
デスゲーム×明治時代 直木賞作家による、新シリーズ開幕!
イクサガミ 天
文明開化の最中、全国各地で怪文書が配られた。兵どもが東京と大金を目指すトーナメント戦のような【こどく】への招集。時間と人数が制限され、トップに残るまで殺戮を繰り返さねば進めぬ旅。
ゲーム要素が強く、また大金を手にしたい理由も様々で情熱的。主人公・敵味方と個性的な輩が集い、生き残るための彼等の駆け引きも見物。刻々と鳴るカウントダウン。
次の頁では何が起こるだろう?と胸の高鳴る読書時間。最高。そして最後の1頁…。理解したくなかったのか、数度読み返した。理解したと同時に鳥肌。今村さん、新たな境地に行きましたね。

一話ごとに「まさか!」の戦慄が走る、連作短編集
怖ガラセ屋サン
背筋がゾワッとなるような、物語の映像が映画のように脳内で再生されていくような、怖さ。
ホラー、心霊現象とも違う。短編の初章「人間が一番怖い人も」、タイトルの意味が曖昧で腑に落ちないままに読んでいく。エンディングとタイトルが繋がった時の怖さ。その先の短編も知りたくて一気に読み進む。
今までとは違う澤村伊智さんの力量を感じる作品だと思う。人の恨みをかうこと、酷いことをしてもその記憶さえないまま平穏に過ごしていること、はないだろうか。相手が怖ガラセ屋サンに何を依頼したのか、知ってからではもう遅い。

読書メーターで話題の1冊!昭和の下北沢で
下北沢であの日の君と待ち合わせ
アラフィフ女性たち4人の、30年前、下北沢の安アパートで暮らした青春の日々。
1980年代後半の世相や下北沢の状況を知る人にとっては懐かしいのかなと思いました。高校を卒業し田舎から都会に出て一人暮らしをし、夢はあれども騙されたり裏切られたり、あぁ、人生の高い授業料。けれど一緒なら寂しくはなかった。最初はちょっとあけすけな感じが好みではないかもと思いましたが途中からすっかり馴染んでしまいました。仲良しだったり、ぎくしゃくしたり、忙しいな。
憧れと妬みとが入り交じる。あの日の事は呪いか愛か。30年経た答えは?

「マカン・マラン」シリーズの著者が描く、愛と涙の物語
山亭ミアキス
目の前に立ちはだかる現実に打ちひしがれる人たちが迷い込む、白い靄の中に佇む山亭。ボーイが「迷える魂のゆりかご」だと言う青く澄んだ湖。夢か現実かもわからない不思議な体験を通して、それぞれが自分の本当にすべきことに気付いていく。
幼くして命を失われた少女が母を待つ湖が彼らを引き寄せたのは、極端な選択をする前に対処の方法はあるということや、誰もが自由で戦う権利があるということを気付かせるためだったのか。
神話を通して知る猫の賢さや気高さ、そして人間への深い愛を感じられるラストがとても良かった。

筆舌に尽くせぬ孤独を描き抜いた慟哭の長篇ミステリー
イノセント・デイズ
エンタメ小説として傑作であるのは言うまでもなく、文章からここまでの圧力を感じることができる作品は記憶に少ない。
主人公のバックボーンが明らかになっていくにつれ、そして主人公が渇望するものの輪郭が明らかになったとき、私たちは「幸せ」の定義を自分に問い直さざるを得なくなる。一期一会という言葉がよくポジティブな意味で用いられるが、出会い出会いのなかでボタンが掛け違いが起こるとやがてそれは負の連鎖の始まりになる、そんな部分も含まれた言葉だと思う。繋がりが持つ意味を是非を超え強烈に突きつけている作品だと思う。

ようこそ、危険な学園へ。全人類、未体験の読後感!!
教育
「一日三回以上オーガズムに達すると成績が上がりやすいとされていて」なんだそりゃ?と読みはじめました。
全寮制の高校で、先生をトップにピラミッド型に構成されたヒエラルキーの世界。上のものには逆らえず、学校が奨励さられる物や規則、思想などを当然としてそれに倣うものが多い中、一部の学生からは疑問視ももたれるようになる。
思想統制の中、与えられた物事を疑いもせず従うことは危険だと思った。規則などがあると考えずにすみ楽かもしれないけれど、自己と言うのもが育たない。だんだん自分で考えなくなる。怖い世界だ。

映画「ドライブ・マイ・カー」原作として再び話題
女のいない男たち
いつ切れるかもわからない細い糸でつながっている男女の関係。それは不倫関係であるかもしれないし、はたまた満ち足りた夫婦生活であるかもしれない。ぷつりと切られたら最後、残された方は宙ぶらりんに世界を漂う。亡くなった人や何も言わずに姿を消した人の真相を知る手立てはない。
残された側は傷つきたくない防御反応から感情に蓋をしてしまいそうになるが、「傷ついている」「あなたがいなくて悲しい」ことを認めることから傷の手当ては始まっていくのだと思った。
多くを語られないのが良かった。余韻がいつまでも残っている。