今月の PICK UP レビュー

2022年

11

読書メーターユーザーおすすめの本に寄せられた、感想・レビューを紹介!

思わず読んでみたくなる感想・レビューが勢揃い。
次に読みたい本を見つける参考に、ぜひチェックしてみてください。

いけない

ラスト1ページですべてがひっくり返る。話題の超絶ミステリ!

いけない

物語の引力に逆らえない、抗えない。道尾秀介作品にはいつもグイグイ引き込まれる。本書は読者参加型ミステリー。

舞台は自殺の名所『弓投げ崖』がある架空の海岸線の町。4章に分かれている話は根底で繋がっている。各章の最終ページに挿入されている写真を見ると、隠された真実を発見する、という仕掛け本。あ~ぁ、本書を読んだ方と答え合わせをしたいこの衝動!!

ダークでちょっとホラー要素スパイスありの道尾作品。今は衝撃でお腹いっぱいでも、必ずまた読みたくなる。やっぱり天才でしょ☆

方舟

編集部驚愕、絶句のクローズドサークルミステリー

方舟

地震により山奥の地下建築に閉じ込められた十名。ここから脱出するためには、誰か一人を犠牲にしなくてはいけない。そんな矢先に殺人が起こる。

極限状態のクローズドサークル。日の差さない地下施設、足元に迫る浸水という設定からして息苦しく、淡々とした描写にかなり鬱屈とした気分になる。

犯人が犠牲になるべきだという倫理観も真っ青な思想だが、そもそもなぜ殺人が起きたのかというホワイが笑えるほど面白い。正直痺れた。すべてはこの結末に向かうための舞台装置。

『方舟』というミステリ小説にしてはシンプルなタイトルも潔い。最高に好き。

方舟
方舟
まず牛を球とします。

サクッと読めてザクっと刺さる極上のSF作品集

まず牛を球とします。

思った以上に本格SFな短編集でそのシュールな世界観がクセになる面白さ。

まず1話目の「牛は食べたいが動物は殺したくない」という人類のワガママの結果生まれた『まず牛を球とします』でガッチリ心を捕まれ、次の『犯罪者には田中が多い』で風刺を効かせて、と気軽に読めるけどなんだか心に刺さる濃厚なお話が盛り沢山。

どれも面白いが『東京都交通安全責任課』や『令和二年の箱男』もお気に入り。なるほどAIが進化すればもはや人間の仕事は責任を取る事だけになるのかーと妙に納得。箱男は実際にこんな人いるんじゃないかと思って少し笑えた。

幻告

タイムスリップで繰り広げられる法廷ミステリー

幻告

その存在を初めて知ったとき、実父は犯罪者だった。そんな衝撃から始まるSF×法曹界という異色小説。

目が覚めるような壮大な裁判に、唯々ひれ伏す。過去と現在、くるであろう未来を巻き込んで時空を越えた異色の刑事裁判が開廷した。息もつかせぬ怒涛の展開。独自の時間を遡って出した決断一つが溶け込んでいく度に、オセロのようにパタパタと引っ繰り返る現在の状況と裁判結果。

その犯罪は冤罪か?裁判所書記官となった傑は父に有罪判決を出した裁判官・烏丸と真実を追求し、正しい判決に修正し無事閉廷できるか。醸成された悲嘆と憂苦が辛い。

幻告
幻告
小説 すずめの戸締まり

扉の向こうにはすべての時間があった。新海誠自らが綴る原作小説

小説 すずめの戸締まり

九州の静かな港町で叔母と暮らす17歳の少女、岩戸鈴芽。ある日の登校中、美しい青年・宗像草太とすれ違った鈴芽は、「扉を探してる」という彼を追って山中の廃墟へと辿りつく映画ノベライズ。

崩壊から取り残されたように、ぽつんとたたずむ古ぼけた白い扉。何かに引き寄せられるようにその扉に手を伸ばす鈴芽。日本各地で災いが訪れてしまう扉が開き始めて、様々な曲を絡めながらその扉を閉めるために全国を奔走する鈴芽と草太という構図で、育まれてゆく絆と最後まで諦めずに大切なものを取り戻してみせた展開にはぐっと来るものがありましたね。

噓つきジェンガ

騙す側、騙される側、それぞれの心理を巧みに描く3つの物語

噓つきジェンガ

騙されて騙すことになってしまった。騙すつもりが騙されいた。

信じていたのに騙されていた。

騙していたことが遂にバレた。

コロナ禍で生活費に困窮する大学生が居た。

子供の中学受験にハマり垂らされた糸に縋る母親が居た。

崇拝する人に成り切る偽物が居た。

日常に潜む嘘つきの罠が今日も誰かを待ち構えている。ひとつひとつ積み上げて来た生活を脅かせる。嘘のせいでグラグラとジェンガの塔が揺れる。バランスを失い崩される。そして、その崩れた後にこそ自分の姿が浮かび上がる物語だった。

われら闇より天を見る

翻訳ミステリ史上、最高のラスト1行

われら闇より天を見る

これぞ海外ミステリーという醍醐味を存分に味わえる傑作。

30年前に起きた1人の少女の死をきっかけとして、複雑にもつれた人間関係が描かれていく。ケープ・ヘイヴンという小さな町を舞台に、その町の警察署長と、酒と薬に溺れる母親と幼い弟の面倒を見る13歳の少女が主人公だ。自らを“無法者”と呼び、2人を守るためなら暴力をも辞さない少女が素晴らしい。

物語は直球のように見えるが、結末までに二転三転どころではない展開をする。その複雑な構成と綿密に張られた伏線に舌を巻くと共に、人のもつ多面性に感じ入った。

掬えば手には

だれもが涙せずにはいられない、切なく暖かい物語

掬えば手には

もし人の心が読めるようになったら・・どんな気分になるのか想像した。

そうなれば相手の気分の上げ下げに振り回され、ジェットコースターに乗った後のように気分が悪くなるのは必然だと思えた(笑)。だからバイト先の口の悪い店長や無愛想な常盤に対する梨木の行動と優しさには驚きしかない。どこをとっても平凡と自覚しているようだが、あの人の良さと素直さは非凡としか言いようが無い。困っている人に寄り添うように一言声をかける。声をかけ続ける。簡単なようでなかなか出来ないその行動力は人を惹きつける磁石なような優しさで溢れていた。

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