今月の PICK UP レビュー

2023年

1

読書メーターユーザーおすすめの本に寄せられた、感想・レビューを紹介!

思わず読んでみたくなる感想・レビューが勢揃い。
次に読みたい本を見つける参考に、ぜひチェックしてみてください。

地図と拳

日本SF界の新星が放つ、歴史×空想小説

地図と拳

圧倒的リアリティ、圧巻の読み応え。

壮大なスケールと緻密なプロット&人物造形。

読後に打ち寄せたのは充足感、そして改めて思う戦争の不毛さだ。描かれるのは、満州の小さな集落が都市へと変わり、そして消滅するまで。その架空都市に吸い寄せられたさまざまな人物がそれぞれの立場や信条のもと自分の信じる地図を描こうと模索し、あるいはかつての地図を奪還しようとする。

架空都市を舞台に繰り広げられる、波乱とうねりと痛みの群像劇。

〝地図と拳〟の繰り返しによって、歴史は連綿と続いているという事実に真っ向勝負した骨太作品。激アツ!

リバー

人間の業と情を抉る無上の群像劇×緊迫感溢れる圧巻の犯罪小説!

リバー

読み終わりしばし放心。始終興奮し結末まで怒涛の一気読み。

援交女の連続殺人事件。浮かび上る3人の容疑者。物語は容疑者、遺族、新聞記者、捜査員と目まぐるしく語り手は変わるが、その転換はまったく違和感がなく見事。

過去の事件との類似性、点と点が線に繋がり、一つの輪が巨大な円になったときの組織力に鳥肌が立った。善人と思われた者の裏の顔、心の闇の解明とは良く言われるが、果たしてそれを暴くことに意味はあるのか、そこに作者の意図を感じた。限りなくグレーという曖昧さに翻弄された者たちの勝利とは程遠い敗北感が印象的だった。

嫌いなら呼ぶなよ

心に潜む “明るすぎる闇“に迫る綿矢りさ新境地!

嫌いなら呼ぶなよ

四編それぞれの主人公が、余りお近づきにはなりたくないような性格のえぐさで、顔をしかめたくなる。

自らの考えや感覚を鋭く自己主張することが、本人にとっては快感なのだろう。はっきりものを言う事が時に大切であることは間違いない。だが、何事にもバランスなり最低限の礼儀を配慮をしないと、良かれと思ってのことであったとしても、「小さな親切、余計なお世話」で終わってしまう。

人との関係性に感情的なしこりを残せば、その後の友好関係は期待しずらい。嫌われたくないという感情は誰しも持っているだろうし、「口は災いの元」とも言う。

金環日蝕

〈犯罪と私たち〉を真摯かつ巧緻に描いた壮大な力作

金環日蝕

「中心は暗闇に沈んで何も見えないのに、その輪郭だけが強烈な輝きを放つ」ひったくり犯人を捕らえるつもりが、そこから次から次へと謎の人物たちが登場し闇の世界に入っていく。

闇の深さは尋常では無い。一つ一つの事実が明かされて行くが、それが突如オセロのようにひっくり返される。

何が真実でどれが嘘だろう。大学生の春風と高校生の錬の真相を追う行動から目が離せなくなる。幼い頃に受けた傷は決して消えないし、いつまでも残る。その恐怖を心の奥底に秘めながらも勇気を振り絞って進む春風の姿に闇を切り開く淡い輝きを感じた。

金環日蝕
金環日蝕
月の立つ林で

最後に仕掛けられた驚きの事実と読後に気づく見えない繋がりが胸を打つ

月の立つ林で

月とポッドキャストをテーマに、様々な登場人物に視点移行していきながら心模様を掘り下げ、一人称で紡ぐ連作短編。

月のトリビアを絡めつつキーパーソン、タケトリ・オキナを軸に、人と人の見えないつながりを、仄かに照らし出す月光のようにフワリと浮かび上がらせ、慈みの筆で描く。見えないけれど確かにある新月、三日月からやがて満月へ。

毎日姿を変え、輝くときもあれば消えるときもある月。古来より人を魅了してきた多様な月の姿を通して知る、人の優しさ、切なさ、寂しさそして温かさ。

『木曜日のココア』から始まる青山作品の集大成ここに。

運転者 未来を変える過去からの使者

報われない努力なんてない!累計100万部 渾身の感動作!

運転者 未来を変える過去からの使者

伏線の回収や人と人が繋がっている構成も秀逸だが、夢をかなえる象ガネーシャのようなハッとさせられる教訓が随所に。

一生懸命やっているのに上手くいかないとき、運が悪いと嘆く代わりに、後世に役立つポイントを貯めていると考える。純粋に人に興味を持って話を聞く。上機嫌にしていないと運はつかめない。

世の中の人がみんなこんな風に考えられれば平和で幸せな社会が実現するのに。

腹を割ったら血が出るだけさ

いくつもの人生が交差して響き合う、極上の青春群像劇

腹を割ったら血が出るだけさ

もし、感化された小説に現実の世界でシンクロしてたら…。

“愛されたい”に囚われた女子高生の茜寧の葛藤を軸に、自分らしく生きることを信条にしている逢、プロ意識の高いアイドルの樹里亜、屈折した気持ちを抱える幼馴染の竜彬らの視点を交えながら、繰り広げられる群像劇。茜寧視点は読んでいて途中で舌が痛くなってきた。

ウザッたいほど多感でヒリヒリした感情が溢れ出す。独特の文体で好みが分かれそうだが、作者の想いを投影した序盤とラストは良かった。主人公は読み手しだい。映像化も向いていそう。

光のとこにいてね

ひとつの愛に惑う二人の、四半世紀の物語

光のとこにいてね

ずっと一緒にいたいという気持ちを溢れるほど抱えながら、手放す…って、どんな気持ちだろう。

幼いあの日の出会いを常に宝物のように胸に抱き、15歳・29歳で運命的な再会をした後も、自分よりも大切な結珠のためなら何でもする果遠。

タイトルでもある果遠の言葉には、幸せを願うだけでなく、これからを歩む糧が、彼女の胸を満たしている輝きを感じる。

一度きりの人生に於いて、どんな困難があっても、誰か1人とでも、時間や距離を超え想い合える関係性を築けることがどんなに素晴らしいか、今回も一穂ミチさんに泣かされた…。

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