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2025年10月の読書メーターまとめ

ヴェネツィア
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2025年10月に読んだ本
124

2025年10月のお気に入り登録
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2025年10月のお気に入られ登録
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  • ヨシモト@更新の度にナイスつけるの止めてね
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2025年10月にナイスが最も多かった感想・レビュー

ヴェネツィア
ネタバレ4つの短篇+1つの掌篇からなる作品集。2篇目の途中までは、小惑星の衝突という共通項で括られる物語群かと思っていたが、連作短篇集だった。やや極端なキャラクター設定だが、そもそもの設定が設定なので、エンターテイメント性を求めるならこれで(もしくは、これくらいの方が)いいかと思う。また、静香篇と雪絵篇以外は、「〇〇を殺した」というプロローグが付くのもユニークかつ、生と死の等質化をサブ・テーマとする本書の特質をうまく活かしてもいる。相互の関係性が次第に濃密になっていくにつれ、面白さも増して行く。その意味では⇒
が「ナイス!」と言っています。

2025年10月にナイスが最も多かったつぶやき

ヴェネツィア

今月もどうぞよろしくお願いいたします。☆2025年9月の読書メーター 読んだ本の数:120冊 読んだページ数:20310ページ ナイス数:48986ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/157091/summary/monthly/2025/9

今月もどうぞよろしくお願いいたします。☆2025年9月の読書メーター 読んだ本の数:120冊 読んだページ数:20310ページ ナイス数:48986ナイス  ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/157091/summary/monthly/2025/9
yomineko@鬼畜ヴィタリにゃん🎄🎅🎄
2025/10/01 09:15

えかさん、我々は爆読みが通常、至って普通になってしまっています(笑)

ヴェネツィア
2025/10/01 11:58

えかさん、こんにちは。私には読書の秋はないようです。いつも通りに。でも、内容は多少とも秋めいたものをとは思っています。

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2025年10月の感想・レビュー一覧
124

ヴェネツィア
牧水が大正9(1920)年に、東京から沼津の古い家に移り住んでの随想。当時の牧水一家は、妻と8歳になる長男の3人暮らしであった。同年の8月にはじまり、やがて曼珠沙華の秋を迎える。このあたりは、さすがに歌人という細やかな描写である。家からは愛鷹山と富士がのぞまれ、ここで歌が2首。「駿河なる沼津より見れば富士が嶺の前に垣なせる愛鷹の山」、「愛鷹の真黒き峰にまき立てる雨雲の奥に富士は籠もりつ」。いずれも万葉調の歌である。富士には、やはり万葉ぶりが似つかわしいのだろう。やがて冬を迎え、ある朝、富士は山全体が⇒
ヴェネツィア
2025/10/31 16:25

⇒真っ白になる。このあたりの描写も冴え、読者もまたま白き富士を仰ぎ見るかのごとくである。沼津の町は大火で焼けてしまい、牧水が見たのは新しくなった沼津であった。彼は懐旧するのではなく、新しい沼津をむしろ清々しいものと見ていたようだ。

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ヴェネツィア
出版はパリに本社を置く、ラ・マルティニエール。イヴ・サン=ローランの全てといった趣きの本。最初に評伝。彼は1936年にオラン(アルジェリア)に生まれた。18歳でパリへ。19歳、ディオールに入る。25歳で解雇される(神経衰弱のため?)。結果的にはそれが彼の独立を促し、同年メゾン「イヴ・サン=ローラン」をパリに創設。以降は、実に華々しい活躍である。自身がモデル並みの容姿に恵まれていた(彼のヌード写真まで公開されている)。オートクチュールばかりか、プレタポルテでも大きな足跡を残した。華麗にして優雅。そして⇒
ヴェネツィア
2025/10/31 16:05

⇒時にはシックでもある。モデルとしての代表はやはりカトリーヌ・ドヌーヴだろう。ただ彼は、有色人種のモデルをも採用した最初の人でもあった。ナオミ・キャンベルや川原亜矢子などがそうである。スタイリングも優雅だが、同時に彼は色彩の魔術師ともいうべき存在でもあった。本書の後半は色彩別に作品が並べられているが、彼の青もローズピンクも黒も、ため息が漏れるほどに美しい。私は残念ながらネクタイしか持っていないが。

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ヴェネツィア
モーリー・ロバートソンは初読。私は知らない人だったが、巻末の著者紹介によれば「国際ジャーナリスト、ミュージシャン、コメンテーター、DJ解いった多岐な分野で活躍」とある。若い人たちの間では知られた存在なのだろうか。まず、タイトルのセンスを疑う。サブ・タイトルも迎合的なスタイルでこれもダメ。あるいは、ポピュリズムを逆手に取っているのだろうか。中盤以降はやや弛緩気味だが、語られている状況分析と主張は極めてマトモ。「南アジアや東南アジアの新興国より自分たちの生活水準は遥かに上だという幻想、親世代から受け継いだ⇒
sheemer
2025/10/31 11:41

かれには「よくひとりぼっちだった」という前著があります。ずいぶん大昔。本人に会ったことあります。時代にズレたというより「今もこれ使うの?」という感じの、恐ろしく音のいいアナログシンセサイザーを使ってました。i-morleyで河野麻子さんが相方の頃だから2008年頃だったか? しれっとがっつりこだわってる人。

ヴェネツィア
2025/10/31 13:00

sheemerさん、いろんなことをしている人のようですが、私は全く知りませんでした。著書も結構いろいろとあるようですね。

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ヴェネツィア
浜田桂子・作。小学校入学を目前にした、ゆうき。夜、眠ろうとしていたところに、通園バッグが現れて…。それからは、乳児時代からの品々が次々登場して思い出を語る。名づけて「おめでとうかいぎ」。数々の思い出グッズは擬人化されているが、そ れでも基本的に絵はリアリズムに徹する。太い描線に水彩絵の具での彩色。ところで、「かいぎ」、「とくべつゲスト」などの用語がキー・ワードとして用いられているのだが、主たる対象年齢と思われる園児や小学校低学年の子どもたちにはピンとこないのではないか。
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ヴェネツィア
初出は昭和14(1939)年7月「文筆」 。太宰30歳。このエッセイの主旨は極めて明確。冒頭に言う「山岸外史氏の『人間キリスト記』をもつとたくさんの人に讀んでモラひたい」のである。山岸外史は、太宰や檀一雄らと「青い花」を創刊した若き日からの盟友。批評家として、戦後も長く活躍した。その山岸の表現についての努力を太宰は分かりにくい隠喩を用いて述べるのだが、これではたして効果があったかは疑問である。もっとも、この『人間キリスト記』は、第3回透谷文学賞を受賞したので、どうやら太宰の心配は杞憂に終わったようだ。
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ヴェネツィア
ヘルシンキに暮らす16のファミリーをたずねてお部屋を公開。アイティ(ママ)とイサ(パパ)とラブセット(子どもたち)が2、3人というファミリーが基本。季節はいずれも夏のよう。このような撮影に選ばれるくらいなので、どのお家も羨ましくなるくらいに素敵だ。日本との違いは部屋が広々していることと、天井の高いこと。インテリアのセンスも素晴らしい。とってもカラフルである。しかも、それでいてスッキリしているところがいい(例えば表紙写真)。子ども部屋も可愛い。ドールハウスが、ムーミンのだったり、ピッピのだったりする⇒
宵待草
2025/10/30 16:36

ヴェネツィアさん こんにちは! 此の素敵な本が共読本に一冊加わり、嬉しくレビューを拝読しました!🍀 北欧好きな私は、中でもフィンランド🇫🇮が一番好きです!💖 映画『かもめ食堂』のDVD鑑賞後は、更に好きに成りました!💫 何時も、私の知らない多分野の、良書のご紹介! & レビュー!や、何より既読数には驚くばかりです!😲 此れから、風邪やインフルエンザの流行る時季と成りますので、お互いに体調に留意したいと思います!✨  何時も、有り難うございます!🙋 宵待草

ヴェネツィア
2025/10/30 16:55

宵待草さん、かもめ食堂は残念ながらなくなってしまったようですね。この前、NHKの「世界街歩き」でタンペレを見ました。フィンランドには行ったことがないのですが、行くならサーメの北極圏まで行ってみたいものです。

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ヴェネツィア
シリーズ第1巻はヨーロッパ篇。全編を通せば、凄まじいばかりの争奪戦である。巻頭は化石人類の時代から。すなわち、幕開けはクロマニヨン人の勝利からである。そして、ヨーロッパにおける文明の曙光は、クレタ島のミノア文明から。次いではエーゲ海を席巻するミュケナイ文明の時代。地中海全体では、やがてフェニキアとギリシャが拡大し、各地に都市国家を建設する。ギリシャ世界では、アテナイとデロス同盟vsスパルタのペロポネソス戦争。時は移り、ローマが発展し、地中海世界の覇者に。要所、要所に地図があり、ヨーロッパ世界の歴史的な⇒
ヴェネツィア
2025/10/30 11:17

⇒移ろいを俯瞰できる。西洋史のおさらい、再認識にはピッタリの本。もちろん、その後のゲルマン人の侵入から現代までを伝える。

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ヴェネツィア
レオ・レオーニ 作。これほどまでに抽象化された絵本を見たのは初めて。これでも絵本として成立するギリギリのところなのではないだろうか。真に実験的な絵本。もっとも、作家本人はそんなつもりもなく、ごく自然体で描いたのであったかも知れないが。そして、人間はこれにさえも感情移入することが可能なのだ。解釈もまた多様性を孕むだろう。あおくんときいろちゃんとが合体して、みどりになったところなどは、とりわけ。そして、そのことこそがまたいいのだ。
ヴェネツィア
2025/10/30 08:15

読み聞かせの現場で子どもたちの反応を見てみたいものである。子どもたちは、どんな反応を示すのだろうか。

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ヴェネツィア
ネタバレ4つの短篇+1つの掌篇からなる作品集。2篇目の途中までは、小惑星の衝突という共通項で括られる物語群かと思っていたが、連作短篇集だった。やや極端なキャラクター設定だが、そもそもの設定が設定なので、エンターテイメント性を求めるならこれで(もしくは、これくらいの方が)いいかと思う。また、静香篇と雪絵篇以外は、「〇〇を殺した」というプロローグが付くのもユニークかつ、生と死の等質化をサブ・テーマとする本書の特質をうまく活かしてもいる。相互の関係性が次第に濃密になっていくにつれ、面白さも増して行く。その意味では⇒
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
この巻は、レスター大学工学部棟である。設計はジェームズ・スターリングとジェームズ・ガゥワン。これがこの二人のパートナーシップによる最後のプロジェクトとなった。計画されたのは1959年であり、竣工は1963年である。現在、これはモダニズム建築を越えてゆくポストモダンの先駆的なものとして、高く評価されているようだ。工学部棟なのだが、2人のイメージにあった工学は、旧態依然とした重厚長大型のそれではなかっただろう。これから、次世代を切り開いていく電気工学や電子工学だったのではないだろうか。この建物を見ると、⇒
ヴェネツィア
2025/10/29 16:42

⇒そうとしか思えない。まず、一番最初に目に付くのが、主玄関のガラスに覆われたアーチである。これは昼よりも夜に照明が灯されると、一層に輝きを増す。ディテールもまた単なる実用を超えた凝りようである。それでいて、光を巧みに取り入れるのであり、全体として奇抜な印象でありながら、それに終わらない。

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ヴェネツィア
この号の特集は「アジアの空間デザイン最前線」。今のアジアで建築の最前線は、やはりシンガポールだろう。巻頭は、そのシンガポールのチャイナタウンとクラークキュイに隣接した地区にあるシティホテル。設計はWOHA※。優美な曲線と鋭角的な直線が巧みに融合する、現代感に溢れる建築。WOHAが手がけるもう1つのプロジェクトが海南島(中国)のリゾートホテル。こちらも、中国というイメージからは遠い。シンガポールに次いでは、インドの各地に展開する新しい建築群と、シンガポールを追うクアラルンプールだろう。LOTUSのデザイン⇒
ヴェネツィア
2025/10/29 08:28

⇒によるジョドプールの城砦を仰ぎ見るブティック・ホテルには是非とも泊まってみたいもの。スパなどはまるでアラビアンナイトの世界だ。※WOHA―ウォン・ムン・サムとリチャード・ハッセルが創設した建築デザイン集団。

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ヴェネツィア
筒井頼子・文、林明子・絵。引っ越して新しい町に来たかなえ(推定年齢4〜5歳) 。お父さんとお母さんは引っ越し荷物の片付けで大忙し。そんな時、玄関の方で小さな音「とん ことり」。何度かそんなことがあって、とうとうかなえはその相手を見つけた。それは、かなえと同年くらいの女の子。日常のリアルに潜む、一種幻想譚めいた趣きを持ったお話。絵もリアリズムに徹する。子どもたちの受けとめ方はどうなのだろう。単純にお友達ができて良かったね、というものなのだろうか。それとも、なんとなく神秘の気配を感じるのだろうか。
おぎぎ
2025/10/30 12:11

とん ことり はまだ手元にないので未読ですが、林明子さんが文・絵ともに担当されている作品は子供独特の現実と空想の境を表現された絵本が多く私はとても好きです。デフォルメされていないイラストも落ち着いた色彩も気に入っています。私はその中でも「こんとあき」という作品がとても良かったので、もし機会があれば読んでみてください。

ヴェネツィア
2025/10/30 14:54

おぎぎさん、探してみます。図書館にあればいいのですが。

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ヴェネツィア
シリーズ第2巻は夏目漱石。第1巻を森鷗外に譲ったのは(とはいっても彼らの意思ではないが)鷗外が漱石よりも5歳年長であったからか。文学者としては、同等、もしくは今日的な評価では、一般的には漱石が上か。さて、本書だが、編集方針は第1巻と同じく、最初に作品紹介のフォト・アルバム。そして、辻邦生の「夏目漱石文学紀行」が次に来る。その後の評伝や年譜等を担当するのは、荒正人と紅野敏郎といった一昔前の(あるいはもう少し前か)漱石研究の泰斗のお二人という豪華な陣容。このあたりは、さすがに漱石といったところか。
ヴェネツィア
2025/10/28 16:31

評伝もきわめて充実。写真資料等も貴重なものも多い。例えば明治八年の日付の入った下等小学第七級卒業候事などまである。氏名欄は塩原金之助である。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
この巻はデッサウ(ドイツ東部)のバウハウスである。設計者は、このバウハウス(デザイン学校)の校長を務めていたワルター・グロピウスである。1925年着工、竣工はその翌年。建物の建築面積は11万3400平方フィート(延床面積は25万600平方フィート)と、かなり大きい。素っ気ないようでもあるが、建物の前面を覆う鉄骨とガラス、そしてコンクリート造りと、当時はかなり大胆な素材を用いた意匠として注目されたようだ。現在では、モダニズム建築の傑作としての誉れも高く、バウハウス関連施設とともに世界遺産に登録されている。
宵待草
2025/10/28 17:28

ヴェネツィアさん こんばんは! 此の本はバウハウスの建築に付いてですので、、、少しずれたコメントでごめんなさいね!🙏💦 竹久夢二がベルリン滞在時に、バウハウスのマイスターの一人、スイスの画家ヨハネス・イッテンとの関わりで、イッテンが開校した学校で、日本画の講義や指導をしていました。 滞在時に描いた『水竹居』は文京区にある、竹久夢二美術館に所蔵されています。 ヨハネス・イッテンの『色彩論』は名著で、私も若き日に既読しています。 ヴェネツィアさんの、広範囲の多分野の読書には、驚くばかりです!💫 宵待草

ヴェネツィア
2025/10/28 17:32

宵待草さん、しばらくです。宵待草さんこそバウハウスからイッテンを語るとは相当な遣い手です。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
『自由研究には向かない殺人』の続編。いきなりこの巻から読めないことはないが、序盤で前作についてのかなり詳細な報告があり、また人間関係等も前作を受けているので、やはり順当に第1巻から読む方がいいだろう。物語の舞台も、前作同様のリトル・キルトンであり、登場人物の多くも再登場、というか彼らは引き続きこの町に住んでいる。つまり、狭い世界に起こる事件―今回は行方不明事件である。探偵役のピップは今回も捜索にあたるが、事件そのものも捜査方法も前回よりは地味である。今回は半ばは公開捜査の手法をとるが、そのことは社会性の⇒
ヴェネツィア
2025/10/28 07:26

⇒拡張といった意味を持つだろう。ただ、一方ではそのことによってスピーディな展開は幾分犠牲になったかもしれない。後半は一気に加速するが、終幕部は幾分唐突な感がしないでもない。また、次作への含みを大きく残していることもあって、今作は繋ぎの巻ということになりそうだ。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
かこさとし・作。たくさんの工作道具が登場する。まさかり、よき、おおなた、のみ…まだまだ登場。みんなそれぞれに得意な業を活かして分業し、木を素材に椅子を作り上げた。次は板を削ってピアノを。そして、今度はハサミや裁縫道具たちがやってきて、ドレスを。さらには電気工具たちが合作でロボットを。最後はロボットのピアノ演奏会で幕。数は数えなかったけれど全部で100種類、あるいはもっとあるかも。教育的なところが、若干気にならないでもないが、それでもこの「道具尽くし」は、なかなかの見もの。なお、一つ気になるのはピアノ⇒
ヴェネツィア
2025/10/28 07:10

⇒の製作。木でピアノの本体と鍵盤等を作るのはいいのだがこれだけでは音は出ない。ピアノの弦やハンマーなどの内部構造を全く考えないのは、子ども向けだけに余計に変だ。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
初出は昭和13(1938)年11月「日本文學」 。太宰29歳。太宰はここで「女性を書くのに、多少、秘法に気がついた」と語っている。では、その秘法とは何かというと「やはり黙っていよう」と明かさない。そりゃあ職業上の秘密だからね。軽々にしゃべってしまって、秘法を盗まれたのではかなわない。本篇が書かれたのは、女性を描いた太宰屈指の成功作『女生徒』の前年である。これ以降、太宰は『斜陽』などいくつかの女性による一人称語りを成功させていく。また、太宰によれば、日本の作家で「ほんとうの女を描いている」のは、近松秋江⇒
racco201
2025/10/28 09:49

興味深く感じ、早速読了。〜女性は創造しない〜!?太宰にぜひ令和の女流作家の活躍を見てもらいたい。批判はともかく、「女生徒」を読んで以前感じたのは太宰の中に潜む女性的なもの。なりきって書く、という秘法ではないかな?余談ですがドストエフスキーの女装、写真が残っていたら見てみたいですね。

ヴェネツィア
2025/10/28 20:28

raccoさん、ユングによれば、すべからくアニマとアニムスが存在するはず。ドストエフスキーの女装は隠喩だと思います。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
『イオーン』のみの感想。ギリシアの王クスートスの妻クレウーサと、その子イオーンの物語。イオーンはアポロンがクレウーサに産ませた隠し子であったために、クレウーサは、出産後すぐに「高岩」の岩屋に捨てる。イオーンはアポロン神殿に拾われ、やがて長じて社殿の執事として働く。そこに神託を聞くためにやってきたアテナイ王クスートスとクレウーサ。彼らが別々に託宣を聴いたために、相互に誤解が生じ、クレウーサはそれと知らずにイオーンを殺害しようとする。アポロンの意を受けた女神アテナイによって誤解が解け、イオーンはめでたく王位⇒
ヴェネツィア
2025/10/27 13:56

⇒を継ぐことになる。途中まではクレウーサの悲劇かと思わせるのだが、彼女の葛藤はアテナイによって容易く解消してしまう。近・現代劇であれば、クレウーサにイオーンを毒殺させると思われる。そうすれば、彼女は二重の苦しみに陥ることになるからである。ソフォクレスの『オイディプス』などと比べると、随分甘い結末である。主眼がイオーンとクレウーサの悲劇を描くことにはなく、都市アテナイの来歴を語ることにあったかと思われる。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
出版が1987年といささか古い。内容が江戸ものなので、そのことは一向にかまわないのだが、残念ながらせっかく多彩な浮世絵を駆使しているのに、ほとんどのページがモノクローム。やっぱり「大江戸の賑わい」は、カラーで楽しみたいもの。巻頭を飾る広重の「東都大伝馬街繁栄之図」などはことにそうだ。浮絵(遠近法)を駆使した華やかな絵なのに勿体ない。歌川芳藤の「神田祭礼之図」なども。豊国の役者絵は幸いにもカラーなのだが、それを見るにつけても惜しまれる。吉原の大門の図なども、往時はかくやと思わせるリアリティである。
ヴェネツィア
2025/10/27 07:00

何度も言うが、ほんとうにこの本が全編カラー印刷だとどんなにいいか。江戸情緒を満喫できるし、考証する上でのヒントもいっぱいありそうだ。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
ことばあそびの会・文、金川禎子・絵。タイトルの「きっときってかってきて」のような、発音しにくそうな、ちよっと意味不明だったりもするが、よく見るとちゃんと意味のある言葉の連結がいっぱい。「ぱぱのはばひろぱじゃまままるあらい」こんなのが16通りも。こういうのを「舌もじり」というらしい。面白い。親子で意味を考える(小学生でないと無理かな?)楽しみも。絵はこれまたとっても楽しい貼り絵。とぼけた感じが絶妙な味わいを醸し出す。読み聞かせでは何のことかわからないかも。でも、解説してしまうとつまらないだろう。お薦め。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
感想は『五十年忌歌念仏』のみ。近松世話浄瑠璃の11曲目。万治3(1660)年の事件に材をとり、宝永6(1709)年に初演。近松の世話浄瑠璃の多くは、実事件後それほど時間を置かずに初演されている(『曽根崎心中』が1ヶ月後、『心中天網島』が1ヶ月半後)。事件の評判が高いうちにお芝居にする(際物という)のは、興行上当然有利だから当然である(ただし、幕府は禁じていた)。本作は五十年後と異例中の異例である。しかも、この事件は夙に西鶴が『好色五人女』巻1「姿姫路清十郎物語」で描いており(1686年)、良くも悪くも⇒
ヴェネツィア
2025/10/26 15:43

⇒物語そのものは人口に膾炙していたのである。そこで近松は、「五十年忌」と銘打ったのであった。年忌興行である以上は、何らかの形で、主人公の清十郎とお夏を救済せねばならないだろう。そこで、近松が登場させたのが勘十郎と源十郎という2人の敵役であった。それはともかく、そのために近松は清十郎に殺人という実事件や西鶴にもなかった大罪を犯させる矛盾を自ら抱え込むことになったのである。結末部の不自然さも覆い難いし、欠点が随所に見られるのだが、趣向あるいは劇としては面白い。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
この巻はカリフォルニア航空宇宙博物館である。設計者はフランク・ゲーリー。ゲーリーは、このシリーズでも「シュナーベル邸」に続いて2度目の登場である。この建物の着工が開始されたのが1983年5月、竣工は翌年の7月である。収納・展示されているものは複葉機から、ロケット、人工衛星などである。こういったものを見せる博物館であるだけに、さすがに建物それ自体も思いっきり奇抜である。壁面にはロッキードのF104戦闘機が取り付いているし、建物本体も重力の法則にあえて逆らうかのような造りである。また、建屋の斜めの壁や⇒
ヴェネツィア
2025/10/26 15:03

⇒建屋自体を支えているブラケットなどは意図的に誇張され、あえて不安定な感じを見るものにもたらしている。なお、この博物館はロスアンゼルスのダウンタウンの南郊のエキスポジション・パークにあったのだが、どうやら手狭になって現在は別の場所に移ったようだ。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
シリーズ第2巻は「豆・いもの郷土料理」。巻頭を飾るのは、私にはあまり馴染みのない栃木県の「しもつかれ」。生活の知恵がいっぱい詰まっている上に、縁起ものでもあるらしい。続いては、これまた初めて見る神奈川県の「大山の豆腐料理」。豆腐づくしといった趣きである。江戸期の「豆腐百珍」の流れを汲むか。そして、こちらはお馴染みの「水戸納豆」。作られていたのは古くからだが、名物になったのは昭和にはいってかららしい。さらには宮城の「ずんだもち」、新潟の「のっぺ」と続くが、ここでまた初耳の徳島県の「でこまわし」。愛媛県の⇒
ヴェネツィア
2025/10/27 08:19

白銀の月さん、そんなにローカルなものでしたか。祖谷の郷土料理で味噌田楽といった感じのものです。

白銀乃月
2025/10/27 19:40

そうなんですね。教えていただき、ありがとうございます。スッキリしました。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
片山 健・作。もう夜になったのだけれど、まだ眠っていない子どもが1人。コッコさんでした。「コッコさん おやすみなさい。もう 〇〇も ねむったよ」とお月さまが声をかけても「〇〇が ねむっても コッコは ねむらないもん」これが何度もくりかえされ、やがてコッコさんは…というお話。幼児向けのお休み絵本だろう。絵は滲みを活かした水彩画。窓からは月の光がさし、コッコさんのおふとんの上にはクマのぬいぐるみ。この構図の絵がとりわけいい感じだ。
toko toko
2025/10/26 17:36

初めまして! コッコさんシリーズ大好きです ヴェネツィアさんの投稿している絵本 自分もとても好きなものばかりです☺️

ヴェネツィア
2025/10/27 05:10

toko tokoさん、おはようございます。コッコさんとは今回が初めての出会いでした。絵本レビューはもう少し続けて行くつもりです。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
これも方言学なのだが、一般に方言というときにイメージする語彙の違いではなく、「言い方」の違いに着目したもの。語彙は誰にでもすぐにわかるが、こうした言い方はそれに地域差があることには気が付きにくい。例えば、東日本大震災の後、関東や、まして関西から被災地に行ったボランティアの人たちには、そうした違いから戸惑いがあったようだ。具体的には、挨拶行動などに現れるようだ。印象的には、東北地方の人たちの言葉がぶっきらぼうに感じられるということである。また、冠婚葬祭(ことに不祝儀の場合)の言葉の遣り取りも例に上がって⇒
ヴェネツィア
2025/10/25 16:17

⇒いるが、関西のそれと東北のそれとは大きな違いを見せている。一方、オノマトペは東北の人たちの方がずっと使用頻度が高いそうだ。宮沢賢治の作品にはオノマトペが多く見られるが、あれは賢治の特質でもあると同時に東北の人らしい特質でもあったようだ。今まで、あまり意識することのなかった事柄であるが、これを読んでなるほどそうだったのかと納得することも幾つかあった。

ヴェネツィア
2025/10/25 16:21

私自身は大阪の出身(もう離れて長いが)なのだが、その私が驚いたのが社会社人同士の挨拶の会話(両方とも男性)。「まいど(毎度)」「まいど」「まいど。おいど(お尻の関西方言)」。その時は、私には会社勤めはできないと思った。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
文章で読むイタリア観光ガイド。第1部は「美術・歴史」。ポンペイとカポディモンテ美術館を擁するナポリが興味深い。街並みはあまりお薦めではないようなのだが。第2部「食の宝庫」。モデナやパルマのあるエミリア・ロマーニャ州に犇めくようだ。田舎だが、アブルッツォ州やモリーゼ州には一度行ってみたいもの。第3部「とっておきの町」。とっておき、とはいうもののヴェネツィアやペルージャではありきたりではないだろうか。メルカテッロ・スル・メタウロ(マルケ州)は初耳。そして、「イタリアで最も美しい村」以外にも、ここのように⇒
ヴェネツィア
2025/10/25 12:16

⇒個性的な町が「オレンジフラッグ」に指定されているというのも初めて知った。公共交通機関では行きにくそうな所が多いが、その価値は大いにありそうだ。例えば、このメルカテッロはフィレンツェからアレッツォまで電車で行って、そこからバスで2時間。バスの本数も少なそうだ。でも、行ってみたい町である。他のオレンジフラッグの町も注目したい。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
ジュウ・ドゥ・ポゥムのたくさんあるシリーズの1冊。今回はヘルシンキ編。自宅のアパルトマン(フィンランド語のフオネイストではなく、何故にフランス語?)を公開してくれたのは、やはりここでもデザイナーやアーティストたち。したがって、普通の家庭よりも洗練されていそうである。パリやロンドンのアパートと比べると、顕著な違いは明るくて開放的であること。もちろん例外はあるが、色彩感覚もヴィヴィッドで、ポイントに使われる赤が印象的。皆さん揃ってセンスもよく、快適な暮らしの様子。基本的には夏仕様だが、冬だとどんなだろうか。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
せなけいこ・作。いささか季節を逃してしまったが。登場するのは、おばけちゃんとうさぎちゃんだけ。お話もいたってシンプル。幼児向けに描かれているからだろう。したがって、絵の輪郭も濃淡も極めてくっきりとわかりやすく。おばけちゃん、うさぎちゃんの表情も大きく、これまたわかりやすい。絵本入門といったところだろうか。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
巻頭言で建築家の網野隆明氏が語っている。「古民家での民衆的な生活に憧れる人は多いに違いない。しかし、そういった生活を実行できる人は限られているように思う」は、まさにその通りだろう。現代生活と農山村での暮らしとのギャップもそうだが、古民家を再生して住むにはやたらとお金がかかるのである。巻末に「買える!古材パーツカタログ」が掲載されているが、戸1枚で数万円もする。また、古民家再生の専門職人の紹介もあるが、この人たちに依頼するには相当な出費を覚悟する必要があるだろう。したがって、私などはもっぱらこうして古民家⇒
とんかつラバー
2025/10/24 16:01

古民家って昔の大家族(女中や下男など大勢の人)がいて、隣近所の人とのつきあいがあるから成り立つのであって、電気やガスがあっても都会から若い夫婦が移り住むには苦しいですよね。都会の人は田舎に幻想抱きすぎ

ヴェネツィア
2025/10/24 16:31

とんかつラバーさん、そうなんでしょうね。このシリーズでも、味わおうとしているのは古民家のスタイルであって、けっして生活様式ではないのですから。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
著者のダミアン・トンプソンは『ザ・ワールド・オブ・インテリア』誌の副編集長。熱心な読書家とあったが、本書の中核を成すのは、あくまでもインテリアの装飾としての本である。各部屋ごとに本をあしらったレイアウトを紹介する。ここでは、リビングの壁面に造り付けのブック・シェルフを設置し、本を並べている。ロンドンのコヴェントガーデンのロフトもあったが、ブック・シェルフはいいのだが、そこに均質な全集類を並べると、へんに重厚になってしまい、リビングには似つかわしくないだろう。リビングはあくまでも、軽快でありたいものだ。⇒
ふなこ
2025/10/24 21:39

私はすごく好きな本は単行本とお風呂で読む用の文庫本と2冊買います。「こゝろ」と「星の王子さま」と「月と6ペンス」は何冊目か分かりません。

ヴェネツィア
2025/10/25 08:10

ふなこさんはお風呂でも文庫本を読まれるのですか。しかも、副本まで用意して。偏愛書の『こころ』、『星の王子さま』、『月と6ペンス』は納得。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
この第4巻は"New Endeavors"(新たな試み)と題されている。たしかに安藤忠雄の建築の中でも、ことさらに大胆な試みがなされているようだ。巻頭で、いきなり衝撃を受けるのが「上海保利大劇場」である。水庭越しに北東側ファサードからは大きなチューブの切断面が見える。こんな建物は見たことがない。内部空間もまたシアターをはじめ、あれこれと斬新な意匠が凝らされている。上海には奇抜な建物が多いが、これは単に新奇さを狙ったものではなく、オペラホールとしての実践的な力量も備えていそうだ。どの建物も個性的なのだが⇒
ヴェネツィア
2025/10/24 08:23

⇒もう1つ驚いたのがヴェネツィアの「プンタ・デラ・ドガーナ」である。これはサン・マルコ寺院を対岸に臨むサンタ・マリア・デラ・サルーテ聖堂の突端に建てられたギャラリーである。こちらは全くヴェネツィアの景観に溶け込んでおり、外観からは斬新さが見えない。そこが実はすごいことろだと思うのである。

ヴェネツィア
2025/10/24 08:24

安藤忠雄の建築に関心がある人には強推薦!

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
メイ・モリスが「北の大海原のような草原に立つ一種のおとぎ話の宮殿」と評したのが、このメルセッター・ハウスである。立地はかなりとんでもないところで、スコットランドの北の果てからさらに北の海に乗り出したオークニー諸島のホイ島にある。この建物は、ウィリアム・モリスのアーツ・アンド・クラフツ運動に立脚する住宅建築の原理の例証とされているようだ。実に素晴らしい建物だと思う。立地を別にすれば住んでみたいし、ほとんど理想的だといってもいい住宅建築である。まさにアーツ・アンド・クラフツを実感することだろう。ただ、これが⇒
ヴェネツィア
2025/10/24 08:05

⇒現代建築かというと、それは大いに疑問である。19世紀建築としても古めかしいくらいである。表紙写真からも、全体の意匠がなんだか中世めいているのがわかるだろう。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
これも国立歴史民俗博物館の資料から。副題は「描かれた中・近世都市」。巻頭は複数ある「洛中洛外図屏風」から。これまでにも何度か見る機会があったので、今回は祭礼と芸能に着目して。最初のページでは、内裏では左義長、市中では祇園祭の長刀鉾の巡行。高野川東岸では、犬追物。そして飛鳥井邸では、蹴鞠。一方、通りの四辻では念仏風流踊り。四条河原には歌舞伎小屋。三条通りでは大道芸。鴨川の中洲では射的も。なんとも遊芸に満ちた都であることか。そして町中に神社仏閣が犇めいている。東都はといえば、江戸城を中心に堂々たる風格。⇒
ヴェネツィア
2025/10/23 16:37

⇒日本橋に両国橋。また、町のいろんなところから富士の姿が望見される。こちらは多数の浮世絵が残されているが、黄表紙『金々先生栄華之夢』に「ぎょうにお江戸は賑やかだ」の台詞があるが、まさにその通りである。

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ヴェネツィア
著者の英 伸三はフォト・ジャーナリスト。本書では、1960年代から80年代にかけて、彼がそれぞれの現場で撮り溜めた写真を『一所懸命の時代』のタイトルのもとに編集したもの。現場.その1は「集団就職」。主に70年代のものである。沖縄(当時はまだ復帰前)や日本の各地からやってきた若者たち。そして、彼らを迎える企業側の人たち。それぞれの思いが交錯する。以下いくつものトピックスでの写真。「皇居前広場の成人式」(1968年)などは、まさに隔世の感がある。ことに女性たちの体格、体型が今とは大きく違っている。さらには⇒
ヴェネツィア
2025/10/23 14:53

⇒ヘアスタイルや化粧法も含めて、連続した文化の国には見えないほどである。それに続く春闘と労働争議の写真群も今はもう見られない光景である。炭鉱の閉山、エンタープライズの寄港。さらに断絶を感じるのは北朝鮮への帰還船の出港風景(1971年)である。浦山霧郎の『キューポラのある街』にも登場していたあの光景の実写である。

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ヴェネツィア
佐藤園子氏(スウェーデン在住27年)と、ストックホルムの仲間たち(スウェーデン人)3人の共同制作。スウェーデンの四季とその行事、お料理などを豊富な写真入りで紹介。北国のスウェーデンが春を迎える喜び、夏の解放、短い秋、そしてスウェーデンが最も本領を発揮する長い冬と、その四季感は伝わる。また、いくつかある、スウェーデンらしいお菓子のレシピや、手芸小物の作り方なども、有用だろう。ただ、写真がスポット的な構図ばかりなので、これではスウェーデンの雰囲気が十分には伝わらないのではないかと思う。せっかくの企画なので⇒
ヴェネツィア
2025/10/23 08:19

⇒主にストックホルムでの写真なのだろうが、ガムラスタンのクリスマス風景だとか、北極圏の冬の光景だとかを入れる方が日本の読者にはよりアピールしただろう。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
いぬいとみこ/大友康夫・作。家族みんなでスキー場に来たのだけれど、とおさん、かあさんもお兄ちゃんも滑りに行って、さぶろう(推定年齢5歳)だけが残された。そこへ不思議なそりが…。さぶろうのファンタジックな冒険の物語。青い目のネコもポイント。絵は極細の色マジック(?)で描かれている。全体に線が細い(実際にも、またシンボリックな意味でも)のだが、そのことは必ずしもマイナスとはなっておらず、繊細さとして伝わるだろう。1975年初版の絵本だが、どうやらあまり人気がでなかったようで、感想も少ない。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
国立歴史民俗博物館編の幕末・維新のアウトロー列伝。日本でも上田秋成や滝沢馬琴らの読本作家たちが熱狂して呼んでいた『水滸伝』。本書は、ここに幕末型の任侠思想とアウトローの原型を見る。幕末期に、何種類ものインスパイア作品が誕生した。中でも歌川国芳の『通俗水滸伝』や豊国の『当世好男子伝』などの絵入り本が与えたインパクトは強い。さて、この時期の日本を代表するアウトロー。第一弾はご存知、国定忠治、そして清水次郎長である。なんだか、講談か浪曲めくが、彼らが民衆のヒーローになっていったのは、やはり語りからであった。⇒
ヴェネツィア
2025/10/22 16:34

⇒主にこれを担ったのは、江戸の講釈師たちであった。やがて演劇の新国劇、そして映画がこれを受け継いで行くことになる。本書は、かなりたくさんの一次資料を写真版で紹介。索引も充実している。もちろん、歴史民俗博物館に行けば、それらの現物を見ることができる。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
ルイ・ヴィトンの華麗なる歴史は、1835年、13歳のルイがアンシェ(ジュラ県)に住む家族の水車小屋を後にした時に始まった。1837年、ルイ紆余曲折を経てパリに到着。1854年、とうとうパリのヌーヴ=デ=キャピュシーヌ通り4番地にメゾン(店舗)を開いた。それからのルイ・ヴィトンの発展と歴史は、交通(旅行)手段の発展とともにあった。2代目のジョルジュ、3代目のガストン=ルイと破竹の勢いでルイ・ヴィトンのブランドは発展を続けて行く。扱う商品も旅行カバンから始まって、装飾品から時計、オートクチュールと幅も⇒
ヴェネツィア
2025/10/22 11:21

⇒商圏も経営規模も広げていった。今では、世界中の大都市の一等地にルイ・ヴィトンのメゾンが鎮座する。文字通りの老舗でありながら、新しい。なお、本書は558ページ、重量が3.85kgもある が、ルイ・ヴィトンを語るには、やはりそれくらいは必要か。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
この巻は「家族と離れて生きる」。集団学童疎開の記録である。昭和19(1944)年6月「学童疎開促進要綱」が閣議決定、同年8月から本格的に始まった。当初は東京、大阪、名古屋などの大都市、やがて京都、広島などにも拡大されていった。疎開先は主に地方のお寺などであった。写真では子どもたちは明るい表情を見せているが、内実は不安と寂しさとでいっぱいだったであろう。また、疎開先では当然いじめもあったし、子どもたち同士の権力争いもあった。親たちはやはり少なくても子どもの命だけは守れるとの安心感が強かっただろうか。
ヴェネツィア
2025/10/22 08:08

疎開先で1年余りを過ごし、敗戦。子どもたちは都会地に帰郷したのだが、中には元の家や街そのものが廃墟と化していた場合も少なくはなかった。ことに広島などは、町中が廃墟同然であったし、多くの人たち(子どもたちの親もまた)が命を落としていた。それは、東京や大阪でも同様だったのであり、『火垂るの墓』が描く世界はけっして架空のものではない。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
小松義夫・文、西山晶・絵。アフリカ、アジア、南米の「ゆかいな家」を探訪する。まずはアジアから。巻頭はモンゴルのゲル。これは比較的よく知られている。続いては300人もの人たちが住む福建土楼。そして、スンバ島(インドネシア)のとんがり屋根の家。スラウェシ島の舟形の屋根の家の方がインパクトがありそうだが。ヨーロッパからは、マラムレシュ(ルーマニア)の屋根に目のある家。マラムレシュは、独特の文化を持ち、興味深い建物が多い。アフリカはマトマタ(チュニジア)の地下の家、ダンベルマ(トーゴ)の土のお城など、いずれも⇒
ヴェネツィア
2025/10/22 07:43

⇒とってもユニーク。しかも、おそらくはそれぞれの地で暮らす上では、最も快適な合理性を持っているのだろう。残念ながら実見したものは一つもないが、写真だけでも十分に楽しめる。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
ウェアハウスなどと言わないで、倉庫と言えばよさそうなものだが、それでは売れないか。こうしたスタイルで最初に思いつくのはニューヨークのソーホーであり、それに隣接するグリニッジビレッジだろう。今はどうなっているかは知らないのだが、かつてはそのあたりの倉庫街はアーティストたちのアトリエと、気の利いたお店がたくさんあった。本書は、そうした倉庫を斬新に使いこなそうとする試みであり、その成功例の紹介である。天井も高いし、たしかに独特の空間に仕上がっている。問題は何時まで保つかだと思うのだが、常に新しいものを志向する⇒
ヴェネツィア
2025/10/21 16:18

⇒人たちやお店にはそれはマイナスにはならないのだろう。いくつものサンプルが掲載されているが、中でも徳島市のAQA CITTAは、極北である。こんな工場そのもののような倉庫でも大丈夫?

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
新潮の『日本文学アルバム』を大型化し、豪華に、そして高価にしたという趣きのシリーズ。第1巻は森鷗外。表紙の題字「森鷗外」は、鷗外の自筆(のコピー)。前半はもっぱら写真入りの作品ガイド。ただ、写真を見ると、作品をちゃんと読んでいるのかなあとの疑いも。例えば『舞姫』だが、個々に掲載されている写真はブランデンブルク門。写真解説では、この向こうがウンター・デン・リンデン通りだとは書かれているが、ここは当然ウンテル・デン・リンデンの広い並木の大通りが望まれるところだ。後半の「森鷗外の素顔」と題された評伝の部分は⇒
ヴェネツィア
2025/10/21 16:06

⇒解説文、写真ともになかなかの充実ぶり。新潮版よりも詳しいだろう。本書は(このシリーズは全て)大判サイズでずっしりと重い。意地悪な見方をすれば、これは書斎もしくは応接間の飾りとなることを意識した造本なのではないだろうか。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
ネタバレ「3分間」というのは、たしかに人間にとっては特別な時間であるのかもしれない。ボクシングの1ラウンド3分間は、戦う側にとっても「耐えられるリミット」で、観戦している観客の集中力が持続するのも3分間なのだとか。本書は、3分間の持つ多様性を様々に検証する試み。それでどうということはないのだけれど、面白くはある。例えば、「人間の赤血球は3分間でどれくらい作られているのか」―3億6000万個。「世界では3分間にどれくらいの食べ物が廃棄されているのか」―1万3998トン。全食糧の40%を廃棄しているらしい。⇒
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
著者の服部幸應・服部津貴子の両氏は知らない人だが、調べてみるとちょっと怪しげなところが。とはいっても、本書の内容はまっとう。ただし、あまり新奇なところがない。よく言えば、いたってオーソドックス、見方を変えれば、ありきたりということに。ここで紹介されているのは、主として米と麦とが主役の郷土料理。秋田のきりたんぽ、岡山の祭り寿司、木曽路の五平餅といったところで、いずれもよく知られたもの。多少は、ほうこんなものもあるのか、といった郷土料理があればよかったのだが。巻末に詳細な索引がついているが、これは箔付けの⇒
ヴェネツィア
2025/10/21 07:09

⇒気配が濃厚。間違いも散見され、実用性は疑わしい。カラー図版も多いのだが、これもページ稼ぎといった感がなきにしもあらず。私は図書館から借りてきたのだが、これで頒価3000円はいささか高いのではないか。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
宇宙の創生から人類の誕生までの数々の偶然(もはやそれは奇跡というべきか)を全8章で語る。個々には目新しい学説が紹介されているわけではないが、そうした偶然の起こる確率を時系列に並べ、それぞれにその時点での(2009年)最新の考え方を提示しているので説得力は大きい。どれか1つだけでも気が遠くなりそうなほどに、あり得たことの不思議を思う。例えば、【偶然1】は、宇宙を決定する「自然定数」が、現在の値になったこと。これだけを見て分かる人はともかく、この中には実に恐るべき偶然が複数含まれている。すなわち、中性子の⇒
kurumi
2025/10/25 20:04

数千億の星を擁する銀河が数千億あるのだから、どこかに生命がいてもおかしくはないが、宇宙誕生から130億年という時間の中、同じ「今」という時に存在するかは。だそうです。

ヴェネツィア
2025/10/25 20:06

kurumiさん、ドレイクの方程式でもそこが問題ですよね。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
この巻はソーク生物研究所である。ルイス・カーンの設計。南カリフォルニアのラ・ホヤの太平洋を見渡せる高台にあって、完工は1965年。集中的な研究に携わる科学者たちのための設計が求められた。カーンは、こうした閉鎖的な空間を作り出すにあたって、修道院のような瞑想空間からインスピレーションを得たらしい。また、個々の研究室の環境だけではなく、設備全体のシステムも大がかりであり、直接目には見えないながら、数々の工夫が凝らされている。さらには、敷地内を人工の水路が流れていることも大きな特徴の一つである。しかも、それは⇒
ヴェネツィア
2025/10/20 11:52

⇒敷地内の高低差を巧みに活かして、時に流れ落ちる段差を形成したり、泉となったりと変化に富んでいる。キューブ状の各研究室は、扉や窓には木が用いられ、コンクリートの殺風景感を緩和するのに大いに役立っている。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
著者の丹野顯氏は、江戸庶民の生活史、精神史についての執筆をたくさん持つ、在野の江戸研究家。本書は「経済・交通」、「都市・庶民」、「遊び・行楽」、「女性・労働」、「政治・武士」、「治安」、「司法」の六講からなる。また、それぞれに例えば「江戸・京都・大坂、一番住みやすいのは?」などのトピックスを立てて解説していくので、わかりやすい。出典も明示されているので、ここを契機に自分でさらに知識を深めることも可能だ。ちなみに、先の住みやすさは、西澤一鳳の『皇都午睡』によれば、衣は京都、食は江戸、住は大坂がそれぞれ⇒
ヴェネツィア
2025/10/20 08:03

⇒一番である。適宜、浮世絵等も援用され、簡便ながら内容は充実しているのだが、蘊蓄本めいた感じは拭えない。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
河原まり子、利岡裕子・作。愛犬のラッキーを突然失って泣き明かす悠太。お父さんが、そんな悠太に静かに語る先代ラッキーの死と悲しみの感情の推移と克服…そんなお話だ。ペットロスなどというけれど、その言葉には収まらない。そもそもペットではないのだ。本書は絵本だが、大半は絵よりも文章で綴る物語。文字数も多いので、読み聞かせの対象年齢は幾分上がりそうだ。文章が中心だとは言ったが、絵もシンプルな中に抒情を秘める。アメリカンなタッチの線描画で、ちょっとキース・ヘリングを思わせる。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
初出は昭和15(1940)年1月「作品倶楽部」 。太宰31歳。太宰の仏文学の恩師である辰野隆氏の『仏蘭西文学の話』の引用から始まる。その中の逸話の1つに、盲目の女に兎の眼を移植して、見えるようになったのだが、彼女は猟師を怖がるようになったというのがあるそうだ。場所もクレルモン・フェラン、施術者もシブレエ博士と妙にまことしやかなのだが、怪しげな話である。太宰も、これを信じているとは思えないが、信じたふりをして話を展開している。そこからいくつかの例証が続くのだが、つまるところ女はとかく自ら暗示にかかりやすい⇒
ガーネット
2025/10/19 18:00

無精ヒゲのオッサンの人魚ですか…海の中で出会ったら、トラウマになりそうです(・_・;

ヴェネツィア
2025/10/19 19:52

ガーネットさん、オッサンの人魚です。和漢三才図会の人魚の図はそれだけ。よりによって、ですよね。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
3篇の1幕ものの戯曲を収録。いずれも短いものであるだけに、登場人物も少なく、その意味ではわかりやすい。また、内容はクリスティらしく、いずれもが犯罪を扱っている。ただ、どうしても重厚にはなり得ず、畢竟軽快な短篇小説のような味わいである。劇として有利な点は、小説ほどには人物造型をしなくてもいい点にあるだろう。ただし、このことは逆に言えば、個々の人物たちが生き生きとしていなければ、劇に停滞を招くばかりか、主題そのものの追求度も拡散してしまう。その点においては、クリスティはなかなかに巧みであり、3篇のいずれもが⇒
ヴェネツィア
2025/10/19 16:29

⇒洒脱で気の利いたものに仕上がっている。3篇の中では、最も切り詰められた時間の中で展開する「ねずみたち」が私には一番面白かった。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
幕末から明治の初頭を中心に描かれた、いわゆる開化絵、およびその時代の西欧を強く意識したファッションと陶磁器等の輸出品とを網羅的に並べて解説したもの。横浜美術館と京都服飾文化研究財団の共編である。これだけの資料が一堂に会しているのはなかなかに壮観。新しい方は昭和の戦前あたまで。明治期の洋装(例えば明治天皇夫妻の絵)などは鹿鳴館もかくやと往時が偲ばれもし、また三島由紀夫の 戯曲『鹿鳴館』の世界に想いを馳せる。工芸品なども見事。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
木住野利明・作。この人は西多摩郡五日市をフィールドにする自然派のようだが、絵はいたって斬新。およそ絵本の範疇を突き抜けている。お話は、へそがえるの旅を描いているのだが、これといった事件が起こるわけではない。絵は、1960年代末から70年代にかけてのアンダーグラウンドの気配が濃厚なもの。しいて言えば、横尾忠則や宇野亞喜良の絵の持つ感覚に通底するだろうか。フォルムも色彩もインパクトが強い。ただ、あまり子供向きとは思えない。もっとも、子どもたちは直感で捉えて、これを歓迎するかも知れないが。私はもちろん肯定派。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
初出は昭和15(1940)年8月「京都帝國大學新聞」 。太宰31歳。南伊豆にやってきて、要はここでの滞在が気に入らなかっただけという気もするが、それにも殊更に何事かを言わなければならない太宰である。あるいは、依頼原稿のネタを探していて何も浮かばず、この不満でも書いておくかということであったのかも知れない。仮にそんなことであったとするなら、フローベールを持ち出すまでのことでもない。しかし、原稿にする以上はこれくらいは勿体をつけないと、ということであろうか。後半に本心が表れるのだが、それは太宰の最も苦手な⇒
ヴェネツィア
2025/10/18 16:24

⇒「興覺め」と「一生懸命」である。というか、他者の一生懸命が彼にとっては興覺めなのである。そうとうに身勝手といえばその通りだ。不満ながらも10日もここに滞留し、「家の者がお金を持つて、この宿に私を迎えに来る」のを泰然と待っているのであり、「家の者にはこんな温泉宿でも、極樂であるかも知れぬ」などと言うのである。本当にしょうがない人だ。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
胸がキュンとするロード・ノヴェル。私でさえそうなのだから、若い人たちの琴線を一層に震わせるだろう。ニューヨークから北上しニュー・ハンプシャーへ。それからは、ひたすらに西部を目指して西へ向かう(行程に多少の凸凹はあるが)礼那と逸佳。行き着いた先はアルバカーキ(ニューメキシコ)。旅の正確な期間はわからないが、5カ月くらいだろうか。読者である私たちも彼女たちと随分いろいろな経験を共にした。江國香織は、それぞれの街の持つ気配を伝えるのが巧みである。その臨場感に支えられてこその共感である。また、この間に2人の⇒
ヴェネツィア
2025/10/18 14:00

ただ、幾分気になるのは、ここに描かれるアメリカがあまりにも安全であること。深夜のバスディーポなどはかなり危険だと思うのだが。彼女たちは全く恐れることなく(ということは安全への配慮には欠けるということだ)グレイハウンドバスで移動し、深夜便をも厭わない。大丈夫かなあ。江國香織さんは、この作品のために取材旅行をしたかもしれないが、よもやグレイハウンドバスではなかっただろうし。

アキ
2025/10/26 08:28

ヴェネツィアさん、共読本が350冊になりました!1000冊まであと少し!ヴェネツィアさんの感想をいつも楽しみにしています!

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
著者の、かさこ氏はカメラマン&イラストレーター。監修の木村俊幸氏はマットペインター。本書は主として、マットペインティングのための素材集(背景ビジュアル資料その2)である。私にはこれまで馴染みがなかったが、マットペイントは、写真を合成して描く風景画で、映画や映像作品の背景に使われるのだが、実際には撮影出来ない「架空の空間」を描き出すもの。もちろん、それ以外にも漫画やイラストの背景に使うこともできそうだ。集められているのは、なんということはないごく日常の風景だが、この巻では主にレトロな路地裏の光景が中心に⇒
ヴェネツィア
2025/10/18 08:23

⇒多数撮られている。なお、マットペイントの作例は最初にほんの少ししかない。もっと豊富な用例があればと思う。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
フェリクス・ホフマン 絵。お話は、よく知られたグリム童話。絵は、これも名高いスイスのデザイナー、フェリクス・ホフマンの古典的なタッチのもの。日本語での初版は1967年4月。したがって、親子でこの絵本を享受した人たちもたくさんいそうだ。ホフマンの絵はお母さんヤギだけがわずかに擬人化されているものの、オオカミと小ヤギたちの姿形はほぼそのままで、なかなかにリアル。こうした古い伝承は、ホフマンの絵のようなクラシックなスタイルが似合うようだ。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
初出は昭和23(1948)年4月「文芸時代」 。太宰39歳。太宰は、いかにも徒党が嫌いだろうし、また向いてもいないだろう。その一方で「孤高」を気取る文学者もまた信用できない。太宰によれば、それは「見破られかけたタルチュフ」ということになる。そして、多くの場合は自分を含めて「孤低」でしかないのだと。たしかにそれまでの太宰の行き方を見れば、文学的には立派に孤高を貫いたと言えるが、私生活においてはけっして誇れるものではなかった。もちろん、太宰はそのことを重々自覚していたし、そんな自分自身をもまた文学の俎上に⇒
ヴェネツィア
2025/10/17 16:48

⇒乗せてもきた。時には妻や子を省みることなく「家庭の幸福諸悪の根源」などと嘯いてもきたのである。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
この巻もル・コルビュジエにあてられている。マルセイユに建設されたユニテ・ダビダシオンである。この建物はル・コルビュジエの集合住宅論の具現化であり、今世紀の建築界における最も重要な建物の一つとされる。完成は1951年。遠目には、単なる素っ気ない集合住宅にも見えかねないが、よく見ると随所に様々な工夫と意匠がこらされている。全部で337戸あるのだが、単身者用から子どもが8人いる家庭までを対象にしており、23種類の形式の間取りを持っている。さらには、屋上テラスには、体育館、保育所、サンルーム、プール、野外劇場⇒
ヴェネツィア
2025/10/18 09:08

Himekoさん、それは羨ましいですね。さすがに専門家。

Himeko is not cat
2025/10/18 22:34

学生の頃ですよー😋

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
副題の「人類史を大きく変えた12の素材」が語る通りの内容。取り上げられているのは、デンプン、薬、金属、セラミックス、毒物、セルロース、化石燃料、ワクチン、アンモニア、プラスチック、原子核、磁石。厳密には素材とは言えないものもあるが、生活の中では素材的なものとして機能しているものである。科学史を踏まえ、またそれぞれの素材の特性と、現在の用いられ方、また時にはその将来像を語る。門外漢、かつ文系の私にも十分に理解可能なくらい分かりやすく書かれている。原子核については、著者の立場は必ずしも鮮明にはしていないが⇒
ヴェネツィア
2025/10/17 07:41

⇒(やや肯定的に見える)少なくても考えるための材料は提供してくれている。また、セラミックスやプラスチックの項目などは、私の想像をはるかに超えており、そうだったのかと瞠目。

雪うさぎ
2025/10/28 23:13

読みたい本にいただいていきます🙇

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
五十嵐美和子・作。2頭身の女の子が雨やどりしたのは見知らぬ図書館。なんとそこは、トリケラトプスがいっぱいのトリケラ図書館だった。女の子はさほど驚くこともなく、図書館の中をあちこち探検…というお話。絵は、黒の太い描線と強いカラーリングで描く。トリケラトプスは半ば擬人化されているし、真っ赤に塗られているので、あまりトリケラトプスらしくはない。しかも、何故トリケラトプス?という必然は当然ない。お話も絵もインパクトがありそうだが、思いつきの域を出ず、私の好みではない。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
初出は昭和22(1947)年1月「群像」 、同年8月『ヴィヨンの妻』に収録。太宰が得意とする書簡体形式をとった小説。同郷の読者(26歳・男)から太宰(本文では某作家)に宛てた手紙と短い返信とからなる。手紙の序盤の内容からすれば、この読者が某作家と同郷であることは事実のようである。作家への依頼の手紙なのだが、何度か「教えてください」とあり、終戦の詔勅を聴いた日から始まった「トカトントン」が、その後も度々、何かをなす度に聴こえてくるという。そして、某作家にこの音は何なのだ、自分はどうすればいいのか教えてくれ⇒
ヴェネツィア
2025/10/16 16:43

⇒というのである。しかも、末尾あたりでは「ウソばっかり書いたような気がします。花江さんなんて女もいないし、デモも見たのじやないんです。その他のこともたいがいウソのようです」と告白する。それに対する作家の返事は「気取った苦悩ですね」と、そっけない。ただヒントのように『新約聖書』マタイによる福音書10章28節を引用する。全体は空虚感に満ちた小説である。それは何かに対する苦悩ではなく、もはや何に対するものでもない漠然とした苦悩であり、空無感である。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
基本的にはタイトルの『昭和を彩った100人』に異論はないが、ただしこれは文藝春秋「日本の顔」から選んだものなので、必ずしも昭和の日本人を代表するものではない。なぜなら、政治家も何人か登場し、佐藤栄作はいるのだが田中角栄がいないからである(田中角栄が好きというわけでは毛頭ないが)。順不同のようだが、巻頭を飾るのは黒澤明。以下、映画・演劇から相撲、野球、政治、経済と実に様々な分野から選ばれた、見知った顔が続々と。あらためて 今これらの人たちを見ていると、「昭和は遠くなりにけり」という感慨に耽ることになる。
sleepy
2025/10/16 10:40

おはようございます。ご存じかもしれませんが最近文春から「昭和100年の100人」(4部作)文化人編、スター編、政治家編、女性編というのが刊行されましたよ。失礼いたしました。

ヴェネツィア
2025/10/16 11:06

sleepyさん、これのさらに分野別なのですね。それは知りませんでした。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
実践的な役に立つかと思って読んでみたが、あまりにも初心者向きであった。著者のジュリアーノ熊代氏は、独自メソッドの「ヤマトイングリッシュ」(英会話塾)の主宰者。中学校と高校の英語の素養があれば、英会話なんて簡単というのが本書の主旨。乱暴そうにも見えるが、ここで語られていることは案外に真っ当、というかむしろ普通。ひたすら励ますことで英会話のハードルを下げようというもの。でも、挨拶と趣味の話がかろうじて通じるレベルの英会話ではなあと思うのだが、日本人の英語に一番厳しいのは日本人自身なのだとか。さて、ほんとうに⇒
ヴェネツィア
2025/10/16 11:05

おかさん、私は場数がまず物を言うかと思います。レベルにもよりますが、実際に現場で使わなくなると錆びつくのも早いです。

おか
2025/10/16 12:08

そう❗️場数ですね❗️ 最近は 生きた英語は聴いてません(#^.^#)

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
大橋政人・文、伊藤秀男・絵。全体の感じからは古い絵本かと思ったが、そうでもなく2014年の初版。「のこぎりやま」が見晴らせるところで育った「わたし」(推定・小学校5年生の女の子)と弟のヒロくんは、お父さんの車で初めてカイくんのお家へ行くことに。進むにつれて「のこぎりやま」が姿を変えていく。そして、カイくんのお家から見る「のこぎりやま」は、すっかり別の姿に。お家へ帰ってくると、いつもとは違った色の「のこぎりやま」。読み聞かせだと、子どもたちはどう捉えるのだろうか。絵は小学生が描いたかのようなタッチの⇒
ヴェネツィア
2025/10/16 08:10

⇒水彩画。絵日記風の造りである。もちろん、それを装ったプロフェッショナルが描いているのだが。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
初出は昭和10(1935)年5月「日本浪曼派」 、翌年の『晩年』に収録。大庭葉蔵を主人公に描かれるが、後年(昭和23年)の『人間失格』に再登場する。全体はフィクションではあるが、太宰自身の七里ヶ浜での心中事件(相手の女性だけが死亡)を濃厚に反映する。この作品の最大の特質は、その実験的な話法にある。一応は虚構空間として描きながら、その作品の中に作者が顔を出し、注釈めいたことを語るのである。通常の小説作方としては、夾雑物となりかねないのだが、ここではそれが奇妙な成功を見せている。いわば、主体と客体の混淆⇒
ヴェネツィア
2025/10/15 17:07

⇒なのであるが、それが小説に奇妙なネジレと増幅とを生じさせる結果になっている。あるいは、それはこの時の太宰の苦し紛れの状態こそが生み出した作方であったのかもしれない。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
2019年度ゴールド・ダガー賞受賞作。ストーンサークルの柱石にワイヤーで縛り上げられ、炎に包まれる犠牲者。なんとも陰惨なイントロダクションに始まる。それ以降も次々とカンブリア州に点在するストーンサークルでの私的な処刑が続く。この連続殺人事件を追うのがNCAの分析課に所属する警官のワシントン・ポーと分析官のティリーである。この2人は、共に社会的にはある種のはみ出し物といった存在であった。直感に優れるポー、そして数学に秀でるティリー。彼らは、事件を通じて実は最高にして絶妙のバディになってゆく。600ページ⇒
ヴェネツィア
2025/10/15 20:03

読書モンガーさん、最近は文庫本でも1000円を越えていますし、本書の続編も高いです。続けて読みたいものの、躊躇してしまいます。

ヴェネツィア
2025/10/15 20:04

ほうさん、これで共読本は38冊になりました。これ、よかったですね。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
対象年齢は、主に小学校高学年あたりかと思われる。「風」の大研究、大百科だ。パート1.は、風の種類。海風・陸風からジェット気流にビル風までを網羅。パート2.では、風がふく仕組みの研究。パート3.は、「風といっしょに生きる」、そして、最後のおまけのパートで「風にまつわるデータ」という構成。絵や写真も豊富で解説も丁寧、かつ興味を持てるように書かれている。日本風工学会の監修、造事務所の編集。小学校の図書室にはぜひ蔵書に加えて欲しいシリーズ。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
いしかわこうじ・作。左ページでは「◯◯◯の おめん かぶっているのは だあれ?」、そして右ページにはお面をかぶった誰かがいる、という構成。全部で6つのお面。当然ながら絵で勝負の絵本。それぞれのお面は、色彩もフォルムも強いインパクトで迫る。その正体は、よく見ればわからないでもない。こども園などでの読み聞かせだと、大騒ぎになりそうだ。たとえ正体がわかってからでも、何度でも楽しめそうだ。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
初出は昭和12(1937)年10月「若草」 。太宰が得意とする女性の一人称語りの一編。貧しい下駄屋の一人娘の悲劇を描く。図らずも窃盗(万引き)をはたらいてしまった彼女の警察署での供述は「左翼少女」とのレッテルを貼られ、事件そのものよりも一層彼女を世間から孤立させていく。このあたりは、一時期、左翼に関心を寄せていた太宰自身の投影 があるかも知れない。そして、それよりも一層に彼女を悲しませ、孤独に追い込むのは、密かに想いを寄せていた水野の無理解であっただろう。また、ここでも二人の間を隔てる階級が立ち現れるが⇒
ヴェネツィア
2025/10/14 16:58

⇒この隔壁は、彼女には悲しみをしか残さない。末尾のエピソード「私たちのしあわせは、所詮こんな、お部屋の電球を変えることくらいのものなのだ」は、哀切にも美しい。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
感想は『重井筒』のみ。近松世話浄瑠璃の七作目。初演は宝永4年(1704)末か5年初め。近松55、6歳。所は大坂万年町。主人公は紺屋の入婿の徳兵衛。徳兵衛は、妻のお辰と遊女のお房のどちらにも義理が立たなくなってしまった挙句に心中死を選ぶ。こうした妻と遊女との葛藤は、後の『心中天網島』で極限にまで達するが、この作品では三者の葛藤が十分に熟しきらないままに終わってしまう。上之巻での徳兵衛の苦心の末の金策(いわば詐欺なのだ が)が成功したにも関わらず、彼はお辰の前に、いともあっさりと放擲してしまう。それがお房⇒
ヴェネツィア
2025/10/14 16:44

⇒の窮地を決定的なものにするとがわかっていたのにである。中之巻は、もはやどうにもならならなくなった場面なのであるが、それにしては徳兵衛による「生姜」の チャリがあったり、お房の「炬燵責」といった珍しい趣向が展開されるものの、劇的緊張は高まらない。いよいよ行き詰まった下之巻は心中行だが、お房を刃にかけた 後、迫りくる追手(徳兵衛を案じ た妻のお辰等)に周章てた徳兵衛は井戸に落ちて絶命する。「井筒屋」と「井筒」(井戸)の洒落のような終幕である。ただ、悲惨さはこの上ないように思う。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
セイナツァロはフィンランドで2番目に大きなパイエンネ湖(中央スオミ県)の中にある人口3294人の村。役場の建設にあたってはコンペティションが行われ、アルヴァ・アールトが1等となった。1952年完成。そのお陰で、この小さなコミュニティは現代建築の聖地の1つになったのである。全体はコンクリートとレンガで構築されている。レンガ造りの建物が雪の中に建つ様子などはキリッとした風情。内部もレンガと木とが上手く組み合わされており、小さいながら堅牢さと暖かみとがうまく融合している。議場の天井の木の装飾などは、ことに⇒
ヴェネツィア
2025/10/14 07:24

⇒個性的である(表紙写真)。建築物だが、北欧デザインといった感覚がここでも活きている。行きにくそうな立地だが、見てみたいものである。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
ネタバレ松谷みよ子・文、いわさきちひろ・絵。「あかちゃんの本」の1冊だが、あかちゃんとはいっても、1歳半くらいにはならないと理解が難しいのではないかと思う。最も、「じりりーん じリリーん」と「もしもし」のリズミカルな反復は、それ以前の年齢でも喜ぶような気がする。オノマトペだけではなく、お話の全体が詩的な階調を持っていて美しい。絵もそれに呼応するかのように柔らかなパステルトーンで描かれる。ただ、このような電話はもうあまり使われなくなったけれど。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
初出は昭和14(1939)年5月「國民新聞」 。太宰30歳。この時期、太宰は経済的にも苦しかったし、精神的にもあまり余裕がなかったことだろう。そんな時期に國民新聞の短篇小説コンクールの当選の知らせ。太宰は相当に嬉しかったようだ。文面全体が喜びに溢れている。その意味では、珍しい作品であるのかもしれない。選考委員のうち、太宰に票を投じてくれた4人にも感謝を忘れない。なんたか随分素直な太宰だ。そして、何よりも嬉しく、またほっとしたのは義母にそれを知らせることだっただろう。ほんとうに珍しくも、ちょっと得意な太宰⇒
ヴェネツィア
2025/10/13 16:53

⇒である。夜中の12時までいそいそと校正する太宰の姿は微笑ましくもある。たまにはこんなこともないと。なお、同時受賞の上林氏というのは、上林暁のことであろうと思われる。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
ネタバレ語り手については、推測が外れた。それも考えないではなかったが、どうやら「歌舞伎の精」といったものであったようだ。下巻に入っても展開のスピードは緩むことなく、一気呵成に大団円まで運んで行く力量は、もはや芥川賞作家のそれではなく、手練れのエンターテイメント作家なみ。吉田修一が芥川賞を授賞していなければ、本作で直木賞の声がかかっただろう。ただ、物語の終盤は、これまでの布石が逆に枷になってしまい、収束させるのに無理を生じさせることにもなったようだ。ことに言えば辻村との決着がそうだし、徳次の再登場も、致し方なく⇒
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
日本の水産物輸入量は272万トン、金額にして1兆3709億円になり、輸入相手国は119カ国に及ぶ(2010年の統計)そうだ。スーパーには、養殖マグロはもちろん、サケ・マス類からサバ、ウニなどあらゆる種類の輸入魚が並んでいる。本書は、これらの輸入魚のルーツを探り、あわせてそれぞれの魚種ごとに、おいしく食べるレシピを提案するもの。著者の野村祐三氏(フリーランスライター。魚と旅と食を中心に)によれば、これまでの伝統的な調理法にこだわるために、輸入魚をおいしく食べていないのはもったいない、というのが本書執筆の⇒
ヴェネツィア
2025/10/13 08:35

⇒動機であるとのこと。残念ながらお料理の写真が今ひとつ美味しそうに映らない。でも、地方の伝統料理の紹介などもあり、有用性は高いと思われる。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
岸田衿子・文、中谷千代子・絵。お話というほどのものはなく、少年が動物園にカバを見に行く。ただし、カメを連れて、カバにあげる野菜をたくさん持って。リアリズムなのか、なんなのかよくわからない。かといって、幻想性はまったくない。絵はリアリズムに徹している。やや強いタッチの線描画に薄めの彩色。とりわけカバの絵はよく観察して描いている。日本では、そもそもカバのいる動物園も少ないし(なにしろ飼育がたいへんだ)、人気も絶大とまではいかない。サン・ディエゴ動物園では大人気で、いたるところに"hippo"の矢印があった。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
初出は昭和16(1941)年1月「文學界」 。太宰32歳。ここにいたるまでの太宰の東京生活を語る自伝的作品。もちろん、語り口は太宰の韜晦に満ちたいつもの調子である。ただ、苦しみの数々を描いている割には筆致はさほど暗くないし、これでもかというくらいに苦悩を前面に押し出したりはしていない。ことに、最後のエピソードの芝増上寺の場面などは自分自身を東京名物に上げるなど、諧謔の余裕さえ感じられる。『晩年』がそうであったが、こうしてみると、太宰の自分語りは常に後悔と逡巡の中にあり、この度の伊豆行がそうであったように⇒
ヴェネツィア
2025/10/12 17:17

⇒堂々巡りを繰り返すのである。ある意味では、それこそが太宰らしいのだろうか。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
世の中には航空機のマニアもいれば、空港のマニアもまた結構な数いるようだ。私はマニアではないものの、空港はやはり好きだ。これから旅立つ時は当然ながら、トランジットやトランスファーで立ち寄った空港も、時間の許す限りはあちこちと歩き回って楽しむのである。さて、本書はいわば世界の空港を楽しむガイドブックといったところ。内外41の空港をビジュアルに取り上げている。実際に訪れたことがあるのは、このうちの17空港だが、空港は(とりわけ、その内部空間は)それほど変わり映えがするわけではない。また、利便性の上からは⇒
ヴェネツィア
2025/10/12 16:29

⇒あまり変わり映えがしても困ることになる。鉄道駅(とりわけターミナル駅)もそうだが、空港にも独特の旅情があって、それが旅の醍醐味の一つでもある。これまでに利用した空港にも様々な思い出がある。行き先表示がなかぬか出ないために乗り遅れそうになったこともあるし、海外の空港で思いがけない人に出会ったりしたこともある。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
丁寧体の独特のナラティブで語られる。「…でございました」 のような完了時制が基本なのだが、臨場感を高めるために随所に、また会話文には現在形が用いられる。いわば時制の混交なのだが、違和感はない。では、これを語っているのは誰で、何時の時 点でのことなのか。下巻で明らかになるだろうが、老年となった喜久雄が、過去を回想しているというのが私の推測。任侠の家に生まれ、やがて歌舞伎の世界で大成する(タイトルからしてそうなるだろう)喜久 雄の一代記なのだが、上巻は喜久雄が三代目半次郎を襲名する興隆期だが、後半はその反動⇒
ビビデナバビデナ
2025/10/14 08:28

映画観ました。(感想は言わずもがな)ヴェネツィア氏のコメントにあった方向の作品があったら観たいと思いました。

ヴェネツィア
2025/10/14 15:45

ビビデナバビデナさん、映画はいかがでした?随分評判がいいようですが、私は映画館に行って見ようとまでは…。TVで放映されれば録画して見ようとは思っています。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
きたやまようこ・作。いつも仲良しの緑、黄、青、赤の4人の鬼の子どもたち。みんなそれぞれ自分のルーツを話す。他のみんなは「へえー、すごいんだね」。ところが、あかたろうだけはわからない。あれこれと赤いものを探すのだけれど…というお話。最後はもちろん、メデタシメデタシ。多様性讃歌…というほどでもないけれど、「みんなちがって、みんないい」。絵は背景はほとんどなく、シンプルに必要なものだけが描かれる。スポットがわかりやすいともいえるし、素人っぽい造作であるともいえる。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
初出は昭和19(1944)年8月「文學報告」 。太宰35歳。終戦のちょうど1年前。この作品も小説ともエッセイともとれそうなものだが、末尾のエピソードからはやはり小説とすべきか。戦局は相当に押し詰まっている頃。少女たちも産業戦士として、 工場に動員されていた。太宰は、彼女たちを見て「どの子もみんな、同じような顔を しています。」と言う。そもそもが没個性であることを求められるであろうし、また工場で機械の一部であるかのように働いていれば、個性は埋没するだろう。太宰は新作の表紙絵の打ち合わせのために工場に何度か⇒
ヴェネツィア
2025/10/11 16:56

⇒通うことになるのだが、事務所にいた十人ばかりの女の子(原文のママ)の中に一人だけ「際立った美しさ」の子がいた。それは実に不思議であったが、工場からみんなが帰るときに太宰はその理由を知ることになる。整然とした画一化の中にあっての唯一の異質さ、太宰の見いだした「美」の秘密はそこにあったのである。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
住宅建築史を知らないのだが、本書によれば70年代は「狂い咲き」の時代であったと。70年代は、60年代末に熾烈な安保闘争があり、その余波と新たな価値を模索する時代であったのだろう。寺山修司の天井桟敷があり、唐十郎の状況劇場があり、麿赤兒の暗黒舞踏などが演劇界を席巻していたばかりか、それは路上や神社の境内にまで滲出していた。建築界もまた、規範から脱して新たな時代を迎えていたのかも知れない。ここには、かなり奇妙な建築物が並ぶ。すなわち彼らは「普通である」ことを拒絶していたのである。例えば石山修武の「幻庵」、⇒
ヴェネツィア
2025/10/11 10:35

⇒安藤忠雄の「双生観」、象設計集団の「ドーモ・セラカント」等々。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
タイトルは『測る世界史』だが、実質は『測る科学史』といった内容。著者のピエロ・マルティン氏はパドヴァ大学の教授。専門は実験物理学だが、積極的に科学全般の普及に努めているとのこと。巻頭は「ビートルズとCTスキャン」から始まり、できるだけ文系の人たちにも科学に関心を持ってもらう努力の跡がうかがえる。どの章も最初はそんな調子だ。ここで取り上げているのは、メートル、秒、キログラム、ケルビン、アンペア、モル、カンデラの7つの単位。私がついていけるのは、ニュートン的世界観のあたりまで。それでさえ、「わかる」とは⇒
Johnnycake
2025/10/11 11:07

あー、私の父も測るのが好きな人で、一般計量士の資格持ってます。

ヴェネツィア
2025/10/11 13:03

Johnnycakeさんのお父さんも測り好きでしたか。一般計量士という資格があるのですね。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
木村泰子・作。小さな魚が森の道を歩いて行くと、ネコが見つけて「たべちゃうぞ」。次から次へといろんなものが出てきて「たべちゃうぞ」。最後はママのスープでみんな幸せ…というお話。お話そのものはまったく他愛ない。この絵本の生命は、背景も含めて丁寧に描き込まれた絵にある。キャラクターたちも不細工ながらカワイイ。こういうのを「ブサカワ」というのだろうか。今はもう言わないかも…。絵のタッチはヨーロッパもしくはアメリカの絵本風。センダックにちょっと似ているかも。
ヴェネツィア
2025/10/11 09:05

yominekoさん、おはようございます。yominekoさんはどんな遊び方をするんでしょうね。想像がつきませんね。

yomineko@鬼畜ヴィタリにゃん🎄🎅🎄
2025/10/11 09:18

あちこちウロウロしますよ~🎵そしてまた余計なものを買うという感じですね(笑)

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
初出は昭和13(1938)年7月「月刊文章」 。太宰29歳。編集部から「小説修行に就いて語れ」との題が与えられていたようだ。太宰は困惑して、あれこれと言い訳めいたことを語ってお茶を濁しているのだが、マラソンの比喩はあまりうまく嵌ったとは思えない。途中からは「おととしあたり、私は私の生涯にプンクトを打った」などと言い出す始末。再びマラソンに戻るものの、「何かひとつ実になる話でもしようか」といいつつ、またしても「ヴァニティ」に脱線する。挙句に結びは「幸福は三年おくれて来るとか」と、かなりに支離滅裂の様相を⇒
ヴェネツィア
2025/10/10 16:43

⇒呈して終わる。これでは、まさに「答案落第」である。もちろん、太宰がそれを自覚していることは言うまでもない。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
スティーブン・ケロッグ 作。この人はアメリカの児童文学作家。本書のオリジナルは1974年刊。アニー(推定年齢・小学校2年生くらいの女の子)は、遊んでいるうちにてぶくろを片方なくしてしまう。そこで、愛犬のオスカーと一緒に、今朝から遊んだところを順々に探しに行くことに。行く先々でアニーは、想像をたくましくするのだが、そこが本書の一番の眼目。最後は美しい結末で終わる。絵は、ペンの線描画。てぶくろだけに赤い色がついている。擬人化は一切なく、リアリズムに徹している。原題は"The Mystery Of The ⇒
ヴェネツィア
2025/10/10 15:57

⇒Missing Red Mitten"なのだが、ほんとうに可愛いミステリーだ。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
幸いにも死傷者はなかったようだが、一昨日も台湾東部の花蓮付近で地震があったようだ。台湾も、日本と同じようにというか、さらに地震の頻度が高そうだ。本書は台湾で発生した地震の歴史的検証である。最初に取り上げられているのは、日本植民地時代の1904年の嘉義斗六地震である。死者145人、傷者158人、家屋全壊661戸、半壊1112戸、破損2067戸に及んだ。日本は、もちろんこれらの救済にあたったが、同時にそれは「日本帝国の支配への支持を広げ、天皇の威光を行き渡らせる契機」ととらえられている。続いては1935年の⇒
racco201
2025/10/10 10:45

非常に興味深い内容ですね。この本は企画展の冊子とか図録ですか?

ヴェネツィア
2025/10/10 11:30

raccoさん、そうです。企画展の図録ですね。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
感想は『ヘーラクレース』のみ。ゼウスの妻ヘーラーに憎まれたヘラクレスの悲劇を語る。ヘラクレスは、ゼウスとアルクメーネーの間に生まれたのだが、ヘーラーの妬心は深い。ヘラクレスの妻と子どもたちが、あわやテーバイ王のリュコスによって命を奪われようとする寸前にヘラクレスが冥界から帰還するのだが、ヘーラーによって狂乱させられ、彼らを自ら手にかけてしまう。ギリシア悲劇においては、神々と人間との距離が近いばかりか、しばしば混交する。それは、このエウリピデスにおいてとりわけそうした傾向が強いようだ。この劇にも、ヘーラー⇒
masa
2025/10/10 09:56

若い頃はへーラーのことは鬼嫁としか思えませんでしたが、よくよく考えてみると余所に子供つくりまくりのゼウスの方がどうかしてると気がつきました。いや、でも鬼嫁は鬼嫁だよなあ。

ヴェネツィア
2025/10/10 17:17

Masaさん、ここでもヘーラーは、ヘラクレスを狂気に陥らせ苦しめるのですが、ヘラクレス自身には罪がないのになんと理不尽なと思いますが、その理不尽さこそがまさに神々たる所以でもあるのかと。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
著者のフランシス・ロビンスンは、ロンドン大学ロイヤル・ハラウェイ・カレッジ歴史学講師(執筆当時)。私たちの多くにとって(多分)、馴染みの薄いイスラム教とムスリムの文化。本書はイスラム、ムスリム百科といった趣きのもの。写真や地図資料が多用されており、初心者にはわかりやすい。クルアーン(かつてはコーランと呼ばれていた)の成立は650年頃だが、それからイスラム教は、世界に広がっていった。地理的拡がりという点ではキリスト教と並ぶだろう。ムスリムの人たちの信仰の熱心さでは、ほとんど最強かと思われる。イスラムに⇒
ヴェネツィア
2025/10/09 16:41

⇒置いて、神は「アッラー」の唯一絶対神であり、紛れもなく一神教である。また、28人の預言者が存在し、そのうちの21人までは聖書にも登場し、イエスもまたそうである。すなわち、イスラム教の側からすれば、ユダヤ教もキリスト教もともに啓典の民なのである。本質的には互いに不倶戴天の敵ではないのである。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
広武山での項羽と劉邦との休戦が、その後の全てを決することになった。百戦百敗の劉邦であるが故に、協定を破って項羽を追うことができたのである。あるいは、そもそもそれ以前の糧食の有無が彼ら2人の運命を決していたのであったか。ここからは、次第に項羽の旗色が悪くなり始める。そして、とうとう垓下城から落ちた時に項羽の命数は尽きることになった。会稽の挙兵からは、僅かに7年しか経っていなかった。この間に項羽が見たのは、天下の光芒であったか、あるいは幻の世の中であったのか。司馬遼太郎の筆法がそうであるのか、あるいはそれを⇒
ヴェネツィア
2025/10/09 16:22

⇒読む私たちがそのように受け止めるのか、どうも勝った(そして漢を築いた)劉邦よりも、散っていった項羽に心が傾くようである。虞美人の哀れと項羽の壮絶な人生が幕を閉じた。感無量といったところか。お薦め。

ヴェネツィア
2025/10/09 17:15

項羽の人生はわずかに31年の生涯だった。感情も虚飾も抑えた結びの一文の余韻は深い。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
著者の小松義夫氏は、世界各国で人々の暮らしを取材。K2登山隊にも同行した写真家。本書でも、それこそ五大陸を股にかけて、それぞれ特異な家々を取材。写真も愛情に溢れたもの。最初はアフリカから。土造りの家が多いのだが、いずれもユニークかつ美しい。大いに旅情を唆られる。独特の風貌を持ったイスラム寺院などは、まさに造型の妙を感じさせる。続くヨーロッパ編では、やはりユニークさではポルトガルとルーマニアが他を凌駕する。アジア屈指のエキゾチックな住まいと言えば、やはりイエメンである。まるで中世さながらの街の佇まいに⇒
masa
2025/10/09 11:24

ヴェネツィアさんのレビューだけ拝読してもワクワクするなあ。

ヴェネツィア
2025/10/09 11:30

masaさん、ありがとうございます。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
大友康夫・作。森に住むアライグマ一家に泥棒が。探索してみると、ネズミたちの仕業だった。ネズミたちのいる所にはこれまでになくなったものがいっぱい。そこで、アライグマのお母さんはネズミに農耕を教え、家を建ててやることに…。で、メデタシメデタシというお話。労働の価値を教えるなど、ちょっと教訓的なところは気になるが。絵は、ペン画の描線にポスターカラーで彩色。ただ、アライグマもネズミもあまり可愛くない。かといって、リアリズムというわけでもない。アライグマがタヌキみたいだ。こういう絵にもファンはいそうだ。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
初出は昭和17(1942)年9月「みつこし」 。太宰33歳。太宰はまず『猿蓑』の発句「市中は物のにほひや夏の月」凡兆を佳句だと高く評価する。そして、これに続く芭蕉の脇「あつしあつしと門々の声」以下の連句を次々と酷評していく。珍しい太宰の俳諧論である。そもそも太宰と俳諧、もしくは俳句とはあまり結びつかない(私が知らないだけかも知れないが)。漱石や芥川には馴染むようだが。意外にも思ったが、彼の批評眼はさすがに的を射ているように思える。これも私が素人であるからかとも思うが、太宰自身も俳諧には素人だったのでは⇒
天狗
ヴェネツィア
2025/10/08 17:22

⇒ないかという気もする。もう言いたい放題なのだが、太宰はこの一文に題して『天狗』とつけている。末尾の一文が「ゆるしたまへ」なのだが、それ相応の自信もまたあったのだろう。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
この巻の副題は「ブルジョワジーの装飾」である。建築物全体の意匠に収まって、また時には装飾それ自体が自己を主張するかのように見えることもある。もっとも、建築物全体から見れば、それらは所詮は構成要素であり、あくまでも部分であるに過ぎないのかも知れないが。解説を書く石田潤一郎によれば「建築の設計は、すべての当為と目的を離れて、身体的な促しのままに特権的な時間を生きる行為」と述べ、「まさしく芸術の原初的な姿」と言う。まさに「愉悦」である。例えば桜井松治の小笠原伯爵邸。もっと極端なのは「東京大正博覧会奏楽堂」⇒
ヴェネツィア
2025/10/08 17:09

⇒これなどはアラビア風の建物であり、とても1914年に日本において建てられたものとは思えないほどである。この巻の全体を通して、私たちが感受するのは建築における「贅沢」である。それはモダニズム以降は絶えて喪失した、ある種の幻であったかのごとくである。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
『ヒケティデス』のみ。この作品は邦訳の副題に―嘆願する女たち―と付けられているように(そもそもギリシア語原題のヒケティデスがそういう意味であるしい)、「嘆願」をテーマにしている。アルゴスはテーバイとの戦いに敗れたのだが、多くの戦死者の遺体がテーバイの地にそのままになっている。そこでアルゴスで戦死した将兵の母たちがアテナイの王テーセウスに、遺体の返還交渉を嘆願しにやってくるのである。テーセウスの交渉が決裂したために、彼は軍を率いてテーバイとの戦に臨むことになる。テーセウスの勝利によって、遺体は返還され⇒
ヴェネツィア
2025/10/08 16:47

⇒母たちの嘆願は実を結ぶのであるが、劇の全体を貫流するのは、母の子を思う嘆きであり、これがひとしきり語られることになる。戦争における母の悲劇の持つ普遍性は、その後も形を変えながら何度も何度も文学に登場することになる。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
なかがわりえこ・文、おおむらゆりこ・絵。『ぐりとぐら』のゴールデン・コンビによる絵本。初版は1964年。ぐりとぐらの出版のすぐ後くらいだ。この絵本は、ゆうじときつねの物語だが、表題の「そらいろのたね」が表象するファンタジックなお話。作中の空色のお家がシンボリックな役割を果たす。絵は、登場する他の動物たちを含めて、明るく楽しい。なお、キツネはちょっと「ぐりとぐら」に似ていたりする。
Johnnycake
2025/10/08 12:55

懐かしいです!どんどん動物たちがやってくるのが楽しい絵本ですよね。家の空色がまた素敵で…。

ヴェネツィア
2025/10/08 13:33

Johnnycakeさん、私は初見ですが、たしかに楽しい絵本です。タイトルもいいし。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
初出は昭和18(1943)年4月「文學界」 。太宰34歳(作中では35歳と言っているが、それは数え歳)。最初にこれを読んだ時には、ただもう呆れたのだが、今回あらためて読んでも、それは変わらない。鉄面皮を被るという発想は面白いのだが、ほんとうにもう「破れかぶれ」である。本来は30枚の依頼原稿を引き受けておきながら、『右大臣実朝』が気になって何も書けないというのである。あげくが、これ。言い訳を語っている間はまだしも面白くもあるのだが、自分の書いた(しかも未発表の)『右大臣実朝』を何度も引用するなどは⇒
ヴェネツィア
2025/10/07 16:44

⇒反則技である。もちろん、自分でも分かりすぎるくらいによくわかってやっているのである。なお、『右大臣実朝』は、太宰の畢生の出来。「明るさは滅びの姿であろうか」など、随所に際立った表現が見られる。

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ヴェネツィア
ネタバレ項羽は、益々強大な存在に成ってゆく。一方の劉邦はというと、相変わらず負け戦が続いていた。「鴻門の会」などでは、もはや項羽の命までが風前の灯である。しかも、これから後もそうした危機には何度も遭遇している。項羽が劉邦を侮ることなく、一気に叩き潰していれば(しかも、それは項羽にその意志があれば容易に実現していただろう)漢王朝の時代は存在せず、中国のその後の歴史は変わっていただろう。項羽の楚王朝が全土を支配したかどうかはわからないが。韓信の項羽評によれば、項羽の勇は「匹夫の勇」であり、仁は「婦人の仁」という⇒
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ヴェネツィア
ブラジル・メキシコ建築の特集なのだが、ブラジルの巻頭"Fasano Boa Vista Hotel"などは、ブラジル感が全くといっていいほどに感じられず、むしろ北米のワシントン州あたりにありそうなリゾート・ホテルだ。メキシコ編は、斬新なデザインの"Tori Tori"(日本料理店・メキシコシティー)が目を引く。設計はRojkind arquitectos。また、以下にはいかにもメキシコといったカラーリングの店舗などが並ぶ。ただ、それらよりも、第二特集の「世界の空間デザイン」の方に、より興味深い建築物が⇒
ヴェネツィア
2025/10/07 07:51

⇒並ぶ、というよりは目白押しといった感を呈する。まずは「自然観察ボックス」(表紙写真・ドヴレフェル国立公園=ノルウェー)。この木をくり抜いたようなスペースの中から、大自然を観察するのである。まさに雄大、悠久の自然の中に一体化する。Harads(スウェーデン)のバードハウスもユニーク。山林の中に面白い建物が点在する意匠。大きな鳥の巣に擬態した客室や、UFOの出現かと見紛うような建物。これはなかぬか凝っていて、宇宙船のようなハシゴが付いていて、これで樹上のブースに入るのである。気分はもうE.T.である。

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ヴェネツィア
ネタバレイチンノロブ・ガンバートル 文、バーサンスレン・ボロルマー 絵。珍しい名前だが、この2人は夫婦で活躍するモンゴルの絵本作家。センジ(推定年齢:小学校3年生くらい)の一家が新しい家に引っ越し。2階のセンジの部屋はなんだか暗くて気に入らない。ところが、その部屋の壁の中からたくさんの妖怪(?もくもくじん)が現れて…というお話。物語の舞台はモンゴルの都会(ウランバートル?)だろうか。パオや大草原といった、私たちが想像するモンゴルらしさはないのだけれど、家の佇まいや家具調度、それに構図の取り方などに独特のものが⇒
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
表紙からもわかるように、本書は小学校高学年から中学生向けくらいに編集された食物連鎖の入門書。全体には絵や写真がふんだんに用いられていて、分かりやすい。第一章は当然、生産者から始まるのだが、光合成の説明がやや簡略すぎるのではないかという気がする。2番目に分解者が置かれているのも、後の繋がりからすれば、どうかなとも思う。一次消費者、二次消費者もその関係性にもう少し補足があってもいい か。後半の様々な場所での食物連鎖は、理解を深めるのに有効だろう。ただ、それらを総合しての生態系という考え方の紹介が必要だ。⇒
ヴェネツィア
2025/10/06 16:24

⇒それがあってこそ、第二章の「食物連鎖がとぎれたとき」が意味を持ってくるのであるから。このシリーズは小学校の図書館には置いてほしいものだと思う。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
この巻は、国内にある安藤忠雄の建築物を取り上げる。驚きの連続なのだが、その一つに実に様々な用途に対応しつつ、しかもそれぞれに特質を際立たせていることが挙げられる。まずは、アカデミックな建築から。巻頭に置かれたのは「東京大学情報学環・福武ホール」である。一見シンプルに見えるのだが、その実意表を突いた意匠が凝らされてもいる。その最たるものが、並木道に沿って建てられた建物の自立壁に穿たれた平行なスリットである。コンクリートの打ちっ放しなのだが、それがこれほどに美しく見える例はなかなかないだろう。ガラスとの⇒
Himeko is not cat
2025/10/06 23:41

なんと、ヴェネツィアさんが関西のイメージなかった(笑)勝手に😋

ヴェネツィア
2025/10/07 09:13

私は関西弁ネイティブです。安藤忠雄もたしか大阪生まれ。もっとも大阪とはいっても、私とは言葉が微妙に違うのですが。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
これこそ司馬遼太郎という作品だ(それほど読んではいないのだけれど)。時は紀元前210年。秦の始皇帝の突然の死から物語が始まる。次なる群雄割拠の時代の幕開けである。彼等の中から頭角を現してきたのが、件の項羽と劉邦。たしかに大陸的な物語だ。司馬遼太郎は、そうしたスケール感を巧みに表出してゆく。この二人に限らず人物造形が巧みで、個々の登場人物たちの出自や、歴史に登場してくる背景、あるいは風貌から性格にいたるまで、くっきりとその像を結ぶ。もちろん、その背後には数多くの史書の類が踏まえられているのだろうが。
カピバラKS
2025/10/07 13:51

司馬作品は200冊位読んでいますが(主に文庫版)、項羽と劉邦は「これこそ司馬遼太郎という作品」だと感じており、いつか読み直したいと思っています📚

ヴェネツィア
2025/10/08 09:29

カピバラさん、私は司馬遼太郎は10作に満たないくらいしか読んでいませんが、直感的にはこれが司馬遼太郎だという気がします。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
山﨑おしるこ・作。この人は、お笑い芸人・お絵描き芸人・だんごむし愛好家・人気バンドのボーカルなど多方面で活躍しているらしい。googleで調べてみたら女性だった。本書は、絵本デビュー作。最初のページから最後までひたすらにだんごむしのオンパレード。苦手な人には、それこそ「虫酸が走る」絵本だろう。何種類ものだんごむしが紹介されているが、これらは全て実在のもの。こんなにいたなんて知らなかった。ぞろぞろぞろぞろ、ひたすらにだんごむし讃歌が続く。そういえば、本物のだんごむしは長らく見ていないなあ。
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ヴェネツィア
初出は昭和14(1939)年11月「文芸世紀」。太宰30歳。小説ともエッセイともつかない作品だが、一応は小説としておく。とはいっても、ここでいう「私」は限りなく太宰その人だろう。「私」は、理想主義者の代表にドン・キホーテを上げる。それはまさにそうだろう。当時の(あるいは今も)世間の人たちからすれば、世間とは大きくズレた滑稽な存在であるが、真の理想主義とはそういうものだ。イエス・クリストもまさにそうであったではないか。ところが、ここで語られる「私」は、なんだか 卑俗な理想主義者なのである。⇒
ヴェネツィア
2025/10/05 16:28

⇒「私はこの好色の理想のために財を投げ打ち、衣服を投げう打ち、靴を投げ打ち、全くの清貧になつてしまつた」というのである。これを「ロマンチシズム」と名づけているが、これでは西鶴の世之介である。もっとも、世之介も好色の理想に殉じたのではあったが。ここから語られる芸者との顛末は通俗の極みであり、掲げられた理想という言葉からは限りなく遠いのだが、そこがまた太宰の太宰たる所以でもあった。そんな作品である。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
第一章は、戦争遺児たちの靖国参拝からはじまる。各県ごとに集団を成しているのだが、いずれもすごい数である。遺族に挨拶すべく時の首相、東條英機が胸にたくさんの勲章をぶら下げて登場。まさに「一将功成りて万骨枯る」の図である。章末には記念品を贈呈される男の子。小学校5年生くらいか。父は戦死、母も喪い靖国孤児として上京した。以下は予科練、陸軍幼年学校、戦車学校での写真が並ぶが、いずれも少年と呼ぶにも痛々しいほどの様子である。この中には特攻もしくは、前線で散っていった青年(時には少年)も多数いたのだろう。⇒
Simone Biblia
2025/10/07 00:28

田辺聖子『欲しがりません勝つまでは』(ポプラ文庫ほか)が、当時の子供の心情を知る参考の一つになるかもしれません。絶版らしいけど、古書がまだ出てます。

ヴェネツィア
2025/10/07 14:08

Simone Bibliaさん、ご紹介ありがとうございます。探してみます。

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ヴェネツィア
陣内秀信先生のイタリア小都市紀行&考察。今回は「スローシティ」をテーマにしているので、南イタリアが中心になる。中でも、ここでとりわけ注目しているのはプーリア州(地図で言えば長靴のカカトにあたる部分)の街々。表紙写真のオストゥーニ(上)やガッリーポリ(下)などがそうだ。この地域で最もよく知られたアルベロベッロに見られるように、白い街がたくさんある。しかも、レッチェやマルティナ・フランカなどは名だたるバロックの街でもある。最近は観光化の波が押し寄せて来ているが、本来は静かで固有の文化を守り続けてきた田舎町⇒
ヴェネツィア
2025/10/05 08:05

⇒がほとんどである。そして、それこそがこの地域の持つ最大の魅力でもある。北イタリアの諸都市(フィレンツェやヴェネツィア、ミラノなど)のような歴史的建造物が豊富にあるわけではないが、密やかな迷宮都市が散在するようだ。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
バージニア・リー・バートン 作。原書は1942年の刊行。真珠湾攻撃があったのが、前年の41年の12月なので、まさに大戦中である。物語を読んでも、絵を眺めても、アメリカの豊かさには驚嘆するばかり。また、戦争の影はどこにも見当たらない。さて、本書だが、静かな田園の丘の上にあった小さなお家が、次第に都市化の波にさらわれてゆく。やがて、大都市の真ん中にポツンと取り残されて…というお話。絵は、この小さな家を真ん中に据えて、定点観測のごとく時間の経過を描いてゆく。その意味では、主人公はあるいは時間であるのかも⇒
ヴェネツィア
2025/10/05 07:42

⇒知れない。古いタッチの絵だが、なかなかに抒情を喚起する絵でもある。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
初出は昭和21(1946)年5月「アサヒグラフ」 。太宰37歳。まずは大正期の劇を散々にこき下ろした後、太宰は「ちやうどいまの日本の津軽地方の生活が、そつくりチェホフ劇だと言つてよいやうな氣さへした」と言う。そこからは『伯父ワーニヤ』、『櫻の園』、『三人姉妹』のセリフを引用しながら、津軽における(おそらくは津軽に限らないのだろう)インテリゲンチアたちの言動を批判する。太宰は、よほど我慢ならなかったのだろう。彼らがことごとく「意味の追求」をなそうとすることが気に入らないのである。すなわち、太宰の芸術感から⇒
ヴェネツィア
2025/10/04 15:43

⇒芸術において必要なのは「意味」ではなく「サンボリズム」にほかならないからである。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
第一次インドシナ戦争ではフランスと戦い、その後はアメリカと戦ってきたベトナム。1975年4月30日にようやくその30年に及ぶ戦争が終わった。この写真集は、主としてその当時のベトナム各地の様子を伝えるものである。誰の顔もが喜びに溢れている。農地を耕す農民がいて、村の集会所にも大勢の人たちがいる。米軍の戦車やヘリコプターの残骸の上にもたくさんの人たちが鈴なりになって喜びを表現している。子どもたちの写真もあるが、中には脚を失った子どももいる。苦節30年。つまり、30歳以下の人たちにとっては、生まれてからずっと⇒
ヴェネツィア
2025/10/04 15:27

⇒村や街は、そして自分たちのいた所は戦場だったのである。あれから今年で50年が経過した。もちろん、まだ傷跡はあちこちに残るだろう。少なくてもベトナムの人たちはあの戦争を風化させてはいないはずである。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
ネタバレ『成瀬は…』の2作に続く宮島未奈の3作目。今回は、いささか時流に乗って婚活をテーマに描く。全体としては長編だが、全6話はそれぞれに半ば独立した短篇としても機能する。物語の舞台は浜松。主人公は、しがないフリーライター(というほどのものではないと本人は言う)の40男、猪名川健人。そしてヒロインは婚活を運営する企業に務める鏡原奈緒子。彼女が登場して間もなく、物語の行く末は見えてくる。もっとも、作家の方もそれを承知の上での展開なのである。最後はてっきり、このドリーム・ハピネス・プランニングを2人で継承する、⇒
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
アジア各国の人たちによる文と絵で構成。出発はアジアの西に位置するイランから。そこからパキスタン、インド、ネパールへとアジアを東にたどって行く。お話というほどのものはないのだけれど、基本的には朝と夕方(夕食)の光景が語られ、描かれる。絵は全て別の画家が描いているのだが、なんだかよく似たタッチである。全体の印象としては、のんびりと穏やかで平和な情景である。ただ、これが必ずしも現在の姿を映し出しているものではない。中には、今なお紛争の絶えないイランやパキスタン、あるいは軍事政権の圧政に苦しむビルマなども⇒
コータオ
2025/10/04 09:14

ヴェネツィアさん、バリいいですね。(行きたい!)アジアの少し埃っぽいけど湿り気のある広々とした農村は、ほっとしますね。のどかなナイトマーケットで、娘(18才)が現地の女の子を見て「渋谷の女子より素敵だ、、、。」と言ってました。

ヴェネツィア
2025/10/04 10:04

アジアの地元の人向けのマーケットはとっても楽しいですね。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
初出は昭和16(1941)年6月「改造」 。太宰32歳。若い女性の一人称語り。太宰は、この2年前に『女生徒』を上梓しているが、基本的なスタイルはそれと同じ。ただ、インパクトはあれほどに強くはない。「七年前の天才少女をお見捨てなく」とあるので、この手記が書かれた時、和子(語り手)はまだ19歳である。にも関わらず、何だか老成したような書きぶりである。おそらく、この手記は『女生徒』が太宰から見て第三者として設定されていたのに対して、太宰自身が強く投影されていると思わ れるがそれ故の老成であったか。
ヴェネツィア
2025/10/03 16:14

タイトルの『千代女』は、作中末尾の加賀千代女のエピソードから採られたものであるが、「私は千代女ではありません。何も書けない低能の文学少女」の韜晦からすれば、この時期の太宰はそうとうに落ち込んでいたのだろう。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
著者の猪熊律子氏は読売新聞の編集委員。専門領域は社会保障。刑務所は社会の縮図と言われるが、まさにその通りで、ここにも高齢化の波が押し寄せてきている。本書は女性刑務所に密着取材し、そうした問題を中心に考察したもの。女性受刑者の犯罪の2大トップは窃盗(46.7%)と覚醒剤取締法違反(35.7%)であり、傾向としては50歳を境に、それより上が窃盗が圧倒的に多く、それより下が覚醒剤であるらしい。窃盗の大半はいわゆる万引きである。しかも、受刑者のほとんどは累犯であり、刑務所に入るのも何度目かということになる。⇒
ヴェネツィア
2025/10/04 08:50

碧緑さん、本書にも年末になると寒くて寂しいお正月を過ごすために意図的に犯罪を犯して刑務所入りを図る事例も紹介されていました。

ヴェネツィア
2025/10/04 08:51

T.Tokunagaさん、それはまだましだとは思います。アメリカは民営化ですからねえ。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
感想は『ヘカベー』のみ。ギリシアに敗れたトロイアの王妃ヘカベーの物語。息子たちは戦死し、ヘカベー自身は奴隷の身となる。万一の場合に備えてトラキア王に託していた末の息子も、そこで王に殺される。唯一残された末娘のポリュクセネーも生贄 として殺される。全てを失ったヘカベーに残されたのは、トラキア王ポリュメーストールへのせめてもの復讐だけ。この劇はしばしば統一性が問題となるようだが、徹底した悲劇の主人公ヘカベーを終始舞台に立たせることによって、劇としての統一感は強く主張されているのではないかと思われる。⇒
ヴェネツィア
2025/10/03 07:29

⇒しいて言えば、最後の復讐劇の部分に無理があるかも知れない。今や奴隷の身となったヘカベーにそんなことが可能であったかとの疑問も無きにしもあらずなのだが、そうでもしなければ観客のカタルシスが収まらなかっただろうと思われる。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
ネタバレレベッカ・ボンド 文、サリー・メイバー 絵。2人はともにアメリカの絵本作家。世界の各地で子どもたちが寝ているところを垣間見る旅。オランダの屋形船の家、中南米のハンモックが吊られた寝室、モンゴルの大きなテントの家…。どの寝室でも、子どもたちが安心して眠っている平和な光景。絵は、独特の立体刺繍で、各ページのナレーターは刺繍の動物たち。そして、見開きいっぱいに子どもたちの眠る素敵な寝 室が。刺繍絵は細密かつ、暖かみに溢れており、この企画にピッタリ。日本編もあって、お庭には桜の木、畳のお部屋に布団を敷いて。⇒
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
著者のRIKUは、Xなどの総フォロワー数36万人超を誇る。初の写真集は『ほぼねこ』。また、本書は伊豆アニマルキングダムの協力を得て作成。被写体は同園のホワイトタイガーのシロップとその子どもたち。園にとっては、文字通りに慣用句に言う「虎の子」である。写真に収められた子トラたちは、生後間もなくから数ヶ月くらいまで。トラ好き、ネコ好きには垂涎の写真集である。白の身体にトラ模様。ブルーグレイの眼がチャーミングだ。「しおしお顔」のグレイ(子トラ)などは、ネコそのもの。でも、颯爽と歩き始めると、弱冠生後3カ月にして⇒
ヴェネツィア
2025/10/02 16:43

⇒既にこの風格。さすがはトラだ。でも、まだ幼いツキとシグレの丸いおヘソが可愛い(ちょっとデベソ気味)。ネコ好きの人なら、たちどころにノックアウトされること必定。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
古民家再生の実例を多数紹介する。今回のコンセプトは「かたちと心を継承する」ということだが、それはまあ言っているだけ。改築例の中で注目するのは、まず倉敷市の垣見邸。以前は呉服屋として使われていたが、ここ15年ほどは空き家となり放置されていた。改築後の写真を見ると、新築かと見紛うばかりの佇まいである。場所も美観地区の中心らしく、周辺とのバランスも素晴らしい。世田谷区の「宮の坂の洋館」は、昭和初期の洋館を改築。これまた美しく再生されている。一方、古民家風新築として紹介されているものは、私はその意匠にあまり⇒
Vakira
2025/10/02 15:56

世田谷区の「宮の坂の洋館」!旧デオドラ邸ですね。中学の時の同級生がそこに住んでいました。

ヴェネツィア
2025/10/02 17:01

Vakiraさん、それはまたなんとも裕福そうな同級生ですね。住心地も立地も良さそうです。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
6つの作品からなる短篇集。著者自身の「各短編について」を読むまで気が付かなかったのだが、古くは2005年に書かれた「透明ポーラーベア」から2025年の「パズル」まで、いくつかの媒体に掲載した短篇を集めたもの。個々の短篇は独立したものだが、最後の書き下ろし「Weather」は、全体を統括することが意識されている。タッチはいずれも軽やかで、志向は純 文学的なものではなく、あくまでもエンターテイメントに徹している。その傾向がとりわけ強いのは「竹やぶバーニング」と「イヌゲンソーゴ」。ただ、いずれも伊坂幸太郎⇒
ヴェネツィア
2025/10/02 08:13

⇒の持ち味であるスピーディーでスリリングな物語というのとは、いささか趣きを異にする。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
児童文学作家の佐藤さとるの文、絵はライプツィヒ国際図書展「世界で最も美しい絵本」賞受賞の村上勉の強力コラボレーション。かおる(主人公・推定小学校3年生)の「おおきな木があるといいな」という想像が次々と拡がっていくというお話。絵本にしては文の分量が多い。もう少し、読者(聞き手)の想像力の余地を残す方がいいのではないかと思われるほど。着想は男の子たちがよく抱く秘密基地の構想を大きな木に反映させたもの。絵は、ペン画の描線に丁寧な彩色を施したもの。木の葉の緑が美しい。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
初出は昭和21(1946)年7月「芸術」 。太宰37歳。太宰による恋愛の定義「好色の念を文化的に新しく言いつくろいしもの。すなわち、性慾衝動に基づく男女間の激情。具体的には、一個または数個の異性と一体になろうとあがく特殊なる性的煩悶。色慾のWarming-upとでも称すべきか」と、もう全く身も蓋もない。そして、恋愛はけっしてチャンスによるものではなく、断固として意思であると言う。このことを手を変え、品を変え、あれこれと綿々と綴るのである。その主旨は一貫して同じだ。それにしても、何故にまたこのことを⇒
ヴェネツィア
2025/10/01 16:46

⇒さほどまでに論じなければならなかったのだろう。いわば、戦後に突然のように流行しだした恋愛至上主義に対する反発であったのか。なお、最後の2つの結論―「片恋というものこそ常に恋の最高の姿である」と「恋愛に限らず、人生すべてチャンスに乗じるのは、げびたことである」―は、まさにその通りだろう。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
特集は「自然から学ぶ空間術」。巻頭を飾るのは、クッド島(タイ)の「エコロジカル・チルドレン・アクティビティ・アンド・エデュケーション・センター」という長い名前の施設である。ただし、これ単独であるのではなく、リゾート・ホテルの付属施設である。竹をふんだんに用いており、竹のしなやかさ、可塑性を最大限に活かしている。空間デザインとしても、極めて秀逸。ボーリス・ザイサーとマールチェ・ラマースの設計である。続いてはオークランド(ニュージーランド)の「イエロ ー・ツリーハウス・レストラン」である。これまた⇒
ヴェネツィア
2025/10/01 13:51

⇒贅沢の極み。樹上にラグビーボール様の木で作られた空間にレストランのテーブルがセッティングされている(表紙写真)。一室に一組だけ。これが何室かある。設計者はピーター・アイシングとルーシー・ガントレット。他のものも斬新だが、利用するには、いずれもお金に糸目を付けない覚悟が必要。

が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
たかおゆうこ・作。お話はいたってシンプルで、雹が降ったためにクルミの家が壊れてしまった老夫婦が家探しの旅に…というもの。まずはタンポポの綿毛に乗って、イチゴ畑へ。お次はスイカ畑。この絵本の生命は、やはりなんといっても絵にある。絵はかなり上手い。おじいさんもおばあさんも、ちゃんと小さな種族の人に見える。タ ッチはヨーロッパの絵本風。フォルムも色遣いも素敵だ。絵本に美しさを求めるのなら、これは上々の部類。
が「ナイス!」と言っています。
ヴェネツィア
今年もシマウシで受賞。日本の研究者はこれで19年連続の受賞である。とかくユーモアのセンスに乏しいと言われる日本人だが、ことイグ・ノーベル賞に関しては堂々の成績。牛をシマウマみたいにシマシマにするなんて、ふざけているか、単なる思いつきかにも見られそうだが、けっしてそうではない。これも、営々たる研究の成果なのである。さて、本書はそんなイグ・ノーベル賞の中からいくつかをピックアップして紹介したもの。面白い上に、着想のヒントを与えてくれる。例えば、ビッグサンダーマウンテンに乗れば、尿路結石が解消される、や⇒
Yuu I
2025/10/01 08:10

アフリカのツェツェバエに、シマウマのシマが有効だと聞いてましたが、まさか牛にシマを付けて本当に立証をしたのが日本人ってのを、今年のイグ·ノーベルで知りました。牛さんもハエを追い払うのが少なくなったことで、精神的に安定したと聞いて、実際実行されるか微妙ですが、立証出来て良かったと思いました。

ヴェネツィア
2025/10/01 08:27

YuuⅠさん、これも長年の研究の成果なのでしょうね。それにしても、着想がスゴい!

が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2011/11/30(5130日経過)
記録初日
2011/04/07(5367日経過)
読んだ本
8482冊(1日平均1.58冊)
読んだページ
1883159ページ(1日平均350ページ)
感想・レビュー
8392件(投稿率98.9%)
本棚
62棚
性別
職業
専門職
自己紹介

2011年4月からの参加で、15年目にはいりました。一番よく読んでいるのは日本文学、次いでは翻訳文学です。読むジャンルの幅は広い(半ばは意識的にそうしています)のですが、何でも手当たり次第に読むというわけではありません。特に誇れるものはありませんが、連続読書日数は初日から5263 日(2025年9月2日現在)、冊数は8098冊になりました。胃癌で入院中も、海外旅行中も毎日読んできました。さて、どこまで伸ばせることやら。

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