
レビュー投稿数急増の1冊
まだ温かい鍋を抱いておやすみ
食べものが紡ぐ様々な二人の関係を描いた短編集。
人生の苦味や迷いを感じさせながら、日々積み重ねていた心の澱のようなものがスッと取り払われるような読み心地、穏やかに気持ちが解きほぐされるような物語を味わえた。
誰かと一緒に食べる、誰かに料理を作ってあげる、毎日繰り返される食事でもちょっとだけ特別なことをもたらすものもある。それは過去の嫌な思い出を癒してくれるものであったり、過去の嬉しかった気持ちを思い出させてくれるものだったり。
やっぱり「食べるってすごい」んだなと。そういえば時々無性にピザが食べたくなる。

アクセス数急増の1冊
法廷遊戯
ロースクールで行われていた、自己にかかった被害について、審判者を間に加害者を指定する無辜ゲーム。参加者だった三人は、その後ある事件で、弁護士、被告人、被害者となる…。
最初はこのゲームと一連の不可解な出来事が、どのように何に繋がるのかと手探りで読み進めていたが、いざ事件が起き彼らの立ち位置が決まった後は、先が気になり一気に読み進めるしかなかった。
綺麗な構成で、伏線の回収やラストの畳みかけなど法廷ミステリとしてとてもよくできていると思う。読後の余韻も凄かった。メフィスト賞受賞デビュー作とのこと、次作も楽しみ。

SNSなどで話題の1冊
桜のような僕の恋人 (集英社文庫)
新人美容師の美咲に恋した晴人。少しずつ距離を縮め、2人は付き合うことに。互いの夢を応援しあい、ずっと続くと信じていた幸せが美咲が発症した病によって壊れていく。
ファストフォワード症候群。普通の数十倍もの速さで年をとるという、治療法のない難病。
夢を諦めなければいけない辛さ。驚くほどのスピードで年をとっていく自分と向き合う悲しさ。好きな人と一緒に年をとるという当たり前のことさえ叶わない。私もきっと美咲と同じ選択をしてしまうと思う。
妹を最後まで元気づけようと、病から救おうとしたお兄ちゃんが格好良かった。

著者名の検索数急増!注目の1冊
食っちゃ寝て書いて
いつもながら小気味いい会話でサクサク読める小野寺さん。
今回は、50歳の作家と30歳の編集者がそれぞれの視点で描く出版までのあれこれ。なかなか興味深い。
書き直しの末、ボツになり落ち込んだ中年作家、横尾成吾。穏やかで真面目な独身。50歳にしてワンルームのアパートで「食っちゃ寝て書いて」の毎日。交代で担当になった編集者、井草菜種。医学部受験に挫折し、文学部から出版社に就職。「食っちゃ寝て読んで」の彼はボクシングの経験もある変わった経歴。舞台はあの町。
他の作品とのリンクやちょっとした仕掛けもあって今回も楽しめた。

月間おすすめランキング1位
おいしくて泣くとき
温かさと涙に包まれた、一冊。こども食堂をベースに描かれていく物語。
森沢作品にはハンカチが必須。今回も随所で涙腺はゆるんだけれど終盤は一気に涙腺崩壊だった。
人って、あの時のあの瞬間があるからがんばれる、つらいことがあっても生きていけるのかもしれない。愛情はもちろんあの時のあの味、あの言葉はその人にとってはかけがえのない思い出、宝物。無力な子どもだったらなおさらだと思う。子供達が安心して食せる場所、増えて欲しいな。
この物語の全姿を見せてもらった時に包まれた温かさと涙、たまらない。森沢マジックを感じた瞬間。

注目!じわじわ話題の1冊
満月珈琲店の星詠み (文春文庫)
ページを開いた瞬間、目の前に広がる甘やかで夢のような世界。
別世界に入りこんでしまったような神秘的な光と優しさが融け合うイラストは、満月の夜だけ気まぐれに現れる不思議なお店、満月珈琲店のメニュー。猫のマスターと店員が行う悩みを抱える人々へのおもてなしは、とびっきりの特別スイーツと、星詠みによる極上のアドバイス。それは、私の心にも響くメッセージばかり。
徐々に繋がりがみえてくる人々のエピソードは優しすぎて胸が熱くなり、ずっと浸っていたくなるようなエピローグは、思いやりに心があたたかくなり夢のように心地よい。