今月の PICK UP レビュー

2022年

12

読書メーターユーザーおすすめの本に寄せられた、感想・レビューを紹介!

思わず読んでみたくなる感想・レビューが勢揃い。
次に読みたい本を見つける参考に、ぜひチェックしてみてください。

無人島のふたり: 120日以上生きなくちゃ日記

58歳で急逝した作家、読者へのラストメッセージ

無人島のふたり: 120日以上生きなくちゃ日記

亡くなったと聞いた時はとっても驚き、この本を読みさらに胸が締め付けられました。

でも大好きな旦那様と静かに最期の時間過ごされたのだと知り、少し救われる。死を宣告された時、最期が目前に迫って来た時、人はこんな事を想い、考えるのだと伝えられた気がして、最後まで文緒さんは作家だったんだなと思いました。

生に対する文緒さんの熱量に圧倒され、途中で本を閉じることが失礼なような気がして一晩で読みました。これ以上文緒さんの作品に触れることができないのが残念でなりません。ご冥福をお祈りします。ありがとうございました。

変な絵

見れば見るほど、何かがおかしい?9枚の絵から謎を解くミステリー

変な絵

不穏なブログと9枚の絵。全てが繋がった時に浮かび上がる驚きの真相。"奇妙な絵"に込められた真実が重くそして悲しい。

不思議な絵を個別に読み解いていく短編集かと思いきや、思った以上にミステリー仕立て。ある不気味なブログから美術教師の死に至るまで謎が謎を呼ぶ展開が面白く、変な絵の解釈が主軸となるストーリーがすごく斬新。

確かにどの絵もずっと見ていると心がザワザワしてくるような落ち着かない気分になるが、まさかあのようなラストに導かれるとは。帯の『あなたにはこの絵の「謎」が解けますか?』に対しては私は完敗でした。

機械仕掛けの太陽

現役医師・知念実希人が描く、コロナ禍の医療現場のリアル

機械仕掛けの太陽

未曾有のコロナ禍でまさに戦場と化した医療現場で起こった脅威との戦いの記録_

何度も込み上げるものがあった。

感染する恐怖と戦いながらあるいは自分の家族や生活を犠牲にしても命を救うべく伝播する脅威に立ち向かって下さった医療従事者の皆様には本当に感謝しかない。

時系列で書かれている点もわかりやすく社会情勢とともに把握できた。

何より知念氏が現役医師だからこそ描ける、リアルさが胸を打つ小説にして感動のドキュメンタリー。

傲慢と善良 (朝日文庫)

現代を描き出す、恋愛ミステリの傑作

傲慢と善良 (朝日文庫)

読み終えてまず思う。自分も傲慢だった、いや今でもそうだ。これは恋愛に限ったことではない。

常に自分と誰かを比べて自分の方が相手より価値がある、優れていると思うことでかろうじて自分を保っている。歪んでいることはわかっているけれど、なかなかそこから抜け出せない。この歳になっても。

ひとつだけ救いがあるとすれば、主人公の婚約者・坂庭真実の母親のように子供を縛らなかったことか。いやこれも結果的にそうなっただけで、タイプとしてはあの母親に近いかも。感動やイヤミスとは違うとにかく心に重くのしかかってくる物語だった。

君のクイズ

“ゼロ文字正答“という謎を解く、一気読みミステリー

君のクイズ

生放送のクイズ番組決勝戦。優勝を決める早押し問題で三島の対戦相手・本庄は一文字も問題が読まれぬうちに回答し正解する。これはやらせなのか、それともちゃんと論理的に正答が導かれたのか、負けた三島により追求していくミステリ。

ここで?!と思われるような早押しにおいて、ボタンを押すまでと押してからの彼らの頭の中はもちろん、実際にその場にいなければわからない戦略まで、夢中になって一気読み。本当に細かく物語にされていて、感心するしかない。すごい帯に惹かれて手に取ったが、クイズの見方が変わりそうなほどで、面白かった。

箱庭の巡礼者たち

六つの世界の物語が一つに繋がる一大幻想奇譚。

箱庭の巡礼者たち

ぼくが8歳の時に100年に一度の大雨が降った。雨が止み集まったガラクタの中から黒い箱を拾う。その中には箱庭ができていて人々が動いている。というところから始まる物語は、次々に舞台を変え、それぞれにリンクしていく。

こんがらがりながらも世界観に没頭すればまるで自分も箱庭の住人のよう。最後まで読み切った時にはまた始まりに立っていた。摩訶不思議な体験でした。

川のほとりに立つ者は

他者と交わる痛みとその先の希望を描いた物語

川のほとりに立つ者は

途中までぼんやりとしていたものが、だんだんと確信に変わっていく。誰にも分かってもらえないと落ち込んだこと、あの人のことが理解できないと嘆いたこと、誰にでもあるだろう。ちょっと見方を変えて寄り添えば、気づくことが出来たかもしれない。松木が書いた卒業文集「六年間の思い出」を読んだところで、そこまでの思いが涙になって溢れた。

誰かの悲しみに思いを馳せ「明日がよい日でありますように」と心から願える人になれたら素敵。差し伸べた手を振り払われても、あなたが私のことを嫌っていても。読み終えて、タイトルの意味が深く沁みる。

犬を盗む

殺人現場に残された愛犬の痕跡――真実を知るのは、その瞳だけ。

犬を盗む

佐藤青南さん初読み。資産家の老婦人殺害の謎と、彼女の家から消えたチワワの謎。事件を追う刑事二人、突然犬を買い出したコンビニ店員、彼を調べるゴシップライターにミステリー作家まで絡み、事件は思わぬ展開へ。

さくさく読めてミステリーとしても面白かった。刑事の一人が犬嫌い・犬アレルギーというのも可笑しいけど、大変な仕事だなぁと同情してしまう。ミステリー作家の暴走した正義感は読んでいて怖かった。犬を介してできる人間関係も不思議。飼い主の名前や素性を知らなくても、犬の散歩を通して仲良くなれるっていいな。シロ、幸せにね。

此の世の果ての殺人

第68回江戸川乱歩賞受賞作!「大新人時代」の超本命

此の世の果ての殺人

2023年3月に小惑星が日本に衝突するという設定で、ストーリーが進行していくことに少しとまどったが、すごく面白かった。

ほとんどの人がパニックになって自殺したり避難した中、主人公のハルは、なぜか大宰府で自動車の教習を受け続けていた。教えているのは元刑事のイサガワ。年の暮れ、乗ろうとした教習車のトランクに、女性の死体が横たわっていた。

2人は世界の終末が迫る中で、犯人探しを始める。イサガワの推理は的確で行動力もあり、ハルも次第にイサガワに心を開くようになる。事件解決後のエンディングにも納得して読了。

文にあたる

《本を愛するすべての人へ》人気校正者が、思いのたけを綴った初めての本。

文にあたる

校正の仕事にまつわるあれこれを綴ったエッセイ。

校正とは本が出版される前に内容の誤りを正し不足な点を補うこと。地道な仕事でサッカーに例えるとゴールキーパーの役目であり0点に抑えるのが至上命令!それでも誤植が残ることもある。何よりも驚いたのは世の中には校正をしていない本も存在するということ。

本は人間よりも長く生きるからこそすべての本が等しく手をかけられて作られて欲しいと牟田さんは語る。書き手と編集者と校正者の方たちの手間ひまが活字を支えてくれていることに感謝である。読メの感想を校正してもらったらどうなるかな?

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