今月の PICK UP レビュー

2022年

5

今月は「リーガル ミステリー小説の
おすすめ本」特集!

今じわじわと注目を集めているジャンル、リーガル ミステリー作品に寄せられた、感想・レビューを紹介!
次に読みたい本を見つける参考に、ぜひチェックしてみてください。

六法推理

現役弁護士作家が放つ、青春×多重解決ミステリー!

六法推理

舞台は大学法学部の自主ゼミ「無料法律相談所」。法曹一家で育ち、ちょっと捻くれた感情を持つ法律マシーンのような古城が押しかけ助手のような経済学部の戸賀と共に相談にのり、解決策を示す連作。

相談事は意外に重く短編ながらミステリとしての読み応えもあるが、硬すぎず読みやすい。

大学生である古城ができることは限られていること、単なる天才ではなくまだ経験の浅い大学生らしさを持っていることなども伝わってきて好感が持てた。戸賀を始めいろいろな人と関わり、机上では納まらない経験をして彼自身も成長していくのが印象的な一冊だった。

六法推理
六法推理
コリーニ事件

刑事事件弁護士が研ぎ澄まされた筆で描く圧巻の法廷劇

コリーニ事件

67歳のイタリア人元労働者コリーニが、85歳のドイツ人実業家マイヤーを惨殺する。コリーニの国選弁護人となった新米弁護士ライネンだが、マイヤーは少年時代の親友の祖父であり恩人でもあった。犯人と被害者の間にあるはずの接点も殺害の動機も何一つ見出せぬまま、公職と私情の間で苦悩するライアンが、やがて見つけ出した悲劇のきっかけとは。

刑事事件弁護士でもある著者が描く法廷劇。実際に施行されている法律の落とし穴を突く展開は流石。著者の出自も作品に説得力を与えている。200ページに満たない短篇とは思えない闇の深さは圧巻。

少女は鳥籠で眠らない

現役弁護士が感動的に描く連作リーガル・ミステリー!

少女は鳥籠で眠らない

リーガル・ミステリ連作集。法律は味方にもなるし、そうでない場合もある。法律の盲点を突くような解決策とそれに絡む人間の深い情感に思わず唸らされた作品だった。

初篇の黒野葉月のは最初何が起きたかよく分からず不思議な感覚で読み終えたが、以降の篇を読んで意図が分かり、目的を達成するためにはどんな手段も辞さない人間の業と歪んだ愛にゾクリとなった。

特に「~花束を捨てない」は当初の印象からの捻じれ具合が強烈。後を引く味わい。どの篇も真っ直ぐな木村弁護士とスマートな対応をする高塚先輩のコンビがいい感じでハマっていた。

元彼の遺言状

奇妙な遺言状をめぐる遺産相続ミステリー!

元彼の遺言状

面白かったー!既視感ゼロ。全く新しい構想、キャラクター、主人公を取り巻く人間関係。

作者自身が弁護士だからか、弁護士のリアルとフィクションが見事に融合している感じがあって、安心して世界観に浸れる。とにかく強かで逞しくて気が強くて美しい剣持麗子のキャラクターが素晴らしい。誉田哲也のストロベリーナイトシリーズの姫川が好きな人にはハマる。後半の疾走感がたまらない。どんな人にも面白いからよんで!と薦められる一冊。

とんでもない作家が世に現れたもんだなあ。

元彼の遺言状
元彼の遺言状
敗者の告白

"告白"だけで構成された大逆転ミステリー!

敗者の告白

別荘で転落死した妻と子供と被疑者の夫、というありふれたシチュエーションにも関わらず、ぐいぐい読ませるという点から深木さんの力量を思い知るすごく質の良い作品です。

関係者からの証言や手記だけで展開が進んでいくので、各々の立場や感情で物の見方が変わるのが面白い。結末は善きものが邪なものを屈服させたように感じられ、悪くない読後感です。文章も読みやすいので、人を選ばず勧められる作品だな、と感じました。

特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来

現役弁理士が描く企業ミステリー!

特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来

このミス大賞受賞作。自分には全然知識のない特許侵害に関するお話。

不利な状況を覆すためブラックに近いグレーゾーンを利用しながら、敵を追い詰めて行く内容が好みだな。そしてそれぞれの道のエキスパート達の仕事ぶりもいい味出してる。技術的な難しさは映像化した方が分かりやすいんじゃないかな。

まだ続きそうだし楽しみな作品がまた1つ増えた。

シリウスの反証

冤罪における”救済”を問う、迫真の社会派ミステリー!

シリウスの反証

冤罪被害者の救済活動を行う「チーム・ゼロ」の元に、無実を訴える死刑囚からの手紙が届く。

日本では裁判での有罪率は99.9%であり、再審請求が認められるものも年に数件だと言う。つまり、一旦起訴されれば、無罪となるのは極めて稀だ。再審を巡る小説は多数あるが、本作は切り口が新鮮だった。

科学捜査の盲点や死刑執行手続き等、様々な要素を取り入れたストーリーで、予想が付かない展開に驚かされた。正義とは何なのだろうか。その答えは一人一人で異なるものなのだろうが、本作のラストも一つの答えなのではないだろうか。

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