今月の PICK UP レビュー

2020年

8

読書メーターユーザーおすすめの本に寄せられた、感想・レビューを紹介!

思わず読んでみたくなる感想・レビューが勢揃い。
次に読みたい本を見つける参考に、ぜひチェックしてみてください。

じんかん

月間おすすめランキング1位

じんかん

戦国の梟雄として名を馳せた松永弾正久秀、その生きた証、その魅力が今村節で存分に描かれていて夢中になって読んだ。

人、人、人、名も知られぬ頃から久秀はその日を生きるために様々な人と出逢う。人の欲心、裏切り、世の不条理に幾度も失望するが、人生に大きな糧を与えてくれる人物にも出逢えた。その者たちの思いを彼は背負い続ける。そして終盤あの事実を知った時、思わず込み上げてくるものが。

人とは、人の世とはと問い続けた彼は信じられる揺るがないものを得たのだと思う。それを理解したのは人間の正体を心の底から見た久秀と信長だった。

じんかん
じんかん
三体

著者名の検索数急増!注目本

三体

古典力学の「三体問題」を題材に、これだけ独創的で迫力ある惑星世界を創造してしまったことがすごい。

前半は、科学技術に関する豊富な知見がふんだんに盛り込まれ、文革など中国の政治、社会状況に関する迫真の描写とも相まって、SFとしては抜群のリアイティを感じる。真相がわからないサスペンスタッチの展開も、緊張感を高めてくれる。前半に関しては大絶賛だ。

ただ終盤になると、三体人の「科学技術」に矛盾や破綻が見られ、それまでのようには没入できなくなってしまう。とはいえ、これだけ面白ければ文句は言えない。続編に期待。

三体
三体
52ヘルツのクジラたち

アクセス数急増の1冊

52ヘルツのクジラたち

なんと切なく苦しい描写だろう。親の愛を渇望しても与えられず、繰り返される虐待の絶望の中で、それでもなお、気紛れな言葉の端に自分への愛を探し、全てを許そうとする子どもの気持ちを想像するにつけ、胸がやりきれない憤りで溢れ返る。

守られるべき子ども時代を真っ当に過ごせることは、今や希少なのか…。発せられない、発しても気づかれることのない、絶望と孤独の海に沈む彼ら彼女らの届かない声に気づき、聴くこと。

実在する「52ヘルツのクジラ」になぞらえたストーリー展開は秀逸で、作者の思いが深く刺さり、忘れ得ぬ1冊となった。

逆ソクラテス

レビュー投稿数急増の1冊

逆ソクラテス

大人たちの事情に巻き込まれたり、自分勝手な先入観で見られたり、知らぬ間に作られたヒエラルキーの中で窮屈だったり、子供の社会は大人とは違った息苦しさがある。

子供たちのやり方で、理不尽なことに立ち向かい、今ある状況をひっくり返す。痛快で胸がすく。この物語の主役は子供だけど、これは大人が読む本だと思う。子供時代を振り返り、今を反省するために。

「大人として何がカッコ良くて、何がカッコ悪いか、ちゃんと考えろ!」と言われた気がした。

青くて痛くて脆い

映画化で話題の1冊

青くて痛くて脆い

後ろ髪を引かれている、心に棘がずっと刺さっているような感覚、どこまでいっても「我」な感じが、高校生ではなく大学生らしさを物語っているようであった。

大学4年間をどう過ごすのか、どんな人間関係を構築していくのか、そしてどの感覚が世間一般的な「普通」なのか。「僕」に感情移入してまもなく訪れる感情に戸惑い、「僕」から距離を取りたくなるのに離れられない感覚が、より作品の世界観に入っていけるのだろう。

名前が付けられない感情があって、本当は気付いているのに見ないふりをして「嫉妬」を隠している感じもまた面白かった部分。

ゴーストハント1 旧校舎怪談

注目!じわじわ話題の1冊

ゴーストハント1 旧校舎怪談

予想を上回る真相と爽やか結末。個性的な登場人物たちが各々創りだす独創的な世界観にホラーミステリーがしっかり沁み込んだ始まりの一冊。

シリーズ化していることをこんなに有り難いと思う小説には滅多矢鱈と出会えない!もう次を読まないという選択肢などあろうはずがない!

「旧校舎の心霊現象」というありきたりな設定から、まさかこんな真相だったなんて…という意外性抜群な展開。分からないことが分からない恐怖。この世に存在せざるモノだけの特権ではない怪異。

怖いけど常識では計り知れない何かを求めてしまう普通の女子高生が一番逞しい。

ページTOPへ戻る

過去ページ

2023年
2022年
2021年
2020年