読書メーター KADOKAWA Group

SIGERU
さんの感想・レビュー

SIGERU
新着
日常系ミステリの名品。北村薫の短篇集『空飛ぶ馬』と共に、折にふれて繙読してきた。読み返すたびに瑞々しい。光原百合自身も、こういう透明な作品は、その後書けていないようだ。作者にとっても一期一会の、いわゆる「幸福な」短篇集といえる。 舞台は、八ヶ岳や清里の美しい自然。主人公の若杉翠は、森林レンジャーの護さんに好意を抱いている。探偵役となる彼は、関係者に語りかけることによって、人の心の秘密を解きほぐしていく。京極夏彦の「憑き物落とし」に近い手法だが、護の語りは誠実で、人の心の奥底にまで届く錘のように重厚だ。
SIGERU

お気に入りは、まず第二話。一枚の写真が、人のこころという名の解きがたい謎を、須臾にして照らし出すラストが華麗だった。まさに、紫電一閃のあざやかさ。 そして第三話。手がかりは、拒食症になった若い女性が書いた創作民話。民話という意匠の蔭に匿された子どもの苦悩が、心の叫びが、切なく哀しい。真相が解明され、女性がようやく救われたとき、読み手の私も思わず快哉を叫んでしまった。 人間性への洞察が底光りするような、心に沁み入る二篇。 おおた慶文のイラストが、この清澄な書に、一掬の華を添えている。

09/14 13:34
  • 玄趣亭
  • kiyoka
  • kaho
  • もけ
  • 氷見
  • 都わすれ
  • キャンダシー
  • kaoru
  • 夢追人009
  • のっち♬
kaoru

SIGERUさん、是非読んでみたいです!🎶

09/14 15:22
  • 玄趣亭
  • SIGERU
SIGERU

kaoruさん、コメントありがとうございます!ちょっと入れ込みすぎたかなと、不安になっていたところです(笑)。作者自身が述懐しているように、文章表現、特に会話には、若書きゆえの稚なさも残りますが、好きなミステリ短篇集です。

09/14 15:59
  • 玄趣亭
  • kaoru
玄趣亭

SIGERU様。懐かしい本です。一時期、林間学校施設の管理の関係で清里方面へ出張することが多かったので、作品舞台に親しみを感じて読みました。高原風景を背景に純な青春を感じる作品になっていましたね。

09/16 00:06
  • kaoru
  • SIGERU
SIGERU

玄趣亭さん、ようこそ! 清里方面に出張、いいですねえ。仕事とはいえ、何だか楽しそうです。 純な青春。そう、作品も作者も青春のさなかにあって、二度と繰り返し得ないタイプの佳品でした。

09/16 00:13
  • kaoru
  • 玄趣亭
0255文字
全5件中 1-5 件を表示

SIGERU
さんの最近の感想・レビュー

ドルジェル伯の舞踏会 (新潮文庫)

ドルジェル伯の舞踏会 (新潮文庫)

ラディゲ
「ドルジェル伯の舞踏会のような心理小説は時代おくれなのだろうか?」。そう戯れた…続きを読む
日本霊異記 (平凡社ライブラリー)

日本霊異記 (平凡社ライブラリー)

日本最古の説話集に、物語の原型を見た。薬師寺の僧侶、景戒により平安初期に編纂さ…続きを読む
タマンゴ・エトリュスクの壷―メリメ傑作短編集 (1966年) (新潮文庫)

タマンゴ・エトリュスクの壷―メリメ傑作短編集 (1966年) (新潮文庫)

メリメ
メリメの作風について、三島由紀夫は「作者の冷たい目に踊らされた作中人物の原始的…続きを読む
狸の匣

狸の匣

マーサ・ナカムラ
開巻の詩『犬のフーツク』を読むと、マーサ・ナカムラが、まだ若い詩人であることを…続きを読む
高畠華宵 - 美少年・美少女幻影 (別冊太陽)

高畠華宵 - 美少年・美少女幻影 (別冊太陽)

大正から昭和にかけての挿絵に嵌り、別冊太陽の絵本シリーズを蒐集していた当時の一…続きを読む
遊女の対話 他三篇 (岩波文庫 赤 111-2)

遊女の対話 他三篇 (岩波文庫 赤 111-2)

ルーキアーノス
古典を読む楽しみは、現代にも通じる普遍的な真理を、明晰簡勁な表現で味わえること…続きを読む

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2016/02/11(3333日経過)
記録初日
2015/10/10(3457日経過)
読んだ本
546冊(1日平均0.16冊)
読んだページ
140985ページ(1日平均40ページ)
感想・レビュー
332件(投稿率60.8%)
本棚
6棚
性別
血液型
AB型
現住所
東京都
自己紹介

アイコンは自作イラストです。

古典文学、幻想文学、海外ミステリが大好きです。
映画や美術も大好きです。
深夜アニメやマンガも大好物です。同人誌を制作してコミケに出入りしていたこともあります。

溺愛する作家(手紙や日記に至るまですべて読んだ)
チェーホフ、ポー、梶井基次郎
中島敦、ラディゲ(2022追記)

心酔する作家(作品はすべて読んだ)
ドストエーフスキイ、芥川龍之介、コーネル・ウールリッチ

読書メーターの
読書管理アプリ
日々の読書量を簡単に記録・管理できるアプリ版読書メーターです。
新たな本との出会いや読書仲間とのつながりが、読書をもっと楽しくします。
App StoreからダウンロードGogle Playで手に入れよう