥ふかくに秘匿されている自己をー無惨なまでにーにあらわにするのだった。(略)それは決して光降りそそぐ明るい場所ではないけれども、そのようなほのぐらい場所を自分のうちに見出し、認めるのは、不思議と静かな慰めを与えてくれる経験でもある。」 今年の東京大学の国語の入試問題で、まだ三十代前半の若きフランス文学者が著した、外国文学、外国語を学ぶ⇒
あきあかね
2024/03/24 22:07

霧雨の降る中にいるような心持ちになる。 「眠りとは紛れなく渡河 夜と朝のしろきほとりに身は濡ちつつ」「箱舟に乗せられざりし生きものの記憶を雨の夜は運び来」 時折見せる、遥かき行く末までを透徹したかのような眼差しにはっとさせられることもある。生活者として日々を送りつつも、天上のような視点を自身のうちに抱く歌人の心に共感を覚えた。 「一生は長き風葬 夕光(ゆふかげ)を曳きてあかるき樹下帰りきぬ」「人死にて言語(ラング)絶えたるのちの世も風に言の葉そよぎてをらむ」

あきあかね
2024/03/24 22:07

歌人の水原紫苑さんの寄せた「人間が荒れ狂う今世紀にこのような美しい歌集が生まれたことをことほぎたい。」という帯紙の言葉は、過言ではない。

が「ナイス!」と言っています。

2024年3月の感想・レビュー一覧
5

あきあかね
 今、家から近い東京国立近代美術館によく通っているからか、本書で紹介される京都国立近代美術館との違いが感じられた。東京の方はやや前衛的な作品も多い印象があるけれど、京都の方は、たおやかで優美な作品が中心となっている。上村松園の『舞支度』や竹内栖鳳の『おぼろ月』、土田麦僊の『大原女』、並河靖之の『桜蝶図平皿』など、時に京都の伝統をモチーフにした、関西に縁のある作家たちの上品で洗練された美しさに心が和む。⇒
あきあかね
2024/03/31 11:45

⇒それぞれの絵に置かれた、詩情にあふれた解説の文章も心地よい。背景となる基礎的な知識を示すとともに、作品の本質を捉え、さらには作家の全作品に通底する思想、理念までをも幅広く示し、絵の理解を手助けしてくれる。 「夏の朝。蓮池のまわりは、陽射しが照りつける前の、おごそかな静寂に包まれています。泥の中から咲く白蓮は、けがれを知らぬ美しさから、古くから尊重されてきました。まさに清浄な生命を、花開かせようとする瞬間。水滴をはじく蓮の葉のみずみずしい輝き。その一瞬を、いきいきと香り高く描いています。

あきあかね
2024/03/31 11:45

生涯にわたって自然をいつくしみ、花鳥画を描き続けた紫峰の言葉です。「美は刹那であると共に、美は実に永遠であらねばならないと思う。」」(榊原紫峰《白蓮図》)

が「ナイス!」と言っています。
あきあかね
 「その話を聞いているとみな実に苦労している。人生をのどかにすごしてきた人はいない。ただ苦を苦にしないといってはいいすぎであろうが、苦にまけなかったのである。」 全国各地を遍く歩いて人びとの生活、暮らしを渉猟した民俗学者宮本常一が、女性に焦点を当てた一冊。女工哀史のような悲話も多く語られるが、女性のたくましさやしなやかさ、カラリとした明るさも感じられる。映画『もののけ姫』で、たたら場が焼け落ち、何もかもおしまいだとうなだれる夫に対して、「生きてりゃなんとかなる。」と言うおトキさんの言葉に、⇒
あきあかね
2024/03/26 06:30

⇒絶望の淵でも光を求められる女性の力を感じたことをふと思い出した。 若い娘たちが春先の夕方、突然村を抜け出して伊勢参宮に行く解放的な旅があったという話や、武家とは違って日本の民間の習俗では女性が家督を継ぐ場合もよく見られたという話など、新鮮に感じられた。 対馬の染織の話では、涼やかな夜風が吹く中、月明かりを浴びながら、海辺に糸車を出して一晩中糸を紡ぎ、暑い昼は寝て暮らすという、どこまでも自由で、夢幻的な、桃源郷のような生活が少し前の日本にあったことに驚き、嬉しくなる。

が「ナイス!」と言っています。
あきあかね
 「母語は自分に近い「本当」の言葉で、外国語は後から学んだ「借り物」の言葉のように思えるが、実はその「借り物」の言葉こそが、まさにそのよそよそしさゆえに、心のもっとも奥ふかくに秘匿されている自己をー無惨なまでにーにあらわにするのだった。(略)それは決して光降りそそぐ明るい場所ではないけれども、そのようなほのぐらい場所を自分のうちに見出し、認めるのは、不思議と静かな慰めを与えてくれる経験でもある。」 今年の東京大学の国語の入試問題で、まだ三十代前半の若きフランス文学者が著した、外国文学、外国語を学ぶ⇒
あきあかね
2024/03/24 22:07

霧雨の降る中にいるような心持ちになる。 「眠りとは紛れなく渡河 夜と朝のしろきほとりに身は濡ちつつ」「箱舟に乗せられざりし生きものの記憶を雨の夜は運び来」 時折見せる、遥かき行く末までを透徹したかのような眼差しにはっとさせられることもある。生活者として日々を送りつつも、天上のような視点を自身のうちに抱く歌人の心に共感を覚えた。 「一生は長き風葬 夕光(ゆふかげ)を曳きてあかるき樹下帰りきぬ」「人死にて言語(ラング)絶えたるのちの世も風に言の葉そよぎてをらむ」

あきあかね
2024/03/24 22:07

歌人の水原紫苑さんの寄せた「人間が荒れ狂う今世紀にこのような美しい歌集が生まれたことをことほぎたい。」という帯紙の言葉は、過言ではない。

が「ナイス!」と言っています。
あきあかね
 語学の天才、エコロジーの先駆者と呼ばれ、民俗学、人類学、植物学など文理の垣根を超えた多様な分野を対象とし、ネイチャーなどへの論文の投稿によって国際的にも名を馳せた南方熊楠。その研究の多くは「未完」のままであったが、膨大な抜書に見られるように、インプットの尽きせぬ情熱には驚かされる。完成したアウトプットのみを重視し、細分化された狭い分野での論文執筆に追われる現代の学会の風潮とは対照的に、広く万物を知ろうとする、真の意味での「博物学」を追い求め、自由に知の空間を泳いだ熊楠は、まさに知の巨人と言えるだろう。
が「ナイス!」と言っています。
あきあかね
 「私の究めたいのは、抽象化されたり、また一般の統計に出てくるような対象ではない。悠久の過去から未来にわたる因果の中で、沖縄人の生命の本質がどのように運命と対決したか。またするかということである。」 まだアメリカ統治下だった1950年代末の沖縄を訪れた芸術家の眼による記録。冒頭に置かれた、柳田国男の『山の人生』の中の「痛切な生命のやさしさ」を示す挿話から心を掴まれ、沖縄を見ることで、沖縄文化だけでなく、日本文化を、日本人の根源的な生き方を、⇒
あきあかね
2024/03/10 12:18

⇒さらには大陸文化や西洋文化との差異までを浮かび上がらせる視野の広さも魅力的だ。 「自然と人生をひっくるめて、ともに許容するおとなしい柔かさ。運命を見ぬき、やさしく諦観し、しかも人生を捨てきらないで、自分達の分量だけで充実して生きることを楽しんでいる」 わずかな滞在期間にも関わらず、沖縄の人びとの本質をつかみ、この旅の十数年後に補記した「本土復帰にあたって」の小文では、「本土なみ」になるのではなく、沖縄の独自性を貫き、日本文化こそ「沖縄なみ」になるべきと説く。

あきあかね
2024/03/10 12:19

朗らかで、伸びやかで、悠久の時が流れる沖縄への深い愛情が文章の隅々から感じられる。そして、その裏返しの米軍という存在の異質性も。

が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2018/07/17(2113日経過)
記録初日
2018/10/31(2007日経過)
読んだ本
626冊(1日平均0.31冊)
読んだページ
165029ページ(1日平均82ページ)
感想・レビュー
626件(投稿率100.0%)
本棚
249棚
性別
職業
公務員
現住所
東京都
自己紹介

国内外の小説、詩、短歌、俳句など幅広く好きです。歴史や美術、社会科学にも興味があります。

最近は、辻邦生、宮沢賢治、丸谷才一、須賀敦子、藤沢周平、柴田元幸などをよく読んでいます。

心あたたまり、人生を豊かにしてくれるような本との出会いを、これからも大切にしていきたいです。

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