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2024年8月の読書メーターまとめ

パトラッシュ
読んだ本
35
読んだページ
11924ページ
感想・レビュー
35
ナイス
7543ナイス

2024年8月に読んだ本
35

2024年8月のお気に入り登録
5

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2024年8月のお気に入られ登録
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2024年8月にナイスが最も多かった感想・レビュー

パトラッシュ
あの『爆弾』にこんな続編が来るとは、作者のアイデアに脱帽する。無敵のテロリストたるスズキタゴサクを裁く東京地裁法廷が、犠牲者遺族にジャックされるのだから。そこに前作でスズキに翻弄された類家が登場し、意味不明な要求を突きつける占拠犯とやり合うシーンにはゾクゾクする。多くの人間の怒りや狂気や思惑が重なり、混迷が深まるサスペンスも圧倒的だ。それまで単なる人質だったスズキが頭脳と弁舌でダークヒーローとして復活する終盤は、悪の勝利にもかかわらず不思議なカタルシスで満たされる。類家とスズキの最終決戦が今から楽しみだ。
エル・トポ
2024/11/21 22:07

やっぱりスズキタゴサクがダークヒーローですよね。

が「ナイス!」と言っています。

2024年8月にナイスが最も多かったつぶやき

パトラッシュ

トランプ暗殺未遂事件は世界にショックを与えたが、射殺された犯人が20歳だった事実こそ考えさせられる。政治的思想的宗教的な背後関係も明らかになっていないが、トランプを殺せば歴史に名が残ると思ったのではないか。下手な陰謀論よりも、よほど納得できるが。2024年7月の読書メーター 読んだ本の数:35冊 読んだページ数:11892ページ ナイス数:7602ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/1009613/summary/monthly/2024/7

トランプ暗殺未遂事件は世界にショックを与えたが、射殺された犯人が20歳だった事実こそ考えさせられる。政治的思想的宗教的な背後関係も明らかになっていないが、トランプを殺せば歴史に名が残ると思ったのではないか。下手な陰謀論よりも、よほど納得できるが。2024年7月の読書メーター 読んだ本の数:35冊 読んだページ数:11892ページ ナイス数:7602ナイス  ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/1009613/summary/monthly/2024/7
エル・トポ
2024/08/01 12:35

トランプは撃たれたことにより、余計に支持者に勢い付けさせちゃいましたね。犯人の狙いとは正反対の結果になってしまいました。失敗した時の事も考えて行動してほしかったです。

が「ナイス!」と言っています。

2024年8月の感想・レビュー一覧
35

パトラッシュ
戦争は戦う国双方の地理と歴史に制約されるとする地政学の主張は、軍事技術の高度化で時代遅れになると見なされてきた。しかしウクライナやガザでの戦争を予言した本書は、戦争指導者の心理や思考法こそ地政学に縛られていると明らかにする。戦争が他の方法による政治の一手段ならば、政治家は国益私益共に最大の政治的効果を上げる終わり方を追求する。つまり人間の分断を表現する地図上で、自国が最大限の政治的利益を上げる絵を描かんとするのだ。マッキンダーやマハンらの古典的地政学は、戦争指導の研究には今なお有効であると納得させられる。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
『光る君へ』の安倍晴明は平安朝政界の黒幕の如く暗躍していたが、本書が描き出す陰陽師は貴族の心理療法を担当する精神科医のイメージか。科学や医学が皆無の時代に高位の名門公卿であっても、相次ぐ天災や疫病に途方に暮れていた。そんな彼らに占いや呪術で進むべき道を示して安心させ、パニックに陥らず政治が円滑に行われるようにしたのだ。しかし貴族たちを説得し納得させるには陰陽五行説や祭祀、暦法から医薬まで膨大な知識を要し、事情に応じて使い分けねばならなかった。その意味で陰陽師は朝廷の医師兼テクノクラートととも称せるだろう。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
安部公房については愛人と娘が本を書いているが、それぞれの立場から見た体験記・印象記の性格が強かった。没後30年余で初めての文学研究者による伝記とは意外だが、小説から演劇、放送に写真まで幅広い活動全てに行き届いた調査研究ができるのに時間が必要だったか。壮絶な引き揚げ体験から作家としての活躍、共産党員でありながら車やファッションを好み、平気で俗っぽいこともするオヤジ的側面など、やりたいように生きながら妙に不安定でフラフラする姿が描き出されている。やはり文学を書いた人の生き様は、消しゴムで消すのは不可能なのだ。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
戦争に勝つとは戦場の隅々までライフラインを構築し、ロジスティクスを絶やさず運営する経営能力こそカギであると、20世紀の諸戦争からウクライナ戦争までを取り上げて論証していく。しかし実戦では予定など簡単に覆り、連合船が普通の現代戦では各国の戦争文化の差異もあり計画通りにいかないのが普通という。「平和のために戦争を」という著者の考察に同意できる部分は多いが、同じ引用や補助線が目立ち却って内容がブレている印象だ。本にするのなら過去に発表した文章を集めるだけでなく、全体に手を入れて統一した論考にしてもらいたかった。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
人は謎があると真相を知らずにはおれない。テイクアウト専門レストランのイケメンオーナーシェフは、思わぬ事件に出くわした配達員から事情を聞くや簡単に謎を解いていく。語られる解決は鮮やかで、全く証拠はないが真実は他にないと納得させられる。しかし彼らはシェフ自身の頭脳と不可解さに心を奪われ、シェフという大きな謎を解きたくなる。このため収録6編ともカタルシスなく終わるが、シェフは人ではないと考えれば思い当たる。ファウストの望みをかなえる代償に魂をもらうメフィストフェレスそのものであり、レストランは魂の狩り場なのだ。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
鹿島さんは自らの書痴ぶりを山のように書いてきたが、今回は大好きなパリについての本と本屋の物語とくれば最高の舞台の主演俳優になった気分か。これまで収集してきた新旧様々な本の紹介を通じてパリの歴史を振り返り、フランス人が世界の首都と誇る都市をいかに記録し、そこで本を売買する職業を誇りに思ってきたかをこれでもかとばかり語り尽くす。パリと本と両方好きでなければついていけない部分もあるが、自分もそうだと自負する私には実に面白く楽しい読書だった。次のパリ旅行にはガイド代わりに持っていって、掲載された店を歩き回ろうか。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
勅撰和歌集は八代集まで有名だが、残り十三代集は知られておらず後世の評価も低い。しかし十三代集期こそ勅撰集に権威が備わり、その成立事情も複雑になっていく。鎌倉幕府の誕生で権力を握った武士が、今度は文化的地位を求めて勅撰集への入集を望んだ。しかも皇統分裂に伴って歌道家も双方に味方する家に分かれ、勅撰集を権勢の証とするようになった結果、1世紀で8回も編纂されたのだ。武士の入集を増やして幕府に色目を使ったり、自らの属する党派を賞賛するために歌壇が栄えた。美しい文化と生臭い政治の表裏一体ぶりは、何ともグロテスクだ。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
アメリカ連続殺人史でH・H・ホームズは有名だが、彼が殺しを重ねていた19世紀末のシカゴでは万博開催の準備が進んでいた。国と市の威信をかけた万博成功のため政治家や建築家が必死に努力する一方で、殺人を趣味とする男が何の咎めも受けず女を殺し続けたのだ。両者は全く無関係だったが、あまりに落差の激しい光と影のコントラストが同時進行していた現実には思わずめまいがする。その後のアメリカ史においてシカゴ万博は美しく装われた表の象徴であり、ホームズの犯罪は暗い闇の水脈を生み出した。正常と狂気が同居する国の根源を見た思いだ。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
戦後出版界では低俗なカストリ雑誌が大発生したが、混乱期だからこそ人生の指針を探す読者も存在した。しかも高尚な文学は難しいが、大衆向けよりランクアップした読み応えある作品を求めた。それをいち早く察知した出版社は「中間小説」と名付け、雑誌で新人にどんどん書かせた。この状況に最も適応したのが年に10作も長編を書けた松本清張であり、また吉行淳之介や遠藤周作は依頼のあった雑誌のレベルに応じて書き分け中間小説誌にも盛んに発表した。時代の求める小説を書ける能力のある流行作家が、中間小説という形で出版文化を規定したのだ。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
シュペーアの回想録は、ヒトラーの私生活やナチスの内情について興味深い事情を伝える。そこでは自分について戦争遂行に尽力した有能なテクノクラートだが、ユダヤ人虐殺などナチスの犯罪には無関係と主張してきた。ニュルンベルク裁判が認めたこの人物像は長く信じられてきたが、実際は自らの名誉を守るため嘘をついた偽善者だと告発する。権力拡大のため首都改造計画や軍需工場でユダヤ人や戦争捕虜を奴隷のように酷使した事実を隠すため、アリバイ作りに生涯を費やしたのだと。善良なるナチなど存在しないと痛感させられる、説得力に満ちた本だ。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
日高の牧場で生まれた才能を感じさせる仔馬が、周囲の人間を振り回していく。馬主は浮気した夫への復讐で馬を買い、調教師師弟は常識の通用しない馬に悩み、騎手はレース中に振り落とされる。そんなヤンチャぶりに牧場関係者は心配を募らせて悩み議論するが、我関せずとばかりやりたい放題だが輝かしい戦績を重ねる馬こそ事実上の主役か。これまでの河﨑作品に必ず出てきた悪や狂気や不条理は皆無だが、馬へのロマンに生きる人びとの姿が愛おしく清々しい。子供と恋愛を除き競馬関係の描写を強化した『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』を読んだ気分。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
あの『爆弾』にこんな続編が来るとは、作者のアイデアに脱帽する。無敵のテロリストたるスズキタゴサクを裁く東京地裁法廷が、犠牲者遺族にジャックされるのだから。そこに前作でスズキに翻弄された類家が登場し、意味不明な要求を突きつける占拠犯とやり合うシーンにはゾクゾクする。多くの人間の怒りや狂気や思惑が重なり、混迷が深まるサスペンスも圧倒的だ。それまで単なる人質だったスズキが頭脳と弁舌でダークヒーローとして復活する終盤は、悪の勝利にもかかわらず不思議なカタルシスで満たされる。類家とスズキの最終決戦が今から楽しみだ。
エル・トポ
2024/11/21 22:07

やっぱりスズキタゴサクがダークヒーローですよね。

が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
藤原定家が和歌の見立て殺人事件を推理するとは、これ以上の名探偵はいない。源平合戦後の荒れた京都を舞台に世相のトリビアもたっぷり盛り込んで、愛する和歌を殺しに使われて怒り狂うエキセントリックな定家が微笑ましい。『蝶として死す』などで明敏な頭脳を披露した平頼盛から死体検案術を受け継いだ長男保盛とペアを組んで活躍する姿は、金田一耕助の先祖にも思える。しかし、この調子で定家の関わった事件から後の百人一首に繋がるのなら、更に95件は殺人が続く勘定になる。承久の変や新古今和歌集編纂を経て、あと19冊は続編が出るのか。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
人は誰も幸せになりたいと望む。しかし幸せになる方法を考える際に、認知機能が歪んでいると自分や周囲に逆に不幸をまき散らす。非行少年だけでなく普通の人であっても、思いがけぬ歪みがひそんでいて異常な事態を招くのだ。その歪みとは何か、多くの実例を怒り、嫉妬、自己愛、所有欲、判断の5つの視点から分析し、どうすれば巻き込まれず問題を解決できるのかを考えていく。そんな人からはひたすら逃げてきた自分だが、著者の提示する問題解決の手順を知っていれば人間関係の苦労が減っていたか。生き方の上手下手は、まさにこの点かもしれない。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
初めて『夢みる惑星』を読んだ時、文明の滅亡を美しくも鮮烈に描くドラマに圧倒された。また『ワン・ゼロ』は現代を舞台にしながら、シリアスな魔術とハイテクの戦いに引き込まれた。これほど優れた漫画家ながら寡作のまま早逝されたと聞いていたが、総特集シリーズの1冊として全体像を知れる本が出たのは嬉しい。萩尾望都をはじめ豪華な寄稿陣と作品解説、スケッチやインタビューなど初めて読んだ数々の文章まで、久しぶりに佐藤史生の世界を堪能した。本書をきっかけに、今は古本すら少なくなってしまった佐藤作品の再刊や再評価が進んでほしい。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
巨大な自然災害と闘うドラマはハリウッド映画の定番だが、延暦の富士山噴火に巻き込まれた群像劇はもっと激しく容赦ない。主人に置き去りにされた家人の鷹取が、庶民など見捨てられるのが当然の世で必死に生きねばならないのだから。未来を失った鷹取にとって苦痛と絶望しかない状況だが、数え切れぬほど人の死と弱さ愚かさを見て、牧場に仲間と居場所を見つけ助け助けられる経験を重ねて成長する姿が噴火からの復興と重なる。坂上田村麻呂に仕えた友人が後悔なく死んだと知り、自分も精一杯生きるだけだと悟るラストは見事な成長小説となっている。
るい
2024/08/18 10:07

うぐいす鳴くよ平安京794年。この噴火は800年と解説にありました。坂上田村麻呂はこの辺りの人だったのかなどと歴史を振り返りました。

るい
2024/10/18 23:37

お陰様で読むことができました。よくあるお江戸捕り物帖などと比べると、かなり昔の語彙が出てきて、漢字も難しいと思いました。昔を書きながら現代も書いている。そして、おっしゃるように、見事な成長小説でした。ありがとうございました😌。

が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
ダークヒロインたるレイチェル・サヴァナクの正体を巡るサスペンスで惹きつけた第1作に比べ、残念だがピンとこない展開に。冒頭でレイチェルが警告した謎の男が殺されて物語が進むと思いきや、万人に殺人犯と目されながら逃げおおせた面々を調べる奇妙な女性犯罪学者の話に主軸が移る。その容疑者たちを自宅に招く話が停滞するうちに別口の殺人が相次ぐが、作品と結びつかない。ようやくラストでレイチェルの見事な謎解きが披露されるが、多くの伏線を回収せぬまま消化不良で終わってしまう。ミステリ読者の求めるカタルシスを故意に無視したのか。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
異能力が当然の世界で犯罪を追うミステリは珍しくないが、警察小説として展開したのは初か。従来の手法で解決できない事件のため、公安部内に内外から「コトダマ」を使える人材を集めた捜査班を設ける設定から惹かれる。髙村薫の捜査一課シリーズを思わせる個性的な面々を班長として率いる永嶺スバルが、彼らをまとめて正義を貫くため苦労する姿は合田雄一郎に相通じる。証拠や異能力の使用ルールから犯人を推理するスタイルを崩さず、何気ない記述が伏線となるなど構成も巧みだ。これで警察組織内の軋轢が有機的にストーリーに絡めば満点だったが。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
世界各国の情報機関にとって、敵国の経済力調査は最重要の仕事だ。同様にカネがなければ滅びると身に染みていた戦国大名も、敵対大名の経済力を気にしていた。その筆頭である信長が、金銀の鉱山を有する武田と毛利の実態調査を明智光秀に命じるところから物語が動きはじめる。いわば歴史小説に経済と冒険とスパイ戦の要素を投げ込み、さらに戦国期最大の経済官僚である後の大久保長安が加わってカネでする戦いが展開される。戦争と権力闘争以外の経済の場で天下支配の行く末が決まる有様は、新しい視点から戦国時代を見る面白さを満喫させてくれる。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
天皇直属のエリートから敗戦の責任者として蔑まされる存在へ。8月15日で立場が暗転した旧陸士出身の元将校らも、戦後日本で必死に生きねばならなかった。何とか同窓会たる偕行社を復活させたが運営に苦労し、戦争を指導した年長者と前線で戦った若年層とで意見が食い違うなど内部対立も激しかった。それでも当初は過去の反省の声が強かったが、やがて会の中心となった若年層は歴史修正主義へ傾倒するようになる。どれほど先人を批判してきた若者も、老いれば自らのプライドを再確認したくなる。人の弱さ愚かさは、こんなところにも露呈するのだ。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
初めてインターネットを使ってみて、世界の情報を瞬時に知ることができる技術に驚嘆した。19世紀半ばにモールス信号を使った電信が実用化された当時の人びとの反応も、テレビも電話もコンピューターもないだけに魔法かと思えたろう。そこで起こった技術開発競争とスクープ合戦に詐欺、オンライン恋愛にハッキングなど、ネット時代と全く同じだった。進化した技術を見せつけられた人の反応は150年前も現代もまるで変っていないとは、情報化に対応する能力に限界があるのは明らかだ。適当なところでハイテク化を止めた方が人類のためではないか。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
外国料理のレストランは、本場の味そのままなのと日本人向けに味付けをアレンジしたものに分かれる。どうせ食べるのなら前者でという原理主義者の主張も当然だが、リピーター客を確保して店が長続きするのはアレンジ派だ。外国の庶民の味覚は日本人の舌に合わず、一度食べたら二度と注文しないと思えるのも多い。結果として日本風ローカライズ各国料理が広まり定着するのは、宗教と同じく世界の果てに位置する日本の宿命か。そんな状況を著者は容認しつつも、アレンジから現地の味へステップアップをと願う。本当の意味で外国の価値観を知るために。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
(承前)ポールは自分の手が血まみれであり、多くの裏切りと陰謀に囲まれているとわかっていた。そのため全権力を捨てて罪を一身に負ってアラキスの砂漠へ去り、愛妃チェイニーが命と引き換えに産み落とした双子へのフレメンの忠誠を確立した。普通の独裁者なら一層のテロル的粛清を重ねるところだが、逆に自らを犠牲としてアトレイデス王朝永続化への布石を打っていた。権力に溺れない大量殺戮者とは巨大すぎる矛盾だが、その矛盾を一掃する巨人としてのポールを描き出したといえる。宇宙を統べる宗教国家という虚構を包み込む神話が誕生したのだ。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
旧訳を読んだ際、ジョン・キャンベルが雑誌掲載を拒んだのも当然と思えた。ここに登場する皇帝ポールは聖戦で610億人を殺し、憲法は究極の暴政をもたらすと断言する宗政一致の独裁者なのだから。フレメン解放のため立ち上がった若き英雄の面影が失われた彼の恐怖政治下にあって、絶対権力の座を巡り展開する宮廷陰謀劇など歓迎されなかったのだ。しかし、あえて闇落ちしたポールを描いたのは、どんな理想主義者も現実政治に対する権力者となれば必ず腐敗堕落し、正義や悪とは相対的なものでしかないというハーバートの思想故ではないか。(続く)
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
自分が認知症だと自覚していない殺し屋とは奇抜な設定と思ったが、むしろアーサー・ミラーの芝居『セールスマンの死』を書き直したのではないか。老いたウィリー・ローワンは誇りを持っていた仕事を失うが、同じ63歳のマティルダは認知症でも腕前は衰えず、邪悪な蛇の如く死体を積み重ねていく。どちらも社会の変化に対応できず、過去の栄光にすがって自分は間違っていないと慰めている。その果てに自死するウィリーに対し、生きる意志にあふれるマティルダは別の衰弱老人に殺されてしまう。ウィリーの死は悲劇だが、マティルダの死は喜劇に近い。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
一時読み耽ったラドラムの陰謀小説を基準に、同種の作品を判断してしまう。その結果では、ラドラムの失敗作と同レベルか。生まれるのが百年遅すぎた極右の老人が、安倍暗殺事件の黒幕というアナクロな設定。犯人が朝日新聞支局襲撃事件と同じで、大事を起こすため数十年間も秘かに飼っていたとは現実性ゼロだ。ジャーナリストが事件に巻き込まれ命を狙われるのも、ありがちな上に小物すぎてつまらない。読者を驚かす壮大な壁画を描こうとして、却ってゴテゴテ塗り重ねた意味不明な抽象画になってしまった。『マタレーズ』を読んで出直せと言いたい。
るい
2024/08/10 06:59

ラドラムって存じ上げなくてググってみて、「ジェイソン・ボーン」の原作の方と知りました。映画のみ見ました。柴田氏「暗殺」と関連無しのコメントすみません。m(__)m

punyon
2024/08/17 15:28

(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)ウンウン♪ 激しく同意

が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
同じ言葉で表現されていても、過去と現在では全くの別物なのは珍しくない。日本人が慣れ親しんでいる「村」も最初は人間の集団を意味していたが、秀吉は太閤検地において領知権と所有権を分離して大名鉢植え化の基礎にしようとした。しかし江戸時代に新田開発と都市膨張で飛び地が珍しくなくなると、村を行政の末端単位にしようと考えた明治政府は、所有地不明の土地をあぶり出すため秀吉構想を事実上復活する形で再編を進めたのだ。そうして成立した村を、現代人は自然に成立したと思い込んでいる。秀吉の政治的先見性と有能さを再認識させられる。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
実はガチ中華の店には行ったことがない。昔中国の四川省から雲南省を旅行した際、観光客受け入れ態勢ができてなかった地方料理の洗礼を受け、あまりの辛さに舌が痺れたり腹痛を起こした苦い経験がある。その後の中国旅行ではガイド本に載る程度の店で食べるようにしてきたが、経済発展もあり舌の肥えた中国人向けに洗練され味がまろやかになったとは感じていた。そんな料理ならあえてガチ中華を掲げる店に行かなくてもと思っていたが、在日中国人の増加もあり結構旨い店が増えてきたと知った。また変な店にぶつかると怖いけど、一度は行ってみるか。
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パトラッシュ
手塚・石森・藤子のマンガやアニメで育ちSF好きになったクチだが、単なるファンではなく科学の最先端であるAI研究者になった人がこれほどいたとは。現実の科学に興味を持つきっかけとなったのみならず、映画やドラマ、ゲームを含めたフィクションで描かれた夢の技術を現実化したい思いをかき立てられたのだ。人類の未来に希望を持つか絶望を見るか、SFに影響された体験が科学者を生んで社会を変革する力となった。坂村健氏の言う通り、予定調和でない突破力あるイノベーションは想像力からしか生まれない。SFは夢のある科学の揺り籠なのだ。
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パトラッシュ
焼肉店など月1度行く程度なので、年に300日は訪れる人など想像もできない、そんなプロの肉好きが書いた牛肉ビジネスの内幕は、意外性と驚きに満ちている。日本三大和牛は但馬牛にルーツを持ち、ランク付けと美味さは比例しないとは思わなかった。内臓の鮮度の見分け方を知るか否かで大きな違いが出るとか、タンは皮の色で大まかに分けていたとかも。焼肉店やステーキ店は若者離れが進み、人手不足もあって未来が楽観できないとは。ファスト教養本の一種かもしれないが、無知な一般人としてはこれだけ知って店に行くかどうかで大差が出るだろう。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
民主主義が進み貧困層も政治に参加すると、貧富の格差是正を考える学問として経済学が発展した。欧州では福祉国家化が一応の成果を上げたが、強制的な平等実現を唱えたマルクス経済学はソ連崩壊で失敗し、新自由主義の台頭で格差は一層顕著となった。格差問題と対峙してきた経済学の歴史を俯瞰し、成長と公平性が両立する政策を提案する。最低賃金上昇や高齢者雇用拡大など一部は実現しているが、強力な既得権益の突破なくして根本的な改革は無理な点に言及していない。自由が前提の資本主義で強い権力の問題を考えねばならない時期が近付いている。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
やはり自筆原稿というものには、作家の人間性が凝縮されている。訂正部分を真っ黒になるまで消した橘外男を筆頭に、特に消し痕には各人が執筆に際しどれほど神経質であったかが表れている。破滅型と称された嘉村礒多や坂口安吾の文字は、マス目中央にきちんと収まっていてカワイイ。美しい楷書の三島由紀夫とミミズが酔っ払ったような判読不能の石原慎太郎は、思わず笑ってしまうほどの落差だ。文藝春秋から流出した安部公房や大江健三郎の原稿は、その数奇な経緯が一編の小説に思える。自らの思いを伝えようと懸命に文章を綴った息遣いが聞こえる。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
(承前)荒野と化したアメリカで負け組にいると自覚した国民の怒りがトランプ政権を生んだが、原理主義的政策を要求するトランプ支持者と同様に反対派も自分たちの主張を一方的に貫徹するようになった。様々な思想信条の存在を認めた上で妥協や説得を行うのが民主主義のはずだが、その機能を政治が停止してしまったのだ。暴力との親和性が高いアメリカ社会にあって、防波堤となってきた政治が自らの利益のため率先して分断を煽る状況は正気とは思えない。次の選挙でトランプとハリスどちらが勝とうとも、敗者が結果を認めず内乱に陥る恐怖を感じる。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
大統領選の渦中にあるアメリカは、反対政党の支持者を殺しかねないほど深く分断されている。中間層までが貧しくなりアメリカンドリームを奪われた国民は、自分たちをこんな有様にした政府への怨みから完全な自由という建国精神に救いを求めた。従来は話し合いで妥協点を見い出してきた政治家も、逆に妥協せず主張を押し通せば票が取れると気付き強硬姿勢一辺倒となった。そんな社会情勢を掴んだトランプは国民の怒りを煽って大統領にまで上り詰めた。心と金の余裕を失った人民が強い指導者を求める、ヒトラー前夜の状況が再現されつつある。(続く)
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
ミステリでは各所に散りばめられた伏線がラストできれいに回収されると、いい作品を読めたと満足するだろう。しかし考えてみれば、実人生で様々な事態に遭遇しても問題が回収されるなどあり得ない。むしろ心の衝動を抑え切れず暴走してしまい、罪を犯した理由が自分でもわからず、判断の誤りを悔いるのが普通だ。ミステリが最も現実離れしているのは、その部分かもしれない。収録の5短編とも少々作りは人工的だが、人生経験の浅い若者が初めて生きる上では伏線が回収されない事実を知り、苦い思いを噛みしめる青春小説として鮮やかに成立している。
rosetta
2024/08/06 01:14

深いィ考察です!自分もこんなに感想を書けるようになりたいなぁ

が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2019/05/20(2014日経過)
記録初日
2019/05/20(2014日経過)
読んだ本
2148冊(1日平均1.07冊)
読んだページ
699678ページ(1日平均347ページ)
感想・レビュー
2148件(投稿率100.0%)
本棚
8棚
性別
現住所
千葉県
自己紹介

人間の友人はほとんどいませんが、読書だけに浸っていれば満足している変人です。いい年なのに独身ですが、下手に家族を持ったらため込んできた本を捨てられそうで婚活もしていません。私のような存在が少子化の元凶かもしれませんが、知ったこっちゃありません。もし読書を禁止するような政府が成立したら、命を賭けて戦う覚悟だけはあります。

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