今月の PICK UP レビュー

2022年

10

読書メーターユーザーおすすめの本に寄せられた、感想・レビューを紹介!

思わず読んでみたくなる感想・レビューが勢揃い。
次に読みたい本を見つける参考に、ぜひチェックしてみてください。

そして誰もゆとらなくなった

楽しいだけの読書をしたいあなたに贈る一冊です

そして誰もゆとらなくなった

朝井リョウの爆笑エッセイ第3弾。

これこそ直木賞作家の文章力を用いた神々の遊び…!今回も思わず声を出して笑ってしまうそんな場面がいくつもいくつもあった。

朝井リョウといえばやはり便意との戦い。半分ぐらいは便意の話だったのではないかと思うくらい、著者の勢いのある心からの悩みが感じられた。

そして何事にも全力の朝井リョウのエッセイの疾走感たるや。バレーボール、はじめての催眠術、作家による本気の余興×2。

このエッセイ集は第3弾にして完結編と帯に書いてあった。まさか…また次も朝井リョウのエッセイを読みたい…!

汝、星のごとく

本屋大賞受賞作『流浪の月』著者の、心の奥深くに響く最高傑作

汝、星のごとく

最初の一行で、ヒュッと息を呑む。

なぜ、なんのために、こんな状況を、淡々と受け入れているのだろう。プロローグで抱いた疑問の答え合わせをしたくて、はやる気持でページを捲る。

暁海と櫂、交差するふたりの視点。同じ夕星を眺め、同じ景色を思い出しても、すれ違い、遠くなるふたりの距離。生きていくための岐路。選択することは、一方を切り捨てること。残酷な現実に胸が締めつけられる。そしてすべてに納得がいくエピローグにたどり着く。

狂おしいほどの激しさと切なさを、こんなにも美しい言葉で描けるのは、凪良さんだけかもしれない。

レペゼン母

マイクを握れ、わが子と戦え!

レペゼン母

凄い。凄い面白かった!口が達者な梅農家のオカンがなんやかんやでラップバトルに乗り込む話。

正直ラップバトルて、ラップにも馴染み無いし口喧嘩にも嫌なイメージ…とか思ってたけど、こんなに熱いなんて。

全身全霊をかけて相手の言葉を聞き、全力で魂を込めて答える、胸の熱くなる瞬間が凝縮されている。私もひとりのオカンとして、目の前の子供の言葉に全力で耳を傾けているか、本当に伝えたい言葉を届けているか、我が身を振り返るキッカケになった。

そして見慣れた景色から1歩踏み出すパワーがいっぱい詰まっていた。めちゃめちゃ良かった!

夜の道標

あの手の指す方へ行けば間違いないと思っていた――

夜の道標

感想レビューが、こんなにも難しい作品は久しぶりかも。

人ひとり殺しておきながら、犯人を責める気にはならず、むしろ虚しく哀れでしかない。

人の気持ちを想像したり同感、共感力のない、今で言う発達障害も一般に認知されるまでは、酷い病名で差別されていた現実。虐待、ネグレクトで育った少年と、殺人犯との交流が、この物語の唯一の救いに思える。

この国が行った最善であったはずの政策は、いくつの家族を崩壊させたのだろう。弱者は従うしかないのだ。絶望するのはもうたくさんだ。

花は愛しき死者たちのために

「決して腐敗しない美少女の遺体」をめぐるゴシックファンタジー

花は愛しき死者たちのために

美しいけれども残酷。いや残酷だからこそ美しいのだろうか。

王子のキスでは目覚めない白雪姫に呪われる人々。欲望の果てに、無謀の末路に、永遠を求めた先に、己自身を開花させるために、一人また一人と呪われていく。だけどもその残酷な運命こそが、唯一無二の物語となり、さらに美姫を美しくする。

死と隣り合わせの物語だからこそ、生命の強さ、人の息吹を感じることができる作品。面白かった!

あさとほ

「人を消す物語」の正体は。長編ホラーミステリの神髄!

あさとほ

新名さんの、怪異を通して人間を深く見つめる目がとても好きだ。

前作『虚魚』以上に練られた印象の本作。前作にも通ずるテーマにやはりハッとさせられる。

幼い頃に消えた双子の妹。失踪した大学教授。『あさとほ』という失われた物語。どう関わるのか、奥深くに分け入っていく過程に吸い込まれる。謎めいた古典文学をたどっていくからか、どこか幻想的。そして浮かび上がる『あさとほ』の正体に戦慄。自分の輪郭を思わず確かめたくなるような、そんな恐ろしさがひたひたと侵食してくる。

ラスト1行はタイトル回収だろうか。静かな余韻に身を委ねる。

むらさきのスカートの女

ベストセラーとなった芥川賞受賞作、待望の文庫化

むらさきのスカートの女

帯に書いてあった通り、たしかになにも起こらない。けど、むらさきのスカートの女をみている語り手のことを私たちがみている、という構図がおもしろくも奇妙だと感じた。

むらさきのスカートの女のことは、語り手が観察しているから読んでる私たちも理解していく。しかし、語り手自体のことはよくわからないまま話が進む。どうして、そんなにむらさきのスカートの女に固執するのか?少しずつ、語り手の存在がわかりつつもハッキリとはよくわからない。

語り手自身が自分の孤独と向き合いたくないがためにまったく描かれてないのかなとも思った。

プロジェクト・ヘイル・メアリー 上

人類滅亡の危機に立ち向かう男を描いた極限のエンターテインメント

プロジェクト・ヘイル・メアリー 上

人類存続の危機を救うべく宇宙へとか、目覚めたら記憶喪失で徐々に取り戻すとか、序盤からの設定はありきたりなんだけど、科学知識を駆使しての問題解決の連続が抜群に面白い。

登場人物が皆賢すぎて、数段劣る文系の自分に理解できているのか不安になるし、科学的描写の緻密さに音を上げそうになるけど、別の宇宙船と遭遇してからはワクワクが止まらない。

物を送り合う自己紹介から始め、隔壁越しに会って、少しずつお互いの「言語」を手に入れ、物質名や質量をすり合わせていく。会話を重ねるうちに相手の感情も見え、心を通じ合わせる展開が胸熱。

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