読書メーター KADOKAWA Group

2024年6月の読書メーターまとめ

ヴェネツィア
読んだ本
97
読んだページ
13561ページ
感想・レビュー
97
ナイス
43248ナイス

2024年6月に読んだ本
97

2024年6月のお気に入り登録
34

  • サトゥルヌスを喰らう吾輩
  • ことり
  • なっさん
  • TOKKY
  • ノリタス40yoからの読書
  • おはぎ
  • BEAR_HIT
  • chun
  • Chibikonen
  • ロッキーチャック
  • 桜子七
  • TARO
  • renzhen
  • gerBera.m
  • iu
  • ラリー
  • やまなし
  • しま
  • Akari
  • パレス。
  • L
  • 風香 
  • 梅崎 幸吉
  • 腰越ヒロシ
  • ワタ
  • ぽん
  • ある計算円
  • ハタケ
  • ひびつき
  • さぁとなつ
  • 子育て侍
  • ゆゆゆくん
  • イナ
  • 凛

2024年6月のお気に入られ登録
32

  • サトゥルヌスを喰らう吾輩
  • Naohiko Isikawa
  • ことり
  • なっさん
  • TOKKY
  • ノリタス40yoからの読書
  • おはぎ
  • chun
  • Chibikonen
  • ロッキーチャック
  • 桜子七
  • TARO
  • renzhen
  • gerBera.m
  • iu
  • ラリー
  • やまなし
  • しま
  • Akari
  • パレス。
  • L
  • 風香 
  • 梅崎 幸吉
  • ワタ
  • ぽん
  • ある計算円
  • ひびつき
  • さぁとなつ
  • 子育て侍
  • ゆゆゆくん
  • イナ
  • 凛

2024年6月にナイスが最も多かった感想・レビュー

ヴェネツィア
箱根駅伝が始まってからは疾走するスピードで展開していくが、それ以前は比較的ゆるやかに進行する。かといって、走とハイジ以外の選手たち個々の抱える葛藤が詳らかに語られるわけではない。それはひとえに駅伝に収斂させていくためであったと思われる。10人はそれぞれに個性的だが、リアリティを問えば、たしかに大いに無理があるだろう。しかし、作家にとってはそれでもよかったのだろう。現実の可能性としてのリアリティとは別のところにそれを求めていたのだから。そして、それは成功したようにも、また未だ不十分であったようにも見える。
kamakama
2024/06/05 07:56

ヴェネツィアさま、たくさんのナイスをありがとうございました。三浦しをんさんは、作家になられた初期の頃からこの作品の構想をあたためてこられたそうですね。私にとっては本当に大切な作品で、読むたびに新しい感動をいただけるので、くたくたになった文庫本を捨てることができません。最近は箱根駅伝の本が色々出ている事を知り、特に池井戸潤さんの作品がヒット中なので、そのうち絶対読もうと思っています。

ヴェネツィア
2024/06/05 08:03

kamakamaさん、コメントありがとうございます。この作品は長い間の構想がようやく実を結んで誕生したようですね。箱根駅伝はそのもの自体がドラマティックです。

が「ナイス!」と言っています。

2024年6月にナイスが最も多かったつぶやき

ヴェネツィア

手術後の経過は幸いにも順調です。皆さま、今月もどうぞよろしくお願いします。写真は手術支援ロボット、ダ・ヴィンチです。なんだか、楳図かずおの『わたしは真悟』のロボット真悟を小型化したような感じです。☆2024年5月の読書メーター 読んだ本の数:78冊 読んだページ数:13574ページ ナイス数:39434ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/157091/summary/monthly/2024/5

手術後の経過は幸いにも順調です。皆さま、今月もどうぞよろしくお願いします。写真は手術支援ロボット、ダ・ヴィンチです。なんだか、楳図かずおの『わたしは真悟』のロボット真悟を小型化したような感じです。☆2024年5月の読書メーター 読んだ本の数:78冊 読んだページ数:13574ページ ナイス数:39434ナイス  ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/157091/summary/monthly/2024/5
Himeko is not cat
2024/06/09 20:28

経過良好で嬉しいです!ピッツァも解禁ですか😋

ヴェネツィア
2024/06/10 04:50

Himekoさん、ピッツァもカレーも解禁です。現在にいたるも封印しているのは、お刺身(お鮨も)、シュニッツェル(トンカツも)くらいです。ワインはもちろんとっくに解禁。

が「ナイス!」と言っています。

2024年6月の感想・レビュー一覧
97

ヴェネツィア
最初はエッセイのようであったのだが、山男の話以降は小説めいてくる。最後は再び元に戻って幕。どこまでがほんとうの話なのかよくわからないのだが、山男も「知って置おくべき日常の作法」などという本をこっそりと買っているくらいなので、案外お話の全体も多少の脚色はあっても、事実譚であったのかもしれない。また、秘伝は紫紺を染めるには黒いしめった土が必要というところに落ち着くのでもあったから。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
表題作2作を含む、安部公房の比較的初期の11の短篇から構成。まずは懐かしい「デンドロカカリア」から。高校生の頃、日本文学におけるシュールレアリスムというものを初めて知った記念碑的作品(私にとってにすぎないのだが)。「水中都市」にしてもそうなのだが、こちらはとりわけ絵画的な造型にこういう文体もあるのかと目を開かれた。そして衝撃的だったのは「闖入者」。これは後の戯曲『友達』と同趣向なのだが、事柄と主人公の置かれた状況の理不尽では収まらない、すなわち不条理を知った作品。なにかと懐かしい作品集だった。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
エリック・カール作。お話は『くもさん おへんじ どうしたの』などと同じく、毎ページ「ちいさなはねをこし・こし・こし でもあらら おとがでないよ うたえない」が繰り返される。まことにリズミカル、かつ幼児には楽しいかもしれない。もっとも、最後には鮮やかなこおろぎの歌が待っている。絵はもうエリック・カールの本領発揮のカラフルな(とりわけ緑が綺麗だ)昆虫たちのオンパレード。それぞれの虫の特徴の捉え方も実に上手い。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
著者のヨシダナギはフォトグラファー。2009年から2014年にかけて踏破したアフリカ11か国の取材記。すべて単独行のようだが、それぞれに現地ガイドがついている。それにしても冒険ではあっただろう。あの広大なアフリカをアフリカという一言で語るなと著者は言う。その通りだろう。行ったこともないのに危険だと言うなーこれもその通りだろう。ただし、ことさらに偽悪的な文体はマイナスの効果しか生まないのではないかと思う。また、写真は貴重なもの(笑うヒンバ族)もあるのだろうが、写真としてのインパクトはそれほど強くは感じない。
じゃんけん
2024/07/16 20:07

よしだなぎさんの生き方みたいな感じの本でした。(しれっと逃げ出すための本)、ヴェネツィアさんのこの本のレビューからよしだなぎさんを知ったので感謝です。

じゃんけん
2024/08/31 08:51

ヴェネツィアさん、私も読んで見ました。😁

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
この年齢になって初めて読んだ。読んでよかったとしみじみ思う。あやうく自分の読書(文学)体験からこの作品が欠落したままになるところだった。設定も構成も語りもすべてにおいて実に周到な、しかもうまい作家だと思う。まず、ジェルーシャが児童養護施設で育ったとの設定が、彼女がヴァッサーに入学してから(施設から出ることで)の体験をすべて新鮮なものにしていること。それを語る彼女の筆致(視線)はそのまま読者が瑞々しく追体験できること。4年間の手紙が彼女の成長を物語っていること。そして、常に溢れる感受性に富んでいること⇒
ヴェネツィア
2024/06/29 18:26

ちーたんさん、たしかに読む年齢によって印象は大きく違うかも知れません。それこそが優れた作品であることの証明でしょう。

ヴェネツィア
2024/06/29 18:27

てん子さん、今すぐには読む気になれませんが(本書の衝撃のため)いずれ読んでみたいと思います。ご紹介感謝!

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
原話はグリム童話(どのヴァージョンを用いたかは不明)。絵はスイスのイラストレーター、フェリックス・ホフマン。初版は1962年だが、それにしてはモダーンな意匠で古さを全く感じさせない。なお、ホフマンはオペラの読み替え(当時の衣装、風俗ではなく現代に置き換えて演じる)と同じように、このお話も現代に移し替えている。スイス風の村や森の情景が美しい。お話で特徴的なのは太陽も月も恐ろしく敵対的な役割を演じていること。結末があっけないが、これは原話がそうなら致し方ないところか。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
宮沢賢治らしいファンタジーの1篇。イメージのいくつかは、後年の『銀河鉄道の夜』に繋がるだろう。物語の全体はわかりやすく、終結点もはっきりしてはいるのだけれど。シグナル、シグナレス、電信柱などの擬人化がそれに寄与しているのだが、物語の彼方を望見する時、それは永遠にまで伸張していることがわかる。すなわち、メデタシメデタシで終わる以上の可能性を秘めていたのである。もっとも、そうであるがゆえに、物語の結末は夢で終わらなければならなかったのだろう。
宵待草
2024/07/01 08:46

ヴェネツィアさん 今ほどレビューを拝読しました!🙏 私は好学社の発刊で、小林敏也:画の『シグナルとシグナレス』を既読・レビュー掲載して居ます。 共読本が更に加わり、嬉しく思いレビューを拝読しました!🍀 何時も、有り難うございます!🙋 宵待草

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
人間文化研究機構が国立民族学博物館、国際日本文化研究センター、国文学研究資料館と連携し、百鬼夜行を集大成した企画。これらの研究機関に属する第1級の研究者たちが参加しているだけに、本書は現在のところ望み得る百鬼夜行研究の先端に位置しそうだ。こうしてあらためて百鬼夜行図を並べられているのを見て思うのは、これら異形のモノたちはけっして怖くはないということだ。むしろユーモラスでさえあるところに最大の特徴があるのではないだろうか。すなわち、異界のモノたちと人間世界とは真っ向から対立するものではなく、長い間⇒
ヴェネツィア
2024/06/28 16:51

⇒共存してきたのではなかったか。そして、それこそが日本に固有の特質だったと思うのである。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
田島征彦・作。切り絵にしては線が柔らかいと思ったら、型染の技法で描かれているらしい。どのページも黒が力強く、祇園祭のエネルギッシュな(本来そういうものであった)躍動感が伝わる。変形の大型本だが、基本は横でありながら、随所に縦の絵を配し鉾の高さを巧みに強調して見せる。また、7月1日の「吉符入」からはじまり7月24日の還幸祭までを絵巻物のように時間を追って描いてゆくので、祭の全体像もよくわかるようになっている。言うまでもないが、祇園祭は山鉾巡行だけがお祭ではないのである。なお、文章もリズミカルで力感に溢れる。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
物語のようでもあるが、プロットらしいプロットはない。むしろ散文詩といった趣きか。全体の構成もまた未整理にも見えるし、これでいいようにも見える。賢治が歩く行程に従って印象や遭遇した出来事が綴られたようでもあるし、またこれらの景はあるいは幻想であるのかもしれない。さらには、イメージの変転は時としてシュールレアリスティックでさえあるようだ。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
野村進のルポルタージュは7冊目。今回はコリアン世界を巡る旅。まずは在日韓国・朝鮮人として日本に暮らす人々から。本書は出版がいささか古くて1996年なのだが、当時で66万人。ただし帰化した人も多く、リサーチナビでは現在44万人としている(ちなみに中国北東部の朝鮮族の人たちが約200万人、また100万人を超える在米コリアンがいる)。阪神淡路大震災は、あるいは韓流ブームは在日の人たちと、いわゆる日本人の関係を変えただろうか。変えたようには思うが、当然いまだ十分ではない。著者は、日本が内なる異文化を持つことは⇒
ゆいまある
2024/06/28 20:52

漠然と知った気でいた在日コリアンについて分かりやすく書いてあって、そこそこ厚みもあるけど情報量が多くて役に立つ本でした。また読み返したいし、読んでない人には是非お勧めしたいです。

ヴェネツィア
2024/06/29 05:09

ゆいまあるさん、私も再読でしたが、あらためてよくできたルポルタージュだと思いました。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
著者のマックス・ルケードは作家・牧師、絵のセルジオ・マルティネスは経歴がよくわからないが、ヒスパニック系のアメリカ人と思われる。木でできた人形たちが暮らす街では、良いしるしには「お星さま」のシール、だめじるしには、はいいろのシールが身体に付けられる。全身はいいろしーるの、なにをやってもだめなパンチネロがルシアの導きで創造主エリに会いに行き、真の生きがいを得るというお話。なんだかうさんくさいものを感じる。創造主の擬人化によって、それが随分卑俗なものに堕しているように思うのである。うさんくさい、というのが⇒
ヴェネツィア
2024/06/27 16:23

中村ですさん、なにかカルトっぽい匂いがしますね。

中村です
2024/06/27 17:40

そうですよね…。私もちょっと気持ち悪い感じがしました😨。友達はこの絵本にとても感動したようで、子育てに活かして欲しいと、私にプレゼントしてくれました。同じ絵本を読んで「胡散臭い」と感じる人もいれば、感動する人もいる。感じ方はほんと人それぞれですね😅

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
限りなく普通(というのも変だが、常識的な)の感性を持った多田と、そこからは逸脱した行天のコンビネーションが推進力となって物語が進んでいく。また、そのためには便利屋稼業というのも如何様にも扱えて、それこそまさに便利である。そして、そこにペーソスを加え(ただし、やり過ぎると重松清のようになるので要注意)、さらには主人公たち二人にそれとなく過去を背負わせるという、いわばあざといばかりの綱渡りをさせたところに成立した物語。どうやら当初から続編を構想していたように思われる。それもまた三浦しをんの自信の表れか。
ヴェネツィア
2024/06/26 17:06

本書は第135回直木賞受賞作。まずは妥当なところか。ただし、これでなくても受賞していそうな作品は既にいくつもあった。その意味ではようやく、といったところ。

ヴェネツィア
2024/06/26 17:16

村上春巻さん、ありがとうございます。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
岩波書店の刊行なのだが、奥付も著者プロフィールもない。著者はただフランソワーズとあるのみ。名前からしてフランス人、もしくはフランス系と思われる。発行年代も不明だが、絵からしても1950~1960年代か。2つのお話から構成。表題作「まりーちゃんとひつじ」は、リズミカルな繰り返しにしたがってまりーちゃんの欲望がふくらんで…。「まりーちゃんのはる」も基本的な構成はやはり繰り返しにある。絵は、子どもが描いたタッチを模したほのぼの系のもの。きっと息長く愛されてきたのだろう。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
幻想の異郷訪問譚。もっとも、異郷とはいっても地理的には楢夫の家のすぐ側なのだけれど。その見慣れた光景が、ある時突然に異世界になるというお話。賢治がさるのこしかけを眺めていて、そこから連想を膨らませてできたのだろうかと想像される。楢夫はきわめて危険な目に会うのだが、読んでいる方はそれほど緊迫感と恐怖感は感じない。相手が猿であることの安心感なのか、あるいはメルヘン仕立てによるものなのか。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
ネタバレ下巻では、上巻のティルデの語った物語がことごとく覆されてゆく。それはそれとして構成の妙と言えなくはないが、読者の側からすれば裏切られ感もまた強く残る。ティルデの病の根幹となったトラウマが明らかになるが、そこから彼女が妄想癖に捉えられたのだとすれば、クリスとの幸福だったはずの長い年月はいったいなんだったのか。またミアの失踪の真実にしても、案外にあっけなく解決してしまう。さらに読者はホーカンをはじめとした偏狭な地域社会と彼らの人間像の修正をも迫られることになる。なおスウェーデンが(少なくても田舎は)これほど⇒
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
小出省吾(児童文学者)作、山本忠敬(絵本作家)絵。出版は1965年といささか古いために、主人公のローラーも登場する車も背景もレトロ感が漂う。でも、それがまた味わいにもなっている。優れた絵本とはそういうものだろう。お話はイソップの「うさぎとかめ」のような、また黙々と役目をこなす高度経済成長期の申し子のような…。絵は、さすがに乗り物絵本の第1人者と言われた山本忠敬。ローラーのフォルムも表情も色彩も見事。
ヴェネツィア
2024/06/25 08:00

(別のところでも書いたが)男の子たち(みんなではないと思うが)は働く車が大好き。イギリスには重機のテーマパーク「ディガーランド」が各地に合計5カ所もあるようだ。ちなみにメリーゴーランドまで重機型。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
賢治が伝える、この地方の4種のざしき童子(ぼっこ)。遠野物語風である。語りの上手さと賢治らしさは、最初のお話が一頭地を抜くだろう。2つ目のタイプが巷間では最もよく流通するものだろうか。ちなみに萩尾望都最初期の『11人いる』の原型はこれ。3つ目の話は、ざしき童子に名を借りたいじめのようだ。そして最後の話型もまたいくつかの民話に見られるものである。やはり賢治の語りはいい。
毒兎真暗ミサ【副長】
2024/06/25 06:49

ご本人も言ってる記述がありました😊

ヴェネツィア
2024/06/25 07:28

よく見つけてきましたね。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
入れ子構造をとったミステリー。私たち読者はもっぱら語り手のダニエルの視点から一連の事柄を眺めることになる。上巻では母のティルデの回想をダニエルが聞くことに費やされるのであるが、その母親は父親たちに錯乱状態にあるとされている。我々はその情報を先に知るのであり、したがって母親の語ることが真実であるのかどうかについては常に揺れ動くことになる。なにしろ、ダニエル自身がそうした振幅の状態に置かれているのであるから。実は殺人事件(失踪事件?)がそれらの中核にあったのである。スウェーデンの田舎が前半部の主な舞台⇒
ヴェネツィア
2024/06/24 16:46

⇒であり、したがって物語の舞台はいたって狭く、逼塞感が漂う。仮に母親の語ることが真実であるとするならば、こうした凝った構成をとったことの意味が薄れそうであり、そうするとさらなる仕掛けが用意されているのか。緊張とサスペンス感を保ちつつ下巻へ。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
小風さち・文、山口マオ・絵。お話は途中まではオノマトペを交えながらリズミカルに展開する。そして最後は奇妙なナンセンスで閉じられる。絵もまた一風変わっていて、主人公のワニ(というよりは、もっぱら単独出演)が悪役顔。親近感を拒絶したところに成立する新展開絵本?最後のページのニッコリの表情もひたすら不気味。でも、ひたむきさは可愛いかな?と思えなくもない。
nyaho
2024/06/26 18:37

うちの幼稚園でも大変人気で、、、子育てを終えて復帰した際見たことのないこの可愛げのない絵本がなぜあるのかと不思議でしたが何故か子供には大人気です笑

ヴェネツィア
2024/06/27 08:07

nyahoさん、私の感覚からはほんとうに不思議です。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
著者の木村司氏は、朝日新聞の記者で、当時まだ38歳の若手。本書は2015年刊といささか古くなってしまったが、それでも沖縄が抱えている問題は基本的に今もその当時と変わってはいない。つまり、この9年間ほとんど前向きの進展はなかったということである。1.「普天間から辺野古」の基地問題とは何か。2.「押さえておきたい「沖縄と米軍基地」の基礎知識。3.「沖縄戦」を知らずして理解は深まらない。4.「米軍占領下から本土復帰の流れ」。終章.沖縄のこれから。という構成で戦後の沖縄問題を初心者向けに解説してゆく。⇒
ヴェネツィア
2024/06/23 16:34

⇒踏み込みが甘く、時として概説に流れたりもするが、要領よく論点を整理している。多分に入門書的だが、それだけに他の地域の高校生にもわかりやすいと言えるだろう。これも慰霊の日に。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
文語詩未定稿の1篇。わずか4行。冒頭の打ち出し「鷺はひかりのそらに餓ゑ」からして難解である。一方、結語の「二人の紳士 森を来る」からは、賢治の童話「注文の多い料理店」の二人の紳士を連想するのだが。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
著者の上羽修氏は、戦争と平和の問題を問うルポライター・写真家。類書はいくつもあるが、本書はあらためて沖縄戦の惨状を自分の目で見て問い直したもの。次第に語り部がいなくなるだけに、ここに収録された証言の記録は貴重だ。全部で6章からなるが、いずれも凄まじいばかりである。これまで知らなかったのは、マラリア無病地であった波照間島民が有病地の石垣島(しかもその山間部)に強制移住させられたこと。これによって島民全員がマラリアに感染し、島民の1/3にあたる477人が死亡した。帰島した時には家畜はすべて接収されていた。
ハナハナ
2024/06/23 20:30

ヴェネツィアさん、貴重な本の紹介を有難うございました。今日の新聞には、「渡野喜屋事件」の経験者の男性(当時生後3ヶ月)が語り部をしている、記事が載っていました。自分はなにも沖縄戦の事を知らないでいると痛感しました。決して忘れてはいけない日ですね。

ヴェネツィア
2024/06/24 05:07

ハナハナさん、沖縄では様子が違うと思いますが、本土ではあまり関心を持たれているようには見えません。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
アメリカの絵本作家アーノルド・ローベルの作。この人は随分たくさんの絵本を描いているが、本書はその代表作の一つ。お話は、こぶたの冒険譚(ある種の異境訪問譚)である。絵は、黒の強い描線に青と黄色で要所だけを着色した手法。全体の(とりわけ人物たちの)描き方はフランス風。こぶたは、リアルなそれとデフォルメされたものとの中間的な感じか。アメリカでの初版は1969年のようだが、古さは感じない。ただ摩天楼の間に煙突がニョキニョキというあたりは古い。
歩月るな
2024/06/24 01:42

摩天楼?と思ったら本当にマンハッタンで亡くなっておられた。あまり気にしたこと無かったですが、がっつり都会の人なんですね。ウィキペディアの著者ページがすっかすかでびっくりしました。

ヴェネツィア
2024/06/24 05:03

歩月るなさん、ローベルは学生時代以降はずっとブルックリンにいたようですね。生まれもロスですし、住むのは都会が好きだったのでしょう。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
レイチェル・カーソンの遺作。まずタイトルがいい。しかも、内容はまさにタイトルそのままである。甥のロジャーとともに経験した自然の様態はいずれをとっても不思議と驚異に満ちている。月を背景にした渡り鳥の帰還などは、まさに神秘的ともいえる体験だっただろう。森そのものや苔、地衣類の匂いもまたそうだろう。そして、耳をすますことで得られる様々な鳥たちの声。それは大江健三郎のいくつかの作品に描かれる、長男ヒカルの物語にも呼応する。そして、末尾のカーソンの遺言めいた言葉も真に示唆的である。
ヴェネツィア
2024/06/24 10:19

高いですよねえ。

yuppi
2024/06/24 10:22

確かに。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
私たちが持っている安部公房の小説世界のイメージとはかなり違っている。すなわち、この作品は徹頭徹尾リアリズムの手法で語られているのである。幼少年期を奉天で過ごした安部公房にとって、それは一度は確認する必要のあった自らのアイデンティティの根幹だったのだろう。ただし、小説は自伝的なものではなくフィクションでありながら、あり得たかもしれない安部である。生まれ育った故郷、巴哈林の喪失、厳寒と飢餓の中での瀋陽への脱出行、そして故郷である日本への帰郷。しかし、そこは久三(小説の語り手)にとって故郷たり得たのか。⇒
ヴェネツィア
2024/06/25 20:33

えかさん、安部公房は初元的な出発はあるいはリアリズムだったのかも知れません。

えか
2024/06/25 20:37

ですね、、、大化けしたのは、おそらく、『S.カルマ氏の犯罪』あたりからだと思いますが、それ以前は、田舎の旧態然とした、村の共同体の矛盾やらがテーマの、リアリズム主体の作品でした。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
エリック・カール作。お話はいたってシンプル。ある日、風に乗ってやってきた1匹のくも(蜘蛛)がひたすらに巣を作っているところに次々といろんな動物たちがお誘いにやってきて…というもの。繰り返し(反復)のリズムとくもさんの惚けたお返事が軽妙な味わい。しかし、この絵本の生命はなんといっても絵。ことにいつもながら鮮やかなカールの色遣いにある。また、くもの巣のペインティングは立体化の工夫がなされて触ることができる。表情豊かな動物たちと無表情なくもとの対比も絶妙。
ヴェネツィア
2024/06/22 08:22

原題は”THE VERY BUSY SPIDER"とそっけないが、訳者のもりひさしは『くもさん おへんじ どうしたの』と工夫をこらしている。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
著者の梅村達氏は御年66歳の現役添乗員。塾講師など様々な職を経て50歳からこの仕事に就く。添乗員生活は想像のつくこともあれば、知らなかったことも。現在、ほとんどの添乗員は派遣社員の身分であるそうだ。そして給与は月平均にすれば10万円くらいとか。したがって、ご高齢の方々も現役で。若い人にはなかなか務まらないだろう。お金はともかくタダで(薄給とはいえ一応は給与付きで)旅行できるという心構えではもたないそうだ。しかも、添乗員たるものの仕事は謝りっぱなし。理不尽に耐えなければならないのである。
ヘタレ女王再び
2024/06/21 18:59

海外添乗員をしている友人が何人かいて 彼女達をみていて本人達も自分で言うのは 旅が好きでは務まらない。人間が好き❤️な人だけが生き残るそうです。

ヴェネツィア
2024/06/21 20:25

ヘタレ女王さん、やっぱりそうなんでしょうね。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
著者の川上文代氏は広尾でデリス・ド・キュイエール川上文代料理教室を主宰する。本書は1「タパス」、2「家庭料理」、3「伝統料理」、4「パエリア&スープ」から構成される。この人が最も得意とするのはフランス料理のようだが、スペイン料理も実に見事に勘所をつかんでいる。野口健志の写真も美味しそうに撮れている。タイトルに「シンプルレシピ」とあるように、いずれも簡単に手軽に作れそうだ。「適量」という表現がやや多いのだが、スペイン料理はそれくらいのアバウトさも必要なのだろう。
ヴェネツィア
2024/06/21 08:34

図書館で借りたのだが、常備するために即刻購入決定!

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
高山羽根子は『首里の馬』で芥川賞を受賞しているが、これはそれ以前の最初の作品集。表題作「うどん きつねつきの」は第1回創元SF短編賞佳作。ただし、SFとはいってもSFの概念を大幅に拡張する必要がある。タイトルを見た時にはキツネうどんの話かと思ったが、「キツネ付きの」ではなく、「狐憑きの」だった。この人の作品はこんなふうな惚けた味わいが信条であるが、川上弘美のそれともまた違って独自の可能性を持っている。表題作以外では「おやすみラジオ」の無軌道ぶりが面白い。いずれにしても、これまでの枠組みを超えていきそうだ。
Himeko is not cat
2024/06/21 19:52

おやすみラジオ、おもしろいですよね!高山羽根子さん、とっても好きなんです✨

ヴェネツィア
2024/06/21 20:23

Himekoさんは「母のいる島」がお気に入りですか。いずれも一癖も二癖もあって、今後も楽しみです。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
加藤治郎はこれまでに既に何冊も歌集を上梓し、またいくつもの短歌賞に輝く歌人。デビュー作の『サニー・サイド・アップ』はニューウェーブ短歌の旗手と評され、華々しいデビューを果たした。なお、現在は毎日歌壇の選者も務めているようだ。口語を駆使した短歌群は岡井隆に師事したと言われれば、そうだろうなと思わせる歌風。もちろん、独自の域に達していることは言うまでもない。この歌集『Confusion』は短歌の新しい可能性を広げようと試みたもの。かなり変わった構成、造本である。したがって、これ1首を選びにくい歌集でもある。
ヴェネツィア
2024/06/21 04:38

ミサさん、年齢的にもライバル視はなさそうです。

毒兎真暗ミサ【副長】
2024/06/21 17:00

あ、そうか!ではホムホムのほうが影響を受けてるかもしれませんね😳

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
著者の泉武夫氏は京都国立博物館の学芸員。『信貴山縁起絵巻』の作者、成立年ともに未詳だが、著者の考察によれば世俗の絵師によるもで、12世紀後半くらいの成立ではないかとのことである。絵巻は「山崎長者の巻」、「延喜加持の巻」、「尼公の巻」の三部構成をとるが、いずれも命蓮にまつわる説話である。この絵巻の特質はなんといっても、描かれた人々の実に多彩な動きと表情とにある。表紙の護法童子も十分に躍動感に富むが、全体はこれを遥かに凌駕する。『鳥獣戯画』と並び称されたりもするようだが、あちらの擬人化された動物たちと⇒
tacchiniyan
2024/06/20 23:30

尼公が大仏を拝む姿、大仏の前で寝る姿、そして旅立つ姿は、異時同図法であるということを、大学の日本美術史の講義で教わりました。好きな絵巻物の一巻です。

ヴェネツィア
2024/06/21 04:36

tacchiniyanさん、異時同図法についても本文の解説に述べられていました。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
サガレン(サハリンの旧称)を舞台にした未完の童話。前半と後半が主人公を含めて全く違った構想の物語のように見える。後半部がより発展の余地が大きそうだが、前半部はあるいは物語全体のプロローグの役割を果たす予定であったのかも知れない。風土感も珍しいし、表現の透明感もいい。未完であることが切に惜しまれる。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
著者の遠藤雅司氏は元来は古楽器(バロック・ギター、リュート、チェンバロ)の演奏家。近年では音食紀行と題して歴史に材をとった料理の研究家も兼ねる(むしろ、今ではこちらが本業か)。さて、本書はギルガメシュ(古代メソポタミア)からビスマルク(19世紀後半)まで8つの歴史的な料理を再現する。巻末に参考文献一覧はあるものの、多分に想像によって補われる部分が多そうだ。「おわりに」でも語っているように「自由な解釈で楽しむ」ことに主眼が置かれている。サロンで(もちろん高額だろうが)彼の話を聞きながら歴史再現料理を楽しむ⇒
ヴェネツィア
2024/06/20 07:55

⇒という会がありそうだ(実際はどうか知らないが)。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
今日が桜桃忌であることを思い出して急遽。この小品は昭和14年2月に書かれている。太宰30歳。「まえから腹案していた長い小説」は、時期と御坂峠云々からすれば『富嶽百景』だろうか。それは結果的には太宰の初期の代表作の一つになったのであり、まずは慶賀の至りである。それにしても太宰の文体は後年にいたるも変わらないなあと思う。もっとも、この作品での太宰はまだ追い詰められるところまで行っていないので、明るさを失ってはいないのだが。それでも、自己の作品に対する自信と一抹の不安とが常に共存していたのだろう。作中で⇒
ヴェネツィア
2024/06/20 05:11

ガラスの文鎮さん、私もうっかりしていて、この読書メーターで気づいて急遽。今年は梅雨入り前の桜桃忌になりましたね。

毒兎真暗ミサ【副長】
2024/06/20 22:37

7月22日は【河童忌】9月21日は【賢治忌】ですね。今年は何を読まれますか?😊

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
著者の広松由希子氏は絵本の評論、翻訳などこの分野で幅広く活躍。ボローニャ国際絵本原画展やブラチスラバ世界絵本原画展でも審査員を務める。本書は表題のように1912年の杉浦非水『アヒルトニワトリ』から2014年のミロコマチコ『オレときいろ』まで、絵本の良作を網羅的に俯瞰する。これまで全く目にすることがなかった歴史的名作が次々と現れ、もう目移りするばかり。私が特に注目したのは谷中安規『王様の背中』、恩地孝四郎『マメノコブダイ』、宇野亞喜良『あのこ』、赤羽末吉『スーホの白い馬』、滝平二郎『モチモチの木』⇒
中村です
2024/06/20 07:49

検索したらわが町の図書館にあったので、今度借りてみます😊。

ヴェネツィア
2024/06/20 07:59

中村ですさん、資料的にはとっても興味深いですよ。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
後に書かれる『日本聖女論序説』と対になる論考。著者の初期のもの。弱冠32歳の時の労作である。すごいなあ、とただただ驚嘆。なによりも文献の博捜力が凄まじいばかり。『無動寺建立大師伝』や『善家秘記』なんて、これまでに開いたことはおろか耳にしたこともない。日本古典(とりわけ中世の文献)に関しては、かの澁澤龍彦をも上回るのではないだろうか。さて、本書では称徳天皇、染殿后、竜蛇に変身した女(一般には清姫として知られる)の3人を取り上げている。分析の緻密さもさることながら、何よりも圧倒的なまでの知識量⇒
みゃーこ
2024/06/19 08:51

素晴らしい書評

ヴェネツィア
2024/06/19 09:49

みゃーこさん、ありがとうございます。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
詩・谷川俊太郎、絵・和田誠。野生に暮らすもりのくまと、テディ・ベアを対比的に描く。どちらも、いわば節理の中にいるといえる。もりのくまは生物(生命)としての摂理、テディベアは人工的に作られたクマとしての宿命をそれぞれに生きてゆく。そして、もりのくまはその一生を終えるのだが、テディベアのそれはまだまだ続く。当たり前のことを描いているようなのに、生きていることが必然的に抱えている哀しみを切々と訴えかけてくる絵本。谷川俊太郎と和田誠のコンビネーションは絶妙。
Fe
2024/06/19 08:35

ヴェネツィア様 ご覧になっていなければ、谷川俊太郎・和田誠『がいこつ』教育画劇 2005.10 も、ぜひどうぞ。既読でしたら、ごめんなさい。

ヴェネツィア
2024/06/19 08:43

Feさん、ご紹介ありがとうございます。未読です。探してみます。感謝!

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
地獄を言葉で語ったものは『往生要集』を白眉としていくつか残されているが、インパクトの強さという点では断然絵画だろう。地獄を描いた絵は、これも洋の東西を問わず数々残されているが、西欧ではボッシュ、ブリューゲルなどフランドル地方を中心とした北方ルネサンスの画家たちによるものが多いようだ。本書では、まず澁澤龍彦が『北野天神縁起』を軸に地獄図を語っている。凄まじくもおどろおどろしい文字通りの地獄絵図である。後半では宮次男がやはり地獄絵を通観して見せる。やはり『地獄草紙』と『餓鬼草紙』に極まるだろうか。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
550ページにもなる長編だが、プロットの推進力とパワーは大きい。その上、プロローグからエピローグにいたるまでの構成が実に周到に組み立てられている。初出は何紙かに供給された新聞連載小説だったようだが、全く中だるみもなく、一気呵成に終幕に向かって突き進んでいく。カルト集団めいた「ミライの学校」を舞台にミカ、ノリコらが過ごした少女期が再構成されるとともに、そこに確かにあった彼女たちのそれぞれに固有の感情の在り処があらためて浮かび上がってくる。それは、彼女たちが失われたものを取り戻す作業であったと同時に⇒
ヴェネツィア
2024/06/18 07:47

⇒読者の共感覚をも呼び覚ましてゆく稀有な物語となった。エンターテインメント小説としては第1級の作品。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
文の南部和也は獣医師&ネコライター。絵のとりごえまりはイラストレーター&絵本作家。お話はネコのヒゲで電波を飛ばしていたネコのラジオ局が、より強力な電波を求めてクジラに会いに行くというもの。絵はツートン、サリー、ハルのネコトリオを筆頭にひたすらにネコの可愛さに依拠したもの。そうはいっても、いろんな様態のネコたちを楽しめる。私のお薦めはネコのロックバンド「ローミングキャッツ」。絵本全体のカラフルさ(前半は暖色系、後半は寒色系)も大いに寄与している。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
文語定型詩未定稿の1篇。冒頭の「アナロナビクナビ」、第2連の「ナビクナビアリナリ」、続いて第3連「ナリトナリアナロ」最後は第4連の「アナロナビクナビ」と意味不明の言葉がヴァリエーションを伴いながら繰り返される。これは法華経陀羅尼品第二十六にある、毘沙門天の呪文を賢治が再構成したもののようである。山峡から草の峠を越え、毘沙門天の御堂にいたる巡礼行のような詩。純粋に宗教的なものであるが、それはどこか魔的な響きを帯びて届けられる。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
山崎聡子の第2歌集。この人は第1歌集『手のひらの花火』で現代短歌新人賞を受賞し、続くこの歌集では塚本邦雄賞を得ている。はなばなしいスタートである。ただ、塚本邦雄のような華麗で難解な歌風というわけではない。ご本人は「私には短歌が実際のところなんなのか全然わからない」と語っている。あるいは、そのとまどいが歌に独特の生命を与えているのかもしれない。例えば、こんな歌「淋しさを水に例えていうことの、子供をもっていることの、舟」。そして、この歌人は現実との向き合い方もまた果敢なさを漂わせたりもする。
ヴェネツィア
2024/06/17 08:21

こんな歌も。「一重の目ふせて未来をいうときに煙みたいなこの世と思う」。この先も注目したい歌人である。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
レオ=レオニ 作、谷川俊太郎 訳。お話は谷川俊太郎の解説によれば「幻想と現実のいりまじる不思議な物語」ということだが、私には違和感が残る。一種の魔的幻想ではあるのだが。絵はレオ=レオニらしい淡い色調のわかりやすいもの。ただ、チーズのねずみはともかく、ジェラルディンが自分のしっぽをフルートにするというのが、どうにも頷けないものを感じるのである。音楽というテーマを躍動的に描く方法は他にもありそうな気がするのだが。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
かつて東京新聞に連載されていたらしい。東京23区(+オマケ武蔵野市)を擬人化し、それぞれの区に一人称体で語らせる試み。しかも、それぞれの区の話体は極力その区の感じを再現すべく努力が傾けられている。居住者から見れば、承服し難かったりもするのだろうが、かなりよくそれぞれの区の特徴を捉えているのではないだろうか。作者はこれを書くために、東京の歴史をあれこれと楽しみながら学んだと思われる。この時点で山内は東京生活8年間とのことだが、東京出身でないことがプラスに働いたようだ。ちなみに彼女は富山市の出身で、その後⇒
ヴェネツィア
2024/06/16 17:24

⇒大学進学で大阪に移っている。本書はもっぱら語りの面白さを信条とするが、その点では足立区あたりが1番か。私は東京には住んだことがないが、これを読む限りでは住むなら文京区を選びたい。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
著者の服部周裕氏は松濤の「クレープリー ティ・ロランド」のオーナー。この人は本来はフランス語学の専攻。曲折を経て、また縁あって現在にいたっているようだ。ガレットはブルターニュの郷土料理。パリでもブルターニュ方面とつながるモンパルナス駅界隈にはガレットのお店がたくさんある。さて、ガレットは水、そば粉、塩しか使わないシンプルさ。「塩バターのガレット」を極北に、伝統的な「ガレット・コンプレット」(ハム、グリュイエル・チーズ、卵のガレット)、果てはオリエンタル風まで実に様々なレシピが紹介されている。基本を⇒
ヴェネツィア
2024/06/16 08:00

⇒押さえれば、後はどんなトッピングも可能なのだから、ヴァリエーションは無限大ということに。クレープもまた基本中の基本「砂糖と塩バターのクレープ」からいかようにも変容が可能。なお、ガレットにはやはりシードルを合わせたい。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
五味太郎 作。お話はいたってシンプル。わたりどりがくじらを発見してみんなに知らせたのだけれど、くじらはどこにも見つからない。そして、最後に…というもの。絵は五味太郎らしいマッスなタッチがよく活かされている。とりわけ最後の、見立て絵というか、ある種のトロンプルイユというかの絵では大いに効果を発揮する。読み聞かせの場合には、この見立てを展開させることができそうだ。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
喪失の物語。あの当時は、ようやく10代の半ばにさしかかろうとしていた僕たちの20数年後の回想という形式をとる。時間もまた失われている。リズボン家の5人姉妹のすべてが自殺してしまうが、それを何故と問いつつ、僕たちにはそのことの虚しさもまた自明である。思えば、あれは終わりの始まりであったのかもしれない。物語の舞台は作中でベル島に言及されることからすればデトロイト郊外の小さな町のようだ。リズボン家の姉妹たちの死、家の崩壊、デトロイトの衰退、アメリカそのものの凋落…姉妹の自殺はそれらを象徴的に背負うものであった。
ヴェネツィア
2024/06/15 19:38

Himekoさん、なかなかにとらえどころの難しい作品だったように思います。

ヴェネツィア
2024/06/15 19:40

テイネハイランドさん、失念していましたが、再読ですね。たしかにそうするとガーディアンは重複しますので、次の機会に調整します。ご指摘感謝!

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
強い郷愁を喚起する物語。ここに描かれている時代や環境と、自分たちが体験したそれとは違うのだけれど、それでも共通するものがそこに厳然と横たわっている。それは何なのかとの問いの答えは、まさにこの物語の中にこそあるだろう。そしてそれは『風の又三郎』にも通じる何かであり、また『スタンド・バイ・ミー』にも共通する何かである。私たちも、かつてたしかにこんな時を過ごしたのであり、それは物語によってこうして永遠化されるのである。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
ベン・シャーン絵、アーサー・ビナード作・構成。絵本ではあるが、いわゆる普通の絵本とはその様相を大きく異にする。まず、絵だが描いているベン・シャーンはアメリカの現代画家を代表する一人。社会派でもある。色調は黒を基調としており、題材からも当然のことながら全体に暗い。リアリズムと抽象とが混在するが、抽象的なタッチの絵はピカソの「ゲルニカ」を思わせる。極めて訴求力の強い絵だ。ビナードの文は淡々と語られつつも、その根底にある怒りは強く大きい。また、巻末にはベン・シャーンと第五福竜丸の紹介もあり、この重大な事件を⇒
ごーちゃん
2024/06/20 18:30

強推薦、ありがとうございました。読みました。絵の訴求力、文の怒り、伝わりました。ベンが連作として残したことで事件の風化を防いでくれてるような気がします。

ヴェネツィア
2024/06/20 18:32

ごーちゃん、ベン・シャーンの絵が特に強く印象に残ります。また、アーサー・ビナードの文・構成も力が入っています。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
吉川宏志の第8歌集。吉川は名門の歌誌「塔」※の主宰を務める実力者。数々の短歌賞を受賞し、輝かしい実績を持つ。ただ、上手すぎるために表面的には幾分感情表現に乏しく見えかねない。例えば、母を亡くした一連の歌、中では最も悲痛さが表出された「お母さん、息をしてよとぴたぴたと頬を打てども息は消えたり」。斎藤茂吉の連作歌『死にたまふ母』と比べるのはおかしいのだが、どうしても連想してしまう。直接母の死とは結びつかないが「早春の道に小さく足縮め花より先に死にし蜜蜂」など、死を生との連続の中に見る歌も多い。
ヴェネツィア
2024/06/14 17:18

※「塔」=ドイツ文学者、歌人の高安国世が創刊。その後、永田和弘(この時代の最大のスターが河野裕子)に引き継がれ、2014年からは吉川宏志が主宰。アララギ系だが、けっして直情的ではなく(河野裕子の名歌はその傾向が強かったかもしれないが)概ねはソフィスティケイトされた歌風かと思う。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
物語(基本的には広義のファンタジー)に登場しそうな家の内外を空想して、しかし細心にリアルに描いた画集。33の家が登場する。立地は、ギリシャのメテオーラのような断崖の頂上であったり、京の町中であったりと様々。家もまた西欧中世風の砦様であったり、和風の町屋であったり。外観だけではなく、内部の住空間までを細密に描いたところが秀逸。いずれも魅力的だが、どれか一つを選ぶなら「失われた書物の図書館」か。外観はちょっとザルツブルク城に似ているか。内部は図書館なので言うことなし。ただ、立地があまりにも厭世的で寂しすぎる。
ヴェネツィア
2024/06/14 16:53

巻末には"MAKING"まであって、「炭鉱夫のエンジン小屋」をサンプルにラフスケッチから最終仕上げまでの技法解説付き。アマチュアのイラストレーターには参考になりそうだ。

ヴェネツィア
2024/06/14 16:58

実際に住むことを考えると、やはり「几帳面な魔女の家」がいいだろうか。この家は他の方たちの感想でもなかなかの人気物件。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
『三びきのやぎのがらがらどん』のマーシャ・ブラウン作。原話は副題にある通りにロシアの民話。うさぎ、おおかみ、ひぐまと繰り返しのリズムを楽しんだ最後に登場したのはきつね。あれあれ、思いがけない結末に…。絵も民話らしく素朴なタッチに描かれている。おじいさん、おばあさん、そして動物たちの表情のデフォルメが見もの。きつねの得意そうな顔で決まる。あたかも歌舞伎の見得である。
ヴェネツィア
2024/06/14 10:20

Johnnycakeさん、きつねにはくれぐれもご注意を!

Johnnycake
2024/06/14 11:37

🤣ありがとうございます♪

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
表紙はやはりというべきかパエリヤ。本来はヴァレンシアを中心とした地域の郷土料理だったが、今やスペイン中に蔓延し、いつのまにかスペインを代表するお料理にまで出世。これほどとは思わなかったが、石井崇の本でもアンダルシアの僻村フェレイローラ村でもお祭りには全員で巨大なパエリヤ鍋を囲んでいる。そう、本来は野外のお料理なのである。ところで、そうするとスペインを代表する料理は何だろうか。私見ではコシードかと思う。そして、写真が古くて残念だが、タパス勢ぞろいも大いに魅力的。
美登
2024/06/13 19:56

なつかしいです!この全集が家にあったんですよ。子供の頃は世界の料理の写真を見ているだけで楽しかったのを覚えています。ちなみにレシピもついていたのに、作ってもらった覚えがありません(笑)。

ヴェネツィア
2024/06/14 05:01

美登さん、お家に全集を揃える意気込みだったのですね。でも、いったい何のために?お家の人たちももっぱら眺めて楽しむためだったのでしょう。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
これまでに読んだ山田詠美(これで27作目)とは印象がかなり違っている。ここでも問われているのは愛の形なのだが、今回は家族間の愛の危うさと、その危機回避が描かれる。小説世界の設定も、この作家は時に大胆であったりもするが、それにしても長男の澄生が雷に撃たれて突然死したり(しかも、そのことは澄川家に決定的な亀裂をもたらす重要なファクターである)、創太の恋の相手が母親と同じくらいの年齢の女性であったり(もっとも、これは彼のマザーコンプレックスの反映だろうが)。3人の子どもたちそれぞれの一人称語りという構成は⇒
みあ
2024/06/13 17:58

こんばんは。おっしゃられてみれば、エゴイズムが描かれてますね。ずいぶん昔ですが、詠美さんが三島由紀夫はエゴイズムを書くから好きとおっしゃっていたのを思い出しました。

ヴェネツィア
2024/06/13 18:08

みあさん、賛同を得られそうもないなと思いつつエゴイズム説を出してみたのですが、みあさんからは心強いサポートを。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
アメリカの絵本作家バージニア・リー・バートンの作。機関車好きの長男アリスのために製作されたらしい。1937年の出版だから、もはや古典的な絵本の1冊。お話は機関車のちゅうちゅう(今では旧モデルの小型機関車)の冒険と帰還を描くもの。人間たちの態度は豊かで余裕のあるアメリカを感じさせる。絵は表紙の見開き以外はさすがにモノクローム。太く力強い描線とシャドウで描かれる。原題も"CHOOーCHOO”だが、これは幼児語で汽車のことだろう。由来はおそらく擬音語で、日本語でいえば「シュッポシュッポ」という感じか(推測)。
ヴェネツィア
2024/06/16 08:24

yuppiさん、なるほど。動きの表現も斬新だったのですね。たしかに。

ヴェネツィア
2024/06/16 08:25

私も聴いたのは後になってからですが、とっても印象的な曲だと思います。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
大口玲子の第7歌集。この人は「心の花」※を舞台に歌を詠み、これまでに数々の短歌賞に輝いている。歌は「心の花」らしく、歌人の感情世界がダイレクトに伝わってくる詠みぶり。大震災後の自己を見つめる歌群を収録。また、タイトルの「自由」も歌集全体のキー・コードである。「生きのびる自由を捨てて餓死刑を選びしコルベ神父の自由」これ以外にも自由を詠んだ歌は多い。ことに、わが子の不登校を肯定しつつ僅かに煩悶する自由、表現と生存の自由など。いずれも力強い歌であり、共感しつつ鼓舞される歌群である。
ヴェネツィア
2024/06/12 16:57

※「心の花」=佐々木信綱によって創始された、100年以上の歴史を持つ歌誌。現在の代表的な歌人は佐々木幸綱らであるが、一般には俵万智が最も知られているだろう。そして、彼女の詠みぶりはまさに佐々木幸綱の弟子であり「心の花」のそれである。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
アンダルシア在住の画家、石井崇の滞在記。この人が、何年も住んでいるのはアルプハラ地方のフェレイローラという小さな村。元々は5000人くらいの人口を擁していたのだが、過疎で50人ほどに減少。現在は移り住んだ外国人(イギリス人、フランス人、デンマーク人等)の方が多いという村である。随所にある挿絵は南スペインの詩情にあふれ、行ったことがないのに郷愁を誘うようである。また、村の日常を綴る文章からもフェレイローラへの愛着が強く伝わってくる。この地は、あるいは地上に出現した楽園であるかのごとくである。
ヴェネツィア
2024/06/12 16:40

石井崇氏は自らの意思で、長年にわたって選択的にこの地に居を構えているのだが、翻って自分自身のことを考えてみると、人生はわからないものだとも思う。「住めば都」とは半ばはそうでもあるし、また半ばは違っていたかもしれない生き方を思う。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
文語詩未定稿の1篇。基本的には五・七調の定型詩なのだが、分かち書きが規格をはずれている。物語、あるいは童話の一場面を想像させるような詩。なんということはないのだが、読むものに抒情を喚起する。もっとも、宮沢賢治の作との先入観がそうさせるのであるかもしれない。言葉でいえば「ひぐれまぢかの」、「兄弟二人」がキーワードだろうか。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
ジョン・バーニンガム作。バーニンガムはデビュー作の『ボルカ』でケイト・グリナウェイ賞を受賞していたが、本作で再び同賞を受けている。その間7年なのだが、これら二つの作品の絵のタッチは大きく異なっている。前作では太く大胆な描線で描かれていたのが、今作ではうんと細く繊細なものに変化しているのである。動物たちの表情のとぼけた味わいは、ここでも十分に発揮されている。うさぎ、ねこ、いぬ、ぶた、ひつじ、にわとり、うし、やぎがそれぞれガンピーさんの舟に乗り込み、まるでもうノアの箱舟状態の実に楽しい絵本。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
シリーズ第3弾。今回は6つの作品から成る短篇集。最後の「トウラーダ」だけは第2巻の『エデン』以降の時間を描くが、他はすべてそれ以前の物語。主人公も巻頭と巻末の1篇は白石誓だが、他は伊庭、赤城(作中には石尾も登場する)であり、それぞれが一人称で語っていくという形式をとっている。この作品の成功もまた圧倒的なまでのリアリティ(それはレースの臨場感でもあり、選手たちの心理的な葛藤においても)に拠るのであり、それは語りの上手さによって支えられているだろう。また、いずれの1篇も哀感を伴っていることも今作の特徴である。
ヴェネツィア
2024/06/11 17:11

いずれも迫真力に富んでいるが、1篇をとるなら敗者の美学とかすかなかすかな希望を語る「ゴールよりももっと遠く」か。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
山田航の第3歌集。「あとがき」によれば「コミュニケーションについての歌集をつくろう」とのこと。表題は篇中歌「寂しくて死ぬというより寂しさでしか殺せない最強のうさぎ」から。この歌ともう1首「赤鳥居くぐれば鈴木小鳥店こよひは鶴の雛売られをり」に見られるような言葉の飛躍は好きだが、全体としては、この人の歌も俗語とまではいわないが、かなりくだけた口語を駆使したものが多い。例えば「フードコートの夜の青さよ『どの店がまず潰れるか賭けをしよっか』」。「セーターに火を近づけて『しゃべんじゃねえ、黙ってろ』教室の窓辺で」。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
文語詩未定稿の1篇。五・七調の定型詩。冒頭の「このみちの醸すがごとく」はなんとも珍しい比喩である。そして、栗葉の光が「黄なる月」を誘うと続く。後半部は、山での仕事を終えて帰る人々を賢治は「なにをかもわがかなしまん」と述懐するのだが、詩の全体にはそれこそそこはかとない「かなしみ」が漂うのである。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
第4巻は「窓辺」。巻頭はドイツから。木組みの家街道の街バート・ヴィンプフェンをはじめ、いかにもドイツらしい家の写真が並ぶ。次いではフランス。カテドラルと城郭が中心である。そして、スペイン。セヴィーリヤやコルドバのアラビックな邸は、これまたいかにもスペインらしい。さらにはアズレージョの美しいポルトガルの建築。いずれも、いかにもそれらしい景を取り上げているのだが、民家建築に徹するなど題材には統一感が欲しい。また、バイヨンヌはたしかにフランスの町だが、ドノスティアなどと同じく様式はバスクのそれである。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
岡野大嗣の歌集。タイトルの意味は「自分のためのおやすみで『たやすく眠れますように』の意」だそうである。ここに収録された歌群は、いずれもいたって日常的な語彙で構成されている。また、複雑な技法を駆使するものでもない。にもかかわらず、私には今一つ、すっきりとその歌の世界に投入することが難しい。タイトルに覚えた違和感をそのまま引き摺ってしまう故だろうか。あるいは日常感に馴染めないのだろうか。「すきな作家の新刊をお気に入りの本屋へお気に入りのサンダルで」。「きみとただ花火したくてよく冷えた水道水を飲みながらした」。
だいだい(橙)
2024/06/11 10:02

ヴェネツィアさん、入選の常連のような方もおられるので私はまだまだですが、岡野さんに選んでいただいたのはとても嬉しかったです。短歌に何を求めるか、で岡野さんの歌はハマるかどうかが違うかもしれません。私もいま出会っていたらピンときたかは不明です。タイミングもありますものね。

ヴェネツィア
2024/06/11 11:38

年齢や環境などタイミングもあるのでしょうかね。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
いずれも「群像」に掲載された8つの短篇から構成。「メダカと猫と密室」を例外として、基本的には一人称視点から語られる。2005年に小説家としてデビューし『マンイーター』で太宰治賞を受賞してから、かれこれ20年。その間に『ポストスライムの舟』で芥川賞を受賞しているが、この短篇集でも作家としての幅の広さを如実に示している。ここでも、けっして深い感動を与えるといった作風ではないが、日常に潜むある側面を見事にすくいあげている。時にはSF風に逸脱してみせたりもして。
ヴェネツィア
2024/06/10 16:47

8つの中からどれを選ぶかは、かなり好みが分かれそうだ。私はしいて言うなら「イン・ザ・シティ」か。津村紀久子の小説もまた、時にはこんな風に想像力を広げることで生まれたのだろうかと思う。次いでは軽快な文体の「フェリシティの面接」。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
ロンドンの絵本作家、ジョン・バーニンガム作。これが彼が手掛けた絵本のデビュー作なのだが、なんといきなりケイト・グリナウェイ賞(1964年)を受賞した。お話は、アンデルセンの『みにくいアヒルの子』にちょっと似ていて、羽毛のないガチョウのボルカが、それ故に仲間に入れてもらえなかったのが、最後は幸せに…というもの。この絵本の取り柄は、やはり絵にあるだろう。絵は太い黒の描線に、描き殴ったような力強くラフな色付けがなされたもの。美術的にも優れたものであり、そうした点が高く評価されたのだろう。
ヴェネツィア
2024/06/10 12:11

Jonnycakeさんの愛読書でもありましたか。絵がいいですね。

ヴェネツィア
2024/06/10 12:12

宵待草さん、おはようございます。お話は突飛と言えば、突飛なお話ですが、無理は全く感じませんね。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
鷺沢萌のエッセイ集。タイトルからは旅のエッセイみたいだが、それは一部で多くは日々の雑感を綴ったもの。構えることなく書いているという感じである。露悪的というわけではないが、えっ鷺沢さんて(めめちゃん)こんなだった?、といった自己暴露話もあったりする。例えば、彼女は掛け算の九九が六の段までしか言えないとか。ちなみに彼女の最終学歴は上智大学外国語学部除籍である。なお、除籍になった理由はお勉強ができないからではないと思う。ちなみに早稲田なんかは早退の方がいばっていたりするのだが。彼女が亡くなって20年になる。⇒
ヴェネツィア
2024/06/09 16:45

⇒どうして自ら旅立ってしまったのだろう。「かわいい子には旅をさせるな」と言っているではないか。春日井政子さんの共感に溢れた解説を読むと、鷺沢萌が甦ってくるようだ。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
「蘇芳」(すおう)、「縹」(はなだ)、「刈安色」(かりやすいろ」ーこれらの色をイメージできるだろうか。いずれも日本の伝統色であり、それぞれにはまたいくつかのヴァリエーションもあったりする。本書は総計277色を網羅する。微細な(と思える)色の違いが色名を分けている。ことに江戸中期以降は「いき」の渋好みから、紺色、茶色、鼠色が多彩である。また、歌舞伎役者たちが命名した(当然これを自らのシンボルカラーとするとともに、販売もした)色名(芝翫茶など)も。めくるめく(地味な色が多いのだが)日本伝統色の世界。
宵待草
2024/06/09 15:14

ヴェネツィアさん こんにちは 着物が大好きな私は、若いころから日本の伝統色の持つ、色合いと命名に、深く惹かれて来ました。 伝統色の書籍は好きで読んで来ましたが、此の本は未読にて📝させて頂きますね!🍀 何時も、有り難うございます!🙋 不順な気候故に、呉々もご自愛なさって下さいね!💫 宵待草

ヴェネツィア
2024/06/09 15:46

宵待草さん、この本は辞典的な色合いが濃く、色名を調べたりするには便利かと思います。それにしても知らない色名が随分ありました。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
タイトルの『雨る』の訓は「ふる」。「あとがき」によれば、「旧る」、「狂る」、「震る」など多義的な意味が込められているようだ。渡辺松男はすでに何冊もの歌集を上梓しているばかりか、現代歌人協会賞、寺山修司短歌賞ほかを受賞している。この歌集でも練達ぶりと余裕ある詠みぶりがうかがえる。「看病にうとうととせまるまなうらにクヂラうちあげられて眼がない」ー妻の看病を詠ったものと思われるが、この後にその妻を喪った一連の歌群が見られる。「さんさんと目つぶるるほど陽はあれどことしの桜のなかに君ゐず」。この歌も調べの整った⇒
ヴェネツィア
2024/06/09 07:06

⇒歌だが、整い過ぎていて悲しみまでも柔らかく包み込んでしまうようでもある。悲痛さを悲痛なままに詠わない歌人なのだろう。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
これまでも宝石に興味がなくはなかったが、こんなに体系的に宝石(の写真)を見たのは初めて。また、宝石の格付けに際しての4C(Color、Clarity、 carat、 cut)も聞いたことがあるという程度だった。また、ダイアモンドはすべて透明なものだとばかり思っていたが、ブルーやオレンジもあることを初めて知った。もちろん、これらは希少種ゆえにとんでもなく高価だろう。ルビーにサファイヤにエメラルド。このあたりは誰でも(私でさえ)知っているだろうが、初めて聞くものも多い。本物を眺められればいいのだが、この図鑑⇒
Koning
2024/06/08 17:15

宝石学なんてジャンルもありますから、奥深いのは当然ですが、商業的なあれこれも追加されちゃうので、ほんとに泥沼かもしれません(w。こっちの水は甘いよぉ(w

ヴェネツィア
2024/06/08 18:04

Koningさん、そのようですね。奥も深いし、範囲も広い!

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
『孤狼の血』の続編。物語の舞台はやはり広島。ただし、今回は比場郡(モデルは比婆郡)と、広島県北の島根県と境を接する所である。主人公の日岡は、この地の駐在として、いわば左遷されたような形で勤務している。日頃は何も起こらないような土地だが、ここが俄に明石組と心和会との抗争の焦点になる。この巻は、警察小説からも逸脱し、もはやヤクザ小説である。ここで礼賛されているのは、もっぱら仁義であり、あろうことか日岡は指名手配犯でもある國光と義兄弟の杯まで交すのであるから。小説として面白くなくはないが、多分に下世話な領域⇒
drago @竜王戦観戦中。
2024/06/10 10:48

ナイスありがとうございます。 これは最早「ヤクザ小説」ですよね。 面白い警察小説を読みたくて本書を手に取った私としては、かなり期待外れの読書になってしまいました…。

ヴェネツィア
2024/06/10 12:14

dragoさん、表向きは警察小説ですが、内実は全くのヤクザ小説だと思います。ヤクザの仁義を礼賛しているようですし。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
定型詩未定稿の1篇。わずか4行の七・五調の定型詩。「こゝろの影」という発想は、後に20世紀後半を代表するファンタジー作家、アーシュラ・ル・グインの終生のテーマだった。この意味での代表的な作品を上げるなら『ゲド戦記』がそうだ。また、ここで賢治が用いている「世界現実」という言葉や発想も随分斬新なものだろう。あれやこれや賢治の先進性を勝手に想像する。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
文語詩未定稿の1篇。これまたわかりにくい詩である。「樹のこゝろ」、「巌のこゝろ」はそれぞれに様態が違い、そして「樹の一本は一つの木 規矩なき巌はたゞ巌」と、その本質を異にするというのだろうか。芭蕉の『三冊子』にいう「松のことは松に習え、竹のことは竹に習え」が連想される。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
著者の田中貴子氏は中世文学研究者。私が最も敬愛する日本文学研究者お二人のうちの一人である(ちなみに、もう一人は田中優子氏。両者ともに田中姓なのは偶然)。本書は日本における中世とは何かを問うのだが、それは畢竟は近代の知識人たちが中世をどのように受容していたのかという問いかけに帰する。著者がここで主に取り上げるのは、西行、実朝、世阿弥である。もちろん、こうしたいかにも誰しもが思う中世代表だけを語って中世がわかるわけではないことを著者は重々に承知している。あくまでも、近代を経由した中世が問われるのである。
ヴェネツィア
2024/06/07 16:52

論考は緻密で広範囲に及ぶが、もともとは「一冊の本」(朝日新聞出版)に連載されていたものであり、専門的な内容でありながらわかりやすい筆致で書かれている。学術書と違って時々ハメを外して見せたりもする余裕である。京都中華主義しかり。また、白洲正子にはことごとくイケズである。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
ネタバレイギリスの作家、コーリン・アーヴェリスの文。絵はパリ在住のイラストレーター、セバスチャン・ペロン。お話はいたってシンプル。フィン少年(7歳くらい)と愛犬コメットの友愛を描く。タイトルの「こぼう」は、病気になったコメットの快癒を願って。絵はいかにもフランス風のタッチ。パステル・トーンが美しい。フィンもコメットも登場しないが街の夜景のシ-ンがことに。結末部でママからコメットは「かるいかぜをひいていた」と告げられるのだが、それにしては随分大げさだったなと思う。タイトルからしても、もっと重篤な病気かと。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
19世紀半ば、ポーランドの辺境ガリチアの地がこの物語の舞台である。佐藤亜紀が得意とする西欧の歴史を題材とした、一種の稗史小説である。西欧史の断面を語るなら、フランス革命とかナポレオン戦役にすればよさそうなものだが、佐藤亜紀はあえてこんな地を選ぶ。作家的慧眼だろう。オーストリア帝国の代理人として精一杯の善政であろうとする、ゲスラー夫妻の善良。ポーランドの士族にして詩人のクワルスキの夢想。そしてルテニア・カトリック司祭の正統。彼らは皆等しく村人たちの前には余所者でしかない。そのあくまでも頑健な村人たち。⇒
ヴェネツィア
2024/06/06 17:14

⇒強固なリアリティを持って描かれた物語である。もっとも、こうした過剰なまでのリアリティの反作用として、物語の持つ通常のダイナミズムは影を潜めざるを得なくなるのだが。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
駒田晶子は、佐佐木幸綱門下で、「心の花」に所属する歌人。基本は生活詠だが、アマチュアと一線を画するのは、歌が単に日々の生活の描写に留まらないことにある。すなわち彼女は歌うことそのことによってこそ自らの生の軌跡を確認するのである。歌いぶりは優しくもありながら、時にはそこはかとない悲愁を帯びる。それは喪われたものへの望郷の想いでもあるだろうか。「福島の誰も帰れぬ地に降る雪はしずかに嵩を増やしぬ」、あるいは「京の夢逢坂の夢東京の夢福島の夢な忘れそ」。いずれも、いうまでもなく震災後の歌である。
K.H.
2024/06/06 14:25

短歌の素養はまったくないのですが、明治以来の文学を読んでいると、"佐佐木派”とでもいうべきなのか、この一家に行き当たりますよね。近代日本の歌壇を支配したといえるかもしれないこの一門、ヴェネツィアさんに一度解剖してもらいたいと思っています。といっても、しかるべき本の心当たりもないのですが……。

ヴェネツィア
2024/06/06 15:32

K.H.さん、たしかに佐佐木幸綱は、短歌の名門の家柄の出身であり(御子左家の定家みたいです)、錚々たる経歴の持ち主ですね。曽祖父の代から歌人でしたし、祖父、父、息子たちも歌人です。御本人と並んで名を馳せたのが祖父の信綱でした。また、門下生も多く輩出し、俵万智などもそうです。私ごときが解剖なんてとんでもないです。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
文語詩未定稿の1篇。七・五調の定型詩。内容的には神話的想像世界を詠んだもの。「ドロミット」はイタリア北部のドロミテ山塊か。第2連の「幾箇の環を嵌められし 巨人の白き隻脚ぞ」がとりわけそうした想像を誘う。出典は何だろうか。思い出せそうで思い出せない。旧約聖書?ギリシャ神話?乞ご教示。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
ブルーノ・ムナーリの仕掛け絵本。3部構成になっていて、第1部は真っ暗な闇夜に怪しい光が一つ、第2部では昼の光の中で、第3部は太古の人たちが暮らした洞窟の中。絵はいずれもムナーリにしては随分シンプル。言葉は、とりわけ闇の中では極力抑えられている。本のサイズといい、文字が闇に沈んでいることといい、この絵本は読み聞かせではなく、自分で読むことを想定しているのだと思われる。かなり異色の絵本。
yomineko
2024/06/06 08:54

ヴェネツィアさん、おはようございます😊面白そうですね!!!読みたい本に登録させて頂きました📚

ヴェネツィア
2024/06/06 11:04

yominekoさん、おはようございます。これはムナーリの中でも異色の本の一冊です。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
第4巻のテーマは「扉」。西欧世界に限られるが、その範囲ではかなり広い地域を網羅している。もっとも、著者の好みが反映されてかスペインが多く、フランスなどは随分少ない。訪れるべきロマネスク寺院の宝庫であり、また民家も地方ごとに変化に富んでいるのだが。本書で見る限りでは確かにスペインが圧巻である。サンチアゴ・デ・コンポステラをはじめとしたカテドラルのタンパンと扉は、まさに天国への門のごとくである。また、エル・アセボの街道と民家などは、これが現代とは思えない。まさに中世そのままなのである。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
文語詩未定稿の1篇。国柱会を詠んだ詩と思えば、やや複雑な気分になる。賢治は熱心な法華信仰から国柱会に接近していったのだろう。国柱会といえば、高山樗牛はまだしも、石原莞爾、そしてその命脈は日本会議にまで続く団体である。詩や童話からは賢治と国粋主義は結びつきそうもないのだが、それは一面的な理解なのだろうかと悩む。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
『ロージーのおさんぽ』のパット・ハッチンス作。ひたすらにねむたいみみずくのお話。ページをめくるごとに「みみずくが あー ねむたい」のフレーズが繰り返される。なんと12回。はちがやってきても、りすがやってきても、からすがやってきても…。このリズムが幼児には心地よいかと想像してみる。絵は、みみずくとりすだけがどういうわけか過剰な装飾を纏っているが、他の動物たちはややカラフルながら基本的にはリアルに描かれる。絵の全体はとっても鮮やかな色合い。
毒兎真暗ミサ【副長】
2024/06/05 15:11

ヨミ様、お役にたててよかったです✨なんかよくわかんないけど(笑)🤣

yomineko
2024/06/05 16:02

有難うございます✨✨✨(笑)🦉🦉🦉

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
9人の作家による『源氏物語』変奏。それぞれの作家が源氏の各巻を自分で選んだのか、編集者からの指定であったのかは不明。源氏一千年に合わせての発案のようだが、面白い企画である。もっと翻案化された作品が並ぶかと思ったが、それを試みたのは角田光代「若紫」と金原ひとみ「葵」くらい。小池昌代の「浮舟」も小説の枠組みとしてはそうだが、内実は翻案というには至らない。一方、金原ひとみは翻案から大きく逸脱しており、これではもうほとんど自身の出産記である。他の作家たちの短篇は町田康「末摘花」が徹底した俗語で抵抗してはいる⇒
ヴェネツィア
2024/06/04 17:04

⇒ものの、所詮はそこまで。松浦理恵子「帚木」、江國香織「夕顔」、島田雅彦「須磨」、日和聡子「蛍」、桐野夏生「柏木」などは、いずれも源氏の現代語訳を自身の文体で語ったという域を出ない。これは見方を変えれば、『源氏物語』には、それだけ現代作家たちをもひれ伏させる力量があるということかもしれない。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
これが笹公人の第4歌集であるようだ。私は、本書で初めて知った歌人だが、巻末のプロフィールを見ると現代歌人協会理事とあるので、短歌界では重要な位置にいるようだ。歌いぶりは、写生やリアリズムからは遠く、虚構を駆使してそこに歌の世界を展開するといった行き方である。それでいて、観念的に構えるのではなく、どこか洒脱で軽やかでもある。例えば「網駕籠に野菜盛られて居酒屋は邪馬台国の宴のごとし」。もう1首「弁慶が頭巾をほどく夕まぐれ顔だけ日焼けしてる弁慶」。飄々とし達観したかのような味わいの歌である。
ヴェネツィア
2024/06/04 16:47

引用したくなる歌がたくさんあるのだが、後1首だけ。「ワイヤーに猿之助のごと吊るされて女湯覗く夢を見しかな」。後を引く歌人のようである。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
著者はマドリッド在住の画家、堀越千秋。この人はスペインに関するエッセイを何冊か上梓しているが、本書は日本帰国時のものと半々くらいの雑感集。他のものに比べて、スペインへの訴求力はやや弱い。スペインに興味がある人に向けてではなく、ご本人に関心を持つ人に向けて書いている感じだ。スペイン生活が長くなり、読者たちがスペインの何に関心を持ち、何を知りたいかがよくわからなくなったのだろうか。あるいは、ご本人の日本回帰の時期にあたっていたのかもしれない。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
文はシンガー&ソングライターの大貫妙子、絵はアニメーション作家の坂井治という異色のコラボレーションによる絵本(DVD付)。お話というほどのプロットはなく、イノシシの体験した幻想が語られる。よく言えば詩的メルヘンといったところ。絵は独特のタッチで幻想譚によく合っている。とりわけウシの登場シーンは本書の白眉。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
箱根駅伝が始まってからは疾走するスピードで展開していくが、それ以前は比較的ゆるやかに進行する。かといって、走とハイジ以外の選手たち個々の抱える葛藤が詳らかに語られるわけではない。それはひとえに駅伝に収斂させていくためであったと思われる。10人はそれぞれに個性的だが、リアリティを問えば、たしかに大いに無理があるだろう。しかし、作家にとってはそれでもよかったのだろう。現実の可能性としてのリアリティとは別のところにそれを求めていたのだから。そして、それは成功したようにも、また未だ不十分であったようにも見える。
kamakama
2024/06/05 07:56

ヴェネツィアさま、たくさんのナイスをありがとうございました。三浦しをんさんは、作家になられた初期の頃からこの作品の構想をあたためてこられたそうですね。私にとっては本当に大切な作品で、読むたびに新しい感動をいただけるので、くたくたになった文庫本を捨てることができません。最近は箱根駅伝の本が色々出ている事を知り、特に池井戸潤さんの作品がヒット中なので、そのうち絶対読もうと思っています。

ヴェネツィア
2024/06/05 08:03

kamakamaさん、コメントありがとうございます。この作品は長い間の構想がようやく実を結んで誕生したようですね。箱根駅伝はそのもの自体がドラマティックです。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
ここでも五味太郎に独特のタッチの絵。登場人物たちの表情はシンボリックな表象だが、子どもたちにも了解されるはず。シンプルなようでいて存外にページごとの情報量は豊かだ。これこそが五味絵本の優れた点かと思う。さて、お話は男の子が黄色いちょうちょを追って、失敗を重ねるという単純なものだが、おそらく子どもたちの再読に十分に応えられるだろう。読後は子ども園の内外で黄色いもの探しをして楽しめそうだ。
Johnnycake
2024/06/03 09:31

これは我が家にあった数少ない日本語の本で、子供達も大好きなお話でした。日本語が全然分からない子供達ですが、「ちょうちょ」は覚えてると思います。日本語の本は貴重なので、その後小さいお子さんのいる近所のお宅に差し上げましたが、これは我が家に置いておいても良かったかなあと後で思いました。

ヴェネツィア
2024/06/03 09:58

Jonnycakeさん、この本は日本語がわからなくても十分に楽しめそうです。わが家でも子どもたちと読んだ本がたくさんあったのですが、大半は有効活用してもらおうと思って、こども園に寄付してしまいました。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
シリーズの第2巻は、ドイツ、スイス、イタリア、オーストリアを巡る。チロル、バイエルン、エンガティンの地域であり、壁絵はこの辺りにとりわけ偏在するからである。ここで紹介されているドイツの壁絵は、その地の歴史を題材にした細密なもの。絵の技量もなかなか。コンスタンツからオーバーアマガウを経てベルヒテスガーデンまで、ドイツ壁絵街道といった趣きである。スイス、ツィリスの壁絵は、色も絵柄もキリスト教曼荼羅といった風情。スクオールはエッチングのようなスグラフィットである。イタリアン・チロルはさすがに華やか。
ヴェネツィア
2024/06/03 08:13

この地方を旅すると、これぞヨーロッパという感がひしひしとする。エンガティン以外は4000m級の高山は少ないが、氷河もあり町はことのほかに美しく風情に溢れる。本はともかく、旅行先(やはり涼しい夏場か)にはお薦め。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
雪と月明りの中を列車がひた走る光景は後にこれがさらに昇華された形で『銀河鉄道の夜』のイメージに飛翔しそうだ。この作品にも氷、極光、結晶など美しくも透明なもののイメージが頻出する。これまた賢治らしい表出である。ただし、この夫婦が列車の中でも大事にしていた子どもが「あらゆる生物のために、無上菩提を求める」と語られる最終場面は、賢治の希求と思想性はよくわかるものの、小説としては首肯しがたいように思う。
山川欣伸(やまかわよしのぶ)
2024/06/10 21:17

氷や極光、結晶といった美しく透明なものの表現も、賢治らしい特徴だと感じました。

ヴェネツィア
2024/06/11 04:57

山川欣伸さん、詩集『春と修羅』や童話の代表作『銀河鉄道の夜』でもそうですね。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
吉田隼人の第1歌集かと思われる。エピローグによれば、この歌人は16歳から歌を詠みはじめたらしい。本書にも「世界空洞説」の項目で10代の歌の何首かが収録されている。本書の刊行当時でも未だ26歳。私はやはり近作が断然個性的でもあり、また優れていると思う。例えば「建築のあひまを燃やすあさやけを飛びながら死ぬ冬の鳥類」。「あるいは夢とみまがふばかり闇に浮く大水青蛾も誰かの記憶」。この人の歌は現実から発してはいるのだろうが、それが歌となった時には虚構の文学空間を構成する。それがこの人の歌の最大の魅力だろう。
ヴェネツィア
2024/06/02 18:09

ミサさん、注目の歌人です。

毒兎真暗ミサ【副長】
2024/06/02 18:14

折れないでほしいです。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
文のバーナディン・クックはミシガン生まれの児童文学作家、絵のレミイ・シャーリップはニューヨーク生まれで俳優、プロデュースなど多彩なシーンで活躍。まさき るりこの訳文はリズミカルで本文の「こねこ」の表現を巧みに引き出している。絵はほぼ単彩の鉛筆画だが、「かめ」と「こねこ」の動きを実に忠実に再現することに成功している。おそらく日頃からの観察力、およびネコに対する愛着がもたらしたものだろう。文章との相性はすこぶるいい。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
文語詩未定稿の1篇。五・七調の定型詩だが、これまたわかりにくい詩である。白いペンキの剥げた木柵に倚りかかる何人かの人。情景のイメージは農場(当時はまだなかっただろうが、例えば小岩井農場のような)である。「白堊城」は、この農場の建物の比喩的な表現だろうか。結びは「うつろなりけり」という和歌的な詠嘆で終わる。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
ピッツァは大好き。もう何年も前のことになるが、かつてコモ(ロンバルジア州)に一人で1週間滞在した時、毎晩夕食に同じピッツェリアに通った。毎回、違ったピッツアを頼んで最後の日はカルツォーネ(三日月形のピッツア)を食べた。それでも飽きることはなかった。さて本書だが、ナポリピッツアとローマピッツァの両方の作り方から始まる。私も基本的には生地から作るが、最大のネックはピッツァ窯を持っていないことである。欲しいのだが、高い上に邪魔になりそうで。また、主に東京と神奈川のピッツアのお店12店と、それぞれ自慢の⇒
ふう
2024/06/02 19:11

ヴェネ様、同じ野望を抱いておりますが、60〜90分の予熱で焼くのは1分足らず、エネルギーロスが甚だしくて二の足を踏んでおります。幸い近くに石窯で美味しいピッツァがいただけるお店もできて、しばらくはそれで済ませております。でも、窯をお求めになってどハマりなさるコメントが目に入ったとしたら、我慢が揺らぎそう。

ヴェネツィア
2024/06/03 05:09

ふうさん、60〜90分待ちで焼くのは1分!それではまるで大型病院並の忍耐ですね。それを聞くと、断念する方向に大きく振れそうです。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
文はマーガレット・ワイズ・ブラウン。絵はダーロフ・イプカー。巻末の解説によれば、本書はイプカーの記念碑的作品とのこと。彼女の最初の絵本であり、同時に独自のスタイルを確立したとされる。文は、ひたすらに「大きいりょうしさん」と「小さいりょうしさん」を対比させて描く。リズムがあるといえばそうだが、単調きわまりないといえば、またそうだ。絵はペン画にパステルカラーで彩色を施したもの。典型的なアメリカンスタイルの絵である。1945年出版ということもあって、世界観の古さは否めないか。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
2016年のブレグジット(イギリスのEU離脱)の分析にはじまり、その後のイギリスを考える試み。そしてロンドンのイーストエンド(典型的な労働者の町)の人たちの生の声を聞くことで、追跡調査を行っている。さらには、1910年(ヴァージニア・ウルフの言う歴史的な転換点の年)から現代までの労働運動と政治史を振り返ることで、今後の展望を語る。実に綿密な考察であり、そこでは民主主義とマスコミの虚妄が暴かれる。しかも、それはひとえにイギリスの問題ではなく、日本も含めた現代世界の、すなわち我々自身の問題である。
Johnnycake
2024/06/01 08:45

プレグジットの投票最中にロンドンにいましたが、ただならぬ雰囲気で確かに一つのターニングポイントにいるという感じはしました。だからと言って人々の暮らしが劇的に変わったわけではありませんが。ちゃぶだいがえしというと星一徹しか思い浮かびません…。^_^;

ヴェネツィア
2024/06/01 09:31

Jonnycakeさん、歴史的な転換点にロンドンにいらしたんですね。その後、もう8年が経過しましたが、日本にいてはその後がどんな風になったのかよくわかりません。

が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2011/11/30(4768日経過)
記録初日
2011/04/07(5005日経過)
読んだ本
7098冊(1日平均1.42冊)
読んだページ
1698800ページ(1日平均339ページ)
感想・レビュー
7008件(投稿率98.7%)
本棚
57棚
性別
職業
専門職
自己紹介

2011年4月からの参加で、14年目にはいりました。一番よく読んでいるのは日本文学、次いでは翻訳文学です。読むジャンルの幅は広い(半ばは意識的にそうしています)のですが、何でも手当たり次第に読むというわけではありません。特に誇れるものはありませんが、連続読書日数は初日から4969日(2024年11月12日現在)、冊数は6988冊になりました。胃癌で入院中も、海外旅行中も毎日読んできました。さて、どこまで伸ばせることやら。

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